錠剤などの粉砕について
規格や剤形を粉砕しての調剤はPL法(製造物責任法)の対象となるため、確認した上で粉砕すること。また、患者にとっては粉砕料金が追加されるためその点も伝えておくこと。嚥下能力低下、嚥下困難、経管栄養などの患者が粉砕の適応となる。
【粉砕時の問題点】
対策 | |
①物理化学的安定性に影響 | 【吸湿性】密閉容器+乾燥剤で保存 【激しい吸湿性】粉砕せずに懸濁化を検討 【光】遮光 【温度】冷蔵保存 【口腔内崩壊錠】吸湿性が高いため粉砕不可(粉砕しなくても唾液で溶ける) |
②薬物動態や薬効に影響 | 【徐放製剤】投与量・投与回数を変更 【腸溶剤】粉砕不可 |
③感覚器へ影響 | 【味覚・嗅覚】オブラート使用、甘味剤の添加 |
④調剤上の影響 | 【配合剤】配合割合が変化する可能性があるため粉砕不可 【調剤】抗癌剤やホルモン剤粉砕により調剤者が接触・吸引するため粉砕不可 |
【粉砕方法】
乳鉢・乳棒で粉砕 | 一包化されている場合は袋の上から砕き、服用前に篩過する。 |
粉砕器を使用 | 加熱による変性に注意して回転数と回転時間を調節する。 |
固形製剤
剤形 | 説明 | 利点 | 欠点 |
錠剤 | 医薬品を一定の形状に圧縮したもの。素錠、糖衣錠、フィルムコーテイング錠、多層錠、有核錠がある。 | 医薬品含量が正確。苦味などを感じにくい。 | 嚥下能力低下者には不向き。 |
OD錠 | 口腔内で速やかに崩壊させて服用する錠剤。D錠とも言う。 | 水なしでも服用できるため、嚥下能力低下者◎ | |
舌下錠 | 舌下で速やかに溶解し、口腔粘膜から吸収される錠剤。 | 薬効発言が早い。 | |
チュアブル錠 | 噛み砕いて服用する錠剤。 | 噛み砕かず誤飲して窒息する場合がある。 | |
トローチ剤 | 口中で徐々に溶解させて口腔・咽頭などの局所に適用する錠剤。 | ||
バッカル剤 | 下臼歯と頬の間に錠剤を入れ、口腔粘膜から徐々に吸収させる錠剤。 | 舌下錠より持続的な効果が得られる。 | |
カプセル剤 | 医薬品をカプセルに充填したもの。腸溶性、徐放性などの特殊なカプセルもある。 | 苦味などを遮断できる。医薬品の放出を調節できる。 | 嚥下能力低下者に不向き。カプセルが熱や水分で変形しやすい。 |
顆粒剤 | 医薬品を粒状にしたもの。 | 飛散性が少ない。付着・凝集性が低く、流動性が良い。 | 散剤と混合時に均一にならない。 |
散剤 | 医薬品を粉末状にしたもの。 | 薬効発現が早い。投与量を調節できる。嚥下能力低下者に適する。 | 苦味や不快臭がある医薬品には適さない。服用時に流動性が悪い場合がある。 |
経口フィルム剤 | 口腔内で速やかに溶解させて服用するフィルム状製剤。 |
【固形製剤に用いられる添加剤】
賦形剤 | 主薬のかさを増す | 乳糖などの糖類 |
結合剤 | 混合粉末に結合力を加える | カルメロースNa、ゼラチン、HPC、HPMC |
崩壊剤 | 服用後に崩壊させやすくする | デンプン、セルロース |
滑沢剤 | 錠剤製造時に臼や杵への付着を防ぐ | ステアリン酸~、タルク、硬化油 |
コーティング剤 | 薬剤の表面を覆う | 白糖、HPC、HPMC、マクロゴール |
着色剤 | 識別のため | レーキ色素、食用色素 |
矯味剤 | 不快な味をやわらげる | 白糖などの糖類 |
半固形製剤
軟膏剤
適当な稠度の全体的に均質な半固形状の外用剤。
【疎水性基剤】
油脂性基剤 | 鉱物性 | ワセリン、パラフィン、プラチベース、シリコーン |
油脂性基剤 | 動植物性 | 植物油、豚脂、ロウ、単軟膏 |
【親水性基剤】
乳剤性基剤 | 水中油型 (o/w型) |
親水軟膏、バニシングクリーム |
乳剤性基剤 | 油中水型 (w/o型) |
水性ワセリン、精製ラノリン、吸水軟膏、 加水ラノリン、コールドクリーム、親水プラチベース |
水溶性基剤 | ー | マクロゴール軟膏 |
懸濁性基剤 | ヒドロゲル基剤 | 無脂肪性軟膏 |
懸濁性基剤 | リオゲル基剤 | FAPG基剤 |
パップ剤
医薬品の粉末と精油成分を含み泥状または布の上に延ばして成形した外用剤。
利点:患部の保護、保温、保冷に優れる。
貼付剤
布またはプラスティック製フィルムなどに延ばし、皮膚に粘着させて用いる外用剤。
リニメント剤
軟膏とローションの中間の稠度を持ち、皮膚に刷り込んで用いる外用剤。
坐剤
肛門または膣に適用する固形の外用剤。
利点:坐薬は直腸下部・中部の粘膜から吸収されると初回通過効果を回避できる。
エアゾール剤
医薬品を液化ガスまたは圧縮ガスの圧力によって用時噴霧して使用するもの。
液状製剤
剤形 | 説明 | 利点 | 欠点 |
液剤 | 液状の製剤。 | 嚥下しやすい。 | |
エキス剤 | 生薬の浸出液を濃縮・乾燥したもの。 | ||
エリキシル剤 | 甘味および芳香のあるエタノールを含む澄明な液状の内服剤。 | ||
酒精剤 | 揮発性医薬品をエタノールまたはエタノール+水の混液で溶かした液状の製剤。 | ||
芳香水剤 | 精油または揮発性物質をほとんど飽和させた澄明な液剤。 | ||
シロップ剤 | 白糖などの甘味剤を含む医薬品を濃稠な溶液にした液状の内服剤。 | ||
懸濁剤・乳剤 | 医薬品を液中に微細均等に懸濁または乳化した液状の製剤。 | ||
リモナーデ剤 | 甘味と酸味があり、澄明な液状の内用剤。 | 変性しやすいため用時調整する。 | |
ローション剤 | 医薬品を液中に溶解し皮膚に塗布する外用剤。 |
無菌製剤
注射剤
体内に直接投与することを目的としたもの。
懸濁性注射剤は血管内・脊髄腔内への投与不可。乳濁性注射剤は脊髄腔内への投与不可。
点眼剤
結膜嚢に適用する液剤。
眼軟膏剤
結膜嚢に適用する軟膏剤。
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