小児の感冒
病態 | 発熱:20%以下に認め、多くは5日以内に軽快 咳嗽:50%前後で認め、1〜2週間続く 鼻汁:60〜70%で認め、5日すると軽快するが、1〜2週間続く場合もある 鼻閉:60〜90%で認め、1〜2週間続く |
併存 | 副鼻腔炎:高熱+膿性鼻汁 気管支炎:咳がひどい、百日咳やマイコプラズマの可能性も考慮 中耳炎:耳漏、耳痛があり、鼓膜発赤あり 肺炎:咳症状 |
感冒症状の3C
Common | 風邪、インフルエンザ、副鼻腔炎、扁桃腺炎、中耳炎 |
Critical | 扁桃周囲膿瘍、喉頭蓋炎、肺炎、気管支炎、気胸、喘息、心筋炎、心筋梗塞、レジオネラ |
Curable | 溶連菌感染、結核、亜急性甲状腺炎 |
感冒の診察
感冒は主に感染によって生じる上気道を中心とした急性炎症総称。
<原因:80%以上がウイルス>
成人:ライノV(最多)、コロナV、パラインフルエンザV、アデノVなど
小児:RSウイルス、パラインフルエンザV、アデノVが多い
夏風邪:アデノV、コクサッキーV、エコーV
その他:細菌、寒冷、アレルギーなど
①3領域の症状を確認
症状 | 咳嗽・鼻汁・咽頭痛(嚥下時痛)が急性に同時期に出現し、同程度の症状があるか? |
YES | ●典型的風邪型(ウイルス性上気道炎) |
受診のタイミングが早すぎると3系統揃っていない場合あり | |
喀痰という主訴は鼻汁のことが多い | |
●インフルエンザの症状(シックコンタクトが明確なら検査不要) 咳嗽・鼻汁・咽頭痛以外に関節痛や筋肉痛、咽頭後壁にイクラ様濾胞 |
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●COVID-19の症状 咳嗽・鼻汁・咽頭痛以外に関節痛や筋肉痛、味覚・嗅覚障害 |
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処方 | 咳嗽)デキストロメトルファン15mg 1日3回 |
鼻汁)フェキソフェナジン60mg 1回1錠 1日3回 | |
咽頭痛)アセトアミノフェン or ロキソプロフェン頓服 | |
NO | 咳嗽、鼻汁、咽頭痛のどの症状が優位か? |
②鼻症状メイン型(鼻汁>咳嗽・咽頭痛)
概要 | 多くはウイルス性副鼻腔炎だが、0.5〜2%に細菌性副鼻腔炎の合併がある。 通常2〜3日で症状はピークアウトするが、これを超えても鼻症状が悪化する、もしくは症状がいったん軽快してから悪化する場合は細菌感染を疑う。 上顎洞・篩骨洞では典型的な副鼻腔炎症状をきたすが、前頭洞や蝶形骨洞の副鼻腔炎では感冒症状や後鼻漏が見られず、頭痛も頭頂部痛など非典型像を呈する場合がある。 ![]() |
① | ●急性細菌性副鼻腔炎の疑いで抗菌薬治療が必要な場合(原則画像検査は不要) ①非常に強い片側性の頬部や前額部の疼痛・腫脹、発熱がある場合 ②鼻炎症状が7日以上持続、かつ、頬部痛と頬部圧痛、膿性鼻汁がある場合 |
一般例) ・アモキシシリン250mg 1回2CP 1日3回 5〜7日分 ・カルボシステイン500mg 1回1錠 1日3回 5〜7日分 ・鼻炎に対して抗アレルギー薬など 再発・重症例) ・オグサワ 1日3回 5〜10日分 |
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② | 上記症状ほど症状が強くない場合、ウイルス性副鼻腔炎として対症療法 |
●ウイルス性副鼻腔炎の症状 ①片側性の頬部や前額部の疼痛・腫脹、発熱:上顎洞や前頭洞の炎症 ②膿性鼻汁、鼻閉、後鼻漏→湿性咳嗽、咽頭痛 |
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一般例) ・ビラスチン(ビラノア®)20mg 1日1回 空腹時 ・ディレグラ®配合錠 1回2錠 1日2回 朝夕食前 |
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③ | 主に鼻汁、鼻閉のみの場合 |
●血管運動性鼻炎(非アレルギー性鼻炎)の症状 ・寒暖差、飲酒、ストレスなどが誘因で、鼻汁、鼻閉が生じる |
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●アレルギー性鼻炎の症状 ・花粉やハウスダストなどアレルゲンが誘因で、鼻汁、鼻閉、目の掻痒感が生じる |
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一般例) ・ビラスチン(ビラノア®)20mg 1日1回 空腹時 ・モメタゾン(ナゾネックス®)点鼻50μg 各鼻腔に2噴霧1日1回 |
③喉症状メイン型(咽頭痛>鼻汁・咳嗽)
概要 | 多くはウイルス性咽頭炎だが、約10%はA群溶連菌性咽頭炎 |
① | ●咽頭痛のred flagに該当する場合、5 killer sore throatの鑑別へ 咽頭所見のない咽頭激痛、流涎、声の変化、嚥下困難、開口障害 |
② | ●A群溶連菌性咽頭炎の疑いで抗菌薬治療が必要な場合 ①強い咽頭痛や左右のどちらかが痛い咽頭痛 ②38度以上の高熱がある(38度以上になる前に受診する場合も多い) ③圧痛を伴う前頸部リンパ節腫脹(リンパ節腫脹は明瞭に触れることは少ない) ④白苔を伴う扁桃発赤(実際に認めるのは半数以下) ⑤咳や鼻汁症状が乏しい ⑥過去にも扁桃腺炎を繰り返している ⑦15歳未満 上記症状が複数ある場合はストレップテストを検討 ※ただし、アデノウイルスも上記を満たしやすく、結膜充血・眼脂なども確認 |
一般例) ・アモキシシリン(サワシリン®)250mg 1回4CP 1日1回 10日分 伝染性単核球症が否定できない場合) ・セファレキシン(ケフレックス®)500mg 1日2回 10日分 ペニシリンアレルギーの場合) ・クラリスロマイシン200mg 1日2回 10日分 |
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③ | ●ウイルス性咽頭炎の症状 「咳嗽時に増悪、起床時に強い、食後に軽快する」咽頭痛、鼻汁、軽度の咳嗽 |
咽頭痛)アセトアミノフェン or ロキソプロフェン頓服 | |
④ | ●伝染性単核球症の症状 咽頭痛、腹部膨満(肝脾腫)、後頸部〜全身リンパ節腫脹、扁桃腫大、白苔 →採血で異型リンパ球、肝機能、VCA-IgM、CMV-IgMを確認 |
一般例)対症療法→1週間後フォロー(完全な解熱・肝機能正常化は1ヶ月程度かかる) 重症例)アシクロビル+プレドニゾロンを考慮(入院?) |
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⑤ | ●亜急性甲状腺炎の症状 咽頭痛(甲状腺の圧痛)、痛みの部位が移動、耳の下の疼痛 →採血でTSH↓T4↑、TRAb陰性 |
咽頭痛)ロキソプロフェン、改善乏しければプレドニゾロン5mg6錠を1日1回漸減 亢進症状)プロプラノロール(インデラル®)10mg 1回1錠 1日3回 →1週間後フォロー、甲状腺機能は1〜2ヶ月はフォロー |
④咳症状メイン型(咳嗽>咽頭痛・鼻汁)
概要 | |
① | ●肺炎を疑う症状 ①突然の悪寒を伴う発熱と咳嗽(胸膜痛を伴う場合もある) ②ニ峰性の発熱 ③寝汗:38度以下の微熱でも高齢者や肺の基礎疾患がある人の寝汗 →胸部CT、採血、肺炎球菌・レジオネラ尿検査、喀痰培養(入院の場合は血液培養も) |
A-DORP0点) ・オグサワ 1日3回 3〜4日分(内服なくなる頃に再受診) ・セフトリアキソン2g点滴 |
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② | ●細菌性気管支炎の症状 肺炎を疑う症状はあるが胸部X線で所見のないもの |
治療は肺炎に準ずる | |
③ | ●ウイルス性気管支炎の症状 慢性肺疾患のない人の急性咳嗽で、肺炎や副鼻腔炎を疑う所見がないもの |
④ | ●マイコプラズマ肺炎の症状 若年者の乾性咳嗽、頭痛、咽頭痛、耳痛 →LAMP法でのPCR |
一般例)アジスロマイシン250mg 1回2錠 1日1回 3日間 耐性菌)ミノサイクリン100mg 1回1錠 1日2回 7日間 |
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⑤ | ●感染後咳嗽の症状 先行する咽頭痛の後、夜間の咳嗽、後鼻漏が1週間程度で出現 |
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