消化器総論(解剖・生理・検査など)

消化器科

消化管解剖

消化管臓器

口腔・咽頭 輪状軟骨下縁より上 【唾液腺】
①耳下腺:漿液、Stenon管(Sideの管
②舌下腺:粘液、直接出るため管はない
③顎下腺:混合液、Wharton管(Ca結石で詰まると唾石症になる)
【歯】
歯科を参照
食道 咽頭〜食道胃接合部までの約25cm
見た目ツルツル
上部1/3は横紋筋、下部1/3は平滑筋、中部は混合
口腔(前歯)〜食道裂孔部(噴門部)まで約40cm(Th10)
【食道の生理的狭窄部】
食道入口部:C6
②気管分岐部:Th4-5
③食道裂孔部:Th10-11
噴門〜幽門
見た目シワシワ
【粘膜上皮】
主細胞:ペプシノゲン分泌
壁細胞:胃酸、内因子分泌
副細胞:ムチン分泌
【筋層】
3層:外縦筋、中輪筋、内斜筋
十二指腸 幽門〜Treitz靭帯 球部→下行部→水平部→上行部
Vater乳頭は下行部に開口する
空腸・回腸 Treitz靭帯〜回盲部
(全周性のヒダ)
小腸=十二指腸+空腸+回腸
回盲弁:回腸から盲腸への移行部の逆流防止弁
ケルクリングヒダ(輪状ヒダ):内部に全周性のヒダ
大腸 回盲部〜歯状線までに約1.5m 【大腸の特徴】
①ハウストラ:結腸膨起部
②結腸ひも:腸管漿膜面を縦走する索状構造
③半月ヒダ:内部に非全周性のヒダ
肛門 歯状線以下 下腸間膜Aと内腸骨Aの血流を受ける

組織・消化管壁構造

重層扁平上皮 口腔・咽頭・食道、肛門
単層円柱上皮 胃(噴門以下)〜大腸(歯状線以上)

【消化管壁の構造】

構造 ①粘膜(M)=粘膜上皮(EP)+粘膜固有層(LPM)
②粘膜筋板(MM)
③粘膜下層(SM)
 <マイスネル神経叢:粘膜の運動・線分泌を支配>
④固有筋層(MP)
 <アウエルバッハ神経叢:蠕動運動・分節運動を支配>
⑤漿膜下層(SS)
⑥漿膜(S)
漿膜を欠く部位 食道、腹膜腔より下位の直腸
粘膜筋板を欠く部位 ①下咽頭、②胆囊(粘膜下層もない)

腹腔内臓器と後腹膜臓器

腹腔内臓器 臓器全体が漿膜に
被覆されたもの
胃、空腸、回腸、横行結腸、S状結腸、虫垂
  表面が漿膜によって
大半が覆われたもの
肝臓、盲腸、卵巣(覆われてない部分から排卵できる!)
後腹膜臓器 表面が漿膜によって
半分が覆われたもの
子宮、膀胱
  後腹膜臓器 腎臓、腎臓、副腎、尿管、膵臓、腹部大動脈+下大静脈(これらの臓器は結合組織の中で固定されている)
五時十二分に噴水の下腹膜、臓、十二指腸、腎、尿管、大A、臓、大V
  後腹膜に固定
されている消化管
十二指腸(球部除く)、②上行結腸、③下行結腸、④直腸 ※これら4点は腸管膜を持たず固定されているため捻転しない(◇:12時を頂点に菱形に固定!
→人工肛門は腹腔内で固定されていない腸管(小腸、横行結腸、S状結腸)を用いる

腹部大動脈から分岐する動脈の順

①腹  腹腔A:
①左胃A
②脾A:
 短胃A、左胃大網A、後膵A
③総肝A:
 固有肝A(→右胃Aを分岐)
 胃十二指腸A(→前・後上膵十二指腸A、右胃大網Aが分岐)
②上の死は 上腸間膜動脈(SMA)
 下膵十二指腸A、中結腸Aの右枝など(空腸〜右側結腸)が分岐
③人 腎A
④生の夢で 精巣A(卵巣A)
⑤した 下腸間膜動脈(IMA)
 左結腸A、S状結腸A、上直腸Aなど(左半結腸〜直腸)が分岐
そうなんや 総腸骨A:
 
内腸骨A(→下部直腸を栄養)
 外腸骨A(→鼠径靭帯を越えると大腿Aに名称変更)

門脈 portal vein

門脈は腹側からGAP(胆管>肝動脈>門脈)で覚える!

      門脈圧亢進時
門脈 左胃静脈 ←下部食道 食道静脈瘤
  静脈 ←短胃静脈
←下腸間膜静脈(IMV)←上直腸静脈
胃静脈瘤、脾腫
内痔核
  上腸間膜静脈(SMV)
  臍傍静脈 ←肝円索 腹壁静脈怒張

神経

  交感神経 副交感神経
食道 大内臓神経 迷走神経
Th5〜9 迷走神経
  迷走神経
心臓   迷走神経

肝胆膵解剖

肝臓の機能

①解毒作用 尿素サイクル:アンモニア→尿素
グルクロン酸抱合:間接Bil→直接Bilなど
②同化作用 蛋白合成:Alb、ハプトグロビン、凝固因子など
脂質合成・貯蔵:Chol合成
糖貯蔵・放出:グリコーゲン合成、糖新生
③胆汁酸の産生  
その他 クッパー細胞は貪食作用、伊東細胞はビタミンA貯蔵とコラーゲン産生

肝臓の構造

Calot三角の中を(右肝Aから分岐した)胆嚢Aが通ることが多い。

吸気時には膨張した肺に圧排されて肝臓は尾側へ移動するため、触知しやすい。

グリソン鞘   門脈三つ組     肝臓での動き   下大Vへ
肝A 小葉間A 類洞 肝細胞に酸素を供給 中心V
門脈 小葉間門脈 類洞 肝細胞に栄養を供給 中心V
肝内胆管 小葉間胆管 毛細胆管 肝細胞からに胆汁分泌    

膵臓の構造

膵体部は、門脈左縁と大動脈左縁の間に位置する。

生理

栄養素の吸収

  栄養素の吸収過程
水分 約80%が小腸で、残り約20%が大腸で吸収される
1日消化液分泌量(唾液1.5L、胃液1.5〜3L、腸液2〜4L、胆汁500mL、膵液700mL)
炭水化物
(デンプン)
①唾液・膵液中のアミラーゼでデンプン→マルトースまで分解
②腸液中のマルターゼでマルトース→グルコースまで分解
③Naとの共輸送により空腸より吸収
※スクロース、ラクトースは腸液の酵素で単糖に分解され空腸より吸収
蛋白質 ①胃液中のペプシンで蛋白質→ポリペプチドまで分解
②膵液中のトリプシンなどでポリペプチド→オリゴペプチドまで分解
③腸液中のアミノペプチダーゼなどでオリゴペプチド→アミノ酸まで分解
④Naとの共輸送により空腸より吸収
脂肪 ①膵液中のリパーゼで中性脂肪→遊離脂肪酸+モノグリセリドに分解
②胆汁酸によってミセル化される
③単純拡散により空腸より吸収→アポ蛋白と結合してカイロミクロンとなる
長鎖脂肪酸→リンパ管へ、中鎖脂肪酸→門脈へ運ばれる
鉄(Fe3+)
Ca
Mg
鉄:胃酸+ビタミンCによってFe2+に還元→十二指腸〜空腸上部で吸収
Ca:十二指腸〜空腸上部で吸収→ビタミンDによってCa吸収促進
Mg:十二指腸〜空腸上部で吸収(12本の鉄火巻きで覚える)
ビタミンB12
胆汁酸
ビタミンB12:内因子と結合→回腸末端で吸収
胆汁酸:脂溶性ビタミンなどと一緒に回腸末端で吸収

消化管ホルモン

ホルモン 分泌細胞 機能
ガストリン 胃幽門部&十二指腸上部のG細胞 ①胃酸分泌促進(高Ca血症でもガストリン分泌促進)
②ペプシン分泌促進
③胃内容物消化促進:胃運動促進+下部食道括約筋収縮+幽門括約筋・Oddi括約筋弛緩
【血中ガストリン上昇】
Zollinger-Ellison症候群、A型胃炎、迷走神経切除術後、PPI長期投与時
【血中ガストリン低下】
胃内過酸状態、ダンピング症候群(胃切除後)
CCK 小腸上部I細胞 ①胆汁分泌促進:胆嚢収縮+Oddi括約筋弛緩
②膵酵素分泌促進:膵腺細胞に作用
※膵酵素:トリプシン、リパーゼ、アミラーゼなど
セクレチン 十二指腸S細胞 ①膵液分泌促進:膵導管細胞に作用しHCO3-分泌促進
胆汁分泌促進:胆嚢収縮
③胃酸流入抑制:ガストリン分泌抑制+幽門括約筋収縮
グルカゴン 膵A細胞 ①肝グリコーゲンの分解
②インスリン分泌促進
③消化管運動抑制作用
GIP 十二指腸K細胞 インスリン分泌促進
②胃酸・ガストリン分泌抑制
VIP 小腸上部H細胞 ①小腸から水分+電解質分泌促進
②胃酸・ガストリン分泌抑制
③末梢血管拡張、心拍出量増加
ソマトスタチン 膵胃などD細胞 各ホルモン分泌抑制
モチリン 小腸M細胞 空腹時消化管運動促進
グレリン 胃内分泌細胞 ①食欲増進、胃酸分泌促進
②GH分泌促進

胃酸分泌機構

  胃液の分泌相
脳相 視覚・味覚・嗅覚によって迷走神経を介して壁細胞のM3を刺激する。
胃相 食事中のアミノ酸がガストリン分泌を促進し、壁細胞を刺激する。
腸相 胃液が十二指腸に到達するとブルンネル腺からアルカリ液が分泌され、胃酸分泌は抑制される。

嚥下の生理

耳鼻咽喉科を参照

排便の生理

糞便が直腸壁を押し広げ(直腸内圧↑)、便意が生じる
直腸肛門反射を介して内肛門括約筋が弛緩する
蹲踞・いきむことで肛門管と直腸が直線化(肛門直腸角開大)し、陰部神経→外肛門括約筋+肛門挙筋群(恥骨直腸筋、恥骨尾骨筋、腸骨尾骨筋)が弛緩して糞便が押し出される

検査

上部消化管内視鏡検査 十二指腸下行脚(2ndポーション)まで観察可
Vater乳頭は重要なメルクマールとなる
※消化管の運動を抑える目的で抗コリン薬を筋肉注射(緑内障確認)
下部消化管内視鏡検査 大腸を観察
注腸造影検査 腫瘍や憩室などの病変(最近あまり行われない)
カプセル内視鏡 上部・下部内視鏡検査で異常を認めない原因不明の消化管出血
CTなどで同定ができない微小出血や血管性病変などの検出も可能
腹部造影CT 消化管出血の部位の同定、腫瘤性病変や炎症性病変の検索に有用

★★消化管手術の周術期管理

術前管理 固形物摂取:軽食は6時間前まで(消化器手術は術前1日前〜半日前に中止)
液体摂取:清澄水は術前2時間前に中止、人工乳や牛乳は術前6時間前に中止
剃毛:手術において邪魔になる体毛のみを手術直前にバリカンなどで切毛
術中管理 第二世代セフェム系抗菌薬を皮膚切開直前30〜60分に投与
室温を高めにし、温風対流式ブランケットなどを用いて体温維持を図る
術後管理 <飲食物>
消化器手術:手術後は腸管運動が回復した頃を見計らい、水分から徐々に経口摂取を開始し、流動食開始はできるだけ早く開始(だいだい術後2〜3日後から)
その他の手術:術後24時間以内に経口摂取開始
<早期離床>
手術直後は腸管運動が低下するため、早期離床にて腸管運動を促進させ、逆流による誤嚥性肺炎や腸管癒着のリスクを防止する。開腹手術後、胃は24時間、小腸は数時間〜10時間、大腸は2〜3日で蠕動運動が再開する。
<尿量>
手術後の尿量:1時間に0.5mL×体重(kg)を最低維持
ドレーン 仰臥位において腹水の貯留する場所は、①左右横隔膜下、②網囊(Winslow孔)、③Morrison窩、④左右傍結腸、⑤膀胱直腸窩であり、ドレーンは術式に応じて吻合部・郭清部に近い場所に留置する

栄養投与法

  条件 期間、投与法
経口摂取 咀嚼・嚥下に障害がない 規定なし
②経腸栄養
※徐々に投与量を増やす
経口摂取できない かつ
消化管を安全に使用できる
4~6週間以内なら経鼻経腸
4~6週間以上なら胃瘻・腸瘻
③経静脈栄養 経口摂取できない かつ
消化管を安全に使用できない
2週間未満なら末梢静脈栄養
2週間以上なら中心静脈栄養

低蛋白血症

蛋白素材の不足 飢餓、吸収不良症候群など
蛋白合成能の低下 肝硬変、無アルブミン血症など
血液の希釈 妊娠
蛋白の体腔内への移行 胸水、腹水
蛋白の体外への移行 ネフローゼ、蛋白漏出性胃腸症、熱傷、失血など
蛋白の異化亢進 炎症性疾患、悪性腫瘍、甲状腺機能亢進症など

穿孔・穿通

穿孔 遊離穿孔 糞便性腹膜炎に移行しやすく、ショック、DIC、敗血症など急速に症状が進行するため緊急手術が必要
  被覆穿孔 穿孔部位が周囲臓器に被覆された状態。限局性の膿瘍となり、汎発性腹膜炎を引き起こさないこともある。
穿通 =瘻孔形成 穿孔部が隣接した臓器と交通して瘻孔を形成すること

 

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