膠原病総論(関節炎、抗核抗体)

リウマチ・膠原病

膠原病総論

膠原病とは見た目や痛みで苦しみ続ける致死性の免疫難病である。

リウマチ 関節や筋肉などの運動器のこわばりと疼痛を主訴とする疾患(臨床的)
膠原病 結合組織を中心に非感染性・非腫瘍性の炎症が起こり、複数の臓器を侵す自己免疫疾患。↔︎単一の臓器を侵すものは自己免疫疾患という。
膠原線維のある結合組織に炎症が起こるため膠原病と呼ばれる(病理的)。
自己抗体 自己構成成分に対する抗体。健常人でも少量は検出される点に注意する。
自己炎症 抗原がないのに起こる全身性炎症。自己抗体(ー)。浅部臓器にとどまる。
主に自然免疫の異常。症状は発作性・周期性に起こる。高熱+。
治療は分子標的薬を中心に行う。
自己免疫 自己抗原を標的とした多発性臓器特異的炎症。自己抗体(+)。浅部+深部臓器。
主に獲得免疫の異常。症状は持続性・進行性に起こる。
治療はステロイドや免疫抑制薬を中心に行い、寛解後はステロイドの量を減らす。

【膠原病で障害を受けやすい臓器】

浅部臓器(非重要臓器) 深部臓器(重要臓器)
皮膚・粘膜、関節・骨、眼、消化管、太い血管 肺、腎、神経、心臓、細い血管
主に自然免疫系細胞が関与 主に獲得免疫系細胞が関与

【膠原病の症状】

全身症状 主に炎症に起因する発熱、倦怠感、体重減少など
各臓器の症状 ①炎症②血管・循環障害③線維化

【膠原病の治療】

膠原病は根治できないため「上手に付き合う」ことを目指す。免疫抑制療法中に感染症になった場合、ステロイドは必ず継続し、その他の免疫抑制薬は病状次第だが基本的に中止となる場合が多い。

抗体と疾患の関連(◎必須、○必要、△適宜)

RA 自己のIgGのFc部に対する自己抗体IgMで、様々な膠原病で上昇するため特異度は低い。健常者でも5%の陽性率。
抗核抗体
(ANA)
核内構成成分に対する自己抗体で、様々な蛍光染色パターンを示す。
抗好中球細胞質抗体
(ANCA)
好中球構成成分に対する自己抗体である。

【各膠原病と抗体の関連】

  RA SLE SSc PM/DM SjS MCTD APS
抗核抗体   (必須) (必須)
ds-DNA抗体        
Sm抗体
SM大好きSLE
       
U1-RNP抗体
Unit=Mix
    (必須)  
SS-A/SS-B抗体  
Scl-70抗体=抗トポイソメラーゼ抗体
抗RNApolⅢ抗体
    (びまん型)        
ントロメア抗体     (限局型)      
抗Jo-1抗体
抗MDA5抗体
抗Mi-2抗体
抗TIF-γ抗体
           
抗リン脂質抗体
(aCL、LA、抗β2-GP抗体)
 
抗CCP抗体            
RF(IgM)    

関節炎症候群(総論)

【障害臓器一覧】

    RA 成人Still AS
浅部 大動脈 △(AR)
  消化管 △アミロイドーシス ○(IBD)
  強膜炎 ○ぶどう膜炎
  漿膜 ○胸膜炎
  骨・ 軟骨 滑膜炎→骨びらん・骨粗鬆症(骨萎縮) bamboo spine像
  関節 多関節炎、環軸椎亜脱臼、外反母趾 ◎関節痛 腰背部のこわばり・疼痛、腱付着部炎
  皮膚・粘膜 無痛性皮下結節 サーモンピンク疹
深部 神経
  上気道 △咽頭痛
  下気道 (肺) 間質性肺炎
  △アミロイドーシス
  △アミロイドーシス
 
  唾液腺
  血球 △白血球増加
  レイノー現象
  肺高血圧症
その他 悪性腫瘍

関節リウマチ RA:Rheumatoid arthritis

疫学 30〜50代女性が発症ピーク(4:1)。有病率1%で膠原病の中で最多。
喫煙、歯周病などと発症関連あり。
病態 関節滑膜の炎症を主体とした全身性炎症性自己免疫疾患。
何らかの自己免疫機序によりTNFαやIL-6などの炎症性サイトカインが生じて慢性的な関節炎(小関節から生じ、進行すると大関節や関節外症状呈す)を生じる。その結果、関節滑膜が増殖し、炎症により肉芽組織を形成しながら軟骨・骨を侵食する(骨破壊)。末期には関節の癒着が起こり関節が変形する。
Sjögren症候群、壊疽性膿皮症、間質性肺炎、漿膜炎、強膜炎、手根管症候群、続発性アミロイドーシスを合併しやすい。HLA-DR4の関連高い。
症状 【関節症状】
<初期>(骨破壊病変がまだない)
①3領域以上多関節炎:左右対称の手・足の小関節の持続性関節腫張・運動時疼痛
朝のこわばり:寝ている間動かさず水分が貯留するため起こる関節のぎこちなさ
<進行期>(DIP関節や仙腸関節は障害されにくい)
③スワンネック変形・ボタン穴変形:PIP関節が変形
④手指尺側偏位:MP関節が変形
⑤ハンマー状足趾:母趾が外反し、母趾MTP関節が変形
※末期は関節が癒合して関節強直が起こる
⑥稀だが環軸椎亜脱臼:頸椎圧迫すると致死的
⑦関節周囲(腱や靱帯など)の障害:指伸筋腱断裂など
【関節外症状】
①全身症状:微熱、倦怠感、体重減少など
無痛性皮下結節:特に肘に好発し、疾患活動性が長期になると出現
③胸膜炎、間質性肺炎、上胸膜炎、血管炎
続発性アミロイドーシス:IL-6によりアミロイドAが増加し腎・心・消化器に沈着
⑤神経障害:手根管症候群、橈骨神経麻痺、頸椎性脊髄症など
⑥眼症状:強膜炎、虹彩毛様体炎、乾燥角結膜炎
検査 【血液検査】
リウマトイド因子+、抗CCP抗体+(特異度95%、多くは発症前から陽性となる)、MMP-3↑、WBC↑CRP↑赤沈↑、補体↑、貧血
結核、ニューモシスチス肺炎、B型肝炎ウイルスの再活性化がないか毎回確認!
【関節液】
半透明黄白色〜白色膿性混濁、好中球↑、粘稠性↓、補体↓(免疫複合体形成のため)
【画像検査】
関節X線:関節裂隙の狭小化、亜脱臼、骨びらん、骨性強直。骨萎縮による骨粗鬆症を呈する場合もある。
関節MRI・関節エコー:早期病変検出に有用
【疾患活動性評価】CDAI、SDAI、DAS28などを用いる
治療 【薬物療法】
①csDMARDs(先ずはMTX内服→薬剤性間質性肺炎、悪性リンパ腫を確認!)
②csDMARDs抵抗性の場合、生物学的製剤を投与→感染症や自己抗体産生に注意!
・抗TNF-αモノクローナル抗体(インフリキシマブ、アダリムマブ)
・可溶性TNF受容体製剤(エタネルセプト)
・IL-6受容体阻害薬(トシリズマブ)
・T細胞選択的共刺激調節薬:CTLA-4融合蛋白(アバタセプト)
③低分子量JAK阻害薬(トファシチニブ、バリシチニブ)
④抗リウマチ薬は効果発現まで数ヶ月かかるため対症療法的にNSAIDsやステロイドを投与する。また、ヒアルロン酸関節内投与や抗RANKL抗体投与も行うことがある。
【手術】
人工関節置換術
【リハビリ】
炎症が落ち着いている時は可動域訓練(炎症ある時は安静・関節保護)

関節リウマチに関連した疾患

★悪性関節リウマチ(MRA:Malignant RA)・Felty症候群

  悪性関節リウマチ Felty症候群(減るって症候群
病態 長期RA患者に発症。RAに血管炎症状が伴い、
それが重症や難治性の場合を指す。RAの約1%。
長期RA患者に合併
日本では非常に稀な疾患。
症状 RA症状+
①関節外症状:
血管炎症状:紫斑、皮膚潰瘍
RA症状+
脾腫(汎血球減少)
②易感染性(好中球減少
検査 皮膚生検:血管炎確認
血液:補体価↓、WBC↑、血小板↑
血液:補体価↓汎血球減少
治療 ステロイド追加 RA薬継続(感染症に注意する)

若年性特発性関節炎 JIA:Juvenile Idiopathic arthritis

疫学 16歳未満に発症、全身型は1〜5歳が発症ピーク
病態 6週間以上持続する原因不明の関節炎で、他の病因を除外したもの。
全身型関節型(多関節型、少関節型)の3つ病型に分類される。全身型をStill病という。
STILLーモンピンク疹・膜炎、温上昇、Increasedフェリチン&WBC、ンパ節腫、脾腫
症状 共通:多発関節炎
①全身型(約40%):関節痛に先行する弛張熱、サーモンピンク疹、全身リンパ節腫脹、肝脾腫、漿膜炎(心膜炎など)、血球貪食症候群
②多関節型(約30%):皮下結節、朝のこわばり=関節リウマチ似症状
③少関節型(約20%):ぶどう膜炎(約20%)
検査 【血液検査】
関節炎の程度によりMMP3↑
全身型血清フェリチン↑、WBC↑、赤沈↑CRP↑、PTL↑、補体正常
関節型:多関節型は約30%でリウマトイド因子(+)、少関節型は約30%で抗核抗体(+)
治療 全身型:ステロイドパルス、補助的にNSAIDs
関節型:NSAIDs、重症例ではメトトレキサート、ぶどう膜炎にはステロイド点眼
難治性の場合はTNF阻害薬、抗IL-6受容体抗体などの生物学的製剤使用

リウマチ熱

グラム陽性球菌のA群β溶血性レンサ球菌を参照。

★成人Still病

病態 16歳以上に発症する全身型JIAに類似する疾患。
原因不明の全身性炎症性疾患であり、不明熱の原因となる膠原病である。
しばしば薬剤アレルギーが引き金となるため、すべての薬剤の中止により改善することもある(そのため使用する薬剤は必要最小限とする)。
症状 高熱(弛張熱)、1週間以上持続
サーモンピンク疹(特に前胸部)発熱時に淡い紅斑があり、解熱したら消退する
関節痛:①②の後に出現、2週間以上持続
その他:咽頭痛、リンパ節腫脹あるいは脾腫、肝障害
感染症、悪性腫瘍、他の膠原病を除外すること!
活動期に血清フェリチン値が著明に上昇し、しばしば血球貪食症候群を合併する。
検査 【血液検査】
WBC↑(特に、好中球↑)、フェリチン↑(活性化Mφが産生)
汎血球減少している場合は血球貪食症候群の合併を考慮し、骨髄穿刺を行なって活性化マクロファージなどの組織球が血液細胞を貪食している像を確認する。
治療 ステロイド内服、重症例ではMTXやシクロスポリン併用、ステロイドパルス、
ステロイド抵抗性には抗IL-6受容体抗体(劇的に効くことがある)

★脊椎関節炎 SpA:Spondylarthritis

病態 何らかの免疫異常により腱付着部炎関節炎を呈する疾患。体軸性脊椎関節炎(椎間関節や仙腸関節)と末梢性脊椎関節炎(四肢の大関節や指趾の小関節)に分類される。前者には強直性脊椎炎、後者には乾癬性脊椎炎、中間的な存在として反応性関節炎やIBD関連関節炎がある。
症状 腱付着部の圧痛
体軸性脊椎関節炎:炎症性腰背部痛(45歳未満に多い)
末梢性脊椎関節炎:関節炎
検査 HLA-B27陽性、RF陰性
治療 体軸性脊椎関節炎:NSAIDs(MTXは無効)、末梢性脊椎関節炎:MTX

★強直性脊椎炎 AS:Ankylosing spondylitis

疫学 10代〜30代で発症男性に好発(3:1)
病態 主に脊椎・仙腸関節を侵して関節強直をきたす慢性進行性炎症性疾患。
症状 ①初期は夜間の腰背部痛(仙腸関節炎症)で、安静で悪化・運動で改善する
②進行すると靱帯の骨化により前屈・後屈の制限。アキレス腱付着部炎
合併症として、虹彩毛様体炎、ぶどう膜炎による前房蓄膿、AR、房室ブロックがある。
検査 【血液検査】
HLA-B27陽性(約90%)、CRP↑赤沈↑、RF陰性
【画像検査】
腰部X線:bamboo spine像(骨癒合像)、脊椎傍骨化像
MRI:初期病変検出
治療 NSAIDs、TNFα阻害薬、IL-17阻害薬(DMARDsは無効)、リハビリ

反応性関節炎(Reiter症候群)

疫学 男性に好発、稀な疾患
病態 クラミジア、サルモネラ、赤痢、エルシニア、カンピロバクターなどの微生物感染によって誘発された急性非化膿性関節炎(膀胱癌に対するBCGの膀胱注入後にも生じる)。
症状 泌尿器感染や腸管感染の先行感染の数週間後に、
多関節炎非対称性、かつ、膝や足の小関節に生じる(下肢優位
②全身症状:発熱
腱付着部炎(約70%):足底腱膜起始部やアキレス腱付着部に好発する疼痛
【合併症】
結膜炎尿道炎を伴うものをReiter症候群という
27本のライターをケツと尿管にぶちこむ:B27、Reiter、結膜炎、尿道炎、関節炎
検査 【血液検査】
HLA-B27陽性(約90%)、RF因子陰性
【眼検査】
前房蓄膿
治療 一過性の場合:NSAIDs
慢性化した場合:サラゾスルファピリジンなど

乾癬性関節炎 Psoriatic arthritis

皮膚科の乾癬を参照。

リウマチ性多発筋痛症 PMR

疫学 50歳以上の女性に好発
病態 肩、頸部、骨盤帯の滑液包炎によって起こる筋肉痛朝のこわばりを主徴とする疾患。
ただし、悪性腫瘍によってもPMR様の症状が起こるため注意!特に、手背や足背の圧痛性浮腫の症状がある場合に悪性腫瘍が隠れていることが多い。
症状 近位部の筋肉痛両肩の痛み(必発)、朝のこわばり、頸部・骨盤帯の痛み(約60%)
発熱や倦怠感(約40%)
③手背や足背の圧痛性浮腫(約10%)→悪性腫瘍に注意!
【合併症】
巨細胞性動脈炎(約20%):頭痛、複視など
検査 特徴的な検査所見なし(赤沈↑CRP↑、RF陰性抗核抗体陰性、CK正常)
治療 少量ステロイド内服が著効

抗核抗体関連症候群(総論)

抗核抗体(ANA)は数十種類存在し、間接蛍光抗体法(IF)によってスクリーニング検査されるのが一般的。その染色パターンによって抗体の種類も大まかに推測できる。

【障害臓器一覧】

 
 
SLE
MCTD
PM/DM SSc SjS
浅部 大動脈
  消化管 ○ループス腸炎 嚥下障害、GERD、舌小帯の短縮 ○PBC、AIH、慢性胃炎
  眼乾燥
  漿膜 心膜炎
  骨・ 軟骨
  関節 関節炎 関節炎 関節炎 ○関節炎 関節炎
  皮膚・粘膜 蝶形紅斑、円板状紅斑、無痛性口腔内潰瘍、光線過敏症、凍瘡様紅斑 ソーセージ様手指 ヘリオトロープ疹、ゴットロン徴候、光線過敏症 皮膚硬化爪上皮出血点ソーセージ様手指手指潰瘍、仮面様顔貌 口腔乾燥環状紅斑、クリオグロブリン血症による紫斑
深部 神経 中枢神経ループス ○抗AQP4抗体陽性視神経脊髄炎
  上気道
  下気道 (肺) ○胸膜炎
△間質性肺炎
間質性肺炎 間質性肺炎 肺高血圧症、肺線維化 ○間質性肺炎
  ○不整脈
  ループス腎炎 腎クリーゼ ○遠位尿細管性アシドーシス
  近位筋↓
  唾液腺 apple tree appearance
  血球 汎血球&補体減少 ○全身リンパ節腫脹
  レイノー現象 必発 必発
  肺高血圧症
その他 悪性腫瘍

※レイノー現象のゴロ:例の合コン(MCTD)、今日(SSc)の午後(PM)にする(SLE)かまだ(DM)グレー(SjS)

★★全身性エリテマトーデス SLE:Systemic lupus erythematosus

疫学 15〜40歳に好発。女性に多い(9:1)。膠原病の中で2番目。
病態 様々な要因によって自己抗体(抗核抗体など)が産生され、主にⅢ型アレルギーによって多臓器障害を生じる慢性炎症疾患(一部、Ⅱ型アレルギー)。5年生存率は95%以上。
寛解と増悪を繰り返し、日光曝露、妊娠・出産、過労で増悪する。
【合併症】
APS(約30%)、AIHA、SjS、感染症など
全身 ①慢性炎症症状:発熱、倦怠感、体重減少、リンパ節腫脹
皮膚 ①皮膚症状:蝶形紅斑(約60%)、円板状紅斑(露光部)、Raynaud現象(約30%)、光線線過敏、脱毛、凍瘡様紅斑
②粘膜症状:無痛性口腔内潰瘍
【皮膚生検】ループスバンドテスト:表皮真皮境界部に免疫グロブリン沈着(+)
関節 多関節痛(80%以上):骨破壊や変形を伴わない関節の炎症
※長期経過例では約15%に関節変形をきたす(Jaccoud変形)
腎臓 ループス腎炎(約80%):免疫複合体が糸球体に沈着して蛋白尿・血尿を呈する。難治性で予後を左右する!治療効果の指標:蛋白尿、血清補体価の2つ
【腎生検】wire-loop形成、メサンギウム細胞増殖
CNS CNSループス(約20%):うつ+統合失調症様症状、けいれん発作など多様な中枢・末梢神経症状
心膜炎・心筋炎
①胸膜炎、間質性肺炎(稀だが発症すると重篤)
肺動脈性肺高血圧症
血液 ①Evans症候群:Ⅱ型アレルギーでAIHA(抗核抗体が血球に結合して破壊)+ITP
検査 【血液検査】
抗核抗体↑(99%)抗ds-DNA抗体(70%)、抗Sm抗体(25%)
汎血球減少:Ⅱ型アレルギーによるAIHA合併のためWBC↓リンパ球↓
血清補体価↓(CH50、C3、C4など):Ⅲ型アレルギーにより免疫複合体↑に伴いγグロブリン↑赤沈↑、なぜかCRPは上昇しにくい
④その他:AIHAにより正球性正色素性貧血・赤沈↑、腎炎によりBUN↑Cre↑
抗dsDNA抗体の高値補体価の低値はループス腎炎やSLEの活動性を反映する。

【眼底写真】
多発する軟性白斑(綿花状白斑)、火焔状出血
治療 ①ステロイド内服(軽症ではヒドロキシクロロキン内服)
②CNSループスやループス腎炎などの緊急時:ステロイドパルス療法
③難治性の場合:シクロホスファミド静注などの免疫抑制薬を併用する
予防 増悪因子(強い日光、過労、感染など)の排除
活動性が高い、肺高血圧症を合併、妊婦禁忌薬使用中、これらの場合は妊娠を避ける。
妊娠 新生児ループス:抗SS-A/SS-B抗体によって胎児の汎血球減少、皮疹、完全房室ブロックなど生じる

薬剤誘発性ループス

病態 ヒドララジン、メチルドーパ、プロカインアミド、クロルプロマジン、イソニアジドなどの薬剤によってSLE様の症状を呈する疾患。
症状 ループス腎炎やCNSループスは見られない。
検査 抗ds DNA抗体・抗Sm抗体は見られない。
治療 原因薬剤中止により数週間で軽快

混合性結合組織病 MCTD:Mixed connective tissue disease

疫学 30〜40代女性に好発(9:1)、予後良好
病態 SLE+SSc+PMの症状を少しずつ併せ持ち、抗U1-RNP抗体が陽性となる疾患。
症状 SLE症状:多関節炎、間質性肺炎など
SSc症状:レイノー現象(ほぼ必発)、肺高血圧症(高率に合併、予後決定因子)
PM:筋力低下など
検査 抗U1-RNP抗体が高値
治療 ステロイド内服。難治性の場合は免疫抑制薬を併用。

★★多発性筋炎・皮膚筋炎 PM:Polymyositis DM:Dermatomyositis

疫学 40〜60代に好発。女性に多い(3:1)。5年生存率は約90%。
DMの場合、5〜10歳の小児にもみられ、中年と合わせて二峰性である。
※小児期はほとんどが皮膚筋炎であり、成人と比して間質性肺炎や悪性腫瘍を伴うことが少なく、副腎皮質ステロイドが奏効するために予後が良い。
病態 横紋筋に生じる自己免疫性炎症性疾患をPMといい、そこに皮膚症状が加わったものをDMという。胃癌や肺癌などの悪性腫瘍の合併に注意(高齢者のDMに多い)、小児では悪性腫瘍や間質性肺炎の合併がないため予後良い。
症状 【PM/DM共通】
①四肢近位筋中心の筋力低下(特に下肢):立ち上がれない、持ち上げられない、歩行障害、動揺性歩行、登攀性起立(Gowers徴候)、重症例では嚥下障害や構音障害。
間質性肺炎(約50%)、多発性関節炎、レイノー現象(軽症)。腎障害は原則ない
【DM】
①ヘリオトロープ疹:開閉眼運動刺激→眼瞼上に浮腫性紅斑
②ゴットロン徴候:四肢・手指の関節伸側に鱗屑を伴う紅斑
③多形皮膚萎縮:慢性化した皮疹
④ケブネル現象誘発性皮膚症状:物理的刺激によって皮膚症状が出る
検査 【血液検査】
<PM/DM共通>
CK↑AST↑アルドラーゼ↑LDH↑赤沈↑ミオグロビン↑:筋原性酵素で筋障害を示す
抗ARS抗体:抗Jo-1抗体陽性など(明日のジョーは筋肉)、高頻度に間質性肺炎を合併
<DMのみ>
抗TIF1-γ抗体(悪性腫瘍合併↑、特に胃癌)、抗MDA5抗体(症状強い)、抗Mi-2抗体(症状弱い)
【尿検査】
クレアチン↑(筋破壊)、クレアチニン↓(筋量低下)
【筋生検<確定診断>】
筋線維の萎縮・変性で大小不同、PMはCTL・マクロファージ浸潤、DMはリンパ球浸潤
【筋電図】
収縮時振幅↓持続時間↓、安静時自発電位などの筋原性異常
【画像検査】
MRI:炎症部位がT2で高信号(診断に有用)
治療 ステロイド内服。
難治性の場合:免疫抑制薬や免疫グロブリン大量静注療法(IVIG)
※IVIGは献血から得た多様なIgが含まれ、それが自己抗体などを抑制する。

★★★全身性強皮症 SSc:Systemic sclerosis

疫学 30〜50代女性に好発(7:1)。5年生存率は約70%。膠原病の中で3番目。
病態 自己免疫異常によって血管障害線維化が起こり、皮膚をはじめとする全身の結合組織に硬化性病変をきたす疾患。血管内皮細胞の障害により内腔が狭小化し慢性の虚血状態となる。また、線維芽細胞の活性化により線維化が起こる。肺線維症や肺高血圧症、心病変は予後不良因子として重要。
症状 【血管障害症状】
レイノー現象(ほぼ必発)<初期症状>
ソーセージ様手指:手の皮膚が浮腫期→硬化期→萎縮期と進行し、指尖の小潰瘍を伴う
③多関節痛:末節骨溶解、腱付着部炎
④爪郭部毛細血管異常:爪あま皮の血管拡張や出血点
⑤心肺症状:肺血管狭小化による線維性心筋炎、不整脈、心室肥大、肺動脈性肺高血圧症
⑥腎症状:腎血管狭窄→RAA系亢進→高レニン性高血圧→急速な腎不全(腎クリーゼ)、さらに高血圧による内皮細胞障害から血栓性微小血管障害(TMA)に至る。
【線維化症状】
①四肢末端や顔面から始まる皮膚浮腫→皮膚硬化(仮面様顔貌)→皮膚萎縮(舌小体萎縮、色素沈着・脱失)と悪化する(皮膚病変が肘を越えなければ限局型)
②肺症状:間質性肺炎→肺線維化(予後不良因子)
③消化器症状:嚥下障害、GERD、吸収不良症候群、便秘、偽性腸閉塞
検査 【血液検査】
びまん皮膚硬化型SSc:抗核抗体、抗トポイソメラーゼⅠ抗体(抗Scl-70抗体)抗RNAポリメラーゼⅢ抗体
限局皮膚硬化型SSc:抗セントロメア抗体、抗PM-Scl抗体/抗Ku抗体
【画像検査】
X線:肺間質の線維化(下肺野に強い)、手指末節骨の骨吸収像
消化管造影:下部食道の狭窄後拡張像、蠕動運動低下像
【呼吸機能検査】
%VC↓、DLco↓(拘束性)
治療 血管病変の治療:Ca拮抗薬、PG、エンドセリン受容体拮抗薬などの血管拡張薬
肺高血圧症の治療:PGI2、PDE5阻害薬、エンドセリン受容体拮抗薬などの血管拡張薬
肺線維化の治療:シクロホスファミドなどの免疫抑制薬
腎クリーゼの治療:ACE阻害薬投与
関節炎の治療:ステロイド内服 ※腎クリーゼを誘発する可能性あるため注意
予防 生活指導(保温、禁煙、感染予防)

CREST症候群

病態 限局性皮膚硬化型強皮症の亜型であり、内臓病変の合併症が少ないため予後良好。肺高血圧症を合併しやすい。石灰沈着、
症状 C:皮下石灰沈着
R:Raynaud 現象
E:食道機能不全
S:手指皮膚硬化(肘関節より遠位に生じる)
T:毛細血管拡張(手が赤い)
検査 限局型全身性強皮症…抗セントロメア抗体
治療 対症療法

★シェーグレン症候群 SjS

疫学 30〜50代女性に好発(10:1)
病態 涙腺や唾液腺などの外分泌腺にリンパ球浸潤性を伴う慢性炎症が生じ、腺房が破壊され、分泌能が低下する疾患。SjSのみの一次性、RAやSLEなどの膠原病を合併する二次性に分類できる。原発性胆汁性胆管炎(PBC)や橋本病などの自己免疫疾患、悪性リンパ腫、遠位型尿細管性アシドーシスを合併することがある。基本的に予後良好。
症状 【腺症状】
ドライアイ(乾性角結膜炎):眼の異物感・充血・痒みなど
ドライマウス:口腔内乾燥・齲歯の増加・口腔カンジダ症、固形物の嚥下困難など
【腺外症状】
関節炎、レイノー現象、環状紅斑、頻度は少ないが間質性肺炎、間質性腎炎(Ⅰ型RTA)
検査 【口腔乾燥】ガム試験、Saxon試験、唾液腺シンチ、口唇腺生検でリンパ球浸潤、唾液腺造影でapple tree appearance
【眼乾燥】Schirmer試験:涙液分泌低下を確認、フルオレセイン染色・ローズベンガル染色により角膜・結膜の損傷を確認
【血液検査】抗SS-A抗体、抗SS-B抗体(妊婦では新生児ループスを起こす)、RF陽性、抗核抗体陽性、WBC↓、γグロブリン↑、一次性は抗SS-B抗体陽性の特異度が高い
治療 ドライアイ:人工涙液
ドライマウス:人工唾液、唾液分泌刺激薬(ピロカルピン、セビメリン)
腺外症状:ステロイド内服

その他の自己免疫疾患

【障害臓器一覧】

    Behcet APS IgG4
浅部 大動脈 血栓性静脈炎
  消化管 回盲部潰瘍
  ぶどう膜炎
  漿膜
  骨・ 軟骨
  関節 関節炎
  皮膚・粘膜 結節性紅斑、有痛性口内アフタ、外陰部潰瘍 網状皮斑
深部 神経 局所神経症状
  上気道
  下気道 (肺)
 
 
 
  唾液腺
  血球 △血小板↓
  レイノー現象
  肺高血圧症
その他 悪性腫瘍

ベーチェット病(シルクロード病)

疫学 20〜40歳代に好発(男女差ないが、重症例は男性に多い傾向)
病態 急性炎症性発作を繰り返す多臓器侵襲性の難治性疾患。
好中球活性化による全身性の小血管炎→血管閉塞が起こり、以下を4徴を主症状として多彩な病像を呈する。
症状 痛性の口腔粘膜の再発性アフタ:ほぼ全例かつ初発症状で最多
皮膚症状結節性紅斑、DVTなどの血栓性静脈炎
有痛性外陰部潰瘍(約80%)
眼症状:ぶどう膜炎症状。虹彩毛様体炎型→前房蓄膿、網膜脈絡膜炎型→発作反復で失明
⑤その他:関節炎(関節破壊なし)、精巣上体炎、回盲部潰瘍、動脈瘤など血管系症状、中枢神経症状(髄膜炎、脳幹脳炎など)
検査 【針反応試験】針を刺すと1〜2日で紅斑・無菌性膿疱を生じる(近年陽性率低下)
【血液検査】Behect病に対する特異的な抗体はない!
HLA-B51陽性ゴイゴイベーチェット(約50%)、HLA-A26陽性
活動期にはWBC↑赤沈↑CRP↑血清補体価↑
【皮膚生検】
無菌性の好中球浸潤
【蛍光造影眼底】網膜出血斑
治療 【皮膚症状】ステロイド外用、NSAIDs内服、コルヒチン内服(好中球遊走抑制)、効果不良の場合はシクロスポリン内服、TNFα阻害薬(インフリキシマブ)
ステロイド内服は禁忌:減量時や再発時に眼症状の悪化を招くため!
【眼症状】ステロイド点眼+アトロピン点眼、網膜脈絡膜炎の場合はテノン嚢下注射を追加、効果不良 or 眼炎症発作の抑制にはコルヒチン内服

★★抗リン脂質抗体症候群 APS:Antiphospholipid syndrome

疫学 30〜40代に好発。女性に多い(5:1)
病態 カルジオリピンなどのリン脂質に対する抗リン脂質抗体によって血液凝固が亢進する疾患。
抗リン脂質抗体は血管内皮細胞からvWV因子放出を促進するため血小板↓・APTT延長を起こすと考えられているが、臨床的には凝固亢進し、血栓症をきたす。
症状 ①静脈血栓症:深部静脈血栓症(DVT)→肺塞栓症
②動脈血栓症若年の脳梗塞、TIA、心筋梗塞、腸管膜動脈血栓症
③妊娠初期の習慣性流産、妊娠中期以降の妊娠高血圧症候群を生じやすい
④血小板減少
⑤末梢動脈血栓症:網状皮斑(リベド)、皮膚潰瘍
【合併症】
続発性はSLEに合併することが多い
検査 【血液検査】
血小板↓
APTT延長
・抗リン脂質抗体陽性
抗カルジオリピン抗体(aCL)(=梅毒血清反応偽陽性)
ループスアンチコアグラント(LA)
③抗β2-グリコプロテインⅠ抗体(抗β2-GPⅠ抗体)
治療 ①抗凝固療法(ワルファリン)+抗血小板療法(アスピリン)
②劇症型は血漿交換療法や免疫抑制療法を追加することがある
妊娠希望の患者にはヘパリン皮下注+アスピリン(ワルファリンは禁忌!)

★IgG4関連疾患

疫学 60代に好発。涙腺唾液腺炎を除けば男性に多い。涙腺唾液腺炎は男:女=1:1。
病態 IgG4陽性形質細胞の浸潤と線維化によって全身諸臓器の腫大・結節肥厚性病変を認める慢性炎症性疾患(原因不明のリンパ増殖性疾患)。
頭頸部 ①IgG4関連涙腺・唾液腺炎:涙腺唾液腺炎(ミクリッツ病)
②下垂体炎
③慢性甲状腺炎
消化器 自己免疫性膵炎(AIP):消化器の肝胆膵を参照
②IgG4関連肝障害
③IgG4関連硬化性胆管炎
呼吸器 ①IgG4関連呼吸器疾患
腎臓 ①IgG4関連腎臓病:主に尿細管間質性腎炎
その他 ①後腹膜線維症
②IgG4関連前立腺炎
③IgG4関連リンパ節症
症状 様々な深部病変
検査 【血液検査】
IgG4↑、半数以上はIgE↑補体価↓(CRPは正常)
【生検】
①外分泌腺における導管周囲性のIgG4陽性形質細胞の浸潤、②花筵様線維化(特徴的な錯綜配列)、閉塞性静脈炎を確認
【画像検査】
CT、MRIで病変確認
治療 ステロイドが著効

再発性多発軟骨炎(RP)

疫学 平均発症年齢は50代。男:女=1:1。
病態 全身の軟骨組織特異的に慢性かつ再発性の炎症をきたす疾患。
症状 耳介軟骨炎、鞍鼻、咽頭・気管の軟骨病変による症状
検査  
治療  

線維筋痛症 FM:Fibromyalgia

疫学 40〜50代の女性に好発、有病率約2%
病態 主に不安や恐怖による心理的要因によって下行性痛覚抑制系の破綻と考えられている。
症状 3ヶ月以上持続する激しい全身痛
②自律神経系症状:過敏性腸症候群、逆流性食道炎、過活動膀胱など
③精神神経症状:不眠・うつなど
検査 異常なし(炎症反応なし)
治療 プレガバリンやデュロキセチン(NSAIDs無効)、認知行動療法

コメント

タイトルとURLをコピーしました