A型、B型インフルエンザウイルス(Influenzavirus)

微生物学

ウイルスの特徴

A型、B型のエンベロープ上にはヘマグルチニン(HA:赤血球凝集素)ノイラミニダーゼ(NA:シアル酸切断酵素)という2種の糖タンパク質と、 M2( A型 )・BM2( B型)という水素イオンチャネルが存在している。HAは細胞表面のシアル酸と吸着しエンドサイトーシスによって取り込まれ、酸性条件下で脱殻する。ウイルスRNAはキャップ依存性エンドヌクレアーゼによってウイルスmRNAが転写された結果ウイルス粒子が作られる。最後に細胞表面からウイルス粒子が放出されるときにNAによって結合が切断され、また新たな細胞に感染する。

  A型インフルエンザ B型インフルエンザ
自然宿主 水鳥(カモなど) ヒト
感染 トリやブタとの人畜共通感染 ヒトのみの感染
変異 変異しやすい 変異しにくい
流行 世界的大流行を起こす 地域的な流行が多い

遺伝子再集合(リアソートメント)

遺伝子再集合とは、1つの細胞に2種類のウイルス株が感染したとき、分節RNAをシャッフルする現象である。その結果、遺伝に相違したウイルスが生成され、新しい抗原を持つことを抗原シフト(抗原不連続変異)という。この現象のためA型インフルエンザウイルスに対する抗体ができにくくパンデミックを起こしやすい。

流行性感冒 Influenza

【学校保健安全法】

出席停止期間 発症後5日経過し、かつ、解熱2日経過するまで登校停止
例:1/1発症 発症後5日間(1/1-1/6)、解熱日が1/5なら1/5-1/7なので1/8から登校可!
疫学 冬に流行。小児(特に5〜9歳)罹患率が高い
病態 飛沫感染によって上気道に感染する。
症状 1~2日間の潜伏期間を経て高熱・咽頭痛・咳(ほぼ必発)・関節痛・筋肉痛などの症状を呈する。
高齢者・小児では肺炎(原因菌:肺炎球菌>インフルエンザ桿菌>ブドウ球菌)を合併することがある。
また、小児ではインフルエンザ脳症Reye症候群(肝細胞のミトコンドリア障害と脂肪変性を特徴とする急性脳症の1亜型)、中耳炎、クループ症候群、熱性痙攣などを合併することもある。
検査 【抗原検査】
鼻咽頭粘膜の拭い液で抗原検査
治療 48時間以内にノイラミニダーゼ阻害薬を投与。投与5日後には上皮が入れ替わってウイルスがほぼ排除される。
NSAIDsはライ症候群(脂肪肝、脳炎)を起こす可能性があるためアセトアミノフェンを使う。ただし、イブプロフェンだけはインフルエンザに対して安全に使用できる。
予防 不活化ワクチンを皮下接種するが、粘膜免疫を誘導できないため感染予防効果はなく流行を阻止できないが、血中IgG抗体産生を誘導できるため重症化を防ぐ効果はある。

高病原性鳥インフルエンザウイルス

2類感染症。

【病態】ウイルスにはトロピズムがあり、通常のA型インフルエンザウイルスの場合、気道や腸管の粘膜上皮細胞から分泌されるプロテアーゼ(トリプシン)によってHAが活性化して 感染能力を獲得する。他方、高病原性のA型インフルエンザウイルスの場合、全身の細胞内に存在するプロテアーゼ(フリン)により活性化するため、気道や腸管の粘膜上皮細胞以外の臓器にも感染することができ、全身で増殖して重篤な症状を引き起こす。

コメント

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