便秘

症候学

便秘の概要

急性便秘 慢性便秘
4週間未満 4週間以上

ブリストル便性状スケール(BSFS1〜7)

BSFS
性状 コロコロ 硬い やや硬 普通便 やや軟 泥状便 水様便
通過時間 約100hr 約10hr

便秘の診察

①便秘症の診断

便秘症の診断基準:以下、6項目のうち2項目以上を満たす
慢性便秘症の診断:6ヶ月以上前から症状があり、最近3ヶ月間は便秘症の基準を満たす場合
排便の1/4以上の頻度で、強くいきむ必要がある
排便の1/4以上の頻度で、兎糞状便 or BSFS1〜2である
排便の1/4以上の頻度で、残便感を感じる
排便の1/4以上の頻度で、直腸肛門の閉塞感や排便困難感がある
排便の1/4以上の頻度で、用手的な排便介助が必要である(摘便、会陰部圧迫など)
自発的な排便回数が、週に3回未満である

②便秘のred flagを確認

red flagが陽性の場合、悪性腫瘍腸閉塞腸管穿孔など重症・緊急疾患の精査を行う

便の狭小化
血便
腹部膨満、強い腹痛、腹部圧痛、腹膜刺激徴候
嘔気嘔吐
体重減少(6ヶ月で10%以上)
発熱、血圧低下などのバイタルサイン変化
急性便秘で症状が増悪傾向(特に高齢者)

③便秘の原因薬剤を確認

red flagが陰性で、急性に生じた便秘は薬剤性が多い

薬品名 機序
制吐薬 グラニセトロンなど 5-HT3受容体遮断による蠕動運動抑制
抗コリン薬 アトロピンなど 蠕動運動抑制+腸液分泌抑制
抗うつ薬 三環系>四環系 抗コリン作用あり
ドパミン作動薬 抗コリン作用あり
オピオイド トラマドールなど μ2受容体刺激による蠕動運動抑制
Ca拮抗薬 ニフェジピンなど Ca細胞内流入の抑制による腸平滑筋収縮抑制
利尿薬 ループ、MRA 電解質異常に伴う腸管運動能低下
制酸薬 Al含有薬 蠕動運動抑制
鉄剤 フマル酸第一鉄 収斂作用で蠕動運動低下
NSAIDs イブプロフェン 蠕動運動抑制

④非薬剤性便秘の原因を検索

器質的 大腸癌、直腸癌、術後の腸管狭窄・イレウス、裂肛、痔核、炎症性腸疾患、直腸脱
内分泌系 糖尿病、甲状腺機能低下症、高Ca血症、低K/Mg血症、慢性腎不全
神経系 脊髄損傷、脳梗塞、パーキンソン病、多発性硬化症、慢性偽性腸閉塞
筋疾患 筋ジストロフィー
膠原病 皮膚筋炎、強皮症
変性疾患 アミロイドーシス
生活 食物繊維不足、運動不足、長期臥床など

⑤便秘のタイプを確認

①便秘型過敏性腸症候群 週1以上の腹痛・腹部不快感+便回数減少型や排便困難型の症状
②便回数減少型 週3回未満、硬便(BSFS1〜2)、腹痛・腹部不快感なし
③排便困難型 排便困難、残便感

⑥生活改善

排便スタイル変更 「考える人姿勢」「洋式トイレ足台付き」で直腸と肛門が直線へ
②運動療法 毎日30分以上の運動で便秘予防改善に効果があるかも
③FODMAP制限 便秘型IBSの人に有効

⑦下剤の選択

原因が見つからない、または原因はあるが介入が困難である場合は下剤を必要最小限処方する。

便秘型過敏性腸症候群の場合
第1選択 ①リナクロチド(リンゼス®):cGMPが神経に作用し内臓痛を改善
例)リナクロチド錠0.5mg 1回1錠 1日1回食後
②ルビプロストン(アミティーザ®):水分分泌促進
例)ルビプロストンCP24μg 1回1CP 1日2回 朝夕食後
③ポリカルボフィルCa:高分子重合体、下痢にも便秘にも効果あり
例)ポリカルボフィルCa1.5〜3.0g 分3 毎食後
第2選択 ①酸化Mgなど:大腸刺激性下剤の常用は避ける
第3選択 抗不安薬、抗うつ薬
第1選択 酸化Mg(腎機能低下、高齢者、高Mg血症では投与避ける)
ビーマス配合錠®、小児はモビコール®
第2選択 腹痛優位の便秘の場合はリンゼス®を優先
(若年女性は投与避ける)
グーフィス®、モビコール®、ラグノスNFゼリー®
レスキュー 刺激性下剤のセンノシド頓用
食物繊維不足 18g/日未満の場合、ポリカルボフィルCaやカルメロースNa

おなら

吸い込んだ空気と、腸内細菌が不溶性食物繊維を分解した際に発生したガスが混ざり、腸管から吸収されなかった1Lが分割して肛門から放出されるものがおならの正体。

乳酸菌が放出する水素やメタンなどのガスは無臭であり、おならが臭い人は乳酸菌やその餌であるオリゴ糖を摂取すると改善するかも?

宿便

宿便とは腸壁にこびり付いている老廃物。通常は見られないが、高度な便秘や大腸憩室内の便は宿便の原因となるかも?

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