耐性菌
抗菌薬を使い続けていると、いずれ薬に対する抵抗力を獲得した菌が出現する。
一つの薬に対して耐性を獲得した菌は、構造が類似している他の薬に対しても耐性を示すことがあるため、類似構造を持つ抗菌薬の投与は注意が必要である。
耐性菌 | 耐性機序 | 特徴 | 治療薬 |
MRSA | PBPの変化 | 分離される黄色ブドウ球菌の約50%を占める。第3世代セフェムの乱用で増殖した。メチシリンだけでなく多くの抗菌薬が無効。 | VCM、TEIC、DAP、ABK、LZD |
VRE(バンコマイシン耐性腸球菌) | D-Ala-D-Alaの変化 | 日本では稀だが、今後増加する可能性あり | LZD |
ESBL産生菌 | βラクタマーゼ産生 | 院内だけでなく市中でも感染拡大中 | カルバペネム系、セファマイシン系など |
CRE(カルバペネム耐性腸内細菌科細菌) | 主にβラクタマーゼ産生 | ニューキノロン系も耐性となっていることが多いい カルバペネム耐性腸内細菌科は新たな抗菌薬開発の緊急性が非常に高い |
TGC、CL、ニューキノロン系 |
メタロβラクタマーゼ産生菌 | βラクタマーゼ産生 | ニューキノロン系も耐性となっていることが多い | CL、ニューキノロン系 |
MDRP(多剤耐性緑膿菌) | さまざま | メタロβラクタマーゼ産生菌であることが多い カルバペネム耐性緑膿菌は新たな抗菌薬開発の緊急性が非常に高い |
CL |
MDRA(多剤耐性アシネトバクター) | ? | βラクタマーゼ産生している場合が多い カルバペネム耐性アシネトバクターは新たな抗菌薬開発の緊急性が非常に高い |
第4世代セフェム系、CL |
AmpC産生菌 | βラクタマーゼ産生 | 抗菌薬曝露によってβラクタマーゼが誘導される | カルバペネム系 |
耐性菌の出現機序
耐性菌が出現する原因は主に以下3つの機序により耐性遺伝子を獲得する。
① | 遺伝子の突然変異 |
② | ファージによる水平転移(形質導入) |
③ | プラスミドによる水平転移(形質導入・接合) |
耐性遺伝子によるタンパク質発現の変化
耐性遺伝子を獲得した結果、タンパク質発現が変化し、抗菌薬に対して耐性を獲得する。
具体例 | |
①薬物不活性化酵素の産生 | βラクタマーゼ産生 |
②薬物作用点の変化 | PBPの変化、DNAジャイレース変異 |
③薬物の細胞内取り込みの低下や能動的排泄 | 薬物の膜透過性減少、排出ポンプ促進 |
抗菌薬適正使用支援チーム(Antimicrobial Stewardship Team:AST)
薬剤耐性(AMR)対策の推進、特に抗菌薬の適正使用推進の観点からASTの組織を含む抗菌薬の適正使用を支援する体制の評価に係る加算が新設された。(抗菌薬適正使用支援加算:入院初日100点)
【特定抗菌薬使用の届け出制】
対象薬剤 | ①カルバペネム系薬、②βラクタマーゼ阻害薬配合広域ペニシリン系薬、③抗MRSA薬、④バンコマイシン内服薬 |
使用届けの提出時期と様式 | 使用開始時、使用期間が14日を超える場合に提出。様式には感染症病名と抗菌薬使用理由を説明し電子カルテ上から感染制御部に送付する。 |
実施確認 | 対象薬剤を使用している症例に対して医師・看護師・薬剤師・検査技師が適切に使用されているか(AUD、DOTで評価)、有害事象が発生していないか、治療評価が行われているか確認する。 |
抗菌薬使用密度(AUD) | 100入院患者の日数あたりの抗菌薬使用量。 AUD=一定期間の抗菌薬の総使用量(g)÷その抗菌薬の1日仮想平均維持量(DDD)÷入院患者延べ在院日数×100 |
Day of therapy(DOT) | 一定期間における抗菌薬の使用日数を在院患者延数で補正し、100患者あたり1日で使用される値。 DOT=抗菌薬使用日数÷入院患者延べ在院日数×100 |
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