眼科総論・各論

眼科
  1. 眼の解剖・生理
    1. 角膜(黒目の部分)・強膜(白目の部分)・水晶体
    2. ぶどう膜
    3. 網膜
    4. 房水路・眼圧
    5. 涙路
    6. 眼窩
    7. 眼瞼の筋
    8. 眼球運動(外眼筋)
    9. 眼の血行支配
    10. 反射
  2. 眼科の用語
  3. 症候
    1. ★夜盲(鳥目)
    2. 色覚異常(色盲・色弱は差別用語!)
    3. 飛蚊症
    4. 眼球運動障害 Ocular motility disorder
  4. 検査
    1. 視力検査
    2. 調節力検査(他覚的視力検査)
    3. 視野検査
    4. 眼底検査
    5. 眼圧測定
    6. その他の検査
  5. 視機能障害
    1. 弱視 Amblyopia
    2. ★★(共同性)斜視 Strabismus
  6. 眼瞼疾患
    1. 眼瞼内反(逆まつげ)
    2. 麦粒腫(ものもらい)
    3. 霰粒腫
    4. 眼瞼腫瘍
  7. 結膜疾患・涙器疾患
    1. 涙囊炎
    2. 乾性角結膜炎(ドライアイ)
    3. ★感染性結膜炎
    4. アレルギー性結膜疾患
    5. 結膜下出血
  8. 角膜疾患
    1. 角膜欠損する疾患総論
    2. 円錐角膜
    3. ★感染性角膜炎
    4. 匐行性角膜潰瘍(ふっこうせい)
    5. 水疱性角膜症
    6. 電気性眼炎(雪目炎)
    7. 翼状片
    8. 角膜ジストロフィ
  9. ぶどう膜炎(内眼炎)
    1. 虹彩毛様体炎(前部ぶどう膜炎)
    2. 網膜脈絡炎(後部ぶどう膜炎)
    3. サルコイドーシス
    4. ★Vogt-小柳-原田病 (VKH病)=浦島太郎病!?
    5. ベーチェット病
  10. 水晶体疾患
    1. 老視(老眼)
    2. ★白内障
  11. 緑内障 Glaucoma
    1. 原発開放隅角緑内障 POAG(正常眼圧緑内障を含む)
    2. ★原発閉塞隅角症 PAC→急性緑内障発作(急性原発閉塞隅角緑内障)
    3. ★続発緑内障
    4. 発達緑内障(小児緑内障)
  12. 網膜疾患
    1. ★網膜静脈閉塞症
    2. ★網膜動脈閉塞症
    3. 網膜色素変性症 Pigmentary retinal dystrophy
    4. ★中心性漿液性脈絡網膜症 CSC:Central serous chorioretinopathy
    5. ★(滲出性)加齢黄斑変性症 AMD:Age-related Macular degeneration
    6. 黄斑円孔・黄斑上膜(黄斑前膜)
    7. 網膜剥離 RD:Retinal Detachment
  13. 視神経疾患
    1. 乳頭浮腫・うっ血乳頭
    2. 視神経炎 Optic neuritis
    3. 虚血性視神経症
  14. 全身疾患と眼病変
    1. 糖尿病網膜症 DR:Diabetic retinopathy
    2. 高血圧性網膜症
  15. 眼外傷
    1. 眼窩壁骨折(吹き抜け骨折)

眼の解剖・生理

眼球の眼軸長(前後径)は成人で約24mm
光の通過する角膜→水晶体→硝子体は無血管組織である

角膜(黒目の部分)・強膜(白目の部分)・水晶体

  5層構造 機能
角膜   光を屈折させる(約40D)。角膜は血管がないため、酸素は上皮側から、栄養や水分は内皮側から角膜実質に供給される。
紫外線のほとんどは角膜で吸収される→電気性眼炎を起こしうる!
  角膜上皮 再生能あり。重層扁平上皮。眼神経(三叉N)が多数分布。
角膜輪部上皮の基底細胞に角膜上皮の幹細胞が存在する。
  ボウマン膜 再生能なし。機能は不明。
  角膜実質 再生能ほぼなし。主成分は1型コラーゲン。角膜厚の90%を占める。
LASIK手術はこの層まで削る。
  デスメ膜 再生能あり。角膜内皮の基底膜に相当する。
  角膜内皮 再生能なし。Naポンプ機能によって角膜実質→前房へ水を汲み出して透明性維持。内皮細胞400m㎡以下に減少すると角膜浮腫となり失明する。
長期のコンタクトレンズ装用でも内皮細胞が減少する。
強膜   眼球内容の保護・形状維持。強膜はテノン嚢に包まれており、眼球が滑らかに動けるのはこの膜のおかげ。強膜の前方は結膜に覆われている。
水晶体   毛様体筋によって厚さを調節され、光を屈折させる(約20D)。
上皮細胞と線維細胞から構成。線維細胞は20歳頃から水晶体核を形成し、老化すると硬化して白濁する。
角膜を通過した残りの紫外線のほとんどは水晶体で吸収される→白内障を起こしうる!

ぶどう膜

ぶどう膜は血管が豊富なため炎症が起こりやすい。

  機能 特徴
虹彩 光量の調節(瞳孔径調節)※
瞳孔径は2〜5mm
 
毛様体 ①房水産生
②水晶体の厚さ調節☆
毛様体扁平部から硝子体注射や硝子体手術する!
脈絡膜 ①網膜へ酸素と栄養供給
②含メラニンで眼球内を暗化
網膜と脈絡膜の間にBruch膜がある。
加齢によりはBruch膜は肥厚する。

※副交感N興奮(動眼N)→瞳孔括約筋収縮→縮瞳、交感N興奮→瞳孔散大筋収縮→散瞳
☆副交感N興奮(動眼N)→毛様体筋(ミュラー筋)収縮→チン小体弛緩→水晶体肥厚→近くを見る

網膜

  10層構造 機能
網膜   網膜は光を感じ取り、その映像が網膜に倒立像として映し出される。
光は錐体・桿体→双極細胞→神経節細胞として眼球内から出て、その後視神経→視交叉→視索→外側膝状体→視放射→視覚中枢へと達する。
  脳層 内境界膜〜外網状層までの6層が存在し、双極細胞、神経節細胞などが存在する。脳層は網膜中心動脈によって栄養されている。
  神経上皮層 最下層の網膜色素上皮層はロドプシン→レチナール+オプシンの代謝、BBBと同様の機能を持つ。その上の視細胞層から発生学的に異なるため網膜剥離ではここで剥がれる。視細胞層には錐体と桿体が存在し、光を感じ取っている。神経上皮層は脈絡膜動脈によって栄養される。
  視細胞 錐体:色覚、視力、明所視に関与。黄斑部に多い。
杆体:視野、暗所視に関与。網膜周辺部に多く、黄斑部には存在しない。
【明順応】
杆体に含まれるロドプシンは、明るい場所に行くと光によってレチナール(ビタミンA)とオプシンに分解される。その結果、杆体の感度が低下して光に鈍感になり、明るい場所に慣れてくる。ちなみに、アントシアニンはロドプシンの再合成を促進すると言われている。

房水路・眼圧

房水は毛様体無色素上皮で産生され、無血管組織に栄養する。その後、大部分は隅角のシュレム管から静脈へ吸収される(房水路の詳細は眼科薬の緑内障治療薬を参照)。

眼圧は正常(10~21mmHg未満)で、交感神経亢進により上昇する。例えば、眼圧(=房水産生)は交感神経が亢進する午前中高く、夜間に低くなる。また、瞳孔散大や毛様体弛緩により狭隅角となり眼圧上昇となる。21mmHg以上は高眼圧症という。老化とともに房水産生量は減少傾向。

涙路

涙腺は眼窩内に存在し、眼球表面の洗浄や殺菌を行う。涙路は眼科薬の角膜治療薬を参照。

眼窩

調子るいね、学校教頭先生!

眼瞼の筋

支配神経 支配筋 動き 障害
顔面神経 眼輪筋 閉瞼作用 顔面神経麻痺によって兎眼となる
動眼神経 上眼瞼挙筋 開瞼作用 筋力低下により眼瞼下垂となる
交感神経 瞼板筋 開瞼作用 Horner症候群で眼瞼狭小となる

眼球運動(外眼筋)

支配神経 支配筋 動き 障害(複視で来院する!)
動眼神経 上直筋 上転、内転(外上視) ①動眼神経麻痺によって外転優位になる
  下直筋 下転、内転(外下視) ②動眼神経麻痺によって眼瞼下垂する
  内直筋 内転(内視) ③動眼神経麻痺によって対光反射・輻輳反射が消失する
  下斜筋 上転、外転(内上視 ④動眼神経麻痺によって散瞳する
外転神経 外直筋 外転(外視) 外転神経麻痺によって内転する
滑車神経 上斜筋 下転、外転(内下視 滑車神経麻痺によって外上視する→代償的に斜に構える頭位をとる

眼の血行支配

内頸A→眼A→網膜中心A(網膜)、長・短後毛様A(脈絡膜)

反射

角膜反射 角膜に刺激→三叉神経V1→眼神経→顔面N核(橋)→顔面N→眼輪筋→閉眼となる。
輻輳・調節反射 急に寄り目をすると両眼内転(輻輳反射)と縮瞳(調節反射)が同時に起こる(近見反応)。これらは対光反射とは異なる経路で起こるが詳細は不明。
対光反射 眼に光を当てた時に瞳孔が収縮する反射。詳細は脳神経総論を参照。

眼科の用語

正視 焦点が網膜にある状態
近視 焦点が網膜よりもにある状態(レンズで矯正)
遠視 焦点が網膜よりも後にある状態(眼球が未発達な小児に多い)
乱視 焦点が1点に集まらない状態(角膜の歪みで生じ、円柱レンズで矯正)
羞明 通常では苦痛にならない程度の光を、異常に眩しく感じる状態
原因疾患:白内障、虹彩毛様体炎など
変視症 物が歪んで見える状態(網膜脈絡膜病変が原因)
原因疾患:加齢黄斑変性症、黄斑上膜、黄斑円孔、中心性漿液性脈絡網膜症、糖尿病黄斑症、網膜剝離、網膜静脈分枝閉塞症など
光視症 光が当たっていないのに、視野に光が飛んで見える状態
原因疾患:網膜剥離、網膜裂孔、糖尿病網膜症、偏頭痛の閃輝暗点

症候

★夜盲(鳥目)

病態 網膜の杆体の機能障害のより暗いところで見えにくい状態。
先天性進行性夜盲:網膜色素変性症(最多)←慢性に進行する!
先天性停止性夜盲:小口病
後天性夜盲:ビタミンA欠乏症
症状 暗いところで見えにくい
検査 【視野検査】
進行性夜盲・後天的夜盲:視野の狭窄がみられる(先天的停止性夜盲は正常)
【網膜電図】
電位が低下あるいは消失により夜盲を確認

色覚異常(色盲・色弱は差別用語!)

病態 先天性赤緑色覚異常が大半を占める。これはX染色体劣性遺伝で、日本人男性の約5%にみられる。現在小学校で色覚検査を実施し、将来の職業選択の補助となっている。
検査 スクリーニング検査:仮性同色表
確定診断:アノマロスコープ

飛蚊症

病態 硝子体〜網膜に混濁があるため黒い影が見え、眼球運動により影が移動する病態
原因 硝子体出血(糖尿病など)、加齢による硝子体混濁(生理的飛蚊症)、後部硝子体剥離→網膜剥離

眼球運動障害 Ocular motility disorder

検査法:Hess赤緑試験で眼位図のずれを認める(麻痺筋を特定する試験)。外眼筋麻痺があれば提示された赤色の指標と緑色のポインタの位置にずれが生じる。ずれが最も大きくなる部位が麻痺筋と特定できる。

  障害部位 詳細
核上性麻痺
(中枢性)
Ⅲ、Ⅳ、Ⅵ脳神経核より上 【水平注視麻痺】
被殻出血など前頭葉病変の場合は患側を向き、小脳出血などの脳幹病変は健側を向く。共同偏視の時は複視なし。
【垂直注視麻痺】
中脳背側の血管障害により輻輳障害と上下注視麻痺を呈する中脳背側症候群(Parinaud症候群)が出現する。
MLF症候群 Ⅲ、Ⅳ、Ⅵ脳神経核
(橋)
の右MLFが障害されると、左を見るとき右眼内転障害+左眼眼振を生じる(右MLF症候群)。
核麻痺 Ⅲ、Ⅳ、Ⅵ脳神経核より下 【動眼神経麻痺】散瞳、眼瞼下垂、外斜視を呈する。動脈瘤や糖尿病性虚血などが原因。
【滑車神経麻痺】上斜筋障害のため正面視では複視が生じる。そのため患者は健側に頭を傾けており、患側に頭を傾けると患側眼球が上転する(Bielschowsky頭位傾斜試験陽性)。治療は斜筋減弱術を行うことが多い。

検査

視力検査

小児の屈折検査では調節麻痺剤(アトロピン、シクロペントラート)を点眼して行う。

Landolt環 切れ目を5mの距離で判読(視力0.1以上を測定)
指数弁 検者が出した指の数を数える(Landolt環測定不能な場合)
手動弁 検者の手の動きを見る(Landolt環測定不能な場合)
光覚弁 光の点滅を判別(Landolt環測定不能な場合)
赤緑視標 自覚的屈折検査の矯正の強さの判断として行う。赤がはっきり見える場合は低矯正、赤と緑が同程度見えていれば適切な度数で矯正できており、緑がはっきりと見える場合は過矯正であることが分かる。
乱視視標 どの線が濃く見えるか、どの線がぼやけて見えるかによって乱視軸を決定する。

【矯正視力の記載方法】

①RV=②0.08(③1.2④×s−4.00D⑤〓cyl-0.75D Ax180°)
レンズの屈折力⇨ジオプトリー(D)=1/焦点距離m(f) 例:1D=焦点距離1m

どの種類のレンズを加えても視力が全く改善しない場合、矯正不能の(n.c.)と記載する。

RV(ラテン語はVd):右眼、LV(ラテン語はVs):左眼
裸眼視力
矯正後視力
④球面成分 ×は1枚目のレンズ前に記載。矯正に使用した球面レンズ(s)の度数。マイナスは近視を意味し、球面凹レンズを用いる。(ちなみに凸レンズは遠視用)
⑤円柱成分 〓は2枚目のレンズ前に記載。矯正に使用した円柱レンズ(cyl)度数+その軸の角度。マイナスは近視性の乱視を意味し、円柱凹レンズを用いる

調節力検査(他覚的視力検査)

アコモドメーター
オートレフラクトメータ
(気球を見る検査)
調節力(屈折力)を自動的に解析する。
調節力(D)=1/近点距離(m)-1/遠点距離(m)≒1/近点距離
例:-2Dの場合、網膜の前方1m/2(D)=0.5mでピントが合う
※調節力とは、物体の距離変化による網膜像のぼけを最小限に保つ、眼球のオートフォーカス機能のこと。近点屈折力と遠点屈折力の差で表すことができる。調節力は45歳頃から約3D低下し老眼を自覚する。

視野検査

    適応疾患
対座検査 被験者の検査眼を固視させ、検者の両手を用いて調べる。
動的視野計測 Goldmann視野計を用い、等感度線を書く。
周辺視野異常を検出する。
網膜色素変性症、緑内障、頭蓋内腫瘍での視野障害
静的視野計測 Humphrey視野計を用い、視野内の網膜感度を量的に測定する。中心視野異常を検出する。 緑内障初期
中心視野計測 Amslerチャート(碁盤の目)でスクリーニングし、Humphrey視野計で量的解析を行う。 変視症、暗転の有無
加齢黄斑変性症など

※中心視野:中心窩を中心とした30°以内の視野

眼底検査

  詳細
細隙灯顕微鏡+散瞳薬 前眼部(結膜→角膜→前房→虹彩→隅角→水晶体→硝子体)を観察。
フルオレセイン染色法:角膜・結膜上皮の欠損部分の染色
ローズベンガル染色法:角膜・結膜の障害部位や死滅した部位の染色
リサミングリーン染色法:ローズベンガル染色法と同様だが、ローズベンガルより刺激が少ない。
細隙灯顕微鏡+Goldmann三面鏡 前眼部+隅角→硝子体→網膜を観察。
眼底鏡(直像鏡) 眼底を観察。散瞳の必要がなく、明るい場所でできるため簡便に使用でき、眼科医以外が用いることが多い。大きく見えるため視神経乳頭や黄斑部を詳しく診察する場合に行う。欠点は視野が狭い。
眼底鏡+凸レンズ(倒像鏡) 眼底を観察。立体的に観察でき、広範囲に見流ことができる。欠点は暗室で行い、使い方が難しく、倒立像で見える。
蛍光眼底造影(FA)
赤外蛍光眼底造影(IA)
【フルオロセイン(赤色)】
黄斑部を除く網膜の循環状態が描出されるため、網膜の新生血管・浮腫(血液網膜関門の破綻のため)を観察しやすく、VKH病糖尿病網膜症中心性漿液性脈絡網膜症うっ血乳頭の診断に有用。
主に腎臓から排泄される。
【インドシアニングリーン(緑色)】
脈絡膜血管の循環状態が描出されるため、加齢黄斑変性の診断に有用。
主に肝臓から胆汁(グリーンは胆汁の色)へと排泄される。
光干渉断層計(OCT) 近赤外光を用いて網膜10層や脈絡膜の断面を確認。
OCTアンギオグラフィー
(光干渉断層血管撮影)
造影剤を使用せず、網膜・黄斑部の血管の状態を評価
漏出は確認できないため蛍光眼底造影と完全に置き換えることは×

【眼底の異常所見】

眼底出血をきたす代表的な疾患:糖尿病網膜症,高血圧性網膜症,網膜中心静脈閉塞症,網膜静脈分枝閉塞症,加齢黄斑変性,白血病などの血液疾患,腎性網膜症,SLEなど

  意義 疾患
硬性白斑 浮腫の退縮→脂質などが沈着したもの 糖尿病網膜症、高血圧網膜症
軟性白斑 虚血→神経の浮腫 糖尿病網膜症、高血圧網膜症、SLE
滲出斑 炎症性細胞の浸潤 サルコイドーシス、ベーチェット病
ドルーゼン 多発する小白点、疣状肥厚 高齢者、加齢黄斑変性
硝子体出血 網膜出血が硝子体に流入 糖尿病網膜症、くも膜下出血に続発

眼圧測定

Goldmann圧平眼圧計 最も信頼度が高い。細隙灯顕微鏡に取り付けられているGoldmann圧平眼圧計を角膜に当て眼圧を測定する。
トノペン、アイケア 携帯用の簡易圧平眼圧計。
非接触式圧平眼圧計 角膜に空気を吹きつけた際の凹み具合を計測。

その他の検査

スペキュラーマイクロスコープ 角膜内皮細胞数を測定。白内障手術前などに行う
中心フリッカー試験 固視標を点滅させて、ちらつきを感じなくなった時のその点滅の頻度をフリッカーと言い、神経の感度を測定する。
網膜電図(ERG) 角膜表面にコンタクトレンズ型電極を載せ、光刺激によって網膜活動電流の変化を記録。
①網膜色素変性症:波は全て消失
②糖尿病網膜症:律動様小波の消失
視覚誘発電位(VEP) フラッシュ光や指標などの視覚刺激をしたときの脳波を測定する検査。視路のどこに異常があっても視覚誘発電位は異常を示す。
Schirmer試験 直接涙液分泌量測定。10mm以上で正常。
ローズベンガル染色試験 間接涙液分泌量測定
フルオレセイン染色試験 角膜の損傷部位が蛍光緑色を発する

視機能障害

弱視 Amblyopia

病態 視力が完成するまでの期間に視覚刺激が不足して発症する小児の視力発達障害。通常、3ヶ月くらいから目が見え始め、3歳児検診半数以上が視力1.0以上となる。
【原因】
屈折異常遠視、乱視 によってピントが合わず視力が発達しにくい(最多)
斜視:斜視のある目は中心窩で固視できず視力が発達しない。特に、調節性内斜視の場合はメガネをかけて両眼を使わせる(手術は禁忌)。
不同視左右で2.0D以上の屈折異常に差がある場合、屈折異常の強い眼が使われず視力が発達しにくい。⇒遮蔽法によって健眼にアイパッチをつける。
形態覚遮断:先天眼瞼下垂、先天性白内障などによって物を見れない期間が長くなり視力が発達しない。すぐに手術を検討。
検査 視力検査
治療 弱視治療のタイムリミットは12歳前後と言われている。

★★(共同性)斜視 Strabismus

病態 片目の偏位により両眼視機能(両目を同時に使う能力)が障害された状態で、外眼筋麻痺はない(外眼筋の麻痺によって起こるものは麻痺性斜視という)。ちなみに遮蔽検査で偏位があるものの遮蔽を外すと戻るものを斜位といい、両眼視機能に問題はない。
①内斜視
乳児内斜視:生後6ヶ月以内に発症し、内転位をとる。
調節性内斜視:2〜3歳で発症し、遠視が原因で、過度の輻輳が生じる。
②外斜視
間欠性外斜視:普段は眼位が正位であるが、疲れたとき・体調が悪いとき・眠いときなどに外斜視が生じやすい。視力は正常。
③上下斜視
下斜筋過運症、交代性上斜位など
症状 複視
検査 遮閉検査、屈折検査、視力検査など
治療 【調節性内斜視】
完全矯正眼鏡を装用し、無効なら手術(or プリズム眼鏡追加)
【調節性内斜視を除く斜視】
①手術療法: 例えば、転術:外眼筋を弱める縮術:外眼筋を強める
②注射:外転筋麻痺にはボトックス注射する。

眼瞼疾患

眼瞼内反(逆まつげ)

病態 眼瞼が眼球側に湾曲し、まつ毛が角膜に接触する疾患。
症状 異物感、羞明、流涙、悪化すると角膜障害をきたすこともある
治療 睫毛抜去、睫毛電気分解。眼瞼を糸で修正、眼瞼切開などの手術がある。

麦粒腫(ものもらい)

グラム陽性球菌の黄色ブドウ球菌を参照。

霰粒腫

病態 マイボーム腺の慢性炎症性肉芽腫。鑑別に眼瞼脂腺癌が重要。
症状 ①眼瞼皮下に半球状の無痛性硬結
検査 【生検】
高齢者で再発性のものは脂腺癌の可能性を排除するために行う。
治療 ステロイド局所注入、結膜面切開による内容掻爬

眼瞼腫瘍

悪性腫瘍 基底細胞癌
(95%)
眼瞼悪性腫瘍で最多。下眼瞼に好発。悪性度は低く、転移はしない。
黒色の隆起で、中央に潰瘍や陥凹を伴う。
  扁平上皮癌
(2%)
眼瞼結膜より発生。上眼瞼に好発。
病理診断で眼瞼腺癌との鑑別が困難。
  脂腺癌
(まれ)
上眼瞼のマイボーム腺から発生。無痛性。遠隔転移が多い。
霰粒腫と鑑別が必要(50歳以上で、再発性の霰粒腫の場合要注意!)
  有棘細胞癌
(まれ)
眼瞼悪性腫瘍の数%と少ない。上眼瞼に多い。
  悪性黒色腫
(まれ)
悪性度高い。

結膜疾患・涙器疾患

涙囊炎

病態 鼻涙管閉塞によって涙囊に肺炎球菌、ブドウ球菌などが感染した疾患。
炎症が涙囊壁を越えて涙囊周囲の蜂窩織炎まで進展する場合もある(急性涙囊炎)。
症状 ①片側性の流涙・眼脂
蜂窩織炎まで進展している場合:内眼角部の発赤、腫脹、疼痛、発熱
検査 涙道洗浄:涙囊からの貯留物の逆流を認める
涙液培養:起因菌の同定
治療 抗菌薬を添加した生理食塩水で涙道を洗浄
蜂窩織炎まで進展している場合:抗菌薬内服、涙道ブジー、切開排膿
難治の場合:涙囊鼻腔吻合術(涙囊の内側壁に骨窓を作り鼻腔への流出路を作成)

乾性角結膜炎(ドライアイ)

疫学 リスク因子:女性、加齢、シェーグレン症候群、コンタクトレンズ装用、VDT作業
病態 角膜と結膜が乾燥することで炎症を起こした状態。
重症例では点状表層角膜症、角膜びらんが起こる。
自己免疫機序が関与するものとしてシェーグレン症候群がある(口腔内乾燥・関節痛)。
症状 乾燥感、異物感、眼精疲労など様々
検査 【細隙灯顕微鏡検査】
フルオロセインなどの染色:BUT(涙液層破壊時間)パターンがBUT5秒以下
【シルマー試験】
5mm以下で、涙液分泌の低下を確認
治療 BUTパターン(tear break up time:角膜からの涙液蒸発時間)のに合わせた点眼薬
温罨法、VDT作業が長い人はドライアイ眼鏡、重症例では涙点プラグによる涙道閉塞。

★感染性結膜炎

  原因病原体 特徴
ウイルス性結膜炎 アデノウイルス3型・8型
エンテロウイルス70型
コクサッキーウイルスA群
漿液性眼脂をきたす、濾胞形成※
耳前リンパ節腫脹あり
眼痛あり、伝染性強い
細菌性結膜炎 緑膿菌、ブドウ球菌、
肺炎球菌、セラチア、
クラミジア淋菌
膿性眼脂をきたす
耳前リンパ節腫脹はケースバイケース
眼痛なし、伝染性弱い

※濾胞性結膜炎:濾胞(結膜に粟粒大で半円形の透明な水疱様のもの)ができる結膜炎

アレルギー性結膜疾患

  アレルギー性結膜炎 春季カタル(VKC) 巨大乳頭結膜炎(GPC)
病態 花粉やハウスダストなどを抗原とするI型アレルギー疾患。 重症のアレルギー性結膜炎で、型アレルギー疾患。アトピー素因を持つ男児に多い。 コンタクトレンズに付着した蛋白質の汚れを抗原とするI型アレルギー疾患。
症状 結膜充血、掻痒、少量の眼脂 激しい掻痒、異物感、眼脂、重症化で角膜潰瘍 アレルギー性結膜炎と同様
検査 眼脂を検鏡して好酸球を検出(確定診断) 上眼瞼結膜に石垣状乳頭増殖(眼瞼型) 上眼瞼結膜に乳頭増殖(春季カタルより小さい)
治療 抗アレルギー薬点眼
重症はステロイド点眼
抗アレルギー薬点眼
重症はステロイド点眼・タクロリムス点眼
コンタクトレンズ使用是正
抗アレルギー薬点眼
重症はステロイド点眼

結膜下出血

病態 結膜下の血管が破綻。原因は、
①外傷:眼打撲など
②急性結膜炎:急性出血性結膜炎、流行性角結膜炎
③全身性疾患:動脈硬化、高血圧、DM、腎炎、紫斑病など出血性素因
④急性熱性疾患:インフルエンザなど
症状 結膜を塗りつぶしたように出血が広がる
治療 経過観察:出血が多い場合であっても必ず吸収されるため

角膜疾患

角膜欠損する疾患総論

  欠損部位 主な疾患
点状表層角膜炎 角膜上皮の一部が欠損 ドライアイ、電気性眼炎、感染性
角膜びらん 角膜上皮の脱落が広範囲に多発 同上
角膜潰瘍 角膜実質まで達したもの(白色化) 同上
※水疱性角膜症 角膜内皮の減少 緑内障、ぶどう膜炎、眼内術後

円錐角膜

病態 角膜中央部が薄くなり、進行性に円錐状に膨隆してくる疾患。原因は不明。
思春期に好発し、アトピー性皮膚炎やDown症候群に合併症しやすい。
症状 不正乱視による視力低下
検査 【細隙灯顕微鏡検査】角膜中央に出っ張りや薄さを確認
治療 ハードコンタクト装用:不正乱視を矯正する(眼鏡では矯正できない)
進行した場合:全層角膜移植
最近ではコラーゲンクロスリンキングや角膜内リングを挿入する治療法もある。

★感染性角膜炎

  原因病原体 特徴
ウイルス性角膜炎 HSVVZV、CVM  
細菌性角膜炎 緑膿菌、黄色ブドウ球菌など コンタクトレンズや外傷が主因
寄生虫 アカントアメーバ コンタクトレンズや外傷が主因

匐行性角膜潰瘍(ふっこうせい)

病態 角膜が損傷し、そこに感染が起こり生じる化膿性角膜潰瘍
原因菌は肺炎球菌、ブドウ球菌、緑膿菌、モラクセラ菌が多い。
原因は外傷(眼を木の枝で突く)、コンタクトレンズ装用、兎眼、涙液分泌障害など
コンタクトレンズ使用では酸素不足により角膜新生血管や水疱性角膜症を合併することもある。
症状 急激に発症し、
初期:異物感、眼痛、羞明、流涙、結膜充血など
重症化:角膜混濁、前房蓄膿、毛様充血など
検査 【細隙灯顕微鏡検査】
フルオレセイン染色:角膜に傷がある部分が青色光により緑色に発光する。潰瘍にがあればそれに起因する混濁を認める。
【角膜擦過検査】
グラム染色で確認+培養
治療 抗菌薬点眼+内服

水疱性角膜症

病態 白内障・緑内障手術後やコンタクトの長期使用などで角膜内皮が極端に減少してポンプ機能が失われるため、角膜実質に水が貯留して角膜浮腫を起こす疾患。
症状 ①視力低下・眼痛:角膜浮腫・混濁による
検査 【スペキュラマイクロスコピー】
角膜内皮の量を測定
治療 角膜内皮移植(DSAEK):深層実質と内皮のみ移植(全層と比べて拒絶反応少ない)

電気性眼炎(雪目炎)

病態 溶接、殺菌灯など紫外線によって生じるびまん性表層角膜炎。
スキーや登山で生じるものは雪目炎という。
症状 強い紫外線暴露6〜24時間後に以下を発症、
①眼痛、流涙、羞明
検査 【細隙灯顕微鏡検査】
フルオレセイン染色:角膜表面が微細点状に染まる(点状表層角膜症)
治療 1〜2日で自然治癒する。角膜保護薬の点眼+感染予防のための抗菌薬点眼。

翼状片

疫学 成人に多い
病態 血管に富む結膜線維組織が鼻側から角膜に侵入した疾患。
原因として、紫外線などの外的刺激や加齢が考えられている。
症状 角膜に入ると視力障害
検査 【身体検査】
視診:鼻側から翼状に増殖して角膜に入る組織を確認
治療 外科的切除(再発しやすい)

角膜ジストロフィ

病態
症状
遺伝性疾患による、両眼性で進行性の角膜混濁を呈する疾患。
多くは10歳前後に発症。
治療 エキシマレーザーによる表層角膜切除
視力低下が著しい場合:角膜移植(ただし移植後も再発することが多い)

ぶどう膜炎(内眼炎)

ぶどう膜炎は、ぶどう膜と近接する組織に炎症を来たしたものを指す。原因は感染性、非感染性、特発性が各1/3ずつ占めるが、非感染性の3大ぶどう膜炎:サルコイドーシス(10%)>Vogt-小柳-原田病(7%)>ベーチェット病(3%)をまず覚えよう!
【解剖学的分類】

  原因疾患
虹彩毛様体炎
(前部ぶどう膜炎)
【肉芽腫性】サルコイドーシス、トキソプラズマ症、帯状疱疹
【非肉芽腫性】ベーチェット病、RA、AS、潰瘍性大腸炎、DMなど
網膜脈絡炎
(後部ぶどう膜炎)
【肉芽腫性】Vogt-小柳-原田病
【非肉芽腫性】ベーチェット病、トキソプラズマ症
汎ぶどう膜炎 悪化すればベーチェット病、サルコイドーシス、Vogt-小柳-原田病いずれも全体に炎症が波及する。

虹彩毛様体炎(前部ぶどう膜炎)

病態 虹彩や毛様体に炎症が起こる疾患。
症状 毛様充血、結膜浮腫、流涙、眼痛羞明視力障害(霧視、白内障)、前房蓄膿
虹彩前癒着すると狭隅角となり続発緑内障、虹彩後癒着すると瞳孔不正円となる。
検査 細隙灯顕微鏡
治療 ステロイド点眼+アトロピン点眼(虹彩と水晶体の癒着による続発性緑内障を防ぐ)

網膜脈絡炎(後部ぶどう膜炎)

病態 硝子体や網膜に炎症が起こる疾患。
症状 飛蚊症・霧視(硝子体混濁)、視力障害(網膜の炎症)
検査 細隙灯顕微鏡
治療 ステロイド点眼+アトロピン点眼+テノン嚢下にステロイド注射

サルコイドーシス

病理学の全身疾患を参照。

★Vogt-小柳-原田病 (VKH病)=浦島太郎病!?

病態 全身のメラノサイトに対する自己免疫疾患と考えられており、眼球ではぶどう膜の網膜色素上皮細胞を標的とした慢性肉芽腫性炎症を生じる疾患。
症状 【前駆期】
感冒様・髄膜炎様症状:発熱、頭痛など
内耳障害:耳鳴、めまい
【眼病期】
前駆症状の4〜5日後に、
両眼の急激な視力低下(多発する漿液性網膜剥離、ぶどう膜炎症状
内耳障害:感音性難聴
【回復期(2〜3ヶ月後)】
角膜輪部および脈絡膜の色素脱失(夕焼け状眼底)
脱毛、頭髪や眉毛の白髪、皮膚の白斑→浦島太郎状態!
検査 【血液検査】HLA-DR4陽性(90%以上陽性)
【脳脊髄液検査】髄液中の細胞増多(リンパ球優位)
【眼底検査】
眼底写真:漿液性網膜剥離、回復期は夕焼け状眼底(メラノサイトがなくなったため)
蛍光眼底造影:眼病期に網膜下へクローバー型の蛍光色素の点状漏出(漿液性網膜剝離)
OTC:多発性漿液性網膜剝離(黄斑浮腫)
治療 ステロイドパルス療法
ステロイド点眼+アトロピン点眼+テノン嚢下にステロイド注射

ベーチェット病

膠原病を参照。

水晶体疾患

老視(老眼)

疫学 45歳前後から発症する
病態 加齢とともに水晶体の弾性力が低下し、近点が遠くなった調節異常。
症状 近いものがピンボケする、眼精疲労
検査 【近点距離測定】近点の延長を確認
治療 近用眼鏡による矯正

★白内障

病態 水晶体の混濁により視力障害をきたす疾患。
β・γクリスタリンは透明性維持に、αクリスタリンは変性したβ・γクリスタリンを正常構造に戻すシャペロンの機能を持っている。水晶体細胞は発生時のみしかクリスタリンを産生しないため、αクリスタリンのシャペロン機能が低下していくと水晶体の透明性を失って白内障となる(80歳で100%)。
【白内障の種類】
①先天性白内障:風疹などの胎内感染、Down症候群、筋強直性ジストロフィー
②加齢性白内障:加齢が原因で、最多
③併発白内障:ぶどう膜炎、網膜剥離、網膜色素変性症
④全身疾患に伴う白内障:糖尿病、アトピー性皮膚炎、副甲状腺機能低下症など
⑤薬物性白内障:ステロイド投与、向精神薬
⑥後発白内障:術後
⑦外傷性白内障:穿孔性眼外傷、眼球打撲
⑧その他:放射線、紫外線、赤外線
症状 ①視力低下、羞明、霧視。
左右差があることが多く、短期間で視力低下することもある(アトピー性皮膚炎)。
【合併症】
水晶体融解緑内障:水晶体前囊が融解し、中の水晶体蛋白が漏出することによって、強い眼内炎症と高眼圧を呈する眼科救急疾患。
検査 【細隙灯顕微鏡検査】水晶体の混濁を確認。初期は車軸状混濁→末期は全体が混濁。
Emery-Little分類では水晶体核の色調で核硬化の程度を予測できる(グレード1:白、3:黄、5:茶)。
【徹照法】
水晶体の混濁を観察する方法で、水晶体に混濁があればその部分が影状にみえる
治療 【術前検査】
角膜屈折力・眼軸長を測定して眼内レンズ度数を決定する。
②スペキュラマイクロスコピーで角膜内皮細胞数を確認する。
【手術】
超音波水晶体乳化吸引術(PEA):濁った水晶体核を乳化吸引した後、眼内レンズ(IOL)を水晶体後囊内に挿入固定する。
【術後合併症】
後発白内障:術後数ヶ月〜数年で残存水晶体上皮細胞が再増殖して眼内レンズ後面を覆う。治療はYAGレーザーで後嚢切開して視機能改善する。
②術後眼内炎:術中・術後感染により失明に至ることもある。治療は抗菌薬を硝子体注射、硝子体手術、前房内洗浄。
③水疱性角膜症:角膜内皮の損傷により角膜変形が起こる。治療は高張食塩水点眼、内皮移植。
④眼圧上昇:流出路狭窄により眼圧が上昇する。治療はPG薬、炭酸脱水酵素阻害薬、β遮断薬。
⑤前囊収縮:前囊や水晶体上皮細胞が眼内レンズ前面を覆う。治療は前囊切開(レーザー、手術)、前囊切除。
⑥黄斑浮腫:侵襲によるサイトカイン上昇によると考えられているが全容は未詳。治療はNSAIDs、ステロイド。
予防 ピレノキシン点眼:水晶体タンパク質変性を防ぐ
グルタチオン点眼:SH基を保護して水晶体タンパク質の凝集を防ぐ

緑内障 Glaucoma

失明の原因第1位。眼圧による視神経圧迫や視神経乳頭の循環障害によって、網膜の神経節細胞のアポトーシスが起こると考えられている不可逆的な疾患。

隅角所見により開放隅角と閉塞隅角に分類される。

原発開放隅角緑内障 POAG(正常眼圧緑内障を含む)

疫学 40歳以上で有病率5%。家族歴や近視はリスク因子。正常眼圧緑内障が約90%。
病態 線維柱帯〜シュレム管の排泄機能低下が原因で眼圧が上昇する。
神経病変のみで、視野障害がないものを、前視野緑内障(PPG)という。
症状 初期は無症状、あっても眼精疲労。
進行すると視野欠損:傍中心暗点→Bjerrumブエルム暗点(弓状暗点)→鼻側階段→求心性視野狭窄の順に進行して徐々に自覚する。
検査 ①眼圧検査:21mmHg以上、眼圧日内変動が10mmHg以上は緑内障を疑う
②トノグラフィー:房水流出率の低下がみられ、0.1以下は緑内障を強く疑う
③眼底検査:視神経乳頭が陥凹拡大+蒼白化(陥凹/乳頭=C/D比の拡大)、網膜神経線維層欠損、乳頭出血を認める。最近はOCTで評価し、初期病変検出にも有用。
④視野検査:GoldmannかHamphrey視野検査によって視野異常の進行の程度を確認。
⑤誘発試験:飲水負荷(6mmHg以上↑)、うつぶせ試験、散瞳試験など
治療 【薬物療法】
眼圧降下薬の点眼を単剤から開始する(目標12mmHg前後)。単剤で効果が不十分な場合には多剤併用する。点眼でも眼圧が下がらない場合は手術を行う。
【手術】
①線維柱帯切術(強膜に瘻孔形成)+マイトマイシンC局所塗布(線維芽細胞増殖抑制)→高齢者、緑内障中期以降
②線維柱帯切術(シュレム管流出路を再建)→若年者、緑内障初期〜中期
③毛様体破壊術(房水産生を抑制する毛様体を破壊する最終手段)

★原発閉塞隅角症 PAC→急性緑内障発作(急性原発閉塞隅角緑内障)

疫学 中年以降の女性に好発
リスク因子:小さな角膜、遠視、浅前房、狭い隅角
病態 非発作時でも前房は浅く、狭隅角になっている(PAC)。何らかの原因(検査で抗コリン薬を使用など)で隅角が閉鎖され、房水の流出が低下することで眼圧上昇が起こる。特に急激に高眼圧を呈するものを急性緑内障発作という。
症状 発作時に激しい眼痛視力低下(必発)悪心・嘔吐虹輪視(多くは片眼性)
検査 【身体検査】
視診:結膜・毛様充血(眼球の循環↓)、瞳孔散大、角膜浮腫
触診:発作時に瞼の上から押さえると石のように硬い
【細隙灯顕微鏡+隅角鏡】
浅前房や狭隅角を確認。
治療 【発作時】
緊急処置としてピロカルピン点眼・β遮断薬点眼、アセタゾラミド内服、マンニトール点滴を行い眼圧を正常に戻す。その後、十分な角膜の透明性が得られたら、虹彩に穴を開けるレーザー虹彩切開術で応急処置する(術後合併症:水疱性角膜症)。
白内障のある高齢者は、水晶体を削り眼内レンズに変えることで前房が深くなり眼圧が低下するため、白内障手術が根治術となる。
抗コリン薬などは禁忌!

★続発緑内障

ぶどう膜炎起因性緑内障 炎症による房水中タンパク質の増加により線維柱帯が詰まる、または虹彩周辺部が隅角に癒着(周辺虹彩前癒着)によって流出抵抗が増大する。
血管新生緑内障 網膜中心脈閉塞症、②増殖糖尿病網膜症、③内頸A狭窄症で網膜が虚血になるとVEGF産生により虹彩にも新生血管が生じる(虹彩ルベオーシス)。その結果、新生血管が隅角に発生すると房水流出が阻害され眼圧上昇を引き起こす。現在は抗VGEF薬の誕生で以前より大幅に改善されてきた。
落屑緑内障 グリコサミノグリカンなどの落屑物質が加齢と共に増加し、心・肺に蓄積する落屑症候群に見られる緑内障。落屑物質が線維柱帯に沈着して眼圧が上昇し、症状進行が早い。瞳孔内に白い落屑物質が見える。遺伝的要因が大きい(血縁に緑内障患者がいる)。
ステロイド緑内障 ステロイドの内服・点眼の長期連用によって線維柱帯に細胞外マトリックスが異常蓄積して房水流出抵抗を増加させる。特に、ステロイドを眼の周囲に塗布する小児に多く発症していたため、眼の周囲はタクロリムス軟膏などに変更するなどの配慮が必要。早期であればステロイド中止で眼圧戻る。

発達緑内障(小児緑内障)

疫学 1〜2歳の男児に好発
病態 胎生期の隅角形成不全によって起こる緑内障。
症状 眼圧上昇による角膜膨張(牛眼)、角膜混濁、流涙
検査 【眼底写真】視神経乳頭の拡大
治療 治療は隅角切開術や線維柱帯切開術を行う

網膜疾患

★網膜静脈閉塞症

疫学 中高年に好発。頻度はCRVO:BRVO=1:くらい。
病態 高血圧・高脂血症・糖尿病・動脈硬化などが誘因となり、動脈の圧迫によって静脈閉塞が起こり網膜出血+血管新生(持続的虚血のため)を生じる疾患。
治療 BRVO・CRVOどちらも、
抗VEGF薬硝子体内注射:新生血管に対して
無血管野に光凝固:新生血管の増殖予防のため

【中心 vs 分枝】

  網膜中心静脈閉塞症 CRVO 網膜静脈分枝閉塞症 BRVO
病態 視神経乳頭付近で静脈が閉塞し、線維に沿って網膜出血する。自然回復することは少なく、新生血管が隅角に増殖すると血管新生緑内障虹彩ルべオーシス)を合併し失明する可能性があるため予後は悪い。 網膜動静脈の交差部で静脈が閉塞し、その部位周辺に出血する。交差部は上耳側に多いためこの部位に好発する。自然回復することが多いため予後良好。ただし、慢性期には新生血管が破綻し網膜出血、さらに網膜を牽引して網膜剥離を起こすこともある。
症状 ①突然生じる片眼の視力低下
片側性・無痛性
①黄斑部が含まれれば片眼の視力低下
片側性・無痛性
検査 眼底写真:眼底全体に放射状火炎状の網膜出血、その中に軟性白斑(虚血部位) 眼底写真:閉塞部位より末梢側に扇子状に広がる出血巣

★網膜動脈閉塞症

病態 高血圧・高血糖・高脂血症・動脈硬化による内頸動脈の閉塞、大動脈炎症候群による内頸動脈の痙攣、心房細動などの心疾患による塞栓によって動脈閉塞が起こり急激な網膜虚血が生じる疾患。
治療 発症1〜2時間以内に眼球マッサージ、亜硝酸アルミ吸入 or 硝酸薬の舌下投与によって血管拡張、前房穿刺による眼圧低下を行う。

【中心 vs 分枝】

  網膜中心動脈閉塞症 CRAO 網膜動脈分枝閉塞症 BRAO
病態 網膜中心Aが閉塞し、1時間以内に血行改善しないと失明する超緊急疾患! 網膜中心Aの分枝が閉塞する疾患。
症状 ①突然生じる片眼の視力低下(多くは中心暗点)
片側性・無痛性
①閉塞部位の急激な視力低下
片側性・無痛性
検査 眼底写真:広範囲が乳白色(虚血状態)となり、中心窩にCherry red spotを認める(ぶどう膜が透けて見える)
眼底造影:動脈の途絶
視野検査:中心暗点
眼底写真:閉塞部位が限局性に乳白色となる(虚血状態)
※実地臨床的には、完全な網膜中心動脈閉塞症より、網膜分枝動脈閉塞症の方が多い。

網膜色素変性症 Pigmentary retinal dystrophy

疫学 1/4000で発症
病態 遺伝性桿体細胞が変性し、両側の視力が低下していく疾患。
症状 一般的に10歳くらいから夜盲を訴え、
その後輪状暗点→求心性狭窄と視力低下して最終的に失明する。白内障の進行が早い。
検査 視野検査:輪状暗転→求心性視野狭窄
網膜電図:波形が減弱消失して平坦化する
眼底写真:骨小体様の黒色色素沈着、視神経乳頭の萎縮など
治療 なし(屋外では短波長をカットするサングラス着用)

★中心性漿液性脈絡網膜症 CSC:Central serous chorioretinopathy

疫学 ストレスの多い30〜50代男性に好発
病態 黄斑部に漿液性網膜剥離が起こる原因不明の疾患。ストレスなどによって網膜色素上皮に小さな穴ができ、脈絡膜から水分が網膜下に漏出して限局性網膜剥離になった状態。再発しやすい。
症状 片眼性の視力低下(中心暗点)※出血はない!
②変視症:物が歪んで見える
③小視症:物が小さく見える。これは網膜剥離で眼軸が短くなり遠視傾向となる。
検査 アムスラーチャート:変視を確認
眼底写真:黄斑部に境界明瞭な浮腫(ただし出血や新生血管はない
眼底造影:黄斑部の1箇所から噴水状の蛍光漏出を確認
OCT:黄斑部の単発漿液性網膜剝離
治療 ストレスの回避。半年以内で自然治癒(ステロイドは無効)。
中心窩以外を光凝固して治癒期間を短縮可能(中心窩は光凝固は行わない!)

★(滲出性)加齢黄斑変性症 AMD:Age-related Macular degeneration

疫学 50歳以上で有病率1%
リスク因子:加齢、喫煙が最大の原因と考えられている

病態

脈絡膜由来の新生血管が脈絡膜と網膜の間に侵入して網膜の黄斑部に浮腫が起こり、中心視野欠損を生じる難治性疾患。
特殊型として、ポリープ状脈絡膜血管症:PCV(約50%)があり、眼底造影検査でポリープ状病巣を認める。予後が悪く失明の原因となる。
症状 ①視力低下(中心暗点):コントラストが低下する
②変視症:両側性も多い
検査 アムスラーチャート:変視を確認。
眼底写真:前駆病変として黄斑部に多発するドルーゼン(網膜と脈絡膜を隔てる膜であるBruch膜の肥厚)
蛍光眼底造影:黄斑部に脈絡膜新生血管硝子体出血を確認
光干渉断層計(OCT)
:漿液性網膜剝離、脈絡膜新生血管を確認
治療 光線力学療法(PDT):光に反応するベルテポルフィンという色素を持続静注し、色素が新生血管に移行する。その後、非発熱性レーザーを黄斑部に照射し、脈絡膜新生血管を閉塞させる(中心窩は光凝固は行わない!)
抗VEGF薬の硝子体内注射:脈絡膜新生血管を退縮させる。
予防 活性酸素による黄斑変性を防ぐために、亜鉛・ビタミンC+E・ルテイン・ゼアキサンチン含有のサプリメントを服用する。禁煙。

黄斑円孔・黄斑上膜(黄斑前膜)

  黄斑円孔 黄斑上膜(網膜上膜、網膜前膜)
病態 加齢性変化で硝子体側に網膜が牽引されて中心窩に孔があく疾患。 黄斑部の網膜表面にグリア細胞が増殖し、線維性膜を形成され、その収縮により黄斑部に皺ができる疾患。糖尿病網膜症などが原因。
症状 中心暗点、視力低下、変視症 中心暗点、視力低下、変視症
検査 OCT:中心窩の裂隙を確認 OCT:中心窩の肥厚を確認
治療 硝子体手術(内境界膜で円孔を閉鎖+ガス注入して術後は数日間うつ伏せ寝) 経過観察
進行したら硝子体手術(線維性膜を除去)

網膜剥離 RD:Retinal Detachment

病態 視細胞層より上の層が網膜色素上皮層(最外層)から分離する状態。剝離した部分は視野が欠損する。好発部位は上外側
【裂孔原性網膜剥離の重篤な合併症】
増殖硝子体網膜症(PVR):裂孔を塞ぐ機序である線維性細胞増殖反応により剥離した網膜が牽引固定されてしまう状態。
症状 ①網膜剥離した部分の視野狭窄
②前駆症状として、飛蚊症、光視症を自覚することがある
検査 眼底検査:網膜裂孔(裂孔原性のみ)、剥離した網膜を眼球内に確認
眼圧検査:眼圧低下することが多い

【原因別】

  裂孔原性(最多) 牽引性 滲出性・漿液性
原因 高度近視(若年者)
加齢で後部硝子体剥離
外傷アトピー性皮膚炎
増殖糖尿病網膜症
未熟児網膜症
穿孔性眼外傷
中心性漿液性脈絡網膜症
VKH病などのぶどう膜炎
加齢黄斑変性症
病態 網膜裂孔から液化した硝子体が網膜下に入って生じる 血管新生など眼内増殖組織による牽引で生じる 網膜下に滲出液が貯留
治療 強膜内陥術、硝子体手術 硝子体手術 原疾患の治療

【治療方法】

①強膜バックル術
=強膜内陥術
(外側から処置)
網膜下貯留液を排出した後、裂孔部位を冷凍凝固・ジアルテミー凝固・光凝固のどれかによって裂孔周囲を癒着させ、更に強固にするためシリコンスポンジなどで強膜を内陥させて固定する。若年者の後部硝子体未剥離のものに実施する。
【利点】術後の体位制限がない
【欠点】術中・術後の疼痛が強い
②硝子体手術
(内側から処置)
硝子体切除した後、黄斑周囲の内境界膜剥離を行う。次に眼内レンズを挿入し、特殊なガスやシリコンオイルを注入し剥離した網膜を内側から押し広げる(液空気置換)。硝子体の牽引が強く裂孔縁がひどく浮いている場合(網膜下への硝子体液化が強い)、または、硝子体出血している場合に実施する。
【利点】術中・術後の疼痛が少ない
【欠点】術後に体位制限が必要

視神経疾患

乳頭浮腫・うっ血乳頭

病態 乳頭浮腫は視神経乳頭の浮腫状腫脹のことをいい、このうち、頭蓋内圧亢進に伴う乳頭浮腫をうっ血乳頭という。視力低下は軽度であり、原因として脳腫瘍などの頭蓋内病変を疑う必要がある。
乳頭浮腫を起こす疾患
①頭蓋内圧亢進(両眼性):腫瘍、膿瘍など
②高血圧:本態性、腎性、妊娠高血圧症候群
③血管閉塞:網膜中心V閉塞症、眼窩腫瘍、頭蓋内血栓性静脈炎
④血液疾患:真性赤血球増加症、貧血、白血病
⑤Vogt-小柳-原田病
⑥その他(高炭酸ガス血症
症状 原則両側性で、視力障害は通常起こらない
うっ血乳頭では頭蓋内圧亢進症状:頭痛、悪心嘔吐など
検査 【視野検査】マリオット盲点の拡大(うっ血乳頭)
【眼底写真】視神経乳頭の発赤・腫脹(うっ血乳頭)
治療 原因疾患の治療、うっ血乳頭ではマンニトールで脳圧低下

視神経炎 Optic neuritis

視神経脊髄炎(NMO)は脳神経内科を参照。

疫学 15〜45歳の女性に好発
病態 炎症・脱髄・血管障害・変性で生じる視神経障害の総称。
一般的に単眼性で、1〜2週間で進行性に増悪し、3週間後から回復傾向を示す。晩期に多発性硬化症に移行することが多い。
原因として、多発性硬化症、急性散在性脳脊髄炎、エタンブトールなどの薬剤など
症状 ①霧視などの急激な視力低下(中心暗点)
眼球運動痛(多くは片側性):半数に見られる
③色覚異常:赤色→緑色の順に色覚が低下する
検査 【光検査】RAPD陽性
【視野検査】中心暗点、ラケット状暗点
【眼底検査】視神経乳頭の発赤・腫脹(浮腫)
【画像検査】眼窩MRI:球後視神経炎の有無を確認
治療 基礎疾患の治療、重症例ではステロイドパルス療法

虚血性視神経症

視神経症とは、虚血性、圧迫性、外傷性、薬剤性などによる非炎症性の視神経障害の総称。

病態 主に視神経を栄養する短後毛様動脈の閉塞によって視神経の虚血壊死を来たす疾患。
原因は、高血圧や糖尿病による細動脈硬化によるもの(非動脈炎性)。稀に側頭動脈炎による動脈炎性のものがあり重篤な症状となる。
症状 起床時に突然片側性の視力低下を起こし、それ以降悪化しない。
検査 【光検査】RAPD陽性
【眼底写真】視神経乳頭の蒼白浮腫を確認。
【蛍光眼底造影】フルオロセイン染色で初期の脈絡膜の充填遅延
【視野検査】水平半盲が多い
治療 非動脈炎性では治療法なし。動脈炎性ではステロイドパルス療法。

全身疾患と眼病変

糖尿病網膜症 DR:Diabetic retinopathy

疫学 糖尿病患者の15%に発症。糖尿病の罹患期間HbA1c値は網膜症発症と有意な相関がある。
①単純網膜症期 糖尿病では、細小血管の炎症により血管が狭窄してVEGFが産生される。その結果、網膜血管の血管透過性が亢進し、網膜浮腫が起こり、浮腫消退後に血漿成分が網膜に沈着して境界鮮明な硬性白斑ができる。毛細血管内皮細胞変性により毛細血管瘤網膜出血(点状 or 火炎状)が起こる。
②増殖前網膜症期 次に、細小血管の内皮細胞が炎症によるアポートシスを起こし管腔を閉塞するため網膜無血管野が拡大する。その結果、視神経の虚血により境界不明瞭な軟性白斑ができる。網膜無血管野の周辺では側副血行路が形成され、細小血管の蛇行や拡張による網膜内細小血管異常が見られる。
③増殖網膜症期 虚血によりVEGF産生が亢進し、無血管野周囲や乳頭上に血管新生が起こる。新生血管が硝子体に向かうに伴い線維血管性増殖膜が形成される。その膜が収縮すると牽引性網膜剥離を起こし、脆い新生血管が破綻して網膜前及び硝子体出血を起こし、最終的に失明に至る。また、運悪く隅角に新生血管ができた場合(虹彩ルベオーシス)は血管新生緑内障となる。
症状 初期:自覚症状なし
末期:飛蚊症、視力低下など(増殖網膜症期)
検査 フルオロセイン蛍光眼底造影(FA):無血管野を確認
網膜電図(ERG):初期から律動小波の減弱がみられる
光干渉断層計(OCT):黄斑浮腫や網膜剥離を確認

【病期分類まとめ】

病期 単純網膜症 増殖前網膜症 増殖網膜症
病態 血管透過性亢進 細小血管の閉塞 血管新生
眼底
写真
網膜浮腫
硬性白斑
毛細血管瘤
網膜出血(点状・火炎状)
軟性白斑
静脈異常
網膜内細小血管異常
網膜無血管野
網膜・乳頭上新生血管
網膜前・硝子体出血
線維血管性増殖膜
牽引性網膜剥離
造影
所見
毛細血管瘤:造影剤が溜まり白い点 網膜無血管野:造影剤が流れない 新生血管:径口不同な血管が見られる
治療法 ①血糖・血圧・脂質コントロールを行い血管透過性を抑制
トリアムシノロンアセトニドをテノン嚢下注射抗VEGF薬を硝子体内注射
③黄斑浮腫に局所光凝固
無血管野に汎網膜光凝固
(網膜の酸素需要を減少させ血管新生を抑制)
汎網膜光凝固
硝子体出血や牽引性網膜剥離
がある場合は硝子体手術

高血圧性網膜症

病態 高血圧状態が続くと動脈硬化が起こり、網膜の細動脈が狭小化→口径不同→網膜出血となり、血管透過性亢進により網膜白斑→乳頭浮腫(末期)となる。
症状 黄斑部に病変があると視力障害?
検査 眼底検査:動脈硬化の程度によって動脈壁反射亢進動静脈交叉現象が促進する。
※動静脈交叉現象とは、硬化した動脈が静脈を圧迫して閉塞する現象
【網膜血管病変(Keith-Wagener分類)】
Ⅰ:軽度の網膜細動脈の狭小化
Ⅱ:中等度〜高度の網膜細動脈硬化(銅線動脈、交叉現象)
Ⅲ:出血など〜以下省略
Ⅳ:乳頭浮腫が加わった状態
【高血圧性+動脈硬化性変化(Scheie分類)】
Ⅰ:動脈血管狭細化、動脈壁反射亢進、軽度の動静脈交叉現象
Ⅱ:血管口径不同、動脈壁反射亢進・動静脈交叉現象の亢進
Ⅲ:出血・白斑、銅線動脈(血管壁肥厚)、交叉現象著明
Ⅳ:乳頭浮腫、銀線動脈(血管壁肥厚)
治療 血圧コントロール、光凝固禁忌

眼外傷

眼窩壁骨折(吹き抜け骨折)

救急医学を参照。

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