肩関節の診察
回旋筋腱板:4つの筋(棘上筋、棘下筋、小円筋、肩甲下筋)とその腱の総称

二足歩行の人間は回旋筋腱板の負担が大きく、肩の痛みの原因は回旋筋腱板由来の問題が多い。

①肩関節のROM評価
| ①apley scratch test | 肩関節の可動域スクリーニング |
| 方法 | 背側から対側の肩甲骨を触るようにする![]() |
②回旋筋腱板の評価
| ①painful arc sign | 回旋筋腱板の評価 |
| 方法 | 肩関節を外転させ、60〜120度で疼痛が誘発されたら陽性。まず自動運動を確認し、その後他動的に確認する。上腕骨骨頭と肩峰との間に回旋筋腱板や肩峰下滑液包が挟み込まれて疼痛が生じる。![]() |
| ②外転筋力テスト | 棘上筋の評価 |
| 方法 | 患者の母指を地面に向けた状態で肩関節を外転させ、検者は地面に押さえつけるように力を加える![]() |
| ③外旋筋力テスト | 棘下筋と小円筋の評価 |
| 方法 | 患者の脇を締めた状態で、肘関節90度屈曲位で肩関節を外旋させる。検者はその動きに抵抗する方向へ力を加える![]() |
③上腕二頭筋腱の評価
| ①Yergason test | 上腕二頭筋腱の評価 |
| 方法 | 肘90度屈曲位で前腕を能動的に回外させることに対して抵抗を加え疼痛が誘発されれば陽性![]() |
肩の痛み
| 肩関節 | 炎症(化膿性、関節リウマチ、結晶性)、変形性関節炎、五十肩 |
| 回旋筋腱板 | 腱板断裂、肩峰下滑液包炎、石灰沈着性腱板炎、リウマチ性多発筋炎(PMR) |
| 腱 | 上腕二頭筋腱炎 |
| 関連痛 | 心筋梗塞、肝臓、胆嚢、横隔膜など |
| 神経 | 頚椎症、Pancoast腫瘍 |
肩関節周囲炎(五十肩/凍結肩)
| 疫学 | 40〜60歳代に好発 |
| 病態 | 鍵板障害による肩関節の可動域制限が起こる疾患。特に、挙上と内旋が制限される。 |
| 症状 | 疼痛:安静時痛、運動時痛、夜間痛 挙上運動制限:整髪動作・結髪動作ができない 内旋運動制限:結帯動作ができない |
| 検査 | 画像検査では明らかな異常を認めない |
| 治療 | 対症療法(鎮痛薬、温熱療法、五十肩体操) 着衣の順番は動きが悪い側から通して着る! |
肩関節の腱板断裂
| 病態 | 腱板(棘上筋腱が最多)が断裂する疾患。 ※腱板とは、棘上筋、棘下筋、小円筋、肩甲下筋の4つの筋の腱の総称 |
| 症状 | 運動時痛、安静時、夜間痛:肩関節外転時に肩峰と腱板が衝突するため=インピンジメント |
| 検査 | 【身体検査】 drop arm sign:他動的に腕を上げ、支持を外すと急に下がると陽性 【画像検査】 エコー・MRI:断裂部を確認。MRIではT2強調像で断裂部が高信号となる。 肩関節造影:肩関節に注入された造影剤が関節包外へ流出 |
| 治療 | 安静、対症療法 |
肩関節脱臼(=関節包靭帯断裂)
| 病態 | 直接肩をぶつける、または腕を引っ張られることで、上肢に伸展・外転・外旋が強制され肩が後に持っていかれるような動作の時に生じる。95%以上が前方脱臼で、周囲の靱帯が伸びるため一度脱臼すると反復性脱臼になりやすい(20歳未満の初回脱臼では約90%が反復性となる)。合併症として、肩関節脱臼では上腕骨頭が関節窩から擦れながらはずれ、互いに傷つき骨折することが多く、上腕骨頭に陥没ができるのがHill-sachs lesion、関節窩の縁に骨折を認めるのがBankart lesionという、しかし、緊急性は低い。また、中高年では腱板断裂を合併することも多い。 |
| 症状 | ①肩関節痛:自動的に動かすことができない、整復後は痛みが軽減/消失する ②関節脱臼感:肩がはずれた/抜けた感じ ③腋窩神経損傷(三角筋筋力低下、三角筋部の知覚低下):脱臼時に合併する場合あり |
| 検査 | 【身体所見】 apprehension test:肩関節外転外旋位で水平外転し肩がはずれそうな不安感で陽性 【画像検査】 ①X線:左右の肩の画像を撮像、正常は上腕骨頭と関節窩が赤線のように適合している(右)が、脱臼すると適合が見られない(左) ②CT:Hill-sachs lesion、Bankart lesionの評価 ③MRI:関節唇や腱板などの軟部組織の損傷の評価、occult fractureの評価 |
| 整復 | 【徒手整復法】以下の順に整復トライ ①肩関節注射:20cc注射器にキシロカイン®を20cc吸引し、22Gで肩外側から正中に向けて15〜20cc注射する。 ②外旋法→Milch法:1人でも実施可能で、仰臥位で行う。 ③肩甲骨回旋+Stimson法:2人で実施する方法で、腹臥位で行う。筋肉質な人向け。 ④反対牽引法:静脈ルートを確保し、透視下で2人で実施する方法で、仰臥位で行う。⑤整復後はX線で確認する。 |
| 固定 | 【整復後は固定】 ①三角巾固定:3週間は外旋位に固定 ![]() |
| 転帰 | 整復後は紹介状と整復前後の写真を添付し、翌日または週明けの整形外科へ受診を指示。 R:1〜2週間安静にし、疼痛が軽減してきたら可動を開始する ①冷却:湿布は使用せず、タオルの上からじんわりと冷やす ②疼痛:アセトアミノフェン |
肩鎖関節脱臼
| 病態 | 肩鎖関節は3本の強固な靱帯で結合され可動性はないが、コンタクトスポーツなや転倒などでこれらの靭帯の損傷で肩鎖関節が動いてしまう病態で、Rockwood分類を行う(転位なしⅠ〜Ⅱ、転位ありⅢ〜Ⅳ)。![]() |
| 症状 | ①肩関節痛:肩の上が痛い ②肩の出っ張り感:鎖骨遠位部が僧帽筋により上方へ引き上げられる |
| 検査 | 【身体所見】 piano key sign:突出部を押すと整復され、離すと浮き上がる(Ⅲ以上) 【画像検査】 Xp:鎖骨2方向+肩2方向で左右撮像、鎖骨遠位端骨折や烏口突起骨折を併発することもあるため確認する、Xpだと靭帯は見えないため肩峰下端と鎖骨下端の距離で脱臼を判断するがⅠ〜Ⅱは転位なくXpでは判断できないため臨床所見と合わせて判断、転位がある場合はRockwood分類を行う(Ⅲ〜Ⅳは手術を考慮) CT:高エネルギー外傷の場合や腫脹や内出血の程度がひどい場合に追加 |
| 固定 | 【整復後は固定】 ①三角巾固定:Ⅰは約1週間、Ⅱは約3週間固定、Ⅲ以上は手術考慮 ![]() |
| 転帰 | 固定後、整形外科を予約し、当日もしくは帰宅して後日受診(上肢外傷のため、歩行可能であるため入院はしない)。 ①冷却:湿布は使用せず、タオルの上からじんわりと冷やす ②疼痛:アセトアミノフェン |
上腕の痛み
上腕骨近位部骨折
| 疫学 | 骨粗鬆症の高齢者に多い |
| 病態 | 高齢者の転倒などによる低エネルギー外傷により肩を打撲して生じる骨折(約90%)。成人や小児では高エネルギー外傷で生じる(約10%)。骨折片による神経障害が生じることがあり、腋窩神経障害、肩甲上神経障害の順に多い。 |
| 症状 | ①肩関節痛、肩関節周囲の発赤腫張 ②患側上肢の神経障害:肩の外側の知覚低下・外転筋力障害(腋窩神経障害) |
| 検査 | 【画像検査】 Xp:正面とスカプラY像の2方向で撮像し、骨頭・小結節・大結節・骨幹部の4部位に注目して骨折線や転移を探す CT:骨折があればCTを撮像しNeer分類を行う![]() |
| 固定 | 【診断したらまず固定】 ①三角巾固定:腕を吊るす固定だけで腕の重さで整復位となる ![]() |
| 手術 | Neer分類で2パート骨折以上の場合は手術を考慮 |
| 転帰 | 固定後、整形外科を予約し、当日もしくは帰宅して後日受診(上肢外傷のため、歩行可能であるため入院はしない)。基本的には保存加療となり、整形外科に通いながら骨の癒合を待つ。1〜2週間は固定して安静とし、その後リハビリを開始する。 ①冷却:湿布は使用せず、タオルの上からじんわりと冷やす ②疼痛:アセトアミノフェン |





②CT:Hill-sachs lesion、Bankart lesionの評価
③MRI:関節唇や腱板などの軟部組織の損傷の評価、occult fractureの評価
②外旋法→Milch法:1人でも実施可能で、仰臥位で行う。
③肩甲骨回旋+Stimson法:2人で実施する方法で、腹臥位で行う。筋肉質な人向け。
④反対牽引法:静脈ルートを確保し、透視下で2人で実施する方法で、仰臥位で行う。

CT:高エネルギー外傷の場合や腫脹や内出血の程度がひどい場合に追加
CT:骨折があればCTを撮像しNeer分類を行う

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