緑内障の概要
失明の原因第1位。眼圧による視神経圧迫や視神経乳頭の循環障害によって、網膜の神経節細胞のアポトーシスが起こると考えられている不可逆的な疾患。
緑内障の分類
開放隅角緑内障 | 約80% | 40歳以上の有病率5% | 抗コリン薬使用可 |
閉塞隅角緑内障 | 約10% | 40歳以上の有病率0.5% | 抗コリン薬禁忌 |
続発緑内障 | 約10% |
原発閉塞隅角症→急性緑内障発作
疫学 | 50歳以上の女性に好発 |
病態 | 非発作時でも前房は浅く、狭隅角になっている(PAC)。そのため、房水の排出不良で慢性的な高眼圧から緑内障になる場合もあれば、何らかの原因(検査で抗コリン薬を使用など)で隅角が閉鎖され、急激に高眼圧を呈する急性緑内障発作になる場合もある。 |
症状 | 発作時に激しい眼痛、視力低下(必発)、悪心・嘔吐、虹輪視(多くは片眼性) |
検査 | 視診:結膜・毛様充血、瞳孔左右差(患側の瞳孔散大)、角膜混濁、患側の対光反射減弱 触診:発作時に瞼の上から押さえると患側が石のように硬い |
初期 治療 | ①ピロカルピン(サンピロ®)点眼:10分ごとに頻回に点眼、高濃度の方が良い ※発作がおさまればピロカルピン点眼を1日4回程度に減らして良い ②マンニトール300mL点滴 ※上記で発作がおさまらない場合は眼科で外科的処置となる |
治療 | 白内障のある高齢者は、水晶体を削り眼内レンズに変えることで前房が深くなり眼圧が低下するため、白内障手術が根治術となる |
原発開放隅角緑内障(正常眼圧緑内障を含む)
疫学 | 40歳以上で有病率5%。家族歴や近視はリスク因子。正常眼圧緑内障が約90%。 |
病態 | 線維柱帯〜シュレム管の排泄機能低下が原因で眼圧が上昇する。 神経病変のみで、視野障害がないものを、前視野緑内障(PPG)という。 |
症状 | 初期は無症状、あっても眼精疲労。 進行すると視野欠損:傍中心暗点→Bjerrumブエルム暗点(弓状暗点)→鼻側階段→求心性視野狭窄の順に進行して徐々に自覚する。 |
検査 | ①眼圧検査:21mmHg以上、眼圧日内変動が10mmHg以上は緑内障を疑う ②トノグラフィー:房水流出率の低下がみられ、0.1以下は緑内障を強く疑う ③眼底検査:視神経乳頭が陥凹拡大+蒼白化(陥凹/乳頭=C/D比の拡大)、網膜神経線維層欠損、乳頭出血を認める。最近はOCTで評価し、初期病変検出にも有用。 ④視野検査:GoldmannかHamphrey視野検査によって視野異常の進行の程度を確認。 ⑤誘発試験:飲水負荷(6mmHg以上↑)、うつぶせ試験、散瞳試験など |
治療 | 【薬物療法】 眼圧降下薬の点眼を単剤から開始する(目標12mmHg前後)。単剤で効果が不十分な場合には多剤併用する。点眼でも眼圧が下がらない場合は手術を行う。 【手術】 ①線維柱帯切除術(強膜に瘻孔形成)+マイトマイシンC局所塗布(線維芽細胞増殖抑制)→高齢者、緑内障中期以降 ②線維柱帯切開術(シュレム管流出路を再建)→若年者、緑内障初期〜中期 ③毛様体破壊術(房水産生を抑制する毛様体を破壊する最終手段) |
続発緑内障
ぶどう膜炎起因性緑内障 | 炎症による房水中タンパク質の増加により線維柱帯が詰まる、または虹彩周辺部が隅角に癒着(周辺虹彩前癒着)によって流出抵抗が増大する。 |
血管新生緑内障 | ①網膜中心静脈閉塞症、②増殖糖尿病網膜症、③内頸A狭窄症で網膜が虚血になるとVEGF産生により虹彩にも新生血管が生じる(虹彩ルベオーシス)。その結果、新生血管が隅角に発生すると房水流出が阻害され眼圧上昇を引き起こす。現在は抗VGEF薬の誕生で以前より大幅に改善されてきた。 |
落屑緑内障 | グリコサミノグリカンなどの落屑物質が加齢と共に増加し、心・肺に蓄積する落屑症候群に見られる緑内障。落屑物質が線維柱帯に沈着して眼圧が上昇し、症状進行が早い。瞳孔内に白い落屑物質が見える。遺伝的要因が大きい(血縁に緑内障患者がいる)。 |
ステロイド緑内障 | ステロイドの内服・点眼の長期連用によって線維柱帯に細胞外マトリックスが異常蓄積して房水流出抵抗を増加させる。特に、ステロイドを眼の周囲に塗布する小児に多く発症していたため、眼の周囲はタクロリムス軟膏などに変更するなどの配慮が必要。早期であればステロイド中止で眼圧戻る。 |
発達緑内障(小児緑内障)
疫学 | 1〜2歳の男児に好発 |
病態 | 胎生期の隅角形成不全によって起こる緑内障。 |
症状 | 眼圧上昇による角膜膨張(牛眼)、角膜混濁、流涙 |
検査 | 【眼底写真】視神経乳頭の拡大 |
治療 | 治療は隅角切開術や線維柱帯切開術を行う |
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