乳房外Paget病のポイント
| 所見 | 外陰部だけでなく、腋窩、肛門、会陰、臍周囲全て診察する |
| 外用 | 二次性に湿疹などで境界不明瞭になるため、外用塗布して再度診察する |
| 生検 | 診断や病変の広がりだけでなく、原発性か続発性かを鑑別するために必要 |
乳房外Paget病の診察
病態・症状
| 疫学 | 高齢者に好発、皮膚癌の約10%を占める |
| 概要 | アポクリン腺由来の表皮内に生じる癌で、表皮内に拡大することが特徴 |
| 原発性 | アポクリン汗器官細胞から生じた腺癌と考えられており、パジェット細胞が表皮内を水平方向に増殖する。病変は同時多発性、異時多発性に生じる特徴もある。進行して基底膜を破壊したもの乳房外Paget癌(浸潤病変を伴う乳房外Paget病)といい、病変部に小腫瘤を触れる。進行例では所属リンパ節転移を認め、予後不良となる。 |
| 続発性 | 皮膚に隣接する臓器の癌(膀胱癌、子宮癌・膣癌、直腸肛門癌)が上皮内を移動して表皮へ到達して表皮内癌の所見を呈するものを続発性乳房外Paget病(Paget現象)という。 |
| 部位 | 外陰部>>>腋窩、肛門、会陰、臍周囲 |
| 症状 | 掻痒:二次性に湿疹・皮膚炎やカンジダ症をきたし、境界不明瞭な病変を形成する |
身体所見
好発部位(腋窩、臍周囲、外陰部、肛門、会陰)は全て確認すること!
| 視診 | 境界明瞭 or 境界不明瞭な湿疹様紅斑、びらんや周囲のメラニン沈着を伴う場合あり |
男性外陰部の乳房外Paget病![]() |
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女性外陰部の乳房外Paget病![]() |
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肛門の乳房外Paget病![]() |
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腋窩の乳房外Paget病![]() |
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乳房外Paget癌![]() |
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| 触診 | 進行例では一部隆起して硬い浸潤や結節を触れる、所属リンパ節腫脹あればエコー追加 |
ダーモスコピー
特徴的な所見はなく、メラノーマやボーエン病などを除外する目的が大きい

乳房Paget病との違い
乳房Paget病と乳房外Paget病は、病態が全く異なっている。
| 乳房Paget病 | 乳房外Paget病 |
| 下床の乳腺組織内に乳癌を伴って、その乳癌が乳管から乳頭や乳輪に広がったもの | 深部に癌組織を伴わない表皮内癌で、外陰部、腋窩、肛門、臍周囲に生じる |
乳房外Paget病の診断
外用処置
二次性に湿疹・皮膚炎やカンジダ症をきたし、境界不明瞭な病変を形成する場合があるため、適切な外用塗布を行ってから病変の境界を確認する。
生検(mapping biopsy)
| ①確定診断 | 確定診断のための生検は腫瘍の最も隆起したところやびらん・潰瘍部から行い、真皮層への浸潤の程度を検討する。 |
| ②境界確認 | 適切な外用処置を行っても病変の境界が不明瞭な症例においては、切除範囲を決定するため、臨床的に境界とされるところから周囲放射状に1 cm 外側を複数箇所生検し、病変の広がりを把握する(mappimg biopsy)。また、女性外陰部や肛門周囲に生じた病変の粘膜側、主病巣から離れた不完全脱色素斑などについては肉眼的な判断が難しいので積極的にmapping biopsy を行うことが多い。 |
腫瘍が外尿道口、膣、肛門に近い場合には、粘膜への浸潤と続発性乳房外Paget病の有無を診るために、各臓器専門科に診察と生検を依頼する。
【免疫染色による鑑別】
原発性乳房外パジェット病と続発性乳房外パジェット病の鑑別にはGCDFP15とCK20が有用である(推奨度B)。

センチネルリンパ節生検
リンパ節転移の有無は重要な予後因子であることから、真皮内浸潤を認める乳房外パジェット病に対してリンパ節転移の有無を判断するために施行を考慮してもよい(推奨度C1)。
センチネルリンパ節生検の結果、リンパ節転移陽性であったとしても、予防的リンパ節郭清後の生命予後改善は認められておらず勧められない(推奨度C2)。また、両側に複数の鼠径リンパ節転移がある場合、両鼡径の根治的郭清を含む外科的根治術は勧められない。ただし、両側に1 個ずつなど根治可能と考えられる場合や、出血などに対する緩和治療としての外科的治療はその限りではない(推奨度C2)。
画像検査
転移(所属リンパ節が最多)と内臓悪性腫瘍の合併を検索するため行う
| CT | |
| MRI | |
| エコー | リンパ節腫脹がある場合、炎症性腫脹か転移病変か判断するために有用 |
他科依頼の検査
外尿道口周囲、膣壁から膣前庭部、肛門周囲にPaget病変を認める症例(続発性乳房外Paget病疑い)に対しては、膀胱鏡、子宮鏡、直腸肛門鏡などによる精査が勧められる(推奨度B)。
血液検査
内臓転移を生じた乳房外パジェット病の進行期症例では血清CEA 値の測定を考慮してもよい(推奨度C1)。原発巣が浸潤癌となって大きな腫瘤を形成した場合や転移巣がある場合、血清CEA値は上昇を認めることがある。また、治療による腫瘍の退縮に伴い血清CEA 値は低下する。したがって、内臓転移を生じた進行例では血清CEA 値は病勢の評価や治療効果の判定の参考になる場合がある。
鑑別診断
| 湿疹・皮膚炎 | |
| カンジダ症 | |
| 股部白癬 | |
| Bowen病 | |
| Hailey-Hailey病 | |
| 増殖性天疱瘡 |
乳房外Paget病の治療
外科的切除
| 切除範囲 | 境界明瞭な場合、腫瘍辺縁より1cmの正常皮膚を含む範囲 |
| 境界不明瞭な場合、腫瘍辺縁より2〜3cmの正常皮膚を含む範囲 | |
| ※現実的には、尿道粘膜や直腸肛門粘膜側では排尿・排便機能の温存を考慮して切除マージンが決定されることが多い(腫瘍断端から十分な正常粘膜をつけなくても術中迅速検査などで断端陰性が確認できれば良い) | |
| 切除深度 | 病変が表皮内に留まる場合、皮下脂肪層深部で切除 |
| 病変が真皮内へ浸潤している場合、筋膜レベルで切除 | |
| 浸潤癌の場合、切除は深層の括約筋含めた全層に至り、人工肛門や尿路変更が必要 | |
| リ郭清 | 腋窩の場合、病巣とリンパ節が近いため病巣切除とリンパ節郭清を一塊として行うのが望ましい。外陰部の片側性リンパ節転移の場合はリンパ節郭清を行う? |
切除後再建術
切除後の欠損は縫縮できないことが多く、植皮や皮弁を行う
| 男性外陰部 | 精巣筋膜や深陰茎筋膜が温存されることが多いため分層植皮術が可能 |
| 女性外陰部 | 皮下脂肪組織が残存しても皮弁移植術を考慮 |
| 肛門粘膜部 | 同上 |
| 腋窩部 | 皮下脂肪組織の残存程度により植皮術と皮弁術を使い分ける |
放射線療法
手術不能の乳房外Paget病患者に対する根治的放射線療法の意義は確立していないが、症状緩和のための姑息的治療として放射線療法は勧められる(推奨度B)。
※手術不能:高齢者、臓器合併症、認知症、手術拒否、病変が広範囲に及ぶ浸潤、手術後の再発
乳房外パジェット病に対して術後補助療法としての放射線療法が有益であるか否かは不明であり勧められない(推奨度C2)。様々な理由により手術的に切除が不可能な部分が残存した場合には症例に応じてその適応を悪性腫瘍を専門とする皮膚科医と放射線治療専門医とともに検討する。
光線力学的療法(PDT:photodynamic therapy)
高齢等の理由で手術が困難なIn situ の乳房外Paget病原発巣に対して緩和治療として施行を考慮してもよい(推奨度C1)。
イミキモド外用
高齢等の理由で手術が困難なIn situ の乳房外Paget病原発巣に対して緩和治療として施行を考慮してもよい(推奨度C1)。
乳房外Paget病の術後
局所再発
乳房外Paget病は以下の理由から一般的に局所再発率が高いとされている。
| ① | 部位的特殊性による生理的色素沈着により腫瘍の境界がわかりにくい |
| ② | 多中心性に病巣が存在する傾向がある |
| ③ | 一見正常にみえる周辺部分にも組織学的にパジェット細胞が存在している |
予後
| 原発性乳房外Paget病 | 多くは表皮内癌であり手術などにより良好な予後が得られる |
| 続発性乳房外Paget病 | 多くはその臓器に浸潤癌が存在しており、予後不良なことが多い |
術後フォロー
乳房外Paget病の術後経過観察法に関するエビデンスは存在しない。術後5 年間は3~6 カ月毎に、その後は半年~1 年毎のペースがよいというエキスパート・オピニオンが提唱されている(推奨度C1)。乳房外Paget病は多発病変のため、フォローでは治療部位以外の好発部位も診察すること。
術後化学療法
遠隔転移を生じた進行期の乳房外Paget病患者に対して有効な化学療法は確立していないが実施を考慮してもよい(推奨度C1)。
乳房外Paget病のリンパ節転移陽性例に対する術後補助化学療法の有益性に関するエビデンスはなく、勧められない(推奨度C2)。







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