抗精神病薬、抗うつ薬、ADHD治療薬

薬理学

定型抗精神病薬

作用機序 中脳辺縁系のD2受容体を遮断して陽性症状を軽減する(鎮静作用+抗幻覚妄想作用)。また、主作用ではないが延髄CTZのD2受容体を遮断して制吐作用を示す。
副作用 ①中脳皮質系のD2受容体遮断:陰性症状の増悪
②下垂体漏斗系のD2受容体遮断:高プロラクチン血症(乳汁漏出、無月経)
③黒質線条体系のD2受容体遮断:服用数日以内なら稀に急性ジストニア(筋緊張による斜頸、舌の突き出し)、1~2か月後に錐体外路症状による薬剤性パーキンソニズムアカシジア(静座不能症)、半年以上なら不可逆性の遅発性ジスキネジア(頬・顎・舌に生じる不随意運動)を生じる。
④自律神経症状:詳細はMARTAの副作用を参照
⑤水中毒:D2遮断薬慢性服用によるSIADHによって多飲となり、希釈性低Na血症脳浮腫(水中毒)をきたすことが稀にある。
⑥悪性症候群

フェノチアジン系

フェノチアジン系はM、α1・H1遮断作用強い。

一般名 先発名 特徴
クロルプロマジン ウインタミン
コントミン
【利点】鎮静作用に優れる
【欠点】M、α1・H1遮断作用強い
レボメプロマジン ヒルナミン
レボトミン
【利点】鎮静作用に優れる
ペルフェナジン ピーゼットシー
トリラホン
 
フルフェナジン フルメジン
フルデカシン
【利点】抗幻覚妄想作用に優れる
プロクロルペラジン ノバミン  
プロペリシアジン ニューレプチル  

ブチロフェノン系

一般名 先発名 特徴
ハロペリドール セレネース せん妄によく使われる。
【利点】抗幻覚妄想作用に優れる
【欠点】強いD2遮断作用により錐体外路症状、遅発性ジスキネジアの副作用でやすい
ハロペリドール デカン酸エステル ハロマンス
ネオペリドール
 
ブロムペリドール インプロメン  
ピパンペロン プロピタン  
スピペロン スピロピタン  
チミペロン トロペロン  

ベンザミド系

一般名 先発名 特徴
スルピリド ドグマチール
アビリット
①低用量300mg/日未満:弱いうつ状態で食欲がない場合に意欲亢進作用を示す。
②高用量
鎮静作用が弱いため、過度の鎮静を避けたい場合に使う
【欠点】下垂体前葉にはBBBがないため高PRL血症を高頻度に生じる
スルトプリド バルネチール  
チアプリド グラマリール  
ネモナプリド エミレース  

非定型抗精神病薬

セロトニン・ドパミン遮断薬(SDA)

作用機序 ①中脳辺縁系のD2受容体を遮断して陽性症状を軽減する(抗幻覚妄想作用)。定型抗精神病薬に比べてD2遮断作用が弱いため、錐体外路症状が少ない。
②5-HT受容体遮断で中脳皮質系→前頭前野のD1機能亢進させ、陰性症状改善し、認知機能は阻害しない。
副作用 5-HT受容体遮断により食欲亢進→体重増加、耐糖能異常、脂質代謝異常を引き起こす。その他は定型抗精神病薬を参照。
一般名 先発名 特徴
リスペリドン リスパダール 強いD2+5-HT遮断作用のため抗幻覚妄想作用は強いが、錐体外路症状もそれなりにある。
【欠点】高PRL血症の副作用が多い
パリペリドン インヴェガ  
パリペリドン パルミチン酸エステル ゼプリオン  
ペロスピロン ルーラン 抗不安作用も併せ持つ。短時間作用型。
ブロナンセリン ロナセン  

多元受容体作用抗精神病薬(MARTA)

作用機序 α1・H1遮断による鎮静作用によって不安・焦燥や精神運動性興奮を軽減する。
副作用 ①自律神経症状
M遮断:中枢性では認知機能障害、せん妄、末梢性ではかすみ目、口喝、尿貯留、便秘など
α1遮断:起立性低血圧、過鎮静
H1遮断:眠気、食欲亢進→体重増加(満腹中枢のH1を遮断するため)
②その他は定型抗精神病薬を参照
一般名 先発名 特徴
オランザピン ジプレキサ BDNFを増加させるため双極性障害にも適応ある。
【欠点】糖尿病に禁忌、抗コリン作用
クエチアピン セロクエル
ビプレッソ
短時間作用型。鎮静作用を併せ持つためせん妄によく使われる。
【欠点】糖尿病に禁忌、抗コリン作用
クロザピン クロザリル 作用機序は不明。TDMが必要。
【欠点】糖尿病に禁忌、無顆粒球症を生じやすい(致死性)
アセナピン シクレスト  

ドパミン受容体部分作動薬(DPA)

作用機序 中脳辺縁系では拮抗薬として、中脳皮質系・黒質線状体系では部分作動薬として働くため陽性症状+陰性症状に効果があり、錐体外路症状も軽減される。
5-HT遮断作用もあるため中脳皮質系・黒質線状体系をさらに活性化する。
副作用  
一般名 先発名 特徴
アリピプラゾール エビリファイ  
ブレクスピプラゾール レキサルティ  

その他の抗精神病薬

一般名 先発名 特徴
ゾテピン ロドピン  
ピモジド オーラップ  
クロカプラミン クロフェクトン  
モサプラミン クレミン  
オキシペルチン ホーリット  

抗うつ薬 Antidepressants

三環系抗うつ薬(TCA)

抗うつ薬というより睡眠薬として使用される機会が増えた!うつ病以外にも、抗コリン作用を利用して遺尿症にも用いられる。

作用機序 シナプス前膜のモノアミントランスポーターを阻害し、NA・5-HTの神経終末への再取り込みを抑制する。その結果、シナプス間隙のNA・5-HTの量が増加し、数週間後にBDNF発現量を上昇させ、抗うつ作用を示すと考えられている。
抗うつ作用を発揮するまで早くても2週間を要するが、下記の副作用はすぐ現れる
副作用 H1、α1、M受容体遮断、電位感受性Naチャネル遮断作用も有するため副作用が多彩である。そのため心疾患患者や65歳以上の高齢者には投与しない方が望ましい
①M受容体遮断:尿閉、口喝、便秘、かすみ目(瞳孔調節障害)、眼の乾燥、頭・首・上肢の発汗
②H1受容体遮断:眠気、鎮静、体重増加
③α1受容体遮断:起立性低血圧、反射性頻脈、鎮静
④電位感受性Naチャネル遮断:不整脈(頻脈、QT延長)、けいれん
⑤セロトニン症候群:SSRIの副作用を参照
⑥悪性症候群:定型抗精神病薬の副作用を参照
一般名 先発名 特徴
クロミプラミン アナフラニール 5-HT再取込み阻害作用NA再取込み阻害作用のため抗不安・鎮静作用に優れる。
ノルトリプチリン ノリトレン  
アミトリプチリン トリプタノール NA・5-HTどちらも増加させるため最も強力
【欠点】副作用も強力
アモキサピン アモキサン  
イミプラミン トフラニール NA再取込み阻害作用>5-HT再取込み阻害作用のため意欲亢進作用に優れる。また慢性疼痛にも有効。
トリミプラミン スルモンチール  
ロフェプラミン アンプリット  
ドスレピン プロチアデン  

四環系抗うつ薬

作用機序は三環系抗うつ薬と同じ。三環系抗うつ薬と比べて副作用が弱いが、主作用も弱く、SSRIが登場してから使用されなくなってきている。

一般名 先発名 特徴
ミアンセリン テトラミド 睡眠を深くする作用があるため、うつ病患者の睡眠障害に使用される。
マプロチリン ルジオミール  
セチプチリン テシプール  

選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)

SSRIは抗うつ作用以外にも、抗不安作用を持つためパニック障害、強迫性障害、社交不安障害、摂食障害、月経前不快気分障害、PTSDなどにも効果を示す。

SSRIは効果発現までに早くて2週間、平均4週間、遅い人は6週間かかります。でも、副作用である吐き気や性機能障害は2週間以内にでます。副作用は2週間程度飲み続けていると慣れてきますので、最初2週間は服用を続けてください。」と患者に説明する必要がある。

作用機序 選択的に5-HTトランスポーターを阻害する。SSRIの反復投与によって長期間シナプス間隙に5-HTの増加が継続するとシナプス後膜の5-HT2A・5-HT2C受容体が脱感作され抗うつ作用が誘導される。
5-HT再取込み阻害作用によって抗不安・鎮静作用を示す。
副作用 標準量投与の場合と高用量投与の場合を比較しても効果に有意差はないが、副作用は用量依存的に出現する。標準量でも副作用が出現する場合には、標準量以下に減量を試みるのも良い。
賦活症候群(セロトニン症候群):稀であるが服用開始後比較的早期に5-HT過剰によって躁状態に似た焦燥、不安、不眠などを示す。若年者にイライラを認めた場合は早期に鎮静の強い抗うつ薬に切り替える必要がある(SSRI>三環系抗うつ薬)。
消化器症状:セロトニン過剰によって主に5-HT3受容体刺激し、悪心嘔吐・下痢などの消化器症状を生じる。継続服用すると徐々に軽快する。症状がひどい場合は制吐剤を併用する。
性機能障害:原因はよくわかっていないが、性欲低下、勃起不全、月経不順などをきたす。
離脱症候群:服用中止後1〜3日にめまい(最多)、ふらつき、吐き気、後頭部にピリピリした頭痛(特異的症状)、情緒不安定、抑うつ気分などの多彩な症状を呈す。半減期の短いSSRIで起こりやすい。
一般名 先発名 特徴
セルトラリン ジェイゾロフト  
エスシタロプラム レクサプロ  
パロキセチン パキシル  
フルボキサミン デプロメール
ルボックス
 

セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)

SNRIは脊髄の下行性疼痛抑制系の賦活による疼痛抑制作用もあるため慢性疼痛にも有効である。

作用機序 選択的に5-HTおよびNAトランスポーターを阻害し、抗うつ作用を示す。さらに、前頭葉ではドパミントランスポーターの発現が乏しくNAトランスポーターがドパミンの再取り込みを担っている。そのため、前頭葉のドパミン系を亢進させる。
NA・5-HT選択的再取込み阻害作用によって、抗不安・鎮静作用+意欲亢進作用を示す。
副作用 SSRIと同様の副作用を持つが、SSRIよりも軽度のことが多い。
α1刺激作用:NA過剰によって膀胱のα1刺激し、尿閉をきたすことがある。
β1刺激作用:NA過剰によって心β1を刺激し、動悸を起こすことがある。
一般名 先発名 特徴
デュロキセチン サインバルタCP 慢性疼痛にも使用される:下行性疼痛抑制系神経↑
ベンラファキシン イフェクサーSR  
ミルナシプラン トレドミン  

ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬(NaSSA)

作用機序 シナプス前膜のα2遮断によりNA・5-HTの分泌を促進させる。また、シナプス後膜の5-HT1受容体を刺激し、抗うつ作用を発揮する。
副作用 5-HT過剰による副作用はほとんどない。
①消化器症状:特に便秘が多い
②その他:口渇、倦怠感、傾眠、動悸、めまい
一般名 先発名 特徴
ミルタザピン リフレックス
レメロン
 

セロトニン再取り込み・セロトニン受容体モジュレーター(S-RIM)

一般名 先発名 特徴
ボルチオキセチン トリンテリックス  

その他の抗うつ薬

一般名 先発名 特徴
トラゾドン レスリン
デジレル
眠気の副作用があるため、不眠のあるうつ病に使いやすい。
【注意】
QT延長の副作用があるため、心電図を確認し、QTc500以下であることを確認してから投与する。

気分安定薬

カルバマゼピン、バルプロ酸、ラモトリギンの詳細は抗てんかん薬を参照。

一般名 先発名 特徴
炭酸リチウム リーマス 躁うつ病の第一選択薬。作用機序不明、マイルドな気分安定作用、薬効発現に1週間以上必要
【欠点】中毒症状回避のためTDM必要、消化器症状・手指振戦、多尿の副作用
NSAIDsやアセトアミノフェンとの併用でリチウムの排泄が阻害されるため注意が必要!
甲状腺ホルモンの放出を抑制あるいは合成を阻害するため甲状腺機能低下症の副作用を起こす。
【ADME】腎排泄型
カルバマゼピン テグレトール 強い抗躁作用
【欠点】即効性はない、抗うつ作用弱い
バルプロ酸 デパケン やや強い抗躁作用
【欠点】即効性はない、抗うつ作用弱い
ラモトリギン ラミクタール 強い抗うつ作用
【利点】妊婦に使用可
【欠点】抗躁作用弱い
モダフィニル モディオダール  
ペモリン  
メタンフェタミン ヒロポン  

ADHD治療薬

一般名 先発名 特徴
メチルフェニデート リタリン
コンサータ
 
リスデキサンフェタミン ビバンゼ  
アトモキセチン ストラテラ  
グアンファシン インチュニブ  

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