眼窩の解剖
| 眼窩内側壁 | 前頭骨・涙骨→篩骨→眼窩漏斗部→視神経管 |
| 眼窩下壁 | 上顎骨→口蓋骨眼窩突起 |
※涙骨は生来欠損している場合があり、整復しても強度的には眼窩内容保持に寄与しない

調子わるいね、学校の教頭!

眼窩骨折の診察
| 病態 | 前方からの鈍的外力により眼窩内圧が上昇し、脆弱な眼窩内壁や下壁が破綻、または、眼窩下部の打撲により眼窩下壁が破綻する骨折。眼窩骨折のうち7割弱が眼窩底骨折。![]() |
| 分類 | 骨折のタイプは2つに大別される![]() |
| 症状 | ①眼窩底部型:上転時に増強する複視・眼球上転障害(下直筋の嵌頓・陥入) ②眼窩内側型:外転時に増強する複視・眼球内転外転障害(内直筋の嵌頓・陥入) ③悪心:Linear骨折などで下直筋が直接絞扼し、迷走神経刺激により生じる ④眼球陥没:腫脹を伴う急性期では評価困難であり患者は病識に乏しい傾向 その他、眼窩下神経領域(V2)の知覚異常、眼内疼痛、眼瞼腫脹、鼻出血など ※視力低下は眼球破裂や眼窩先端症候群の可能性があり早急に眼科コンサルト ![]() |
| 検査 | 【画像所見】 頭部CT: ●眼窩底骨折①眼窩底骨折の有無:線状の骨折(Linear骨折)に下直筋が嵌頓していないか、浮腫や阻血により下直筋の膨隆像や消失(missing rectus sign)がないか、眼窩下管や溝に骨折があるか(眼窩下神経領域の確認) ②下直筋逸脱の有無③眼球陥凹の有無(2mm以上なら手術適応) ④副鼻腔液体貯留の有無(液体貯留なければ新鮮骨折の可能性低い) ●眼窩内側壁骨折 ①眼窩内側壁骨折の有無(あれば前・後篩骨孔に骨折があるか) ②内側直筋逸脱の有無 ③眼窩気腫(眼窩内側壁骨折に伴い、視神経の虚血や網膜中心動脈閉塞の発症に関与すると言われている→鼻をかまない、飛行機の利用控える) |
| 治療 | 【緊急手術】 ①強度の眼球運動制限と複視 ②若年者のLinear骨折に伴う複視 ③CTにて明らかな下直筋の絞扼所見(下直筋の膨隆像や消失) ④眼球迷走神経反射を伴う若年者眼窩底骨折 |
| 【手術適応】受傷2〜3週間以内に行う ①上記以外の複視が受傷7日〜14日待機しても改善傾向に乏しい場合(早期治療が複視継続の頻度を下げる) ※逸脱があっても複視を認めていない場合は必ずしも手術適応ではない ※眼窩下神経障害のみの場合は手術適応ではない ②経過観察後に、2mm以上の眼球陥没があり患者希望がある場合(審美的問題) ③画像上で眼窩内容の逸脱量が多く眼球陥凹を呈する可能性が高い場合 |
眼科的診断
| 眼科への依頼文 | #右眼窩内側壁骨折 平素より大変お世話になっております。 ●月●日受傷の眼窩内側壁骨折の方です。 HESS、両眼単一視野検査、ヘルテル検査をお願いいたしますとともに、眼球表面・眼内の評価を貴科的にご高診の上、よろしくお願いいたします。 |
| ①Hess chart | 両眼の眼球運動の評価 |
| ②Diplopia field | 両眼単一視野検査とも言う。機能的複視の発生の評価 |
眼窩内側壁骨折
術前インフォームドコンセント
| ① | 眼球運動障害の改善には時間を要する場合もある |
| ② | 眼球運動障害や眼球陥没が術後も完治しない場合もある |
| ③ | 視神経の近くを操作するため失明のリスクがある |
| ④ | 術直後は外眼筋が腫脹して複視が生じる可能性あるが、数日で軽快してくる |
| ⑤ | 鼻を1ヶ月かまない |
内眼角の経皮アプローチによるORIF
| 特徴 | 最も馴染みのあるアプローチで手技的にも簡便 |
| 利点 | 涙囊があるため移植骨片の固定が不要、内側壁には視神経管まで骨のでっぱりない |
| 欠点 | 涙囊が視野の妨げとなる |
| 事前 | CTで骨折部位と視神経までの距離を測定しておく |
| 準備 | 吸収性プレート(スーパーフィクソーブシート or ネオフィックス)、5-0ナイロン糸×2、4-0ナイロン糸、6-0PDS糸、7-0ナイロン糸、脳べら、35mm付近に布テープでマーキングしたエレバラスパ |
| 消毒 | 両側眼部で比較観察するため術野は両眼と鼻が出るくらい確保する |
| ① | セッシで強膜をつかみ、強制牽引試験(Forced Duction Test)を行い、他動的に外眼筋の嵌頓があるか確認する。 |
| ② | 眼窩カーブに沿って約20mmの切開デザインをするが、内眼角靱帯の3〜4mm頭側に5mm程度の三角弁を入れる。局麻を注射後、皮膚切開を開始する。眼輪筋まで切開し、皮弁は眼輪筋の筋層下で挙上する。![]() ※切開を頭側に延長しすぎると滑車上神経損傷の恐れがある ![]() |
| ③ | 皮下剥離を進め、内眼角靱帯まで鈍的に剥離する。内眼角靱帯の内外側にマーキングの5-0ナイロン糸かけ、靱帯の中央で離断する。![]() |
| ④ | 内側に走る眼角動脈(顔面動脈の最先端の枝)をよけ、靱帯停止部と前涙囊陵の間で骨膜をメスで切開し、眼窩内へ入る。左手に吸引管を持ちつつ、エレバラスパを用いて骨膜下を剥離する。涙囊は涙囊窩の全周から鼻涙管の入り口まで骨膜下を剥離する。![]() |
| ⑤ | 眼窩縁から視神経管まで40〜45mmあることを意識する。まず、前頭篩骨縫合を確認しながら剥離すると眼窩縁から20〜25mmのところの前頭骨に前篩骨孔があり、その孔から前篩骨動脈が現れる。前篩骨動脈をバイポーラで焼灼する。前篩骨孔の10mm後方にある後篩骨孔から後篩骨動脈が現れる。後篩骨動脈をバイポーラで焼灼したら、これ以上奥には進まない(10mm後方に視神経管があるため)。剥離は欠損部の周囲から攻めていき、欠損の全体像をつかむようにする。篩骨洞に入り込んでいる眼窩脂肪を脳ベラで眼の方へ押さえながら進んでいく。![]() |
| ⑥ | 欠損部全体を確認できたら、吸収性プレートを適切な形に切り、内側壁に置く。![]() |
| ⑦ | 5-0ナイロン糸で骨膜同士をマットレス縫合し、内眼角靱帯を再建する![]() |
| ⑧ | 筋層の皮下縫合を行い、7-0ナイロン糸で皮膚縫合を行う![]() |
| 術後 | 安静度は両眼視がきちんとできるようになってからフリー |
| 処置は創部にタリビット眼軟膏を塗布 | |
| 術後、眼球陥凹が残像する場合、患者と相談し脂肪移植術を検討 | |
| 術後、瞼が下がった場合、患者と相談し眼瞼下垂術を検討 | |
| 術後、二重のラインが変わった場合、患者と相談し重瞼術を検討 |
経結膜アプローチによるORIF
経皮アプローチより難易度が高い
眼窩底骨折(眼窩下壁骨折)
アプローチ

術後合併症
球後出血
| 疫学 | かなり稀 |
| 病態 | 眼球後方での後出血によって眼球が圧排され、視力障害をはじめとする重篤な症状を呈する疾患。失明を免れるためには発症後早期に減圧が必要とされている。 |
| 症状 | 視力低下、激しい眼痛など |
| 所見 | 視診:術後に進行する眼球突出 |
| 検査 | 頭部・顔面CT |
| 治療 | 開創して血腫除去 |
術後管理
| ① | 冷却した濡れガーゼで覆い、一晩程度適宜新しいガーゼと交換する |
| ② | 角膜炎予防のため、眼軟膏や抗菌薬点眼を1週間程度行う |
| ③ | 術後1週間で抜糸、術後3ヶ月ほどテーピング |
| ④ | 術後1ヶ月は鼻をかむの禁止 |
| ⑤ | コンタクトスポーツは1ヶ月半控え、複視の改善を確認しながら徐々に復帰する |
術後眼球運動リハビリ
リハビリは①5円玉運動(振り子運動)か②追視運動どちらかを実施
| 開始時期 | 術後1〜3日目から開始 |
| 頻度 | 1時間に1回、1回5分程度のリハビリを術後少なくとも1ヶ月行う |
| 振り子運動 | 仰向けになり、眼前60cmに5円玉を吊す。上下、左右、斜めに動かし、特に複視の強い方向を中心に行う。顔を動かさず両目のみを動かして、5円玉を追う。 |
| 追視運動 | 目の前に指を置き、顔を動かさず両目のみを動かして、指のみをゆっくりと最大限動かす。上下、左右、斜めに動かし、特に複視の強い方向を中心に行う。 |



●眼窩底骨折
②下直筋逸脱の有無








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