結晶誘発性関節炎(高尿酸血症・痛風、偽痛風)

内分泌代謝科

偽痛風(結晶誘発性関節炎の一つ)

疫学 中年以降に好発
病態 ピロリン酸Caが関節腔内に析出し、関節軟骨に障害をきたす関節炎。数日〜2週間程度で改善することが多い。
、肩などの大関節に好発し、他にも軸椎歯突起などに生じる(小関節は稀)。
症状 <急性関節炎の場合>
患部の関節腫脹、発赤、熱感。発熱や炎症反応を伴うこともある。
<頸椎偽痛風の場合>
・首が回らない(首が傾いたまま受診してくる)
・首が固い
検査 【血液検査】
尿酸値は正常、CRP↑
【画像検査】
単純X線:関節軟骨の線状石灰化像、関節裂隙に層状石灰化。
頸部CT:頸椎偽痛風の場合、軸椎歯突起後方の環椎横靱帯の石灰化所見(Crowned dens syndrome)が見える。
【関節穿刺】
急性期に穿刺し、関節液を偏光顕微鏡で観察し、方形・棒状の結晶を確認(確定診断)
治療 NSAIDsの長期投与(ただし、再発しやすい)。

痛風と偽痛風の比較

痛風 偽痛風
原因物質 尿酸 ピロリン酸カルシウム(CPPD)
男:女 20:1(男性に多い) 性差なし
好発年齢 30~50歳代 60歳以上
好発部位 第1中足趾節関節 膝関節
高尿酸血症 あり なし
X線所見 石灰化像なし 石灰化像
結晶の性状 針状 方形

偽痛風の診察

高尿酸血症の診察

①高尿酸血症の診断

定義 血清尿酸値7.0mg/dL以上
治療目的 痛風発作のリスク低減と生活習慣病の見直し
※米国・欧州ガイドラインでは繰り返す痛風発作に対しての薬物療法は推奨しているが、無症候性高尿酸血症に対しての薬物療法は原則推奨していない(Up to dateも生活指導のみ推奨されており、薬物治療や不要としている)

②問診と身体所見

問診 痛風発作の既往:じわじわ痛みを感じ始めて数時間後に歩行できないほどの激痛となる
確認すべき既往症:高血圧、虚血性心疾患、糖尿病、メタボ、腎機能障害、尿路結石
③内服薬:二次性高尿酸血症の薬剤性を参照
所見 痛風結節:高尿酸血症が長期にわたると皮下に白く浮き出る尿酸結晶が見える
結節部位は手指関節伸側・手指の指腹、肘・膝関節伸側、耳介に
痛風発作時:関節表面の発赤、部位は第1MTP関節・足関節・膝関節に多い

③二次性高尿酸血症を除外

二次性は多くないが、該当すれば原疾患を治療するアプローチとなる。

遺伝疾患 ①Lesch-Nyhan症候群
②ホスホリボシルピロリン酸合成酵素亢進症
③先天性筋原性高尿酸血症
④ダウン症候群
⑤家族性若年性高尿酸血症性腎症
細胞増殖・組織破壊 ①悪性腫瘍、腫瘍崩壊症候群
②尋常性乾癬
③二次性多血症
④溶血性貧血
⑤横紋筋融解症
腎疾患 ①慢性腎疾患
②多発性嚢胞腎
③鉛中毒・鉛腎症
内分泌代謝疾患 ①甲状腺機能低下症
②1型糖尿病
③脱水
薬剤性 ①利尿薬:フロセミド、サイアザイド系
②抗結核薬:ピラミナジド、エタンブトール
③免疫抑制剤:シクロスポリン、ミゾリビン
④気管支拡張薬:テオフィリン
⑤抗ウイルス薬:リバビリン
⑥その他:少量アスピリン、ニコチン酸、ニコチン酸アミド

③痛風発作や痛風結節がある場合

発作期 多くは夜間就寝中に生じ、第1中足趾節関節部(母趾の付け根)に好発する(体温が低く尿酸が析出しやすいため)が、膝関節・足関節に生じることもある。発作は1週間以内に軽快する。
関節液穿刺 急性期に穿刺し、偏光顕微鏡 or グラム染色で針状の結晶を確認(確定診断)
単純X線 長期間痛風発作を繰り返している場合、①関節面に骨棘様変化、②関節面からやや離れた部位に辺縁明瞭な骨びらんを認める
エコー 関節面にdouble contour sign(+)
生活指導 ①食事療法、②飲酒制限、③運動療法
薬物療法 痛風発作を繰り返す場合は薬物療法を推奨
①発作の前兆・初期:コルヒチン
②発作極期:NSAIDsの短期大量投与
③発作予防:エビデンス豊富なアロプリノールかフェブキソスタットを選択

④痛風発作や痛風結節がない場合(無症候性高尿酸血症)

生活指導のみ ①尿酸8.0未満
②尿酸8.0以上で確認すべき既往症なし
生活指導+薬物療法考慮 ①尿酸9.0以上
②尿酸8.0以上で確認すべき既往症あり

⑤生活指導

①食事療法 ・プリン体の多い食事を制限、または水溶性のプリン体の煮汁を摂取しない
・果糖やキリトールはプリン体分解を亢進し尿酸値を上昇させるため摂取は適量で
②飲酒制限 ・アルコール自体にプリン体を含有しており、特にビールで多い
・アルコール過剰摂取で内因性プリン体分解亢進で尿酸値が上昇する
③運動療法 ・歩行、ジョギング、サイクリングなど有酸素運動を毎日30分以上行う
・短時間の激しい運動はATP分解による尿酸産生亢進により尿酸値を上昇させる

⑥薬物療法

薬物療法は日本と欧米では異なるため、エビデンスを説明した上で無症候性高尿酸血症では薬物を行うかは患者と相談して決める。

ただし、CKDを有する無症候性高尿酸血症患者への尿酸降下薬の使用はエビデンスで効果が示されておらず、非専門医は尿酸降下薬を原則使用しない

アロプリノール フェブキソスタット
先発名 ザイロリック フェブリク
作用機序 キサンチンオキシダーゼ阻害 キサンチンオキシダーゼ阻害
安全性 重症薬疹の副作用あり 高用量では心血管死のリスク↑の可能性
相互作用 薬物相互作用多い 少ない
腎障害時 減量の必要あり 減量不要

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目標 血清尿酸値6.0mg/dL未満が推奨(日本のガイドライン)
注意 長期的に過度に尿酸値を下げすぎると神経疾患のリスク増加の可能性あり(2016年の欧州ガイドラインに記載)

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