パーキンソン病治療薬

薬理学

パーキンソン病治療薬

L-DOPA・ドパ脱炭酸酵素阻害薬・COMT阻害薬・MAO-B阻害薬

レボドパの作用機序 脂溶性のレボドパは投与量の10~20%が消化管から吸収され、そのうち1%が脳循環に入り、95%以上は末梢性脱炭酸酵素によってドパミンになる。ドパミンはCOMTMAOによって分解されHVAとなる。ただし、治療後3〜4年後でレボドパ誘発性ジスキネジアが80%に発症するため、レボドパ投与は70歳以上から検討する。ちなみに、ビタミンB6は脱炭酸酵素を活性化するためレボドパの作用と拮抗する。
レボドパの特徴 レボドパは無動、筋固縮には有効であるが、振戦にはやや効果が劣る(振戦には抗コリン薬)。また、うつ的な気分を改善し活力や性欲が回復し健康感が現れる。
脱炭酸酵素阻害薬の作用機序 カルビドパベンセラジドはBBBを通過できないため末梢脱炭酸酵素だけを阻害し、末梢で消費されるレボドパを減量させ、末梢でのカテコラミンによる副作用を抑制する。さらに、脳血管内皮細胞の末梢脱炭酸酵素を阻害することで、脳内への移行性を高めることができる(1%→10%に増加)。

【レボドパの副作用】

消化器症状
(悪心・嘔吐)
レボドパが末梢で代謝されカテコラミンとなり、CTZのD2刺激によって引き起こされる。D2遮断薬のドンペリドンで抑制できる。
循環器症状
(起立性低血圧、頻脈)
レボドパが末梢で代謝されカテコラミンとなり生じる。脱炭酸酵素阻害薬で多くは抑えることができる。起立性低血圧は服用数週間で耐性が生じる。不整脈・頻脈はβ遮断薬で抑制できる。
精神症状
(幻覚、せん妄)
幻覚のほとんどが幻視で、患者の多くは幻視であることに気づいている。L-dopaの減量が必要(全量投与中止は禁忌)。

【レボドパ長期服用の副作用】

不随意運動
(ジスキネジア)
レボドパの血中濃度が高いときジスキネジアが出現する。ジスキネジアは舌のこねまわし、首をねじる、腰ふりなどが混ざった複雑な不随意運動を指す。アマンタジンを追加する。
Wearing-off現象 薬効持続時間が短縮する現象。黒質の神経細胞の減少によりドパミンを蓄える神経終末が少なくなるため。1日のL-dopa投与回数を増やす、ドパミン受容体刺激薬、MAO-B阻害薬、COMT阻害薬、ゾニサミド、イストラデフィリンを追加して対応する。
On-off現象 レボドパの服用量や服用時間に関係なく症状がよくなったり、突然悪くなったりする現象。機序不明。
No-on現象
delayed on現象
レボドパの吸収障害によって、効果発現に時間を要する現象をDelayed-on現象といい、効果発現がみられない現象をNo-on現象という。
悪性症候群 レボドパを突然中止(もしくは抗ドパミン薬服用)すると、高熱、発汗、振戦、頻脈、意識障害が生じ、マネキンのように動かなくなる状態(致死的)。血液検査ではCKが著増する。詳細は抗精神病薬を参照。
一般名 先発名 特徴
レボドパ ドパストン
ドパゾール
L-DOPA
レボドパ・カルビドパ
10:1配合
ネオドパストン
メネシット
L-DOPA+脱炭酸酵素阻害薬
配合剤の方が副作用軽減できる
空腸投与用レボドパ・カルビドパ配合経腸用液 デュオドーパ L-DOPA+脱炭酸酵素阻害薬
胃瘻から専用ポンプで持続的投与できる
レボドパ・ベンセラジド
4:1配合
マドパー
イーシー・ドパール
ネオドパゾール
L-DOPA+脱炭酸酵素阻害薬
配合剤の方が副作用軽減できる
カルビドパと効果は同等
レボドパ+カルビドパ
+エンタカポン配合
スタレボ配合錠L
L-DOPA+脱炭酸酵素阻害薬+COMT阻害薬
配合剤の方が副作用軽減できる
エンタカポン コムタン錠 COMT阻害薬
オピカポン オンジェンティス錠 COMT阻害薬
セレギリン エフピー 非可逆的MAO-B阻害薬
【欠点】SSRIを併用する場合はセロトニン症候群に注意、Child-Pugh分類B以上は禁忌
【ADME】チーズの摂取により含まれるチラミンが増加し頭痛、動悸が起こりやすくなる。
ラサギリン アジレクト 非可逆的MAO-B阻害薬
【利点】非可逆的のため1日1回投与
サフィナミド エクフィナ 可逆的MAO-B阻害薬、レボドパ併用必須
【利点】1日1回投与、食事の影響ない
【欠点】Child-Pugh分類Cには禁忌

ドパミン受容体作動薬(DA)

作用機序 黒質のドパミン受容体を直接刺激する。原則非麦角系から使用する。
L-dopaより効果は弱いが、ジスキネジアを起こしにくい
副作用 麦角系:弁膜症をきたすことがあるため、定期的に心エコーする。悪心嘔吐などの消化器症状。
非麦角系:突発性睡眠、日中の過度の眠気を生じることがあるため運転などするか確認。

【麦角アルカロイド誘導体】

一般名 先発名 特徴
ブロモクリプチン パーロデル D2刺激薬
【ADME】CYP3A4阻害
ペルゴリド ペルマックス D1+D2刺激薬、L-dopaと併用必須
カベルゴリン カバサール D1+D2刺激薬
【ADME】半減期が長く1日1回投与

【非麦角アルカロイド誘導体】

一般名 先発名 特徴
タリペキソール ドミン D2刺激薬、消化器系副作用が少ない
プラミペキソール ビ・シフロール
ミラペックスLA
D2刺激薬、腎機能別投与量調節法あり。
D3刺激作用もあり抗不安作用を有する。
【ADME】腎排泄型
ロピニロール レキップ錠
ハルロピテープ
D2刺激薬、貼付剤は貼付2〜3日後に定常状態となる。
ジスキネジアや幻覚が少ない。
ロチゴチン ニュープロパッチ D1+D2刺激薬、嚥下機能低下患者に使いやすい。
アポモルヒネ アポカイン D1+D2刺激薬。唯一の注射剤で、自己注射可。進行例のレスキューに使用。
【欠点】Child-Pugh分類Cには禁忌
【ADME】皮下注20分後に効果発現、120分後には効果消失

アデノシンA2A受容体拮抗薬

作用機序 線条体と淡蒼球のA2A受容体へのアデノシン結合を阻害し、GABA神経の興奮バランスを正常に近づける。その結果、運動機能やWearing-off現象が改善する。
副作用  
一般名 先発名 特徴
イストラデフィリン ノウアリスト 非ドパミン系のため上乗せ効果が期待できる

中枢性抗コリン薬

作用機序 パーキンソン病では線条体の抑制性ドパミン作動性ニューロンが減少するため、相対的に興奮性のコリン作動性ニューロンが過剰となる。
中枢性抗コリン薬はこのコリン作動性ニューロンの興奮を減少させ、相対的にドパミン作用を優位にする。(薬効が劣るためあまり使われない)
副作用 高齢者では認知機能の低下、せん妄を起こしやすい。
一般名 先発名 特徴
トリヘキシフェニジル アーテン  
ピペリデン アキネトン  
ピロヘプチン トリモール  
マザチコール ペントナ  

ドパミン遊離促進薬

一般名 先発名 特徴
アマンタジン シンメトレル 神経終末からドパミン放出を促進する。進行例でL-DOPAやドパミン受容体作動薬と併用する。誤嚥性肺炎の予防にも使う。
【欠点】重度の腎機能障害には禁忌

ノルアドレナリン前駆物質

一般名 先発名 特徴
ドロキシドパ ドプス錠 すくみ足、起立性低血圧を改善する。すくみ足を呈する進行例でL-DOPAやドパミン受容体作動薬と併用する。

レボドパ賦活薬

一般名 先発名 特徴
ゾニサミド トレリーフ 抗てんかん薬としての常用量よりも少ない25mg11回投与で進行例の運動症状を著明に改善。ドパミン合成促進+MAO阻害+神経保護作用があると考えられている。

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