尿路感染症 UTI:urinary tract infection
病態
原因菌が尿道から上行性に膀胱・腎盂・前立腺に感染する。
尿路感染症の分類
単純性尿路感染(基礎疾患なし) | 複雑性尿路感染(基礎疾患あり) | |
原因菌 | 大腸菌、クレブシエラ、プロテウスなど | 左記に加え、緑膿菌、腸球菌、カンジダ、MRSAなど ※過去の培養歴も参考にする |
特徴 | 健康な若年女性(非妊娠、閉経前) | 男性、妊娠女性、閉経後女性。 尿カテ留置、尿路結石(閉塞性腎盂腎炎)、尿閉、神経因性膀胱がある人に好発 |
部位別UTI
急性膀胱炎 | 急性腎盂腎炎 | 急性前立腺炎 | |
疫学 | 女性に多い | 女性に多い | 男性(の原因不明な発熱) |
分類 | 単純性 or 複雑性 | 単純性 or 複雑性 | 複雑性 |
特徴 | 発熱なし+下部尿路症状 | 発熱+上部尿路症状 | 発熱+前立腺の炎症症状 |
症状 | ①頻尿 ②排尿痛(特に排尿終末) ③尿混濁 ④その他:残尿感、血尿、下腹部不快感など |
①発熱、悪寒戦慄 ②腰背部痛(重たい感じ) ③尿混濁 ④悪心嘔吐 【合併症】敗血症、閉塞性腎盂腎炎(どちらも入院) |
①会陰部不快感 ②排尿痛、頻尿、排尿困難 ③発熱、悪寒 【リスク因子】前立腺肥大、神経因性膀胱 |
身体 検査 |
恥骨上部の圧痛が10〜20%で陽性 | CVA叩打痛→腎双手診 | 直腸指診:圧痛+腫大を伴う前立腺(菌血症になるため前立腺マッサージ禁忌) |
尿 | 【尿】WBC↑亜硝酸+ 【尿培養】全例実施 |
【尿】WBC↑亜硝酸+ 【尿培養】全例実施 |
【尿】WBC↑亜硝酸+ 【尿培養】全例実施 |
血液 | 【血液検査】炎症反応そこまで上昇しない 【血液培養】複雑性の場合 |
【血液検査】WBC↑ 【血液培養】全例実施 |
【血液検査】PSA↑ 【血液培養】全例実施 |
検査 | ※妊娠可能女性の場合、CTを撮像する可能性があるため尿検査で妊娠反応をとること同意してもらうこと→ | 【画像検査】 ①腹部エコー:水腎症の有無 ②腹部CT:腎臓周囲の脂肪組織濃度上昇(補助診断)、水腎症あればその原因を確認 |
※閉塞性腎盂腎炎の原因:尿路結石、腫瘍浸潤、子宮筋腫、後腹膜線維症など
※尿中亜硝酸塩が陽性:大腸菌などの腸内細菌の感染で陽性となる(逆に緑膿菌などでは陰性)。感度は低いが特異度は高い。
治療
急性膀胱炎 (外来治療) |
単純性:3日間、複雑性3〜7日間。症状が改善しないときは再受診。 【処方例】 ・バクタ配合錠® 1日2回 1回2錠 ・セファクロル500mg(ケフラール®)1日3回 ・セファレキシン500mg(ケフレックス®) 1日4回 【膀胱炎を繰り返す場合】 ・日常的水を多く飲む(1.5L以上) ・毎日クランベリージュース飲む(尿中細菌繁殖を抑制) ・性交渉後に排尿する、性交渉後にST合剤を1錠内服する ・尿を我慢しない、排便後の清潔指導(前から後へ清拭) |
腎盂腎炎 (外来治療) |
原則2週間投与。 【処方例】 ・バクタ配合錠® 1日2回 1回2錠 ・シプロフロキサシン 400mg/8hr〜12hr 点滴静注 ・セフトリアキソン(ロセフィン®)1〜2g/日 点滴静注 |
腎盂腎炎 (入院治療) |
原則2週間投与。摂食困難、敗血症は入院適応。血液培養陽性で、7日目の時点で48時間解熱しており、かつ状態が安定している場合は7日間で治療を終了することも可能。 【処方例】 ①入院歴なし、緑膿菌やAmpC産生菌の検出歴なし ・セフォチアム1g/8hr 点滴静注 ・セフォタキシム1g/8hr 点滴静注 ・セフトリアキソン2g/日 点滴静注 ②入院歴あり、緑膿菌やAmpC産生菌の検出歴あり ・セフタジジム1g/8hr 点滴静注(緑膿菌カバーのみ) ・セフェピム1g/8hr 点滴静注(緑膿菌+AmpC産生菌カバー) ③ESBL産生菌の可能性あり、敗血症など重症な場合 ・メロペネム1g/8hr 点滴静注 ④他剤が副作用などで使用不可能な場合 ・シプロフロキサシン 400mg/8hr 点滴静注 ・レボフロキサシン 500mg 1日1回 1回1錠 【閉塞性腎盂腎炎】 ・②と同じ抗生剤治療 ・泌尿器科にコンサルト:尿管ステント→排膿 or 腎瘻 |
前立腺炎 | 原則4週間投与。 腎盂腎炎の治療に準じる。ただし、性交渉のある場合は淋菌やクラミジアも原因になる点に注意。 |
カテーテル関連尿路感染症(CAUTI)
病態 | 尿道カテーテル、膀胱瘻カテーテル、間欠導尿をしている患者に、尿路感染症に合致する症状があり、他の感染源が同定されていない。 |
症状 | UTI症状:ただし、上下尿路症状がはっきりしないことも多い |
検査 | 【尿検査】カテーテル尿やカテーテル抜去後48時間以内の中間尿から培養で1000CFU/mL以上の細菌が検出(尿道カテーテルは長期留置すると、感染に関わらず細菌尿となるため診断において尿所見が参考になりにくい。そのため、必ず尿道カテーテル交換後に尿培養を採取する。) |
治療 | 腎盂腎炎の治療に準じる |
気腫性尿路感染症(気腫性膀胱炎、気腫性腎盂腎炎)
疫学 | 糖尿病患者や免疫抑制患者にまれに生じる |
病態 | 腎周囲や膀胱壁内にガスが貯留する壊死性の感染症で、致死率が高い。 |
症状 | ? |
検査 | 【画像検査】 CT:腎周囲や膀胱壁内にガス貯留像 |
治療 | ①尿道カテーテル留置し、尿ドレナージ ②広域抗菌薬投与 |
急性巣状細菌性腎炎 AFBN
疫学 | 小児と糖尿病患者に多い |
病態 | 腎盂腎炎と腎膿瘍の中間に位置する疾患。 |
症状 | 腎盂腎炎参照 |
検査 | 【画像検査】 造影CT:後期相で腎臓に辺縁不明瞭な腫瘤状の造影不良域 |
治療 | 通常の腎盂腎炎より長期に2〜4週間程度治療することが多い |
無症候性細菌尿
定義 | 無症状でも尿培養から菌が検出される場合 女性:2回連続(1〜2週間)で100000CFU/mL以上 男性:1回でも100000CFU/mL以上 |
対応 | 耐性菌の観点から基本的に治療は行わない(泌尿器科術前と妊婦を除く) |
尿道炎
尿道炎の多くが性感染症である。詳細はクラミジア、淋菌を参照。
※急性尿道炎では通常、発熱はみられない!
急性尿道炎 | 排尿初期痛、帯下増量、陰部掻痒感、性交時痛 |
急性膀胱炎 | 排尿終末痛 |
精巣上体炎(副睾丸炎)
病態 | 細菌が逆行性に感染して生じる。ただし、精巣は白膜に覆われているため精巣上体炎から精巣炎は波及しない。 【原因菌】 若年:クラミジア、淋菌 中高年:大腸菌など |
症状 | ①発熱 ②陰嚢痛・陰囊の腫大 ③膿尿 後遺症として精管通過障害を起こすことがある。 |
検査 | 精巣を挙上すると陰嚢痛が軽減(精巣捻転症との鑑別)、血液検査 |
治療 |
急性精巣炎
ムンプスウイルスを参照。
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