整形外傷(骨折、関節靱帯損傷、脱臼、腱損傷)

整形外科
  1. 外傷後の鑑別
  2. 骨折の概要
    1. 骨折治療の概要
    2. 骨折の分類
    3. 小児の骨折
    4. 骨折の合併症
    5. 脂肪塞栓症
    6. 複合性局所疼痛症候群(CRPS)
    7. コンパートメント症候群(Volkmann拘縮を含む)
  3. 首が痛い(頚椎周囲の異常)
    1. むちうち損傷(外傷性頸部症候群)
  4. 胸/背中が痛い(胸部の異常)
    1. 肋骨骨折
  5. 腰が痛い(腰椎周囲の異常)
    1. 急性腰痛症(ぎっくり腰)
    2. 脊椎圧迫骨折・破裂骨折・横突起骨折
  6. 肩の痛み(肩周囲の異常)
    1. 肩関節脱臼(=関節包靭帯断裂)
    2. 肩鎖関節脱臼
    3. 上腕骨近位部骨折
    4. 肩関節の腱板断裂
    5. 鎖骨骨折
  7. 肘の痛み(肘周囲の痛み)
    1. 肘関節脱臼
    2. 肘頭骨折
    3. 橈骨頭骨折(橈骨近位部骨折)
    4. 【小児】上腕骨遠位部骨折(顆上骨折・外顆骨折)
    5. 【小児】肘内障
  8. 前腕・手首・手の痛み(手・手関節周囲の異常)
    1. 橈骨遠位端骨折(Colles骨折、Smith骨折)
    2. 舟状骨骨折
    3. 第1中手骨基部骨折
    4. 指骨骨折
    5. 突き指(指の捻挫)・マレットフィンガー
  9. 股関節の痛み
    1. 大腿骨近位部骨折(頸部骨折・転子部骨折・ステム周囲骨折)
    2. 脆弱性骨盤骨折
    3. 股関節脱臼
    4. 【小児】発育性股関節形成不全(旧先天性股関節脱臼)
  10. 膝・下腿の痛み(膝関節・下腿の異常)
    1. 膝半月板損傷
    2. 膝靭帯損傷
    3. 内側側副靱帯(MCL)損傷
  11. 足首・足の痛み
    1. 捻挫・足関節靭帯損傷
    2. 足の骨折(距骨骨折、踵骨骨折)
  12. 関節、靭帯損傷
  13. 脱臼
    1. 環軸関節亜脱臼
  14. 腱損傷
    1. アキレス腱断裂
    2. 肉離れと筋挫傷

外傷後の鑑別

頸部痛 全て むちうち損傷(外傷性頸部症候群)
胸部痛 全て 肋骨骨折
腰痛 高齢者 脊椎圧迫骨折
肩関節痛 高齢者 上腕骨近位部骨折、上腕骨脱臼骨折、肩鎖関節脱臼、鎖骨骨折
  全て 肩関節脱臼、肩鎖関節脱臼、鎖骨骨折
上腕痛 高齢者 橈骨遠位端骨折、舟状骨骨折
肘痛 全て 肘関節脱臼、肘頭骨折、橈骨頭骨折
股関節痛 高齢者 大腿骨近位部骨折、脆弱性骨盤骨折、筋挫傷、股関節脱臼
  成人 骨盤骨折、筋挫傷、股関節脱臼

骨折の概要

骨折治療の概要

①炎症期(数日):骨折部に血腫形成→マクロファージ浸潤、間葉系細胞出現→毛細血管新生
②修復期(数週間):軟骨細胞出現→軟骨内骨化、骨芽細胞出現、海綿骨形成
③リモデリング期(数年):皮質骨形成

①整復 骨折で転位した骨を元の位置に戻す。 徒手整復法:皮膚の上から手で整復する。
牽引法:持続的に牽引して整復する。
観血的整復法:上記2つが困難な場合に実施。
②固定 整復位を保持し、骨癒合を促す。 外固定:テーピングやギプスで2関節固定する。
装具療法:装具で関節運動を制御する。
内固定:体内に固定材を入れる。
創外固定:骨にピンを挿入して固定する。
感染徴候がある場合は内固定ではなくこちらを選択)
③リハビリ 早期の関節運動と筋力強化により運動機能の回復を図る。

骨折の分類

【程度による分類】

完全骨折 骨の連続性が完全に途絶えた状態
不完全骨折 骨梁(海綿骨のスポンジ状構造)の連続性は途絶えているが、骨全体の連続性は保たれている状態。例:亀裂骨折、若木骨折、竹節骨折

【原因による分類】

外傷性 ①直達外力(外力が加わった部分)による骨折を生じやすい部位
→上腕骨骨幹部、大腿骨骨幹部、下腿骨骨幹部、肋骨、踵骨など
②介達外力(外力が加わった部分から離れた部分)による骨折を生じやすい部位
→鎖骨、肩甲骨、上腕骨顆上、橈骨遠位端(Colles骨折)など
病的 骨が局所的に病的状態で脆弱なため軽微な外力で生じる骨折
①感染症・腫瘍:化膿性脊椎炎、カリエス、骨腫瘍など
②先天性骨疾患:大理石骨病、骨形成不全症
③代謝性疾患:骨粗鬆症、骨軟化症、骨Paget病、副甲状腺機能亢進症
※骨粗鬆症は、脊椎圧迫骨折(特に胸腰移行部)、大腿骨頸部/転子部骨折、上腕骨外科頸骨折、Colles骨折が起こりやすい!
疲労 健康な骨の一定部位に繰り返し小さな外力が加わって生じる骨折
早期は単純X線では所見が認められないためMRIが有用。2〜3週間経過するとX線上で骨膜反応が出現する(悪性腫瘍との鑑別が重要)。

【外界との交通による分類】

閉鎖骨折 単純骨折、皮下骨折とも言う。
開放骨折 骨折部が汚染されており、感染(骨髄炎)を防ぐため、受傷後6時間以内にデブリドマンを行う(golden period)。
さらに、骨折部の安定化のため創外固定(汚染度少なければ内固定)を行う。
創部の血行が良好で感染がないことを確認したら、創外固定をはずして内固定を行う。

小児の骨折

病態 成人よりも骨が柔らかいため、外傷では脱臼よりも骨折が起こりやすい。
骨膜が厚く弾性に富んでいるので不完全骨折になりやすい(若木骨折)。
骨癒合能やリモデリングが高いため年齢が低いほどが早い(ただし、回旋変形はリモデリングされない)。
①上腕骨顆上骨折(最多)、②上腕骨外顆骨折(2位)
治療 骨幹部骨折は原則保存療法(関節内骨折で骨片転位が大きい場合は手術)

骨折の合併症

早期 ・循環障害(コンパートメント症候群)
・血管損傷、神経損傷、臓器損傷
・脂肪塞栓
・感染、DIC、外傷性ショック
・静脈血栓
晩期 ・関節拘縮
・複合性局所疼痛症候群(CRPS)
・外傷性骨化性筋炎
・阻血性骨壊死

脂肪塞栓症

疫学 骨折患者の数%に発症
病態 肺の毛細血管を通過した脂肪滴が循環器系に流入し塞栓を生じること。
原因は骨盤骨折や下肢骨折で生じることが多い。
骨折部位の早期固定で予防可能。
症状 受傷後数日以内に、
①発熱・頻脈:循環障害
点状出血:皮膚に塞栓
③意識障害:中枢神経系に塞栓
④低酸素血症:肺に塞栓
検査 【画像検査】
胸部X線:両肺野の吹雪様陰影
治療 酸素療法主体の全身管理、ステロイド・ヘパリン投与

複合性局所疼痛症候群(CRPS)

病態 主に先行する外傷後に交感神経の異常により生じる慢性の神経因性疼痛。
掌側からプレート固定を行うようになりCRPSは減少した。稀な疾患。
症状 ①自発痛、知覚異常、
②皮膚循環障害:皮膚・爪・毛のいずれかの萎縮性変化
③関節可動域制限、関節拘縮
④発汗異常:発汗亢進または低下
⑤浮腫
検査 【画像検査】
X線:健常側と比較してX線透過性が亢進し、骨萎縮の状態となっている
3相骨シンチグラフィー:集積亢進
治療 鎮痛薬、理学療法、交感神経ブロック、心理療法

コンパートメント症候群(Volkmann拘縮を含む)

病態 骨、筋膜、骨膜によって構成される区画の内圧が上昇し、神経障害や筋壊死に至るもの。下腿では前方区画に生じやすく、前脛骨区画症候群という。 原因は骨折、ギプスによる長時間の圧迫、挟まれるなどの外傷(外傷後6~8時間後に起こることが多い)。阻血が6時間以上続くと筋区画内圧が上昇して神経障害や筋壊死など不可逆的な変化を生じ、予後不良となる(Volkmann拘縮)。
【Volkmann拘縮】
上腕骨顆上骨折などによって前腕の筋区画内圧上昇(コンパートメント症候群)や上腕動脈の直接損傷により上腕動脈の血行障害が起こり、前腕屈筋群の壊死と正中・尺骨N麻痺により生じる拘縮。
症状 四肢阻血徴候(6P)
①Pain:疼痛 ②Pale:蒼白 ③Paresthesia:知覚異常 ④Pulselessness:脈拍喪失(橈骨動脈の拍動) ⑤Paralysis:運動麻痺 ⑥Passive stretching pain:他動的伸展による激痛
検査 筋区画内圧30〜40mmHg以上が診断基準の一つ
治療 ギプスをしていれば除去
症状増悪すれば減張切開(皮膚・筋膜の切開)、壊死した四肢は切断。

首が痛い(頚椎周囲の異常)

むちうち損傷(外傷性頸部症候群)

胸/背中が痛い(胸部の異常)

肋骨骨折

病態 直達外力によって第4〜8肋骨を骨折することが多い。
症状 骨折部位に一致した疼痛、体動・咳・くしゃみなどで痛み増強
多発骨折の場合は動揺胸郭(flail chest)
検査 単純X線
治療 バストバンド固定、動揺胸郭の場合は気管挿管の上で間欠的陽圧呼吸(IPPB)

腰が痛い(腰椎周囲の異常)

急性腰痛症(ぎっくり腰)

脊椎圧迫骨折・破裂骨折・横突起骨折

病態 外傷(典型的には尻餅をつく・転倒して背部を打撲)、骨粗鬆症(最多)、椎体への腫瘍浸潤などで生じる(重いものを持ち上げるなど軽微な外傷で生じる)。
胸腰椎移行部や腰椎に好発し、椎体前上方の終板に生じることが多い。
圧迫骨折の2/3は無症候性で、陳旧性のものがXpやCTで偶発的に見つかることが多い。
高エネルギー外傷の場合、椎体の破裂骨折、横突起骨折を鑑別にCTを撮像する。
症状 ①急性期:骨折部に一致した疼痛があり、体動困難な場合もあるが無症状の場合もある
②亜急性期:2週間〜1ヶ月で疼痛漸減(高齢者の場合はより長期になる場合もある)
【関連症状】
①関連痛:椎体が潰れ、椎間孔変形により神経圧迫で臀部痛・帯状痛
②円背:変形が強いと生じ、腰痛・心肺機能低下・逆流性食道炎も引き起こす
③偽関節形成:数ヶ月経過しても疼痛が継続する場合はMRIで再確認
鑑別 ①破裂骨折:潰れた椎体の骨片が後方へ突出する骨折で、神経を圧迫する場合もある
②横突起骨折:椎体から1〜2cm離れた傍脊柱筋の圧痛あり
検査 【身体所見】
骨折部の圧痛・脊椎叩打痛
【画像検査】
X線:正面と側面の2方向で撮像、前回画像と比較して痛みと一致する部位を探す
CT:椎体高の減少、椎体の脊柱管へ突出像(破裂骨折)、横突起骨折
MRI:骨浮腫を反映したT1WIで低信号脂肪抑制T2 or STIRで高信号新鮮骨折と診断(CTでは新鮮骨折かは断定できない)。T1WIやSTIRの異常信号は約1ヶ月経過すると次第に消失していく。
※STIR :脂肪組織の信号を選択的に抑制して病変をより鮮明に描出する技術
陳旧性圧迫骨折:転倒直後の矢状断の楔状椎・魚椎の変化(新鮮圧迫骨折が経時的にこのような形に変形していく)、椎体終板に沿った骨折線
初期 ①徐痛:アセトアミノフェン(体重×15)mg点滴
治療 【圧迫骨折】
麻痺や膀胱直腸障害がなければ緊急性はなく
、基本的に保存的加療となる
急性期:仰臥位にて2〜3週間安静にし、圧迫の進行を抑制しながら骨癒合を待つ
亜急性期:疼痛軽減後に約2ヶ月程度コルセットを着用し起立・歩行を開始する
回復期:コルセットを外して活動範囲を広げる
薬物療法:鎮痛剤、骨粗鬆症がある場合はビスホスホネート製剤など
手術:経皮的椎体形成術(PVP)は椎体が潰れる前に医療用セメントで椎体を硬化させる
  【破裂骨折】
脊髄圧迫による障害が出ている場合、受傷から6時間以内に手術が適切
  【横突起骨折】
基本的に保存的加療となる
転帰 本人が現在の痛みの程度で日常生活可能なら帰宅、不可能なら入院

肩の痛み(肩周囲の異常)

肩関節脱臼(=関節包靭帯断裂)

病態 直接肩をぶつける、または腕を引っ張られることで、上肢に伸展・外転・外旋が強制され肩が後に持っていかれるような動作の時に生じる。95%以上が方脱臼で、周囲の靱帯が伸びるため一度脱臼すると反復性脱臼になりやすい(20歳未満の初回脱臼では約90%が反復性となる)。合併症として、肩関節脱臼では上腕骨頭が関節窩から擦れながらはずれ、互いに傷つき骨折することが多く、上腕骨頭に陥没ができるのがHill-sachs lesion、関節窩の縁に骨折を認めるのがBankart lesionという、しかし、緊急性は低い。また、中高年では腱板断裂を合併することも多い。
症状 ①肩関節痛:自動的に動かすことができない、整復後は痛みが軽減/消失する
②関節脱臼感:肩がはずれた/抜けた感じ
③腋窩神経損傷(三角筋筋力低下、三角筋部の知覚低下):脱臼時に合併する場合あり
検査 【身体所見】
apprehension test:肩関節外転外旋位で水平外転し肩がはずれそうな不安感で陽性
【画像検査】
①X線:左右の肩の画像を撮像、正常は上腕骨頭と関節窩が赤線のように適合している(右)が、脱臼すると適合が見られない(左)
②CT:Hill-sachs lesion、Bankart lesionの評価
③MRI:関節唇や腱板などの軟部組織の損傷の評価、occult fractureの評価
整復 【徒手整復法】以下の順に整復トライ
①肩関節注射:20cc注射器にキシロカイン®を20cc吸引し、22Gで肩外側から正中に向けて15〜20cc注射する。
②外旋法→Milch法:1人でも実施可能で、仰臥位で行う。
③肩甲骨回旋+Stimson法:2人で実施する方法で、腹臥位で行う。筋肉質な人向け。
④反対牽引法:静脈ルートを確保し、透視下で2人で実施する方法で、仰臥位で行う。
⑤整復後はX線で確認する。
固定 【整復後は固定】
①三角巾固定:3週間は外旋位に固定
転帰 整復後は紹介状と整復前後の写真を添付し、翌日または週明けの整形外科へ受診を指示。
R:1〜2週間安静にし、疼痛が軽減してきたら可動を開始する
①冷却:湿布は使用せず、タオルの上からじんわりと冷やす
②疼痛:アセトアミノフェン

肩鎖関節脱臼

病態 肩鎖関節は3本の強固な靱帯で結合され可動性はないが、コンタクトスポーツなや転倒などでこれらの靭帯の損傷で肩鎖関節が動いてしまう病態で、Rockwood分類を行う(転位なしⅠ〜Ⅱ、転位ありⅢ〜Ⅳ)。
症状 ①肩関節痛:肩の上が痛い
②肩の出っ張り感:鎖骨遠位部が僧帽筋により上方へ引き上げられる
検査 【身体所見】
piano key sign:突出部を押すと整復され、離すと浮き上がる(Ⅲ以上)
【画像検査】
Xp:鎖骨2方向+肩2方向で左右撮像、鎖骨遠位端骨折や烏口突起骨折を併発することもあるため確認する、Xpだと靭帯は見えないため肩峰下端と鎖骨下端の距離で脱臼を判断するがⅠ〜Ⅱは転位なくXpでは判断できないため臨床所見と合わせて判断、転位がある場合はRockwood分類を行う(Ⅲ〜Ⅳは手術を考慮)
CT:高エネルギー外傷の場合や腫脹や内出血の程度がひどい場合に追加
固定 【整復後は固定】
①三角巾固定:Ⅰは約1週間、Ⅱは約3週間固定、Ⅲ以上は手術考慮
転帰 固定後、整形外科を予約し、当日もしくは帰宅して後日受診(上肢外傷のため、歩行可能であるため入院はしない)。
①冷却:湿布は使用せず、タオルの上からじんわりと冷やす
②疼痛:アセトアミノフェン

上腕骨近位部骨折

疫学 骨粗鬆症の高齢者に多い
病態 高齢者の転倒などによる低エネルギー外傷により肩を打撲して生じる骨折(約90%)。成人や小児では高エネルギー外傷で生じる(約10%)。骨折片による神経障害が生じることがあり、腋窩神経障害、肩甲上神経障害の順に多い。
症状 ①肩関節痛、肩関節周囲の発赤腫張
②患側上肢の神経障害:肩の外側の知覚低下・外転筋力障害(腋窩神経障害)
検査 【画像検査】
Xp:正面とスカプラY像の2方向で撮像し、骨頭・小結節・大結節・骨幹部の4部位に注目して骨折線や転移を探す
CT:骨折があればCTを撮像しNeer分類を行う
固定 【診断したらまず固定】
①三角巾固定:腕を吊るす固定だけで腕の重さで整復位となる
手術 Neer分類で2パート骨折以上の場合は手術を考慮
転帰 固定後、整形外科を予約し、当日もしくは帰宅して後日受診(上肢外傷のため、歩行可能であるため入院はしない)。基本的には保存加療となり、整形外科に通いながら骨の癒合を待つ。1〜2週間は固定して安静とし、その後リハビリを開始する。
①冷却:湿布は使用せず、タオルの上からじんわりと冷やす
②疼痛:アセトアミノフェン

肩関節の腱板断裂

病態 腱板(棘上筋腱が最多)が断裂する疾患。
※腱板とは、棘上筋、棘下筋、小円筋、肩甲下筋の4つの筋の腱の総称
症状 運動時痛、安静時、夜間痛:肩関節外転時に肩峰と腱板が衝突するため=インピンジメント
検査 【身体検査】
drop arm sign:他動的に腕を上げ、支持を外すと急に下がると陽性
【画像検査】
エコー・MRI:断裂部を確認。MRIではT2強調像で断裂部が高信号となる。
肩関節造影:肩関節に注入された造影剤が関節包外へ流出
治療 安静、対症療法

鎖骨骨折

疫学 新生児分娩時の骨損傷として最多
病態 約90%は肩ぶつけて介達外力によって生じ、残り約10%は直接鎖骨をぶつけて生じる。鎖骨は中央で折れることが多く、騎乗位変形などの変形治癒を起こすことが多いが、機能障害は少ない。稀に骨折片による腕神経叢損傷、血胸、気胸を生じることがある。
症状 ①鎖骨の疼痛
②患側上肢の神経障害:肩の外側の知覚低下・外転筋力障害(腋窩神経障害)
検査 【身体所見】
鎖骨の圧痛
【画像検査】
X線:鎖骨前後像と斜位像の2方向で撮像
固定 ①鎖骨バンド(クラビクルバンド、8の字バンド)固定
肩甲骨を正中方向に寄せて胸郭を開くことで、骨折部の整復と変形進行予防が期待されることから鎖骨バンドを用いる。1日数回バンドを締め直して矯正位を保つ。疼痛が強い受傷後1〜2週間は三角巾を併用することもある。
手術 転移が大きい場合やもともとのADLに合わせて整形外科で手術を検討
転帰 固定後、整形外科を予約し、当日もしくは帰宅して後日受診(上肢外傷のため、歩行可能であるため入院はしない)。基本的には保存加療となり、整形外科に通いながら骨の癒合を待つ。通常4〜6週間は固定して安静とする。
①冷却:湿布は使用せず、タオルの上からじんわりと冷やす
②疼痛:アセトアミノフェン

肘の痛み(肘周囲の痛み)

肘関節脱臼

病態 肘関節伸展位で手をついて倒れた時に起こることが多く(FOOSH)、ほとんどが方脱臼を生じる。 合併症として、脱臼骨折、鉤状突起骨折、橈尺骨遠位端骨折、遠位橈尺関節損傷、前腕骨幹膜損傷、前腕骨骨折、上腕骨や肩関節周囲の損傷があり、脱臼骨折は緊急対応が必要。橈骨骨頭脱臼に尺骨骨幹部骨折が併発するものをMonteggia脱臼骨折、尺骨遠位端脱臼に橈骨骨幹部骨折を併発するものをGaleazzi脱臼骨折という。
【小児の場合】
小児では上腕骨顆上骨折や外側顆骨折に合併して肘関節脱臼が生じやすい。
症状 ①肘関節の激痛
②自動運動不能、バネ様固定
検査 【画像検査】 身体所見は取らずにXpへ直行!
X線:肘2方向で撮像し、腕尺関節・腕橈関節・近位橈尺関節の各整合性を評価、尺骨鉤状突起骨折・橈骨頭頚部骨折、内外側側副靭帯付着部裂離骨折を確認
緊急 脱臼骨折は緊急で整復が必要で即時整形コンサル
整復 【診断後は可及的速やかに整復】
①経静脈麻酔(ケタミン+プロポフォール)を施行
②鎮静脱力状態となったら術者は前腕を遠位に牽引する
③整復が得られない場合、術者は前腕を牽引したまま徐々に腕を屈曲させる(助手は術者が牽引する時に同じ力で上腕を牽引しカウンタートラクションをかける)
③整復後、覚醒すれば正中神経・尺骨神経・上腕神経の損傷を評価し、所見があれば紹介状に記載する。
固定 肘関節固定+三角巾固定を行う
転帰 固定後は紹介状と整復前後の写真を添付し、翌日または週明けの整形外科へ受診を指示。
①冷却:湿布は使用せず、タオルの上からじんわりと冷やす
②疼痛:アセトアミノフェン

肘頭骨折

病態 肘を直接ぶつける直達外傷で生じる骨折。肘頭の近位には尺骨神経が通過しており、骨折に伴い尺骨神経障害が約10%に生じる。
症状 ①肘関節の激痛
②自動運動不能、バネ様固定
③患側の小指と薬指の痺れ・知覚障害・麻痺:尺骨神経障害
検査 【画像検査】 身体所見は取らずにXpへ直行!
X線:肘2方向で撮像し、Mayo分類で評価
緊急 Mayo分類タイプⅢの脱臼骨折、尺骨神経障害がある場合は即時コンサル
固定 肘関節脱臼と同様(肘関節外固定+三角巾)
転帰 骨折の転位が2mm未満のタイプⅠは保存加療となり、骨折の転位が2mm以上の場合は手術の可能性がある。どちらも固定して翌日または週明けの整形外科へ受診を指示。緊急性の場合は即時コンサルを行う。
①冷却:湿布は使用せず、タオルの上からじんわりと冷やす
②疼痛:アセトアミノフェン

橈骨頭骨折(橈骨近位部骨折)

病態 肘関節伸展位で手をついて倒れた時に起こることが多い(FOOSH)骨折。合併症として橈骨頭周囲の靭帯損傷や筋挫傷が約30%生じるが、評価が難しいので整形外科に評価してもらう。
症状 ①肘関節痛:はっきりと特定した部位を痛いと言えないことが多い(激痛ではない)
検査 【画像検査】 
X線:肘2方向で撮像し、橈骨頭の関節面を評価し、ホッチキス分類(改訂Manson分類)を行う
CT:Xpで不明な場合に実施?
【身体所見】画像検査で診断できない場合は身体所見と合わせて診断!
橈骨頭を親指で触れ、回内回外して疼痛が生じる
固定 肘関節脱臼と同様(肘関節外固定+三角巾)
転帰 骨折の転位が2mm未満のタイプⅠは保存加療となり、骨折の転位が2mm以上の場合は手術の可能性がある。どちらも固定して翌日または週明けの整形外科へ受診を指示。緊急性の場合は即時コンサルを行う。
①冷却:湿布は使用せず、タオルの上からじんわりと冷やす
②疼痛:アセトアミノフェン

【小児】上腕骨遠位部骨折(顆上骨折・外顆骨折)

疫学 5〜10歳に好発
病態 転倒時の肘伸展位において手をついた(FOOSH)時に生じる顆上骨折(最多)と外顆骨折(2番目に多い)がある。顆上骨折の合併症として、半数弱に前骨間神経損傷(正中神経の枝)が生じる。
症状 ①肘関節の激痛
②DIPとIPの屈曲不可:前骨間神経損傷の症状、受傷数日後に発症する場合もあり
検査 【身体所見】
Tear drop sign陽性:前骨間神経損傷
【画像検査】 
X線:肘2方向で撮像する。
顆上骨折の場合はGartland分類を行う(ただし、タイプⅠは骨折線が不明瞭)
小児の場合、タイプⅠではわかりにくい若木骨折となるためAnterior humeral lineの延長が小頭の真ん中に来ない場合は顆上骨折の関節所見と判断する。

外顆骨折の場合は小児骨端線骨折で使用するSalter-Harris分類を行う
緊急 Gartland分類タイプⅡorⅢ、神経症状がある場合は即時整形コンサル
固定 肘関節脱臼と同様(肘関節外固定+三角巾)
転帰 Gartland分類タイプⅡ・Ⅲは即時コンサルに対し、タイプⅠは保存加療となる。親に前骨間神経損傷が後発する可能性を説明し、固定して翌日または週明けの整形外科へ受診を指示。
Salter-Harris分類タイプⅡ以上は手術の可能性があり、転位が2mm以上の場合は即時コンサルとなる。タイプⅠは保存加療となり、固定して翌日または週明けの整形外科へ受診を指示。
①冷却:湿布は使用せず、タオルの上からじんわりと冷やす
②疼痛:アセトアミノフェン
後遺症 顆上骨折:内反肘、Volkmann拘縮
外顆骨折:骨折部が偽関節になると成長とともに外反肘→遅発性尺骨N麻痺

【小児】肘内障

疫学 1〜4歳に好発
病態 小児の手を前腕回内位で急に強く引っ張った際、橈骨骨頭が輪状靭帯から引き抜け、靭帯が逸脱し亜脱臼となる疾患。
症状 ①肘関節の橈骨頭周囲の圧痛
検査 【身体検査】
視診:上肢全体の下垂位前腕回内位、肘関節軽度屈曲位が特徴
治療 【徒手整復法】
橈骨頭を母指で圧迫し、前腕を回外しながら肘を屈曲させるとコクっと整復音が出る。 整復後は顔の高さでバイバイして肘関節の疼痛消失と自動運動を確認。固定は不要。

前腕・手首・手の痛み(手・手関節周囲の異常)

橈骨遠位端骨折(Colles骨折、Smith骨折)

疫学 骨粗鬆症の高齢者、小児に多い
病態 手掌をついて転倒するColles骨折と手背をついて転倒するSmith骨折がある。
半数以上に尺骨茎状突起骨折の併発を認める。
多くは高齢者の低エネルギー外傷だが、小児や成人でも生じる。小児では転倒などの低エネルギー外傷で生じ、若木骨折となることが多い。成人では交通事故などの高エネルギー外傷で生じ、手術が必要なことも多い。
症状 ①手関節痛、手関節周囲の発赤腫張
②自発的に手首を動かせない(逆の手で支えていることが多い)
検査 【身体所見】
手関節腫張、フォーク状変形
【画像検査】
Xp:手関節2方向で撮像し骨折線を探す、尺骨茎状突起骨折の併発も確認する。
小児の場合はSalter-Harris分類を行う
緊急 ①開放骨折、②整復不能な脱臼、③血管・神経症状の合併がある場合は即時整形コンサル
小児の場合、転位が大きい場合は即時整形コンサル
固定 【基本的にはまず固定のみ、可能ならX線透視下で整復トライ】
Sugar tong splint+三角巾:ギプスと比較しても機能的予後同等(splint=シーネ)
※モールディング:体の形状に合わすよう両手で軽く圧迫していくこと
②ギプス固定法:非整形外科医はコンパートメント症候群のリスクがあり推奨されない
手術
適応
【①〜③に該当する場合は手術適応(該当なければ保存加療)】
手術は現在、掌側プレート固定が主流である。
活動性が高い場合:手術で機能回復するとQOLが上昇する
関節内骨折:AO分類のBとCに該当する場合(=関節面に達する骨折
整復して外固定してもずれてしまう場合:整復当日だけでなく、再診時にずれている場合がこれに該当する。
転帰 固定後、整形外科を予約し、当日もしくは帰宅して後日受診(上肢外傷のため、歩行可能であるため入院はしない)。手術適応がない場合は紹介状作成し、クリニックでのフォローも可能。保存加療の場合、外固定を約1ヶ月継続することとなる。
①冷却:湿布は使用せず、タオルの上からじんわりと冷やす
②挙上:患肢の下に枕など入れて高くする
③疼痛:アセトアミノフェン

舟状骨骨折

病態 転倒時の肘伸展位において手をついた(FOOSH)時に生じる骨折で、手根骨骨折の約70%を占める(その他の手根骨骨折は三角骨骨折、月状骨骨折が多い)。舟状骨は血行性に乏しく、骨折により容易に阻血となり、骨壊死や偽関節といった合併症を引き起こすため、舟状骨骨折を見逃すと問題となる(occult骨折多い)。
症状 ①手関節痛(激痛までひどくない、比較的手首も動かせる)
検査 【身体所見】
①Snuffboxの圧痛、②Scaphoid tubercle、③Thumb compressionを評価し、1つでも所見がある場合は舟状骨骨折疑いで固定を行う
【画像検査】
Xp:手関節2方向で撮像し骨折線を探す
CT:Xpで骨折線があれば評価のため撮像
MRI:Xpで骨折がはっきりしない場合に検討
固定 ①Thumb spica splint固定(三角巾はなくてもOK)
転帰 固定後、整形外科を予約し、当日もしくは帰宅して後日受診(上肢外傷のため、歩行可能であるため入院はしない)。骨折線の離開が1mm以内であれば保存加療、それ以上は手術の可能性あり。一般的な骨折と異なり、骨癒合は通常2〜3ヶ月、長いと6ヶ月かかることもあり長期となる。
①冷却:湿布は使用せず、タオルの上からじんわりと冷やす
②挙上:患肢の下に枕など入れて高くする
③疼痛:アセトアミノフェン

第1中手骨基部骨折

病態 ボクシングや転倒で握り拳の状態で母指の先端部から根元に向かって強い力が加わることで、母指の中手骨の根元が骨折。中手骨骨折の約25%が母指に生じ、そのうち約80%が母指基部骨折である。occult骨折は稀。
症状 ①手関節痛(母指の運動制限あり)
検査 【画像検査】
Xp:手関節2方向で撮像し骨折線を探し、関節内骨折の場合は手術、関節外骨折の場合は保存加療となる。
固定 ①Thumb spica splint固定(三角巾はなくてもOK)
転帰 固定後、整形外科を予約し、当日もしくは帰宅して後日受診(上肢外傷のため、歩行可能であるため入院はしない)。
①冷却:湿布は使用せず、タオルの上からじんわりと冷やす
②挙上:患肢の下に枕など入れて高くする
③疼痛:アセトアミノフェン

指骨骨折

突き指(指の捻挫)・マレットフィンガー

病態 DIP関節での指伸展筋腱の損傷。末節骨の骨折や亜脱臼を伴う場合がある。
症状 DIP関節の自動伸展不能:屈筋腱の力で屈曲したままになる
検査  
治療 RICE。亜脱臼なければ、伸展装具着用してDIP関節を6週間程度伸展保持

股関節の痛み

大腿骨近位部骨折(頸部骨折・転子部骨折・ステム周囲骨折)

疫学 骨粗鬆症の高齢者に多い
病態 高齢者転倒後の股関節痛の95%が大腿骨近位部骨折である。大腿骨近位部骨折は大腿骨頸部骨折と大腿骨転子部骨折に大別され、これらは治療方針が異なるため必ず分類する。どちらも歩行不能や寝たきりの原因となるため早期手術・早期離床が図られる。
分類 【大腿骨頸部骨折】
関節包骨折。大腿骨頭の血行は悪く、骨癒合が不良のため遷延癒合・大腿骨頭壊死・偽関節になりやすい。他方、関節内出血のため出血量は少ない。
  【大腿骨転子部骨折】
関節包骨折。大腿骨頭の血行は良好のため骨癒合が得やすく骨接合術で癒合する。他方、内出血も多い。75歳以上では転子部骨折が多い。
  【大腿骨ステム周囲骨折】
人工股関節全置換術、大腿骨人工骨頭置換術などの大腿骨近位部人工物置換術術後患者が転倒などで受傷して生じる骨折。治療方針は近位部骨折と同じで原則手術となる。手術は可能な限りインプラントを入れた病院で行う(そのため、自院に整形外科があってもインプラントを入れた病院に転院依頼することがある)。
症状 ①股関節の激痛
②起立不能・歩行不能(歩けても骨折の否定はできない)、臥位で膝を立てられない
③患側の股関節外旋位短縮位で搬送される
検査 【身体所見】←痛みが強い場合は先に画像検査を行う
視診:大転子部の皮下血腫
触診:鼠蹊部の圧痛、他動的に股関節の内外旋時の疼痛
【画像検査】
①X線:正面と軸位の2方向で撮像、骨折線を探す、骨の皮質が途切れたとことが骨折
※骨折線が見えにくい場合は骨折線をイメージしながら読影する
※骨折がはっきりせず痛みが強い場合、歩行を許可せず免荷してCTやMRIで精査する
②MRI:X線で骨折がはっきりしない場合に施行、T1黒・STIR白で新鮮骨折あり
※筋肉に同様の所見がある場合は筋挫傷の診断となる(内転筋が好発部位)
③CT:MRIがとれない夜間休日に施行、小さな骨折線を探す
※X線で骨折が見えずCTやMRIで骨折がわかるものをoccult fractureという

【大腿骨頸部骨折】

①診断 画像から大腿骨頸部骨折と診断し、ベッド上安静とする。
②分類 Garden分類する。
③治療方針 日中なら即時、夜間なら翌朝整形外科にコンサルトし「Garden●の大腿骨頸部骨折」ですと報告する。自院で手術できない場合は速やかに手術のできる病院へ転院させる。
整形外科 治療方針が決定したら48時間以内(可能なら24時間以内)手術する。
もともと寝たきりの人は保存でみる。

【大腿骨転子部骨折】

①診断 画像から大腿骨転子部骨折と診断、ベッド上安静とする
②治療方針 日中なら即時、夜間なら翌朝整形外科にコンサルトし「大腿骨転子部骨折」ですと報告する。
整形外科 γネイルを用いた内固定(出血量多い)

脆弱性骨盤骨折

疫学 骨粗鬆症の高齢者に多い
病態 成人の骨盤骨折とは全く異なり骨の脆弱性を背景とした低エネルギー外傷によって生じる骨折。脆弱性骨盤骨折は血管損傷を起こすことは稀であり、血行動態は安定しているためIVRの必要はない。多くは安定型の骨折で創外固定も必要なく保存加療となる。
症状 股関節痛・腰痛・殿部痛
検査 【身体所見】
仰臥位で恥骨結合の圧痛、股関節屈曲位で坐骨の圧痛、側臥位で仙骨の圧痛
【画像検査】
Xp:恥骨・坐骨・仙骨などに骨折線
CT:Xpで骨盤骨折疑いならCTを撮像し、以下の安定型と部分安定型に分類する。血圧が低い・骨盤周囲の血腫を見たら造影を考慮する。
治療 多くは疼痛で歩けないため入院となるが、安定型の場合は痛みが弱ければ通院も可能。日中なら即時、夜間なら翌朝整形外科にコンサルトする。

股関節脱臼

病態 股関節が屈曲位にある際、前方から強い外力が大腿骨軸に加わり脱臼する。後方脱臼が多い。ダッシュボード損傷に合併することが多い。
症状 下肢が短縮し、屈曲・内転・内旋位をとる
【合併】
大腿骨頭壊死:脱臼時の血管損傷による。24時間以内に整復しなければ高率に生じる。 その他:坐骨神経損傷、寛骨臼蓋・臼底・骨頭の骨折
検査
治療 速やかに全身麻酔下で徒手整復

【小児】発育性股関節形成不全(旧先天性股関節脱臼)

疫学 女児に多い(7:1)、発生率:約0.1%、家族内発生
病態 先天的あるいは周産期の要因により、大腿骨頭が関節包をつけたまま脱臼(関節包内脱臼)している疾患。放置すると変形性股関節症に移行するため早期発見が重要。
症状 大腿皮膚溝の非対称:仰臥位で患肢のしわが多く・深い
Allis sign:仰臥位で両膝屈曲位で両下肢を揃えると、患肢の膝の位置が低くなる
【幼少期以降】
処女歩行の遅延:
Tredelenburg sign:患肢で片足立ちした時、患側は股関節脱臼による外転筋力が低下しており、健側の骨盤が沈下する。
腰椎前弯の増強:
検査 【身体検査】
開排テスト:両股関節を90度屈曲・外転させる。抵抗がある場合は異常。
click sign(Ortolani法):仰臥位で両股関節90度屈曲+膝関節最大屈曲位から、股関節を大腿骨長軸方向に軽く押し付けると脱臼音を触知する。
telescoping sign:仰臥位で大腿長軸方向への上下運動、大腿上端の異常な上昇・下降を感じる。
【画像検査】
エコー:股関節脱臼を確認
単純X線:大転子の高位・突出が見られる(通常、大転子は坐骨結節と上前腸骨棘を結ぶローザーネラトン線上で触知される)
治療 【8ヶ月未満】リーメンヒューゲル装具で股関節を90度屈曲位に保持する。
【8ヶ月以上】オーバヘッド牽引→徒手整復
【3歳以上】手術
【生活指導】オムツカバーはバンド幅が狭いもの。股関節が開排する状態で抱っこする。

膝・下腿の痛み(膝関節・下腿の異常)

膝半月板損傷

疫学 膝内障で最多。
病態 体重を負荷した状態で、膝関節屈曲位で異常な回旋力が加わると大腿骨と脛骨の間に挟まれて半月板が損傷する。半月板は外1/3しか栄養血管がないため自然修復は難しい。スポーツ外傷では前十字靭帯損傷と合併しやすい。
症状 ①受傷直後:激痛、関節腫脹
②運動時疼痛、膝の引っ掛かり、異常音(クリック)
③断裂した半月板が顆間窩に嵌頓し、膝が屈曲したまま伸展不能となる(ロッキング)
④関節水腫による膝蓋跳動を認める場合もある
検査 【徒手検査】
McMurrayテスト:仰臥位にて、検者が他動的に膝を最大屈曲位にし、内側と外側の関節裂隙に指を当てた状態で下腿に内旋・外旋ストレスを加えながら膝を徐々に伸展させる。内旋時に疼痛またはクリック触知で内側半月板損傷、外旋時に疼痛またはクリック触知で外側半月板損傷とわかる。
Apleyテスト:伏臥位で膝を90度屈曲位にし、検者が大腿を固定し足底を下方に押し込みながら下腿を回旋させる。外旋時に内側に疼痛で内側半月板損傷、内旋時に外側に疼痛で外側半月板損傷とわかる。
【画像検査】
MRI:T2強調で半月板損傷部が高信号
治療 関節鏡下半月板縫合術または部分切除術

膝靭帯損傷

  前十字靭帯(ACL)損傷 後十字靭帯(PCL)損傷
病態 着地時に急停止や方向転換で靭帯断裂。約半数に半月板損傷を合併する。 ダッシュボード損傷など交通外傷、スポーツ外傷で膝前面を強く打撲して靭帯断裂。
症状 ①受傷時激痛とともにブツッと断裂音
②関節腫脹、ときに関節血症
③陳旧例では膝崩れ感、膝不安定感
①受傷時疼痛
②打撲による膝皮膚損傷
③陳旧例では膝不安定感
検査 【徒手検査】
前方引き出しテスト:陽性率低いため割愛。
Lachmannテスト:陽性率90%。仰臥位で膝約20度屈曲位にし、検者が大腿を固定し頸骨近位部を上方に引く。陽性では1cm以上引き出され停止点の感覚はない。
【徒手検査】
後方引き出しテスト:割愛
Saggingテスト:割愛
治療 自家腱を用いた靭帯再建術
スポーツ復帰には半年〜1年かかる
保存療法が多い(装具着用、大腿四頭筋の筋力訓練)

内側側副靱帯(MCL)損傷

疫学 膝靭帯損傷で最多
病態 スキーなどスポーツ中の接触事故により靭帯断裂(大腿骨付着部が多い)。
症状 膝内側の疼痛・腫脹 陳旧例では膝不安定感
検査 【徒手検査】
外反ストレステスト:仰臥位で膝関節約30度屈曲位にし、検者が強制的に膝外反させる。疼痛や動揺性があれば陽性とする。
治療 保存療法が多い

足首・足の痛み

捻挫・足関節靭帯損傷

疫学 スポーツ外傷の中で最多
病態 捻挫は、主に関節可動域を超える運動を強制された時に起こる関節支持組織(靱帯、関節包)の損傷であり、関節面の位置関係は正常。足関節内反による前距腓靱帯損傷が多い。
症状 自発痛、圧痛、運動制限
関節腫脹:数時間以内に生じたものは関節内出血、24時間以降に生じたものは関節液貯留
検査 【画像検査】
内反ストレステスト:単純X線で前方から見た距骨傾斜角の増大(5°以上が陽性)
治療 急性期:患部のRICE療法
部分断裂:弾性包帯固定、テーピング、装具着用
完全断裂:ギプス固定、手術

足の骨折(距骨骨折、踵骨骨折)

  距骨骨折 踵骨骨折
病態 高所からの墜落で骨折する。血流が悪くなり骨癒合後骨壊死を起こしやすい。 高所からの墜落で骨折する。踵骨がつぶれ外傷性扁平足となる。Sudeck骨萎縮をきたすこともある。骨の形態修復は難しい。
症状    
検査    
治療 短下肢装具の装着 左に同じ

関節、靭帯損傷

捻挫とは、関節可動域を超える運動を強制された時に起こる関節支持組織の損傷で、関節面の位置関係は正常である。

脱臼

脱臼は、主に関節可動域を超える運動を強制された時に起こる関節支持組織(靱帯、関節包)の損傷であり、関節面の位置関係が失われた状態。

  【原因による分類】
外傷性脱臼 外傷による脱臼。
病的脱臼 関節包の破壊によらない脱臼。
反復性脱臼 外傷性脱臼後に軽度の外力で繰り返し起こる脱臼。肩関節に多い。
随意脱臼 自分の意思による脱臼。第1中手指関節に好発。
亜脱臼 関節面の一部のみがかろうじて互いに接触を保っている脱臼。

環軸関節亜脱臼

病態 環軸関節に緩みが生じ、頸椎の前屈時に亜脱臼が起こり頸椎を圧迫する疾患。本症では、軽微な外傷により、四肢麻痺とともに、呼吸筋麻痺を引き起こして突然死の原因ともなる
関節リウマチDown症に合併することがある。
関節リウマチでは、環軸関節の滑膜炎により軸椎が破壊され、環椎横靱帯が弛緩し、環軸関節前方亜脱臼が発症する。
症状 ①頸部痛
②頸髄圧迫症状:両手のしびれ、手指の巧緻運動障害
検査 【画像検査】
X線:環椎歯突起間距離(ADI)の増加=環椎が前方へ移動していることを確認
治療 原則手術(突然死の原因を防ぐため)

腱損傷

アキレス腱断裂

病態 腓腹筋の緊張時に足関節に急激な背屈力が加わり、多くは完全に腱断裂する。
症状 ①断裂部疼痛(歩行は可能)
②つま先立ちできない(底屈は可能)
検査 断裂部に皮膚の上から陥凹を触知する
Thompsonテスト:伏臥位で膝関節90度屈曲位にし、下腿三頭筋をつかんでも底屈しない場合は陽性(アキレス腱の完全断裂)
治療 【保存療法】
尖足位にして足関節背屈制限装具の装着

肉離れと筋挫傷

肉離れ 筋肉が引き伸ばされながら収縮することにより主に筋腱移行部が断裂する状態。 治療はまずRICE、その後は松葉杖などで患部を安静にする。
筋挫傷 筋肉が強打されると筋が骨に押し付けられ深層の筋が損傷する状態。また、反復して強打していると筋肉が石灰化(骨化性筋炎)することがある。

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