代謝疾患(糖尿病、脂質異常症、メタボ、痛風、骨代謝)

内分泌代謝科

代謝総論

トリグリセリド(TG)

吸収
or
生成
<外因性>
①TGは主に膵リパーゼによってモノグリセイドと脂肪酸に分解され、胆汁に取り込まれ(ミセル化=乳化)、小腸で吸収される。
②小腸上皮でTGに再合成され、滑面小胞体でアポ蛋白と結合してカイロミクロン(CM)となり、リンパ管に送られる。
③リンパ管から胸管に集められ静脈に流入する。
<内因性>
①肝臓で合成されたTGはアポ蛋白と結合してVLDLとなり、血中に放出される。
※ステロイドホルモン、GHは肝臓でのVLDL合成を高め、甲状腺ホルモンは抑制する。
分布 ①CMやVLDLは血管内皮細胞に存在するリポ蛋白リパーゼ(LPL)によってTGが分解され、脂肪酸が脂肪組織や筋肉に取り込まれる。
インスリンはLPL活性を高め血清TGを低下させる。そのため、インスリン抵抗性やインスリン欠乏ではLPLが低下してVLDL〜LDLが低下し、TGが上昇する。
②脂肪組織に取り込まれた脂肪酸は再びTGに再合成され、筋細胞に取り込まれた脂肪酸はエネルギー源として利用される。
代謝 VLDLはLPLによって分解され、VLDL→IDL→LDLとなる。
排泄 TGはβ酸化によってエネルギー源となり、分解される。

コレステロール(Chol)

※女性ホルモンはLDLやTGを低下させるので、閉経後に増加をきたしやすい。

<Friedewaldの式(空腹時)>
LDL-C(mg/dL)=総コレステロール(mg/dL)-HDL-C(mg/dL)-TG(mg/dL)/5

吸収
or
生成
<外因性>
①コレステロール(脂溶性ビタミンを含む)は、胆汁に取り込まれ(ミセル化=乳化)、小腸で吸収される。
②小腸上皮でカイロミクロン(CM)の一部として、リンパ管に送られる。
③リンパ管から胸管に集められ静脈に流入する。
<内因性>
①肝臓で合成されたコレステロールはアポ蛋白と結合してLDLとなり、血中に放出される。
※甲状腺ホルモンはLDL受容体の発現を増加させ、血中コレステロールを低下させる。
分布 組織のLDL受容体によってLDLが取り込まれ、細胞に取り込まれる。
代謝 ①組織で不要になったコレステロールはレシチン・コレステロールアシルトランスフェラーぜ(LCAT)によってエステル化されHDLに取り込まれる。
②HDLに取り込まれたコレステロールエステルは肝臓に取り込まれる。または、コレステロールエステル転移蛋白(CETP)の働きによってHDLからLDLに移される。
排泄 不要なコレステロールはβ酸化によって一次胆汁酸(コール酸)と変換され胆汁に取り込まれ十二指腸に排泄される。
排泄された胆汁酸は腸内細菌により二次胆汁酸(デオキシコール酸)と変換され、一部は回腸末端で吸収され再利用される(腸管循環)。

アディポサイトカイン

脂肪細胞はエネルギーを中性脂肪として貯蔵するばかりでなく、様々な分泌蛋白質(アディポサイトカインという)を分泌して、全身の代謝や動脈硬化を調節する。

悪玉アディポカイン 善玉アディポカイン
①TNFα:インスリン抵抗性↑
②PAI-1:血栓形成↑
③アンジオテンシノーゲン:血圧↑
④HBEGF:血管平滑筋の増殖
⑤レジスチン:インスリン抵抗性↑
アディポネクチン:抗動脈硬化、抗炎症、インスリン感受性↑
②レプチン:食欲抑制、脂肪分解↑

インクレチン

分泌 小腸に食物の通過が刺激となり、小腸上皮の内分泌細胞から血中に分泌される。
インクレチンはGIPとGLP-1があり、どちらも膵β細胞に作用し、血糖値に依存してインスリン分泌を促す。
代謝 血管内皮細胞や血中の白血球などに発現するDPP-4という蛋白分解酵素で分解される。半減期は数分とごく短い。
GIP 小腸上部K細胞から分泌される。体重増加作用あり。
GLP-1 小腸下部L細胞から分泌される。体重減少作用あり。

SGLT

  発現部位 機能
SGLT1 小腸、腎尿細管  
SGLT2 腎尿細管  
GLUT1 種々の臓器  
GLUT2 肝臓、膵臓  
GLUT3  
GLUT 筋肉、脂肪細胞  
GLUT5 小腸  

★★★糖尿病 DM:Diabetes Mellitus

インスリン作用の絶対的または相対的不足により様々な代謝異常をきたす疾患。

分類 1型DM、2型DM(95%以上)、妊娠DMなど
【高血糖緊急症】
①劇症1型DM、②DKA、③HHS
血糖変動 暁現象:GH分泌により血糖値↑してインスリンが不足する(→夜間インスリン補充)
ソモジー効果:低血糖を回避しようとグルカゴン分泌され高血糖となる
合併症①【細血管障害】 しめじ:神経→眼→腎
<①末梢神経障害>
→高血糖持続が約5年で出現
高血糖の持続により神経が変性したり、神経を栄養すると毛細血管が障害されて緩徐に生じる末梢神経障害。多発ニューロパチー型が圧倒的に多い。
多発ニューロパチー型:糖代謝障害(特にポリオール経路)
 感覚神経障害:左右対称の手袋靴下型の知覚異常、アキレス腱反射消失
 自律神経障害:起立性低血圧下痢・便秘、勃起不全など
②多発単ニューロパチー型:微小循環障害→急激に発症する!
 単一神経障害(主に運動神経):動眼神経麻痺、正中・尺骨神経麻痺など
 ※多発単ニューロパチー型の予後は良好で数ヶ月以内に自然寛解する
<②網膜症>→高血糖持続が約10年で出現
単純網膜症:硬性白斑、網膜出血、毛細血管瘤など
増殖前網膜症:軟性白斑など
増殖網膜症:新生血管増殖、硝子体出血、網膜剥離など
詳細は眼科の糖尿病網膜症を参照。
<③腎症>→高血糖持続が約15〜20年で出現
糸球体硬化症:蛋白尿、尿中Alb、浮腫、高血圧、腎不全
詳細は腎臓内科を参照。
合併症②【大血管障害】 <動脈硬化>
心血管障害:心筋梗塞などの虚血性心疾患が多い
脳血管障害:脳梗塞が多い
閉塞性動脈硬化症:末梢動脈疾患(PAD)
合併症③【その他】 Charcot関節、浮腫性硬化症、悪性腫瘍(肝臓癌、大腸癌、膵癌)、認知症、歯周病、白内障、緑内障、骨粗鬆症、易感染性
【糖尿病に伴うデルマドローム】
糖尿病性壊疽、Dupuytren拘縮、糖尿病性リポイド類壊死症、前脛骨部色素斑など

1型糖尿病

疫学 25歳以下に好発
病態 ①細胞障害性Tリンパ球による膵β細胞の破壊によりインスリン産生低下
抗インスリン抗体によって血中インスリン欠乏(インスリン自己免疫症候群
原因は多くは自己免疫性(=抗ins抗体)であるが、不明な場合もある。
(緩徐に発症する緩徐進行1型DM、1〜2日で発症する劇症1型DMもある)
症状 劇症1型糖尿病の場合は感冒様症状の数日〜数週後に(約70%)、
急激な口渇・多飲・多尿・全身倦怠感、腹痛を伴うことがある
検査 【血液検査】
緩徐進行1型DM:膵島関連自己抗体(+)→抗GAD抗体、膵島細胞抗体(ICA)、抗インスリン抗体(IAA、IA-2抗体)
劇症1型の場合:膵島関連自己抗体(ー)、随時血糖値288以上、かつ、HbA1c8.7未満、アミラーゼ↑
【尿検査】
糖+、ケトン体+
【内因性インスリン分泌能検査】
①の場合、1日尿中Cペプチド値(正常40~80μg/日)が10μg/日未満
②の場合、1日尿中Cペプチド値は正常
治療 【運動・食事療法】2型DMと同じ
【薬物治療】インスリン皮下注、劇症の場合は速効型インスリン少量持続静脈投与

2型糖尿病

疫学 40歳以上に好発、家族歴と関連
リスク↓:食物繊維摂取(血糖値の急激な上昇抑制・満腹感で食欲抑制)
病態 過食や肥満などによるインスリン抵抗性および続発性のインスリン分泌障害
症状 軽〜中等度の高血糖:無症状
高度の高血糖:全身倦怠感、多飲・多尿、口渇、体重減少、意識障害
検査 【身体検査】
視診:腋窩・頸部・鼠蹊部に黒色表皮腫(高インスリン血症)
【DM診断基準】
空腹時血糖126以上、随時血糖 or 経口Glu負荷試験(OGTT)200以上、HbA1c6.5%以上いずれか該当+糖尿病典型症状や網膜症がある場合、または血糖値とHbA1cいずれも基準値以上の場合に糖尿病と診断。
※糖尿病と判明しているのにOGTTを行うのは禁忌!
【内因性インスリン分泌能検査】
1日尿中Cペプチド値(正常40~80μg/日)が20~100μg/日
治療 【運動療法】
定期的な20~60分程度の有酸素運動によりインスリン抵抗性を改善
ただし、増殖網膜症による新鮮な眼底出血、進行した腎症ケトアシドーシス、空腹時血糖250以上の場合などは運動療法禁忌!
【薬物治療】
①インスリン分泌促進:SU薬、フェニルアラニン誘導体、DPP-4阻害薬、GLP-1作動薬
②糖吸収排泄調節:αグルコシダーゼ阻害薬、SGLT2阻害薬
③インスリン抵抗性改善:ビグアナイド薬、チアゾリジン誘導体
④インスリン皮下注:経口薬で効果不十分な場合・妊娠中・腎機能障害
※インスリンによる急速な血糖降下療法は網膜症を悪化させるため、少量から開始し、数週間以上かけて緩徐に血糖を改善させる必要がある
※インスリンは未使用のものは冷蔵で、使用中のものは常温で保存する(使用中のものを冷蔵庫に出し入れすると結露で故障する可能性がある)

ステロイド糖尿病

病態 肝臓や筋肉のインスリン抵抗性によって、糖取りこみ低下による食後血糖の上昇(特に昼食・夕食後)が生じる。これによりインスリン分泌は代償性に亢進し、肝の糖新生を抑制するため、空腹時血糖は当初は上昇しない。
ステロイド投与が長期にわたるとインスリン分泌亢進を介した代償機転の破綻およびステロイド自体によるインスリン分泌抑制効果により肝臓の糖放出が増加し、空腹時血糖も上昇するようになる。
検査 【血液検査】
昼夕食後2時間血糖の高値が特徴
治療

シックデイ

概念 糖尿病患者が感染症にかかり、発熱、下痢、嘔吐、食欲不振によって食事ができないときのこと
対応 自己血糖測定は4〜6時間おきに行い、血糖350mg/dL以上が4回以上続く場合や、悪心・嘔吐などがあり食事が摂れない場合には病院の医師に連絡する

妊娠中の糖代謝異常

詳細は産科を参照。

糖尿病合併妊娠 糖尿病が妊娠前から存在している
妊娠糖尿病(GDM) 妊娠中に初めて発見または発症したDMに至っていない状態
妊娠時に診断された糖尿病 妊娠中に糖尿病の診断基準を満たすもの

糖尿病性昏睡 Diabetic coma

病態 DMの代謝異常が高度の場合、意識障害から昏睡に至り、ときに死亡する。
原因 糖尿病ケトアシドーシス、高血糖高浸透圧症候群、乳酸アシドーシス、低血糖性昏睡

★糖尿病ケトアシドーシス DKA:Diabetic KetoAcidosis

疫学 1型DMやインスリン依存状態(2型DMも含む)の患者
病態 高度のインスリン欠乏時、脂質分解が亢進して高血糖と著しいケトン体の蓄積が起こり、脱水と意識障害をきたす病態。
【ソフトドリンクケトアシドーシス(2型糖尿病)】
若年の2型DM患者で肥満によるインスリン抵抗性に加えて、ソフトドリンクの多飲によるインスリン分泌低下からケトアシドーシスを発症するケースも増加している。
症状 ①高血糖による症状
意識障害、昏睡、多飲・多尿、脱水、口渇、血圧低下、頻脈
②ケトン体蓄積による症状
消化器症状(悪心嘔吐、腹痛)、代償性の過換気(Kussmaul呼吸)、呼気アセトン臭
検査 【血液検査】
WBC↑(ケトン体蓄積による)、K↑(インスリン作用不足によって細胞内Kが細胞外に移動して高カリウム血症となる)
【尿検査】
尿ケトン体↑
【動脈血ガス分析】
AG↑の代謝性アシドーシス:ケトン体蓄積による
治療 ①脱水に対して0.9%生理食塩水の大量投与
②高血糖に対して速攻型インスリン静注(脳浮腫に注意)→少量持続点滴
③インスリン投与による低K血症予防のためKClを輸液に追加(急速投与禁忌)
④インスリン投与によりアシドーシスは改善するため重炭酸Naは原則投与しない

高血糖高浸透圧症候群 HHS:Hyperglycemic Hyperosmolar Syndrome

疫学 口渇感の低下した中高年に好発
軽度の2型DM患者に多い(インスリン非依存状態の患者)
病態 高齢者では口渇感が少なく、高血糖および浸透圧利尿による脱水から高浸透圧に陥っても飲水が不十分であるため、高浸透圧が進行し意識レベルの低下を生ずる病態。
ケトアシドーシスは欠如または軽微である
症状 ①高血糖による症状
高度脱水による皮膚・口腔粘膜乾燥、血圧低下、頻脈
痙攣、精神障害:脳細胞内脱水による精神神経症状
検査 【血液検査】
血糖300以上の高血糖、血漿浸透圧320mOsm/L以上
脱水によるBUN↑Cr↑Ht↑
治療 ①脱水に対して0.9%生理食塩水の大量投与
②高血糖に対して速攻型インスリン静注(脳浮腫に注意)→少量持続点滴

★乳酸アシドーシス

  乳酸アシドーシス 糖尿病ケトアシドーシス
原因 乳酸の蓄積 ケトン体の蓄積
リスク因子 ビグアナイド薬、腎機能障害、飲酒など 高血糖
鑑別   呼気のアセトン臭

★★低血糖症 Hypoglycemia

病態 血糖値70未満により生じる病態。インスリン過剰分泌の場合とインスリン分泌に依存しない場合に分類される。
低血糖後にはインスリン拮抗ホルモンが増加し、リバウンド現象(反跳現象)により、血糖値がさらに上昇する現象(ソモジー効果)が起こる。
①インスリン過剰分泌
インスリノーマ医原性(SU薬、インスリン過剰投与)、反応性低血糖(甲状腺機能亢進症、ダンピング症候群)、インスリン自己免疫症候群(ーSH基を持つ薬剤)など
②インスリン分泌に依存しない場合
インスリン拮抗ホルモン↓(下垂体前葉機能低下症副腎皮質機能低下症、甲状腺機能低下症)、糖新生↓(糖原病アルコール、肝障害)、糖の消費↑(悪性腫瘍)、インスリン作用を有するホルモン↑(IGF産生腫瘍)
※インスリン拮抗ホルモン:コルチゾール、GH、カテコラミン、グルカゴン
症状 ①交感神経刺激症状(血糖値:70mg/dL以下)
頻脈、発汗、振戦、顔面蒼白、血圧上昇
②中枢神経症状(血糖値:50mg/dL以下)
頭痛、目のかすみ、生あくび、集中力低下、さらに悪化すると異常行動、痙攣、意識障害
検査 【血液検査】
血糖値70未満、インスリン↓、インスリン拮抗ホルモン↓、抗インスリン抗体
治療 意識がある場合:ブドウ糖を含むジュースを飲ませ、再び15〜30分後を目安に血糖を測定して70mg/dL以上になっていることを確認する
意識がない場合:ブドウ糖や砂糖を口唇と歯肉の間に塗り付ける(無理に飲ませると誤嚥や窒息の原因になる)。50%Gluを20〜40mL静注、グルカゴン1mg筋注

★【小】ケトン性低血糖症・アセトン血性嘔吐症

  ケトン性低血糖症 アセトン血性嘔吐症(周期性嘔吐)
病態 血糖維持機構の未熟性による低血糖 原因不明の周期的な嘔吐
好発年齢 1〜5歳 2〜10歳
出産時状況 未熟児、低出生体重児に多い 特になし
非発作時血糖 正常 正常
発作の誘因 摂食不良(特に夕食抜き) 精神的ストレス、感染
発作時ケトーシス
発作時低血糖
発作時けいれん
予防 高炭水化物の摂取 ストレスを避ける
その他 10歳頃までに自然に治る 思春期になると自然に治る

糖原病Ⅰ型(von Gierke病)

病態 G6PD欠損により肝臓にグリコーゲンが蓄積する疾患。多くは染色体性遺伝。
症状 ①空腹時低血糖発作:G6Pからグルコースに変換できないため
鼻出血:出血傾向のため
③腹部膨満感:肝腫大のため
検査 【血液検査】
空腹時低血糖+高乳酸血症、高尿酸血症、TG↑
治療 低血糖予防

★脂質異常症(高脂血症)

病態 高LDL-C血症、低HDL-C血症、高TG血症のいずれかを満たす病態。脂質異常症は動脈硬化の原因となる。また、高度のTG血症は急性膵炎の原因となる。
家族性ないし特発性に発症する原発性(60%)と基礎疾患に続発する二次性(40%)に分類される。
家族性
常・優であり、Ⅱa型(LDL受容体欠損)。LDL180以上、眼瞼黄色腫(眼瞼内側の黄色い皮腫)、アキレス腱の肥厚などが特徴である。
<二次性高LDL-C血症>
Cushing症候群、甲状腺機能低下症、ネフローゼ症候群、閉塞性黄疸、原発性胆汁性胆管炎(PBC)、糖尿病、薬剤性などがある。
<二次性TG血症>
飲酒、肥満、糖尿病、Cushing症候群、尿毒症、SLE、薬剤性などがある。
症状 自覚症状なし
検査 【血液検査】
LDL140以上(120〜139は境界型)、HDL40未満、TG150以上
治療 【原発性】
食事・運動療法を行い、無効なら薬物療法。
高LDL-C血症(Ⅱa、Ⅱb型)にはスタチン系、高TG血症(Ⅳ型、Ⅴ型)にはフィブラート系やEPA・DHAを投与。
難治性や家族性の場合は抗PCSK9抗体を投与。
【二次性】
基礎疾患に対する治療

【脂質異常症の分類】

Ⅱ〜Ⅳ:内因性、V:混合性、I:外因性。Ⅱaが最多。血清外観はVLDL・レムナント上昇で白濁し、CM上昇でクリーム層形成。

  正常 Ⅱa Ⅱb V I
血清外観 透明 透明 透明〜白濁 白濁 白濁 クリーム層+白濁 クリーム層+透明
リポ蛋白異常増加 LDL LDL
VLDL
IDL
レムナント
VLDL CM
VLDL
CM
Chol    
TG   ↑↑ ↑↑ ↑↑ ↑↑↑ ↑↑↑
原因 LDL受容体障害 VLDL分泌亢進 アポ蛋白E異常 VLDL/TG異化異常 不明 先天的LPL欠損
遺伝形式 常・優 常・優 常・劣 常・優 常・優? 常・劣
発症時期 30歳前後 30歳前後 成人後 成人後 成人後 生下時
スタチン スタチン フィブ フィブ

栄養の異常

【栄養の指標】

静的指標
(長期的な栄養状態)
身体測定値:腹囲,BMI,上腕三頭筋皮下脂肪厚,上腕筋囲,握力
血液検査:Alb値,総Chol値,ChE,末梢血リンパ球数,ビタミン,微量元素
動的指標
(短期的な栄養状態)
高代謝回転蛋白:トランスサイレチン,レチノール結合蛋白,トランスフェリン
蛋白代謝動態指標:尿中3-メチルヒスチジン
アミノ酸代謝動態指標:アミノグラム

メタボリックシンドローム

病態 動脈硬化疾患の危険性を高める状態。
内臓脂肪由来の悪玉アディポカイン(TNF-α)↑、善玉アディポカイン(アディポネクチン)↓によりインスリン抵抗性や耐糖能異常をきたす。
症状 なし
検査 【診断基準】(① かつ ②〜④のうち2つ以上を満たす)
①腹囲 男性85cm以上、女性90cm以上
②空腹時血糖 110以上
③血圧 収縮期130以上 and/or 拡張期85以上
④脂質 TG150以上 and/or HDL40以下
※総C・LDL-Cは、メタボリックシンドロームにおいてはあまり上昇しないため基準に含まれない(ただし、心血管疾患の最大の危険因子である)。
治療 食事・運動療法によって内臓脂肪を減らす
アルコール摂取はエタノール換算で25g/日(日本酒換算で1合程度、ビール換算で500mL 1本程度)まで

肥満

病態 BMI25以上を肥満と定義する。原発性(90%以上)と二次性に分類される。
原発性肥満は皮下脂肪型と内臓脂肪型に大別され、皮下脂肪型に比して内臓脂肪型は動脈硬化や2型糖尿病を発症しやすい。
肥満のうち、健康障害を合併する状態を肥満症という。
二次性 Cushing症候群、甲状腺機能低下症、インスリノーマ、Laurence-Moon-Biedl症候群、Prader-Willi症候群、Tuner症候群、フレーリヒ症候群、ステロイド内服、向精神薬内服
合併症 耐糖能異常・2型DM、脂質異常症、高尿酸血症、変形性膝関節症、睡眠時無呼吸症候群など
治療 食事・運動療法、行動療法、胃内腔縮小術、胃バイパス術など

Refeeding症候群(再栄養症候群)

病態 長期の絶食や栄養障害後に、急激に栄養状態を補正することで発症する一連の代謝合併症の総称。長期にわたり著しい低栄養が続いた体へ急激に糖質が流入することで、低P血症、低K血症、低Mg血症,ビタミンB1欠乏症、高血糖などが引き起こされ、脱水、昏睡、心不全などを呈することもある。
リスク因子 神経性食欲不振症
症状  
検査 【血液検査】
K、Mg、Pを必ず確認
治療 栄養投与は原則として低速・少量から開始し、1週間程度で目標の速度・投与量に到達するように設定する。ビタミンB1やリンを含む電解質の投与や血糖値、心電図のモニタリングを行いながら、経口・経腸で少量から再栄養を行う必要がある。

骨代謝異常

骨粗鬆症 osteoporosis

疫学 リスク因子:閉経、無月経、加齢、偏食、運動不足、喫煙、飲酒、ステロイド、胃切除
病態 骨基質と骨塩の比が一定のまま骨量が減少した病態。
高回転型(閉経後骨粗鬆症):骨吸収>骨形成
低回転型(加齢性骨粗鬆症):骨吸収↓骨形成↓
【続発性骨粗鬆症】
Cushing症候群、甲状腺機能亢進症、副甲状腺機能亢進症、糖尿病、性腺機能低下症
症状 ①腰背部痛
②身長短縮
【合併症】
骨折:大腿骨近位部骨折、上腕骨近位部骨折、橈骨遠位部骨折(Colles骨折など)
検査 【骨密度測定】
若年成人平均値(YAM)の70%未満(確定診断)
※骨密度は20歳でにピークに達し、40歳までピーク値が保たれ、その後減少する!
【画像検査】
腰部X線:魚椎化等の変形(椎体中央部の陥凹)
治療 ①SERM、ビスホスホネート、カルシトニン、抗RANKL抗体、PTH注射、活性化ビタミンD、ビタミンK2

ステロイド性骨粗鬆症

疫学 リスク因子:既存骨折、高齢、ステロイド高用量、骨密度低下
病態 経口ステロイドを3ヶ月以上使用
症状 骨粗鬆症と同じ
検査 骨折危険因子をスコアで算出
治療 スコア3以上:ビスホスホネート製剤(アレンドロン、リセドロン)

骨軟化症・くる病

病態 骨の石灰化不全により骨強度が低下した病態で、骨端線閉鎖前の小児期に発症するものをくる病という。下記原因によって血清CaやPが低下して石灰化障害が生じ、骨芽細胞の骨型ALP活性は代償的に亢進する。
【原因】
①ビタミンD欠乏:経口摂取不足、日光曝露不足、吸収障害(胆汁排泄障害:胆道閉鎖症、吸収不良症候群:Crohn病など)、慢性腎不全、肝障害(新生児肝炎)、フェニトイン長期服用
②ビタミン代謝異常:ビタミンD活性化障害(長期血液透析)、ビタミンD受容体異常
③P欠乏:摂取不足(早産児)、尿細管異常(Fanconi症候群、尿細管性アシドーシスなど)、遺伝子異常(家族性低P血症)、腫瘍性骨軟化症(FGF23過剰分泌)
④Ca欠乏:摂取不足(早産児)
症状 【成人】手のこわばり・関節の痛みや違和感(初期症状)、骨の自発痛・圧痛病的骨折、筋力低下
【小児】低身長、くる病念珠(肋骨軟骨接合部の腫大)、下肢O脚
検査 【血液検査】
Ca↓P↓ALP↑、PTH↑
【画像検査】
X線:手根骨の杯状変形
治療 ビタミンD欠乏:活性型ビタミンD投与
低P血症:P投与

コメント

タイトルとURLをコピーしました