手関節・手指の痛み

整形外科

手関節痛の診察

【成人の場合】

【小児の場合】

問診

症状 鑑別
手をついてから手首が痛い・動かせない 橈骨遠位端骨折
手をついてから動かすと手首が痛む、ある程度手首は動かせる 舟状骨骨折
手首を小指側に曲げると痛む、手首を背屈して地面につくと痛む TFCC損傷
手をついてから手首が痛い 手関節捻挫
拳を握ってぶつけたり、殴ったりした後から手が痛い 中手骨骨折

身体所見

橈骨遠位端の圧痛、回内回外制限 橈骨遠位端骨折
Snuffboxの圧痛+Scaphoid tubercle、Thumb compression 舟状骨骨折
小指球直下の圧痛 三角骨骨折

XR所見

成人 小児

手関節の痛み

ド・ケルバン病(狭窄性腱鞘炎)

疫学 女性(特に授乳中)に多い
病態 繰り返し手を使用することによる機械的刺激によって、長母指外転筋腱、短母指伸筋腱が通る第1コンパートメントの狭窄性腱鞘炎が生じる疾患。
症状
検査 Eichhoff(アイヒホッフ)テスト:母指を中にして手を握り、手首を尺屈すると手関節の橈側に激痛が生じると陽性
治療 安静、湿布、ステロイド局注。難治性の場合は狭窄部位の腱鞘切開術。

ばね指

デュプイトラン拘縮(Dupuytren拘縮)

疫学 白人、特に北欧系人種に圧倒的に多い。日本人を含む東洋人には比較的まれ。
中年以降の男性に多く、糖尿病患者が多い。
病態 手掌腱膜が線維化して肥厚・収縮して指の屈曲拘縮をきたす原因不明の進行性疾患。
症状 多くは両側の手指、特に小指・環指屈曲拘縮
検査 【身体検査】
屈曲は他動運動によっても可動域制限がある
治療 軽症例は弾性副子装用、ステロイド局所注入。進行例は手掌腱膜の切開・切除。

手根管症候群

手の神経障害(絞扼性末梢神経障害)

狭窄部位を通る末梢神経が慢性的に圧迫されるために生じるニューロパチー。主に太い有髄線維が侵されるため、運動神経障害が目立つ。

わしゃ加藤まさき!(鷲手・尺骨N → 下垂手・橈骨N → 正中N・猿手・祈祷手)

  正中神経 橈骨神経 尺骨神経
運動神経 母指〜中指の屈曲:橈側手根屈筋=母指の対立運動障害
母指の外転内転:母指球筋群(低位麻痺により②の筋が萎縮→猿手
回内:前骨間神経支配の回内筋(高位麻痺により指屈曲時に①〜③が×→祈祷手
高位の後骨間神経という深枝が運動神経
指の伸展:後骨間神経支配の母指伸筋(低位麻痺により①×→下垂指のみ)
手の背屈:手根伸筋
肘関節屈曲:腕橈骨筋(高位麻痺により①〜③が×→下垂手
親指の内転母指内転筋(低位麻痺により→Froment徴候陽性)
指の間を開閉:骨間筋
小指環指の屈曲:尺側手根屈筋+小指球筋(高位麻痺により指伸展時に①〜③が×→鷲手
感覚神経 手の母指側(母指〜中指手掌
×→支配領域の感覚障害
手の背側(母指〜中指手背
肘より末梢の浅枝が感覚神経
×→支配領域の感覚障害
手の尺側(小指環指の手背手掌
×→支配領域の感覚障害
障害の
原因
手根管症候群(低位)
回内筋症候群(高位)
上腕骨顆上骨折(高位)
腕枕、松葉杖で腋窩圧迫
回外筋症候群
上腕骨骨幹部/顆上骨折
肘部管症候群(高位)
Guyon管症候群(低位)
上腕骨顆上骨折

手根管症候群(正中神経低位麻痺)

原因 女性に多い
病態 手根管を通る正中神経が何らかの原因で圧迫されて生じる絞扼性神経障害。
原因は手の過度の使用、血液透析(アミロイド沈着)、妊娠による浮腫、骨折後変形、ガングリオンなどによる圧迫、関節リウマチなどによる腱鞘滑膜炎など。
症状 正中神経領域(母指〜中指)の感覚障害:しびれ。特に夜間・早朝に多い。
母指球筋の萎縮:筋力低下して猿手になる。
検査 【身体検査】
Phalenテスト:手関節掌屈位を1分間持続し、しびれ感が増強すると陽性
perfect Oテスト陰性:正中神経の運動枝である前骨間神経麻痺により母指IP関節と示指DIP関節が屈曲困難となるため涙滴型のtear drop signを呈する
Tinel様徴候:障害部位を叩打すると手首より遠位部の支配領域に放散痛が生じる
【末梢神経伝導検査】
正中神経の伝導速度遅延(確定診断)
治療 Tinel徴候・知覚異常のみ:①安静、②手関節固定装具の着用、③ステロイド局所注射
筋力低下・萎縮:④手根管開放術などの除圧手術

肘部管症候群(尺骨神経高位麻痺)

病態 尺骨神経が肘部管内で何らかの原因で圧迫されて生じる絞扼性神経障害。
原因は肘の酷使、変形などあるが特発性である場合も多い。
症状 尺骨神経領域の感覚障害:小指〜環指のしびれ。
尺骨神経領域の運動障害(筋力低下):鷲手
検査 【身体検査】
Froment徴候:紙を引っ張るとき母指が内転できないため屈曲する
Tinel様徴候:障害部位を叩打すると支配領域に放散痛が生じる
【末梢神経伝導検査】
尺骨神経の伝導速度遅延(確定診断)
治療 多くは進行性であり、早期に手術を施行

橈骨遠位端骨折(Colles骨折、Smith骨折)

疫学 骨粗鬆症の高齢者と小児に多い
病態 多くは高齢者の低エネルギー外傷だが、小児や成人でも生じる。小児では転倒などの低エネルギー外傷で生じ、若木骨折となることが多い。成人では交通事故などの高エネルギー外傷で生じ、手術が必要なことも多い。半数以上に尺骨茎状突起骨折の併発を認める。
分類 手掌をついて転倒するColles骨折と手背をついて転倒するSmith骨折がある(小児を除く)
症状 ①手関節痛
②自発的に手首を動かせない(逆の手で支えていることが多い)
検査 【身体所見】
手関節発赤腫張、フォーク状変形、橈側の圧痛、回内回外制限
【画像検査】
Xp:手関節2方向で撮像し骨折線を探す、尺骨茎状突起や舟状骨も確認する
小児の場合は若木骨折を疑う(左右確認)
小児で転位が強い場合はSalter-Harris分類を行い手術の可能性があれば即整形コンサルト
緊急 ①開放骨折、②整復不能な脱臼、③血管・神経症状の合併がある場合は即時整形コンサル
小児の場合、転位が大きい場合は即時整形コンサル
固定 【基本的にはまず固定のみ、可能ならX線透視下で整復トライ】
Sugar tong splint+三角巾:ギプスと比較しても機能的予後同等(splint=シーネ)
固定時、背屈して固定しないよう注意
※モールディング:体の形状に合わすよう両手で軽く圧迫していくこと
②ギプス固定法:非整形外科医はコンパートメント症候群のリスクがあり推奨されない
手術
適応
【①〜③に該当する場合は手術適応(該当なければ保存加療)】
手術は現在、掌側プレート固定が主流である。
活動性が高い場合:手術で機能回復するとQOLが上昇する
関節内骨折:AO分類のBとCに該当する場合(=関節面に達する骨折
整復して外固定してもずれてしまう場合:整復当日だけでなく、再診時にずれている場合がこれに該当する。
転帰 固定後、整形外科を予約し、当日もしくは帰宅して後日受診(上肢外傷のため、歩行可能であるため入院はしない)。手術適応がない場合は紹介状作成し、クリニックでのフォローも可能。保存加療の場合、外固定を約1ヶ月継続することとなる。
①冷却:湿布は使用せず、タオルの上からじんわりと冷やす
②挙上:患肢の下に枕など入れて高くする
③疼痛:アセトアミノフェンなど

舟状骨骨折

橈骨遠位端の上は舟状骨!(尺骨遠位端の上は三角骨と月状骨)

病態 転倒時の肘伸展位において手をついた(FOOSH)時に生じる骨折で、手根骨骨折の約70%を占める(その他の手根骨骨折は三角骨骨折、月状骨脱臼が多い)。舟状骨は血行性に乏しく、骨折により容易に阻血となり、骨壊死や偽関節といった合併症を引き起こすため、舟状骨骨折を見逃すと問題となる(occult骨折多い)。
症状 ①手関節痛(激痛までひどくない、比較的手首も動かせる)
検査 【身体所見】
①Snuffboxの圧痛、②Scaphoid tubercle、③Thumb compressionを評価し、1つでも所見がある場合は舟状骨骨折疑いで固定を行う
【画像検査】
Xp:手関節2方向で撮像し骨折線を探す
CT:Xpで骨折線があれば評価のため撮像し整形外科に見せる
MRI:Xpで骨折がはっきりしない場合に検討
固定 ①Thumb spica splint固定(三角巾はなくてもOK)
転帰 固定後、整形外科を予約し、当日もしくは帰宅して後日受診(上肢外傷のため、歩行可能であるため入院はしない)。骨折線の離開が1mm以内であれば保存加療、それ以上は手術の可能性あり。一般的な骨折と異なり、骨癒合は通常2〜3ヶ月、長いと6ヶ月かかることもあり長期となる。
①冷却:湿布は使用せず、タオルの上からじんわりと冷やす
②挙上:患肢の下に枕など入れて高くする
③疼痛:アセトアミノフェンなど

第1中手骨基部骨折

病態 ボクシングや転倒で握り拳の状態で母指の先端部から根元に向かって強い力が加わることで、母指の中手骨の根元が骨折。中手骨骨折の約25%が母指に生じ、そのうち約80%が母指基部骨折である。occult骨折は稀。
症状 ①手関節痛(母指の運動制限あり)
検査 【画像検査】
Xp:手関節2方向で撮像し骨折線を探し、CM関節の関節内骨折の場合は手術、関節外骨折の場合は保存加療となる。
固定 ①Thumb spica splint固定(三角巾はなくてもOK)
※舟状骨骨折を参照
転帰 固定後、整形外科を予約し、当日もしくは帰宅して後日受診(上肢外傷のため、歩行可能であるため入院はしない)。手術適応がない場合は紹介状作成し、クリニックでのフォローも可能。
①冷却:湿布は使用せず、タオルの上からじんわりと冷やす
②挙上:患肢の下に枕など入れて高くする
③疼痛:アセトアミノフェンなど

手指痛の診察

問診

拳を握ってぶつけたり、殴ったりした後から手が痛い 中手骨骨折
ぶつけた・重い物を落とした・踏まれた・捻った後に指が痛い 指骨骨折
指の先を固いもので挟んだ・爪を強くぶつけた 末節骨骨折

XR所見

手指の痛み

第2〜5中手骨骨折

病態 ボクシングや転倒で握り拳の状態で中手骨の先端部から根元に向かって強い力が加わることで生じる骨折。解剖学的に頚部>骨幹部>>>頭部・基部の骨折に分類される。
症状 ①手掌の疼痛
合併 ●Fight biteの合併症を確認
顔面を殴った際に拳が歯にあたり裂創を伴うことで、門歯が手背を貫通して伸筋腱断裂となったり、傷口から細菌が入り腱鞘炎や骨髄炎となることがある。
①十分に傷口を洗浄+異物除去
②抗菌薬の点滴+帰宅後の内服
検査 【画像検査】
Xp:手関節3方向で撮像し骨折線を探す
固定 ①Gutter splint固定(第2・3中手骨骨折はulnar)
②Gutter splint固定(第4・5中手骨骨折はradial)
転帰 固定後、整形外科を予約し、当日もしくは帰宅して後日受診(上肢外傷のため、歩行可能であるため入院はしない)。頚部と骨幹部骨折は関節外骨折のため、転位が少なければ保存加療となるが、頭部と基部骨折は関節内骨折のため手術となる。
①冷却:湿布は使用せず、タオルの上からじんわりと冷やす
②挙上:患肢の下に枕など入れて高くする
③疼痛:アセトアミノフェンなど

指骨骨折(基節骨骨折・中節骨骨折)

病態 ぶつけた・重い物を落とした・踏まれた・捻ったなど強い力が加わりことで基節骨や中節骨に生じる骨折。骨と皮下の距離も近く、直達外力から裂創+開放骨折となることが少なくない(骨折部に数mmでも裂創があれば開放骨折として扱う)。開放骨折や開放骨折を疑う場合、即整形外科コンサルトを行う
症状 ①手指の疼痛
検査 【身体所見】
受傷した指の屈曲伸展を行い、全く動かせない場合は腱断裂を疑い即整形外科コンサルト
【画像検査】
Xp:手関節3方向で撮像し骨折線を探す
小児の場合はSalter-Harris分類を行い手術の可能性があれば即整形コンサルト
※小児の基節骨骨折の判断に迷った場合は補助線を引いて判断する
固定 ①Gutter splint固定:中手骨骨折を参照
②バディ固定:中節骨骨折で転位が小さい場合
③アルフェンスシーネ固定
転帰 閉鎖性骨折の場合は固定後、整形外科を予約し、当日もしくは帰宅して後日受診(上肢外傷のため、歩行可能であるため入院はしない)。横骨折は転位が少なく保存加療となるが、斜骨折や螺旋骨折は転位が大きいため手術となることが多い。
①冷却:湿布は使用せず、タオルの上からじんわりと冷やす
②挙上:患肢の下に枕など入れて高くする
③疼痛:アセトアミノフェンなど

指骨骨折(末節骨骨折)・爪下血腫

病態 ハンマーや車のドアに挟むなど爪の上からの外力により生じる骨折。爪外傷を併発する。
症状 ①手指の疼痛
合併
爪床裂創:洗浄してサージカルテープで爪がずれないように固定する
爪下血腫:血腫が爪の50%以上なら18G針で穴をあけてドレナージ(貫通穴に4-0ナイロン糸を2〜3本入れてからハイドロサイト®などで被覆すると、毛細管現象で糸が血腫をハイドロサイト®へ吸い上げ翌日には血腫はほぼ綺麗に除去されている)
検査 【身体所見】
受傷した指の屈曲伸展を行い、全く動かせない場合は腱断裂を疑い即整形外科コンサルト
【画像検査】
Xp:手関節3方向で撮像し骨折線を探す
固定 ①アルフェンスU字固定(DIPのみ固定)
転帰 爪処置や固定後、整形外科を予約し、当日もしくは帰宅して後日受診(上肢外傷のため、歩行可能であるため入院はしない)。
①冷却:湿布は使用せず、タオルの上からじんわりと冷やす
②挙上:患肢の下に枕など入れて高くする
③疼痛:アセトアミノフェンなど

PIP関節脱臼(指の脱臼)

病態 指の脱臼の多くはPIP関節脱臼(背側/側方)であり、DIPやMP関節など他の手指関節脱臼は稀である。
診断 視診で明らかに転位を認める
治療 治療全体の流れ
①Web block
②整復前X線撮像
③整復は、PIP前後をしっかり把持し、長軸方向に牽引する
(背側転位の場合、中枢側を手背向き、末梢側を手掌向きに押しながら長軸方向に牽引)
④整復後X線撮像(脱臼に伴う剥離骨折を評価
⑤PIP関節を軽度屈曲位にしてバディテープ固定し、後日整形再診にして終了
合併 ●Volar plate(掌板)損傷
中手骨と基節骨をつなぎとめる掌板という軟部組織が過度の背屈により損傷すること。
PIP関節脱臼はなく、Volar plate損傷のみの場合もあるが、その場合視診でPIP背屈転位している場合が多い(PIP掌側に圧痛あり)。Volar plate損傷のみでも対応は同じ。

Mallet finger 所謂、突き指(指の捻挫)

疫学 指の腱損傷で最多
病態 指を伸ばした状態でボールなどがぶつかりDIPの伸筋腱が断裂する。指の腱損傷は末節骨の剥離骨折を伴う場合がある(骨性Mallet finger)。
症状 DIP関節の自動伸展不能(DIP関節が伸ばせない)
検査 【画像検査】
Xp:手関節3方向で撮像し、骨性Mallet fingerがないか確認
固定 ①ペーパークリップ固定(DIPのみ固定)

固定したら、隣の指をバディ固定する
治療 固定後、伸展装具着用して帰宅。6週間程度、DIP関節を伸展保持する。
①冷却:湿布は使用せず、タオルの上からじんわりと冷やす
②挙上:患肢の下に枕など入れて高くする
③疼痛:アセトアミノフェンなど

Jersey finger(ジャージ指)

病態 ラグビーなどで相手のジャージやユニフォームをつかみ(指を強く屈曲)、そのまま指が取られて指が強い力で伸展して深指屈筋腱が断裂する。75%が環指に生じる。
症状 ①DIP関節が屈曲できない
検査 【身体所見】
DIP関節の掌側の疼痛腫脹
【画像検査】
Xp:手関節3方向で撮像し骨折線を探す

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