降圧薬・高血圧治療薬

薬理学

降圧薬の選択方法

左室肥大 Ca拮抗薬、ACE/ARB
慢性心不全 ACE/ARB、チアジド系利尿薬、β遮断薬
頻脈 Ca拮抗薬(非ジヒドロピリジン系)、β遮断薬
狭心症 Ca拮抗薬、β遮断薬
心筋梗塞後 ACE/ARB、β遮断薬
CKD Ca拮抗薬、チアジド系利尿薬、ACE/ARB(蛋白尿+)
脳血管障害慢性期 Ca拮抗薬、チアジド系利尿薬、ACE/ARB
糖尿病 ACE/ARB
骨粗鬆症 チアジド系利尿薬
誤嚥性肺炎 ACE阻害薬
気管支喘息・COPD合併 選択性β1遮断薬
高齢者の徐脈合併 ISA+のβ遮断薬

チアジド系利尿薬

腎泌尿器薬を参照

K保持性利尿薬

腎泌尿器薬を参照

β遮断薬

作用機序 【高血圧】
①傍糸球体装置β1遮断によりレニン分泌を抑制し、末梢血管抵抗↓
②心臓のβ1遮断により心収縮力低下+心拍数低下させ、心拍出量↓
【狭心症・急性冠症候群】
心臓β1遮断により心収縮力低下+心拍数低下させ、心筋の酸素需要量↓
【頻脈性不整脈】
心臓β1遮断により細胞内Ca流入量↓させ、房室伝導時間増加+房室結節不応期延長
【慢性心不全】
①心臓β1遮断により心収縮力低下+心拍数低下させ、心筋の酸素需要量↓
②心不全に対する反射性の交感神経亢進を抑制する。
副作用 刺激伝道系抑制による房室ブロックなど
ISA 内因性交感神経刺激作用(ISA)を持つβ遮断薬は、β受容体に対して部分作動薬のように働くため、ISA-と比べてβ受容体の過度な抑制は起こりにくい特徴がある。そのため、高齢者など過度な心抑制による徐脈を懸念する場合はISA+を選択すると良い。

選択性β1遮断(ISA-)

一般名 先発名 特徴
アテノロール テノーミン錠 【ADME】腎排泄型
ビソプロロール メインテート錠
ビソノテープ
慢性心不全への適応がある。β遮断薬の中で最もβ1選択性が高い。
ベタキソロール ケルロング錠  
メトプロロール ロプレソール錠
セロケン錠
【ADME】肝代謝型

選択性β1遮断(ISA+)

一般名 先発名 特徴
アセブトロール アセタールCP  
セリプロロール セレクトール錠 β2刺激+NO産生作用を併せ持つ。

非選択性β遮断(ISA-)

一般名 先発名 特徴
プロプラノロール インデラル錠 いちご状血管腫の増殖を抑制する。
【ADME】肝代謝型
ナドロール ナディック錠 【ADME】腎排泄型

非選択性β遮断(ISA+)

一般名 先発名 特徴
カルテオロール ミケラン NO産生作用を併せ持つ。
【ADME】腎排泄型
ピンドロール カルビスケン錠  

αβ遮断薬

一般名 先発名 特徴
アモスラロール ローガン錠  
アロチノロール    
カルベジロール アーチスト錠 抗酸化作用、臓器保護作用を併せ持つ。
ラベタロール トランデート錠  
ベバントロール カルバン錠  

α遮断薬

作用機序 血管α1遮断により血管収縮抑制し、末梢血管抵抗↓(ただし降圧作用弱い)
副作用 起立性低血圧:予防のため少量から開始・初回は睡眠前投与

α1選択性

一般名 先発名 特徴
ウラピジル エブランチルCP  
テラゾシン ハイトラシン錠
バソメット錠
 
ドキサゾシン カルデナリン錠  
ブナゾシン デタントール錠  

α非選択性

一般名 先発名 特徴
フェントラミン レギチーン注  

チロシン水酸化酵素阻害薬

一般名 先発名 特徴
メチロシン デムサーCP  

中枢性交感神経抑制薬

一般名 先発名 特徴
クロニジン カタプレス錠 脳幹のα2刺激し、血管収縮抑制。妊娠中の降圧薬として使用されることが多い。
【欠点】眠気、倦怠感、抑うつの副作用。免疫性溶血性貧血や肝機能悪化させる場合もある。
グアナベンズ ワイテンス錠 脳幹のα2刺激し、血管収縮抑制。
【欠点】眠気、倦怠感、見当識障害の副作用。投薬中に血圧の急上昇をきたすことがある。
メチルドパ アルドメット錠 脳幹のα2刺激し、血管収縮抑制。
【欠点】眠気、倦怠感、見当識障害の副作用。投薬中に血圧の急上昇をきたすことがある。

末梢性交感神経抑制薬

一般名 先発名 特徴
レセルピン アポプロン  
ベハイドRA配合錠 レセルピン+ベンチルヒドロクロロチアジド+カルバゾクロム

Ca拮抗薬

作用機序  
副作用 ①血管拡張作用に伴う顔面紅潮・ほてり・頭痛・下腿の局所性浮腫
薬剤性歯肉肥厚(細胞内Ca減少により線維芽細胞が細胞外マトリックスの産生を増加させて歯肉が腫れると考えられている。毎日の歯茎マッサージが予防に効果的)

ジヒドロピリジン系

一般名 先発名 特徴
アムロジピン ノルバスク錠
アムロジン錠
L型Caチャネルのみに作用
エホニジピン ランデル錠 T型Caチャネルにも作用し、心拍数を抑制して反射性頻脈を起こしにくい。
シルニジピン アテレック錠 【ADME】GFJの影響受けやすい
ニカルジピン ペルジピン  
ニソルジピン バイミカード錠 【欠点】アゾール系抗真菌薬との併用禁忌
【ADME】GFJの影響受けやすい
ニトレンジピン バイロテンシン錠  
ニフェジピン アダラートCP
セパミット)
L型Caチャネルのみに作用し、強力な降圧作用
【欠点】薬剤性歯肉肥厚の発生率が最も高い。
ニルバジピン ニバジール錠 N型Caチャネルにも作用し、細静脈を拡張して浮腫を生じにくい。
バルニジピン ヒポカCP  
フェロジピン スプレンジール錠  
ベニジピン コニール錠 N+T型Caチャネルにも作用し、心拍数を抑制+浮腫を生じにくい。
マニジピン カルスロット錠  
アゼルニジピン カルブロック錠 T型Caチャネルにも作用し、心拍数を抑制して反射性頻脈を起こしにくい。
【欠点】アゾール系抗真菌薬、プロテアーゼ阻害薬、コビシスタット含有製剤との併用禁忌
【ADME】GFJの影響受けやすい
アラニジピン サプレスタ
ベック
 

ベンゾチアゼピン系

一般名 先発名 特徴
ジルチアゼム ヘルベッサー 冠血管と末梢血管の両方のL型Caチャネルのみに作用する

血管拡張薬

作用機序 主に動脈を拡張する。
副作用 ①反射性頻脈:動脈拡張作用が強いため代償的に頻脈となる
②薬剤性ループス:長期使用で生じる場合がある。
一般名 先発名 特徴
ヒドララジン アプレゾリン 【欠点】ビタミンB6欠乏:体内のビタミンB6を消費する

ACE阻害薬(〜プリル)

作用機序 ACEを阻害し、ATⅡ産生抑制とブラジキニン不活性化抑制をする。
血管拡張作用:ATⅡ産生抑制+ブラジキニン不活性化抑制により細動脈の血管収縮が抑制される。(ブラジキニンは血管内皮細胞のB2受容体を介してNOおよびプロスタサイクリン産生を増加させて血管拡張作用を示す)
腎保護作用:腎輸出細動脈の血管収縮を抑制し、糸球体負荷を減らす。(AT-Ⅱは輸出細動脈を収縮させ、糸球体障害を起こす)
Na・水再吸収↓K排泄↓:ATⅡ産生抑制→アルドステロン分泌抑制によりNa・水再吸収+K排泄促進を抑制する。そのため低K血症や高血圧の治療薬となる。
④心保護作用:心血管などで組織リモデリング抑制する(RAS活性化阻害など)。
副作用 【禁忌】妊婦、血管浮腫の既往、両側腎動脈狭窄(輸出細動脈の弛緩により、糸球体濾過圧が低下するため。)
血管神経性浮腫:キニンが皮下組織に局所的に蓄積して起こると考えられている。唇、まぶた、舌、顔、首などが腫れ、咽頭が腫れると呼吸困難で死亡する可能性もある。
空咳:サブスタンスPやブラジキニンの増加による。数ヶ月服用すれば慣れて、不顕性誤嚥の予防として使用できる。
高K血症:K排泄が抑制されるため。
④血中Cre上昇:腎輸出細動脈の血管収縮を抑制しGFRが下がるため。
⑤アルドステロン・ブレイクスルー:服用後しばらくすると別経路でアルドステロンが産生され、再び血圧が上昇する(エプレレノンで対応可能)
一般名 先発名 特徴
カプトプリル カプトリル錠 【利点】1日1回投与
【欠点】SH基を持つため蛋白尿、味覚異常、皮疹に注意する。
【ADME】腎排泄
エナラプリル レニベース錠 【利点】空咳発現率低い(約2%)、慢性心不全にも適応
【ADME】腎排泄
アラセプリル セタプリル錠 【ADME】腎排泄
デラプリル アデカット錠 【ADME】胆汁+腎排泄
シラザプリル インヒベース錠 【利点】消化管吸収率が良い
【欠点】腹水を伴う肝硬変患者には禁忌
【ADME】腎排泄
リシノプリル ロンゲス錠
ゼストリル錠
【利点】エナラプリルの活性体、慢性心不全にもOK
【ADME】腎排泄
ベナゼプリル チバセン錠 【欠点】空咳発現率が高い(約7%)
【ADME】胆汁+腎排泄
イミダプリル タナトリル錠 1型DMに伴う糖尿病性腎症にも適応がある。
【利点】空咳少ない
【ADME】胆汁+腎排泄
テモカプリル エースコール錠 【ADME】胆汁排泄と尿中排泄が半々→腎への負担少ない
キナプリル コナン錠 【ADME】胆汁+腎排泄
トランドラプリル オドリック錠 【利点】半減期が長い(約57時間)
【ADME】胆汁排泄と尿中排泄が半々→腎への負担少ない
ペリンドプリル コバシル錠 【欠点】空咳発現率が高い(約8%)
【ADME】腎排泄

ARB(〜サルタン)

作用機序 ATⅡ受容体を遮断する。
血管拡張作用:ATⅡ受容体遮断により細動脈の血管収縮が抑制される。
腎保護作用:腎輸出細動脈の血管収縮を抑制し、糸球体負荷を減らす。(AT-Ⅱは輸出細動脈を収縮させ、糸球体障害を起こす)
Na・水再吸収↓K排泄↓:ATⅡ受容体遮断→アルドステロン分泌抑制によりNa・水再吸収+K排泄促進を抑制する。そのため低K血症や高血圧の治療薬となる。
④心保護作用:心血管などで組織リモデリング抑制する(RAS活性化阻害など)。
副作用 【禁忌】妊婦、両側腎動脈狭窄(輸出細動脈の弛緩により、糸球体濾過圧が低下するため。)
【注意】①高K血症:K排泄が抑制されるため。
②血中Cre上昇:腎輸出細動脈の血管収縮を抑制しGFRが下がるため。
③アルドステロン・ブレイクスルー:ACE阻害薬と同様。
一般名 先発名 特徴
ロサルタン ニューロタン錠 蛋白尿を伴う糖尿病性腎症にも適応あり。血中尿酸値を低下させる作用あり。
【ADME】肝代謝型
カンデサルタン ブロプレス錠 腎実質性高血圧、慢性心不全にも適応あり。
【ADME】肝代謝型
バルサルタン ディオバン錠 【ADME】80%が胆汁排泄、食後は空腹時と比べてCmaxやAUCが低下、食後は空腹時と比べてCmaxやAUCが低下
テルミサルタン ミカルディス錠 【利点】PPARγを活性化し、インスリン抵抗生改善作用がある(ピオグリタオゾン類似構造を持つ)。
【ADME】胆汁排泄型のため腎機能障害でも使用可、食後は空腹時と比べてCmaxやAUCが低下
オルメサルタン オルメテックOD錠 【利点】他のARBと比べて降圧作用が比較的強い。
イルベサルタン イルベタン錠、アバプロ錠 【利点】PPARγを活性化し、インスリン抵抗生改善作用がある。血中尿酸値を低下させる作用あり。
【ADME】肝代謝型
アジルサルタン アジルバ錠 【利点】他のARBと比べて降圧作用が強く、Ca拮抗薬と同等である。また、夜間に血圧が低下しないnon-dipper typeの人の血圧も低下させる。
【ADME】肝代謝型

直接レニン阻害薬

作用機序 レニンを直接的に阻害する。
副作用 【禁忌】ACE阻害薬やARBを投与中の糖尿病患者(RAA系阻害が増強されすぎるため)
一般名 先発名 特徴
アリスキレン ラジレス錠 【ADME】肝代謝型→腎機能低下でも使用しやすい

硝酸薬

作用機序 体内でNOとなり、血管平滑筋でcGMPが産生され、cGMPは細胞内Ca濃度を低下させて平滑筋を弛緩し血管拡張させる(動脈+静脈)。静脈拡張により前負荷↓して酸素需要量↓+冠動脈拡張により酸素供給量↑して心筋虚血を緩和させる。
副作用 頭痛:脳血管拡張により頭蓋内圧が亢進するため
一般名 先発名 詳細
ニトロプルシド ニトプロ持続静注 持続時間が短いため血圧調節しやすく緊急降圧薬として点滴静注に用いられる。
転倒を避けるため投与後は座位・臥位をとらせる!

配合錠

一般名 先発名 特徴
アムロジピン+
アトルバスタチン
カデュエット配合錠1/2/3/4番
GE:アマルエット
Ca拮抗薬+HMG-CoA還元酵素阻害薬
ロサルタン+
ヒドロクロロチアジド
プレミネント配合錠HD/LD
GE:ロサルヒド
ARB+利尿薬
バルサルタン+
ヒドロクロロチアジド
コディオ配合錠MD/EX
GE:バルヒディオ
ARB+利尿薬
カンデサルタン+
ヒドロクロロチアジド
エカード配合錠
GE:カデチア
ARB+利尿薬
テルミサルタン+
ヒドロクロロチアジド
ミコンビ配合錠AP/BP ARB+利尿薬
イルベサルタン+
トリクロロチアジド
イルトラ配合錠HD/LD ARB+利尿薬
バルサルタン+
アムロジピン
エックスフォージ配合錠
GE:アムバロ
ARB+Ca拮抗薬
オルメサルタン+
アゼルニジピン
レザルタス配合錠HD/LD ARB+Ca拮抗薬
カンデサルタン+
アムロジピン
ユニシア配合錠HD/LD
GE:カムシア
ARB+Ca拮抗薬
テルミサルタン+
アムロジピン
ミカムロ配合錠AP/BP ARB+Ca拮抗薬
イルベサルタン+
アムロジピン
アイミクス配合錠HD/LD ARB+Ca拮抗薬
バルサルタン+
シルニジピン
アテディオ配合錠 ARB+Ca拮抗薬
アジルサルタン+
アムロジピン
ザクラス配合錠HD/LD ARB+Ca拮抗薬
テルミサルタン+
アムロジピン+
ヒドロクロロチアジド
ミカトリオ配合錠 ARB+Ca拮抗薬+利尿薬

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