糖尿病網膜症 DR:Diabetic retinopathy
疫学 | 糖尿病患者の15%に発症。糖尿病の罹患期間とHbA1c値は網膜症発症と有意な相関がある。 |
①単純網膜症期 | 糖尿病では、細小血管の炎症により血管が狭窄してVEGFが産生される。その結果、網膜血管の血管透過性が亢進し、網膜浮腫が起こり、浮腫消退後に血漿成分が網膜に沈着して境界鮮明な硬性白斑ができる。毛細血管内皮細胞変性により毛細血管瘤や網膜出血(点状 or 火炎状)が起こる。 |
②増殖前網膜症期 | 次に、細小血管の内皮細胞が炎症によるアポートシスを起こし管腔を閉塞するため網膜無血管野が拡大する。その結果、視神経の虚血により境界不明瞭な軟性白斑ができる。網膜無血管野の周辺では側副血行路が形成され、細小血管の蛇行や拡張による網膜内細小血管異常が見られる。 |
③増殖網膜症期 | 虚血によりVEGF産生が亢進し、無血管野周囲や乳頭上に血管新生が起こる。新生血管が硝子体に向かうに伴い線維血管性増殖膜が形成される。その膜が収縮すると牽引性網膜剥離を起こし、脆い新生血管が破綻して網膜前及び硝子体出血を起こし、最終的に失明に至る。また、運悪く隅角に新生血管ができた場合(虹彩ルベオーシス)は血管新生緑内障となる。 |
症状 | 初期:自覚症状なし 末期:飛蚊症、視力低下など(増殖網膜症期) |
検査 | フルオロセイン蛍光眼底造影(FA):無血管野を確認 網膜電図(ERG):初期から律動小波の減弱がみられる 光干渉断層計(OCT):黄斑浮腫や網膜剥離を確認 |
病期分類まとめ
病期 | 単純網膜症(軽症) | 増殖前網膜症(中等症) | 増殖網膜症(重症) |
病態 | 血管透過性亢進 | 細小血管の閉塞 | 血管新生 |
眼底 写真 |
網膜浮腫、硬性白斑、毛細血管瘤、網膜出血(点状・火炎状) | 軟性白斑、静脈異常、網膜内細小血管異常、網膜無血管野 | 網膜・乳頭上新生血管、網膜前・硝子体出血、線維血管性増殖膜、牽引性網膜剥離 |
造影 所見 |
毛細血管瘤:造影剤が溜まり白い点 | 網膜無血管野:造影剤が流れない | 新生血管:径口不同な血管が見られる |
治療法 | ①血糖・血圧・脂質コントロールを行い血管透過性を抑制 ②トリアムシノロンアセトニドをテノン嚢下注射、抗VEGF薬を硝子体内注射 ③黄斑浮腫に局所光凝固 |
無血管野に汎網膜光凝固 (網膜の酸素需要を減少させ血管新生を抑制) | 汎網膜光凝固 硝子体出血や牽引性網膜剥離 がある場合は硝子体手術 |
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