消化管穿孔
上部消化管穿孔 | 下部消化管穿孔 | |
原因 | ・十二指腸潰瘍(最多) ・胃潰瘍 ・特発性食道破裂 ・腫瘍(胃癌、悪性リンパ腫など) |
・大腸癌(最多):S状や横行結腸に多い ・特発性:S状結腸に多い ・憩室炎 ※上行/下行結腸、小腸穿孔は稀 |
Free air | 上腹部のみにFree air | 下腹部のみにFree air |
腹部CTにおける消化管穿孔の読影
①Free airを探す | 肝表、肝円策裂、尾状葉周囲、胆嚢周囲、モリソン窩、腸間膜間に多い |
②穿孔部位を探す | 発症から時間が経過し、上部下部両方にFree airを認める場合、Free airからでは穿孔部位はわからない |
③穿孔部位の特徴 | ・腸管壁の肥厚、造影効果増強、壁の欠損 ・周囲脂肪織濃度上昇(dirty fat sign) ・消化管内容物の逸脱(特に結腸からの便塊) |
消化性潰瘍穿孔
病態 | 潰瘍が深部まで及んで穿孔し、腹腔内に空気と内容物が漏出して急性腹膜炎をきたす病態。 (隣接臓器や大網に被覆され、内容物が腹腔内に流出しない場合は穿通という) 穿孔は十二指腸球部に好発する。 |
症状 | ①突然の上腹部激痛 ②急性腹膜炎症状:筋性防御(板状硬)、冷汗、炎症反応(発熱、WBC↑、CRP↑) |
検査 | 【身体検査】 聴診:腸雑音低下 触診:筋性防御(板状硬)、Blumberg徴候(反跳痛) 【画像検査】 立位X線:肝臓と横隔膜の間にfree air(+) 腹部CT(ヨード造影剤):同様にfree air確認(バリウムを用いた消化管造影は禁忌) 上部内視鏡検査:消化性潰瘍が疑われる場合は第一選択 |
治療 | <軽症の場合> 保存的治療(絶飲食、輸液、抗菌薬、PPI投与、経鼻胃管挿入→胃液吸引) →胃内は細菌が少なく潰瘍底の穿孔部はピンホール状の小さな穴手術をしなくても治癒する場合があるため。 <汎発性腹膜炎を伴う場合> 緊急手術、穿孔後8時間以内がGolden period。 |
下部消化管穿孔(大腸穿孔) Large bowel perforation
病態 | 憩室穿孔、大腸癌、内視鏡操作などの医原性によって消化管が穿孔し、糞便が腹腔内に侵入することで重篤な腹膜炎となるため、敗血症性ショックを引き起こす緊急疾患である。 |
症状 | 突然の腹痛(激痛) |
検査 | 胸腹部X線・CT(立位):Free air、穿孔部位を確認 ※注腸造影は腸管内圧を上昇させて腸管内容物の腹腔内漏出を助長する可能性のため禁忌 |
治療 | ①腹腔洗浄・ドレナージ:大腸は細菌数が多いため ②緊急手術:穿孔部位切除閉鎖術+人工肛門造設(Hartmann手術:肛門側の腸管は盲端となる )。腹膜炎が起こっている際に腸管を吻合ようとしても吻合できない。症状が落ち着いたら、吻合も検討する。 |
腹膜炎
腹膜刺激症状(腹膜炎症状)
通常、反跳痛→筋性防御→板状硬の順に進んでいく。
叩打痛 | 指2〜3本を使って患部を軽く叩いた特に感じる痛み |
反跳痛 | 内臓の炎症が腹膜に波及したとき、腹壁を強く圧迫して急に手を離した時に見られる鋭く刺すような痛み(Blumberg徴候) |
筋性防御 | 腹腔内の炎症による刺激が壁側腹膜に波及すると、肋間神経、腰神経を介して反射的に腹壁筋の緊張が亢進し硬く触れる現象。広範囲に筋性防御があるもの(汎発性腹膜炎)を、腹部全体の板状硬化という。 |
↓
腹膜刺激症状がある場合、その部位が限局か限局してないか
限局性腹膜炎 | 虫垂炎の波及、憩室炎の波及、全周性の腸炎など |
汎発性腹膜炎 | 上部消化管穿孔、下部消化管穿孔、急性膵炎、特発性細菌性腹膜炎など |
【筋性防御】
①消化管疾患 | 消化管穿孔:潰瘍,癌,虫垂炎,憩室,腸閉塞 消化管非穿孔:イレウス,腸閉塞,腸重積,軸捻転 |
②肝胆膵疾患 | 急性膵炎,胆囊炎(胆囊穿孔),肝膿瘍破裂 |
③骨盤腹膜炎 | 付属器炎,卵巣囊腫破裂 |
④外傷性 | 消化管損傷,膵損傷,肝胆道損傷 |
⑤医原性・手術後合併症 | 内視鏡による穿孔、手術時の腹腔内感染,縫合不全,ドレーン感染 |
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