統合失調症 Schizophrenia(シゾ)
統合失調症の概要
| 疫学 | 10代後半〜20代後半に好発。有病率:約1% 遺伝的要因があり、親や兄弟姉妹に罹患者いる場合の罹患率は約10% |
| 病態 | 何らか先天的要因にストレスが加わった結果、中脳辺縁系ドパミン経路の亢進(陽性症状出現)や中脳皮質系ドパミン経路の低下(陰性症状出現)を起こす特有の症候群。一般に前駆期があり以下の症状が徐々に発症する(急性発症の場合もあるが、急性の場合は脳炎などの身体疾患を疑う)。急性期は陽性症状が、慢性期には陰性症状が顕著となる。治療によって完全に回復する場合もあれば、再発と寛解を繰り返す場合もあり、進行すると荒廃状態となる。 |
統合失調症の症状
| 【陽性症状】 | ●シュナイダーの1級症状(統合失調症に特異的な陽性症状) |
| ①妄想知覚 | 見たもの聞いたものに異常な意味づけをする |
| ②幻聴 | 思考化声:自分の考えが幻聴として聞こえる |
| 対話形式の幻聴:話しかける幻聴とそれに応答する幻聴 | |
| 批判性幻聴:自分の行為を批判する幻聴 | |
| ③自我障害 | 身体被影響体験:電気を流されるなど身体に何か影響を与えられている体験 |
| 考想伝播:自分の考えが他者に伝わると思う | |
| 考想奪取:自分の考えが抜き取られていると感じる | |
| シュナイダーさん、ダッシュさせられ幻聴と妄想を声で伝える:考想奪取、身体被影響体験、幻聴、妄想知覚、考想化声、考想伝播 | |
| ●シュナイダーの1級症状以外の陽性症状 | |
| ①一次&二次妄想 | 一次妄想:なぜその妄想が生じたのか全く了解しようがないもの |
| ②強迫的飲水 | 血漿の浸透圧が低下し、肺や脳に浮腫が出現 |
| 【陰性症状】 | ●ブロイラー4A |
| 連合弛緩:思考のまとまりのなさ | |
| 感情障害:喜怒哀楽の感情が鈍かったり、逆に敏感すぎること | |
| 自閉:外界との接触を避け、殻に閉じこもる傾向 | |
| 両価性:同一の対象に、相反する感情(例:愛と憎しみ)を同時に抱くこと | |
| ●その他の陰性症状 | |
| 思考滅裂、思考途絶、言語新作、意欲低下、抑うつ気分、社会的引きこもり |
統合失調症の診断
| アルコールなどの薬物や身体疾患によらず、下記①〜⑤のうち2つ以上がそれぞれ1ヶ月以上持続しており(④+⑤は不可)、病気全体の経過が6ヶ月以上持続している | |
| ① | 幻覚(幻聴など) |
| ② | 妄想(学校、会社、家族など限局的ではなく、あらゆる場所で妄想が生じる) |
| ③ | 話のまとまらなさ(言葉に現れる連合弛緩) |
| ④ | 行動のまとまらなさ(行動に現れる連合弛緩)、または、カタトニア性の行動※ |
| ⑤ | 陰性症状(感情の平板化または意欲欠如) |
| 【カタトニア性の行動:以下の3つ以上を認める場合】 昏迷、カタレプシー、蝋屈症、無言、拒絶、姿勢保持、奇妙で大袈裟な動作、常同症、焦燥、しかめ面、反響言語、反響動作 |
統合失調症に隣接する症候群
| 妄想性障害 | 妄想だけが1ヶ月以上持続する場合 |
| 統合失調感情症 | 統合失調症+経過の半分以上の期間に抑うつ/躁エピソードあり |
| 自己臭妄想 | 思春期に始まり、自分の不快な臭いで周りの人に迷惑をかけていると考える |
| 自己視線恐怖 | 思春期に始まり、自分の目線が周りの人を不快にしていると考える |
| 身体醜形症 | 思春期に始まり、自分の見た目が醜くて周りの人を不快にしていると考える |
統合失調症の評価尺度
評価尺度を繰り返し使用して症状の推移を把握する。
| ①BPRS(簡易精神症状評価尺度) | 簡易的に精神症状を7段階で評価する |
| ②PANSS(陽性陰性症状評価尺度) | 詳細に精神症状を評価する |
| ③DIEPSS(薬原性錐体外路症状評価尺度) | 錐体外路症状の有無や程度を把握する |
統合失調症の治療
| 基本 | 診断後、非定型抗精神病薬の単剤を低用量から開始し、慎重に増量する |
| ※患者は病識を欠くため服薬アドヒアランスが悪い | |
| 例)パリペリドン(インヴェガ®) | |
| 例)アリピプラゾール(エビリファイ®) | |
| 例)ブレクスピプラゾール(レキサルティ®) | |
| 例)ブロナンセリン貼付(ロナセンテープ®) | |
| 例)ルラシドン(ラツーダ®) | |
| 例)アセナピン(シクレスト®) | |
| 例)リスペリドン(リスパダール®) | |
| 難治性 | クロザピン(クロザリル®) |
| 不穏時 | BZ系や抗精神病薬など |
| 非薬物療法 | 修正型電気けいれん療法(mECT) |
抗精神病薬の大量療法
| 概念 | 抗精神病薬をクロルプロマジン(CP)換算で合計し、CP換算1000mg以上が大量療法と定義される。大量療法ではドパミン受容体のアップレギュレーションを経て、より不安定なドパミン過感受性精神病(DSP)を招くため、薬物の減量を検討する。 |
| リスク | 錐体外路障害、メタボ、糖尿病、DSP |
| 注意① | アリピプラゾールとブレクスピプラゾールはドパミン部分作動薬のため、CP換算をする上で単純な足し算では計算しがたい。 |
| 注意② | DSPが長期間生じているところにアリピプラゾールを使用すると精神症状が悪化する可能性がある。 |
維持療法
| 薬物療法 | リスペリドン、パリペリドン、アリピプラゾールの持続性注射剤を検討 |
| 副作用対策 | 血液検査(1〜6ヶ月ごとに実施):高血糖、脂質異常症、SIADH、高PRL血症 |
| 心電図(3〜12ヶ月ごとに実施):QT延長 | |
| 体重測定(毎回実施):肥満 |

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