骨折
【骨折治療の概要】
①炎症期(数日):骨折部に血腫形成→マクロファージ浸潤、間葉系細胞出現→毛細血管新生
②修復期(数週間):軟骨細胞出現→軟骨内骨化、骨芽細胞出現、海綿骨形成
③リモデリング期(数年):皮質骨形成
①整復 | 骨折で転位した骨を元の位置に戻す。 | 徒手整復法:皮膚の上から手で整復する。 牽引法:持続的に牽引して整復する。 観血的整復法:上記2つが困難な場合に実施。 |
②固定 | 整復位を保持し、骨癒合を促す。 | 外固定:テーピングやギプスで2関節固定する。 装具療法:装具で関節運動を制御する。 内固定:体内に固定材を入れる。 創外固定:骨にピンを挿入して固定する。 (感染徴候がある場合は内固定ではなくこちらを選択) |
③リハビリ | ー | 早期の関節運動と筋力強化により運動機能の回復を図る。 |
骨折の分類
【程度による分類】
完全骨折 | 骨の連続性が完全に途絶えた状態 |
不完全骨折 | 骨梁(海綿骨のスポンジ状構造)の連続性は途絶えているが、骨全体の連続性は保たれている状態。例:亀裂骨折、若木骨折、竹節骨折 |
【原因による分類】
外傷性 | ①直達外力(外力が加わった部分)による骨折を生じやすい部位 →上腕骨骨幹部、大腿骨骨幹部、下腿骨骨幹部、肋骨、踵骨など ②介達外力(外力が加わった部分から離れた部分)による骨折を生じやすい部位 →鎖骨、肩甲骨、上腕骨顆上、橈骨遠位端(Colles骨折)など |
病的 | 骨が局所的に病的状態で脆弱なため軽微な外力で生じる骨折 ①感染症・腫瘍:化膿性脊椎炎、カリエス、骨腫瘍など ②先天性骨疾患:大理石骨病、骨形成不全症 ③代謝性疾患:骨粗鬆症、骨軟化症、骨Paget病、副甲状腺機能亢進症 ※骨粗鬆症は、脊椎圧迫骨折(特に胸腰移行部)、大腿骨頸部/転子部骨折、上腕骨外科頸骨折、Colles骨折が起こりやすい! |
疲労 | 健康な骨の一定部位に繰り返し小さな外力が加わって生じる骨折 早期は単純X線では所見が認められないためMRIが有用。2〜3週間経過するとX線上で骨膜反応が出現する(悪性腫瘍との鑑別が重要)。 |
【外界との交通による分類】
閉鎖骨折 | 単純骨折、皮下骨折とも言う。 |
開放骨折 | 骨折部が汚染されており、感染(骨髄炎)を防ぐため、受傷後6時間以内にデブリドマンを行う(golden period)。 さらに、骨折部の安定化のため創外固定(汚染度少なければ内固定)を行う。 創部の血行が良好で感染がないことを確認したら、創外固定をはずして内固定を行う。 |
小児の骨折
病態 | 成人よりも骨が柔らかいため、外傷では脱臼よりも骨折が起こりやすい。 骨膜が厚く弾性に富んでいるので不完全骨折になりやすい(若木骨折)。 骨癒合能やリモデリングが高いため年齢が低いほどが早い(ただし、回旋変形はリモデリングされない)。 ①上腕骨顆上骨折(最多)、②上腕骨外顆骨折(2位) |
治療 | 骨幹部骨折は原則保存療法(関節内骨折で骨片転位が大きい場合は手術) |
骨折の合併症
早期 | ・循環障害(コンパートメント症候群) ・血管損傷、神経損傷、臓器損傷 ・脂肪塞栓 ・感染、DIC、外傷性ショック ・静脈血栓 |
晩期 | ・関節拘縮 ・複合性局所疼痛症候群(CRPS) ・外傷性骨化性筋炎 ・阻血性骨壊死 |
脂肪塞栓症
疫学 | 骨折患者の数%に発症 |
病態 | 肺の毛細血管を通過した脂肪滴が循環器系に流入し塞栓を生じること。 原因は骨盤骨折や下肢骨折で生じることが多い。 骨折部位の早期固定で予防可能。 |
症状 | 受傷後数日以内に ①発熱・頻脈:循環障害 ②点状出血:皮膚に塞栓 ③意識障害:中枢神経系に塞栓 ④低酸素血症:肺に塞栓 |
検査 | 【画像検査】 単純X線:両肺野の吹雪様陰影 |
治療 | 酸素療法主体の全身管理、ステロイド・ヘパリン投与 |
複合性局所疼痛症候群(CRPS)
病態 | 主に先行する外傷後に交感神経の異常により生じる慢性の神経因性疼痛。 掌側からプレート固定を行うようになりCRPSは減少した。稀な疾患。 |
症状 | ①自発痛、知覚異常、 ②皮膚循環障害:皮膚・爪・毛のいずれかの萎縮性変化 ③関節可動域制限、関節拘縮 ④発汗異常:発汗亢進または低下 ⑤浮腫 |
検査 | 【画像検査】 X線:健常側と比較してX線透過性が亢進し、骨萎縮の状態となっている 3相骨シンチグラフィー:集積亢進 |
治療 | 鎮痛薬、理学療法、交感神経ブロック、心理療法 |
コンパートメント症候群(Volkmann拘縮を含む)
病態 | 骨、筋膜、骨膜によって構成される区画の内圧が上昇し、神経障害や筋壊死に至るもの。下腿では前方区画に生じやすく、前脛骨区画症候群という。 原因は骨折、ギプスによる長時間の圧迫、挟まれるなどの外傷(外傷後6~8時間後に起こることが多い)。阻血が6時間以上続くと筋区画内圧が上昇して神経障害や筋壊死など不可逆的な変化を生じ、予後不良となる(Volkmann拘縮)。 【Volkmann拘縮】 上腕骨顆上骨折などによって前腕の筋区画内圧上昇(コンパートメント症候群)や上腕動脈の直接損傷により上腕動脈の血行障害が起こり、前腕屈筋群の壊死と正中・尺骨N麻痺により生じる拘縮。 |
症状 | 四肢阻血徴候(6P) ①Pain:疼痛 ②Pale:蒼白 ③Paresthesia:知覚異常 ④Pulselessness:脈拍喪失(橈骨動脈の拍動) ⑤Paralysis:運動麻痺 ⑥Passive stretching pain:他動的伸展による激痛 |
検査 | 筋区画内圧30〜40mmHg以上が診断基準の一つ |
治療 | ギプスをしていれば除去 症状増悪すれば減張切開(皮膚・筋膜の切開)、壊死した四肢は切断。 |
★上腕骨骨折
外科頸骨折 | 骨幹部骨折 | 顆上骨折 | 外顆骨折 | |
病態 | 骨粗鬆症の高齢者に多い。 転倒時に肘や肩をぶつけて生じる。 |
直達外力、捻転力によって生じる。 | 小児で最多。 転倒時の肘伸展位において手をついた時に生じる。 |
小児で2番目に多い。 転倒時の肘伸展位において外反方向に力が加わり生じる。 |
症状 | 橈骨N麻痺→下垂手 | 橈骨+正中N麻痺 | ||
後遺症 | 肩関節拘縮 | 内反肘、 Volkmann拘縮 |
骨折部が偽関節になると成長とともに外反肘→遅発性尺骨N麻痺 |
橈骨遠位端骨折(Colles骨折、Smith骨折)
疫学 | 骨粗鬆症の高齢者に多い |
病態 | 手掌をついて転倒するColles骨折と手背をついて転倒するSmith骨折がある。 |
症状 | 手関節の疼痛・腫張 (フォーク状変形) 【合併症】 手根管症候群(正中神経麻痺) 長母指伸筋腱断裂 複合性局所疼痛症候群(CRPS) |
検査 | CPRSは骨シンチ |
治療 | 徒手整復してギプス包帯で固定、転位が大きい場合は手術 |
鎖骨骨折
疫学 | 新生児分娩時の骨損傷として最多 |
病態 | 肩から転倒した時など、介達外力によって生じることが多い。 |
症状 | 騎乗位変形などの変形治癒を起こすことが多いが、機能障害は少ない 【合併】 腕神経叢損傷、血胸、気胸 |
検査 | |
治療 | 鎖骨バンド、8字帯法 |
肋骨骨折
病態 | 直達外力によって第4〜8肋骨を骨折することが多い。 |
症状 | 骨折部位に一致した疼痛、体動・咳・くしゃみなどで痛み増強 多発骨折の場合は動揺胸郭(flail chest) |
検査 | 単純X線 |
治療 | バストバンド固定、動揺胸郭の場合は気管挿管の上で間欠的陽圧呼吸(IPPB) |
脊椎圧迫骨折
病態 | 外傷だけでなく、骨の脆弱性が著しい場合でも生じる。 |
症状 | 急性の腰背部痛 |
検査 | 【画像検査】 単純X線:背部痛をきたす疾患を確認 |
治療 | 鎮痛剤、骨粗鬆症がある場合はビスホスホネート製剤など |
骨盤骨折
省略
★大腿骨近位部骨折(頸部骨折・転子部骨折)
大腿骨頸部骨折 | 大腿骨転子部骨折 | |
疫学 | 骨粗鬆症の高齢者に多い | 左に同じ |
病態 | 関節内骨折。大腿骨頭の血行は悪く、骨癒合が不良のため遷延癒合、大腿骨頭壊死、偽関節になりやすい。 | 関節外骨折。大腿骨頭の血行は良好のため骨接合術で癒合する。 |
症状 | ①股関節の激痛 ②起立不能・歩行不能 ③股関節外旋位で搬送される |
左に同じ |
検査 | 単純X線:頚部長短縮 | 左に同じ |
治療 | 早急に内固定 or 人工骨頭置換術 早期手術・早期リハビリにより廃用予防 |
γネイルを用いた内固定(出血量多い) 早期手術・早期リハビリにより廃用予防 |
膝蓋骨骨折
省略
下腿骨骨幹部骨折
足の骨折(距骨骨折、踵骨骨折)
距骨骨折 | 踵骨骨折 | |
病態 | 高所からの墜落で骨折する。血流が悪くなり骨癒合後骨壊死を起こしやすい。 | 高所からの墜落で骨折する。踵骨がつぶれ外傷性扁平足となる。Sudeck骨萎縮をきたすこともある。骨の形態修復は難しい。 |
症状 | ||
検査 | ||
治療 | 短下肢装具の装着 | 左に同じ |
関節、靭帯損傷
捻挫とは、関節可動域を超える運動を強制された時に起こる関節支持組織の損傷で、関節面の位置関係は正常である。
★膝半月板損傷
疫学 | 膝内障で最多。 |
病態 | 体重を負荷した状態で、膝関節屈曲位で異常な回旋力が加わると大腿骨と脛骨の間に挟まれて半月板が損傷する。半月板は外1/3しか栄養血管がないため自然修復は難しい。スポーツ外傷では前十字靭帯損傷と合併しやすい。 |
症状 | ①受傷直後:激痛、関節腫脹 ②運動時疼痛、膝の引っ掛かり、異常音(クリック) ③断裂した半月板が顆間窩に嵌頓し、膝が屈曲したまま伸展不能となる(ロッキング) ④関節水腫による膝蓋跳動を認める場合もある |
検査 | 【徒手検査】 McMurrayテスト:仰臥位にて、検者が他動的に膝を最大屈曲位にし、内側と外側の関節裂隙に指を当てた状態で下腿に内旋・外旋ストレスを加えながら膝を徐々に伸展させる。内旋時に疼痛またはクリック触知で内側半月板損傷、外旋時に疼痛またはクリック触知で外側半月板損傷とわかる。 Apleyテスト:伏臥位で膝を90度屈曲位にし、検者が大腿を固定し足底を下方に押し込みながら下腿を回旋させる。外旋時に内側に疼痛で内側半月板損傷、内旋時に外側に疼痛で外側半月板損傷とわかる。 【画像検査】 MRI:T2強調で半月板損傷部が高信号 |
治療 | 関節鏡下半月板縫合術または部分切除術 |
膝靭帯損傷
前十字靭帯(ACL)損傷 | 後十字靭帯(PCL)損傷 | |
病態 | 着地時に急停止や方向転換で靭帯断裂。約半数に半月板損傷を合併する。 | ダッシュボード損傷など交通外傷、スポーツ外傷で膝前面を強く打撲して靭帯断裂。 |
症状 | ①受傷時激痛とともにブツッと断裂音 ②関節腫脹、ときに関節血症 ③陳旧例では膝崩れ感、膝不安定感 |
①受傷時疼痛 ②打撲による膝皮膚損傷 ③陳旧例では膝不安定感 |
検査 | 【徒手検査】 前方引き出しテスト:陽性率低いため割愛。 Lachmannテスト:陽性率90%。仰臥位で膝約20度屈曲位にし、検者が大腿を固定し頸骨近位部を上方に引く。陽性では1cm以上引き出され停止点の感覚はない。 |
【徒手検査】 後方引き出しテスト:割愛 Saggingテスト:割愛 |
治療 | 自家腱を用いた靭帯再建術 スポーツ復帰には半年〜1年かかる |
保存療法が多い(装具着用、大腿四頭筋の筋力訓練) |
内側側副靱帯(MCL)損傷
疫学 | 膝靭帯損傷で最多 |
病態 | スキーなどスポーツ中の接触事故により靭帯断裂(大腿骨付着部が多い)。 |
症状 | 膝内側の疼痛・腫脹 陳旧例では膝不安定感 |
検査 | 【徒手検査】 外反ストレステスト:仰臥位で膝関節約30度屈曲位にし、検者が強制的に膝外反させる。疼痛や動揺性があれば陽性とする。 |
治療 | 保存療法が多い |
★捻挫・足関節靭帯損傷
疫学 | スポーツ外傷の中で最多 |
病態 | 捻挫は、主に関節可動域を超える運動を強制された時に起こる関節支持組織(靱帯、関節包)の損傷であり、関節面の位置関係は正常。足関節内反による前距腓靱帯損傷が多い。 |
症状 | 自発痛、圧痛、運動制限 関節腫脹:数時間以内に生じたものは関節内出血、24時間以降に生じたものは関節液貯留 |
検査 | 【画像検査】 内反ストレステスト:単純X線で前方から見た距骨傾斜角の増大(5°以上が陽性) |
治療 | 急性期:患部のRICE療法 部分断裂:弾性包帯固定、テーピング、装具着用 完全断裂:ギプス固定、手術 |
脱臼
脱臼は、主に関節可動域を超える運動を強制された時に起こる関節支持組織(靱帯、関節包)の損傷であり、関節面の位置関係が失われた状態。 【原因による分類】
外傷性脱臼 | 外傷による脱臼。 |
病的脱臼 | 関節包の破壊によらない脱臼。 |
反復性脱臼 | 外傷性脱臼後に軽度の外力で繰り返し起こる脱臼。肩関節に多い。 |
随意脱臼 | 自分の意思による脱臼。第1中手指関節に好発。 |
亜脱臼 | 関節面の一部のみがかろうじて互いに接触を保っている脱臼。 |
環軸関節亜脱臼
病態 | 環軸関節に緩みが生じ、頸椎の前屈時に亜脱臼が起こり頸椎を圧迫する疾患。本症では、軽微な外傷により、四肢麻痺とともに、呼吸筋麻痺を引き起こして突然死の原因ともなる。 関節リウマチやDown症に合併することがある。 関節リウマチでは、環軸関節の滑膜炎により軸椎が破壊され、環椎横靱帯が弛緩し、環軸関節前方亜脱臼が発症する。 |
症状 | ①頸部痛 ②頸髄圧迫症状:両手のしびれ、手指の巧緻運動障害 |
検査 | 【画像検査】 X線:環椎歯突起間距離(ADI)の増加=環椎が前方へ移動していることを確認 |
治療 | 原則手術(突然死の原因を防ぐため) |
肩関節脱臼
病態 | 上肢を伸ばして転倒し、肩に外転と外旋が強制された時に発生。前方脱臼が多く、周囲の靱帯が伸びるため若年例では反復性脱臼になりやすい。大結節の剥離骨折を合併することが多く、その場合、棘上筋機能不全が起こることもある。 |
症状 | 自動運動不能: 他動運動による疼痛・バネ様固定 【合併】 腋窩N麻痺:三角筋麻痺、三角筋部の知覚低下 |
検査 | ? |
治療 | 【徒手整復法】 麻酔併用可。以下整復したら、その後3週間は外旋位に固定する。 Stimson法:患肢を台から外に垂らし、錘を吊り下げて約15分待つと整復される。 Milch法(挙上法):上腕骨頭を押さえながら患肢を外転させ挙上位にさせる。骨頭を上方に押しつつ、腕も上方へ引き上げると整復される。 |
肩鎖関節脱臼
病態 | 肩鎖靭帯と烏口鎖骨靭帯の断裂により鎖骨遠位端が浮き上がり突出する。 |
症状 | |
検査 | 【徒手検査】 突出部を押すと整復され、離すと浮き上がる(piano key sign)。 |
治療 | 軽症なら三角巾で固定 |
肘関節脱臼
病態 | 肘関節伸展位で手をついて倒れた時に起こることが多い。後方脱臼が多い。 小児では上腕骨顆上骨折や外側顆骨折に合併して肘関節脱臼が生じやすい。橈骨骨頭脱臼に尺骨骨幹部骨折が併発するものをMonteggia脱臼骨折、尺骨遠位端脱臼に橈骨骨幹部骨折を併発するものをGaleazzi脱臼骨折という。 |
症状 | 自動運動不能、バネ様固定 |
検査 | 【画像検査】 単純X線:伸展時にヒューター線、屈曲時にヒューター三角の乱れ |
治療 | 徒手整復を行った後、3週間程度固定し、自動運動を再開 |
★肘内障
病態 | 小児の手を前腕回内位で急に強く引っ張った際、橈骨骨頭が輪状靭帯から引き抜け、靭帯が逸脱し亜脱臼となる疾患。 |
症状 | ①肘関節の橈骨頭周囲の圧痛 |
検査 | 【身体検査】 視診:上肢全体の下垂位、前腕回内位、肘関節軽度屈曲位が特徴 |
治療 | 【徒手整復法】 橈骨頭を母指で圧迫し、前腕を回外しながら肘を屈曲させるとコクっと整復音が出る。 整復後は顔の高さでバイバイして肘関節の疼痛消失と自動運動を確認。固定は不要。 |
発育性股関節形成不全(旧先天性股関節脱臼)
疫学 | 女児に多い(7:1)、発生率:約0.1%、家族内発生 |
病態 | 先天的あるいは周産期の要因により、大腿骨頭が関節包をつけたまま脱臼(関節包内脱臼)している疾患。放置すると変形性股関節症に移行するため早期発見が重要。 |
症状 | 大腿皮膚溝の非対称:仰臥位で患肢のしわが多く・深い Allis sign:仰臥位で両膝屈曲位で両下肢を揃えると、患肢の膝の位置が低くなる 【幼少期以降】 処女歩行の遅延: Tredelenburg sign:患肢で片足立ちした時、患側は股関節脱臼による外転筋力が低下しており、健側の骨盤が沈下する。 腰椎前弯の増強: |
検査 | 【身体検査】 開排テスト:両股関節を90度屈曲・外転させる。抵抗がある場合は異常。 click sign(Ortolani法):仰臥位で両股関節90度屈曲+膝関節最大屈曲位から、股関節を大腿骨長軸方向に軽く押し付けると脱臼音を触知する。 telescoping sign:仰臥位で大腿長軸方向への上下運動、大腿上端の異常な上昇・下降を感じる。 【画像検査】 エコー:股関節脱臼を確認 単純X線:大転子の高位・突出が見られる(通常、大転子は坐骨結節と上前腸骨棘を結ぶローザーネラトン線上で触知される) |
治療 | 【8ヶ月未満】リーメンヒューゲル装具で股関節を90度屈曲位に保持する。 【8ヶ月以上】オーバヘッド牽引→徒手整復 【3歳以上】手術 【生活指導】オムツカバーはバンド幅が狭いもの。股関節が開排する状態で抱っこする。 |
外傷性股関節脱臼
病態 | 股関節が屈曲位にある際、前方から強い外力が大腿骨軸に加わり脱臼する。後方脱臼が多い。ダッシュボード損傷に合併することが多い。 |
症状 | 下肢が短縮し、屈曲・内転・内旋位をとる 【合併】 大腿骨頭壊死:脱臼時の血管損傷による。24時間以内に整復しなければ高率に生じる。 その他:坐骨神経損傷、寛骨臼蓋・臼底・骨頭の骨折 |
検査 | ? |
治療 | 速やかに全身麻酔下で徒手整復 |
腱損傷
突き指(指の捻挫)
病態 | DIP関節での指伸展筋腱の損傷。末節骨の骨折や亜脱臼を伴う場合がある。 |
症状 | DIP関節の自動伸展不能:屈筋腱の力で屈曲したままになる |
検査 | |
治療 | RICE。亜脱臼なければ、伸展装具着用してDIP関節を6週間程度伸展保持 |
アキレス腱断裂
病態 | 腓腹筋の緊張時に足関節に急激な背屈力が加わり、多くは完全に腱断裂する。 |
症状 | ①断裂部疼痛(歩行は可能) ②つま先立ちできない(底屈は可能) |
検査 | 断裂部に皮膚の上から陥凹を触知する Thompsonテスト:伏臥位で膝関節90度屈曲位にし、下腿三頭筋をつかんでも底屈しない場合は陽性(アキレス腱の完全断裂) |
治療 | 【保存療法】 尖足位にして足関節背屈制限装具の装着 |
肉離れと筋挫傷
肉離れ | 筋肉が引き伸ばされながら収縮することにより主に筋腱移行部が断裂する状態。 治療はまずRICE、その後は松葉杖などで患部を安静にする。 |
筋挫傷 | 筋肉が強打されると筋が骨に押し付けられ深層の筋が損傷する状態。また、反復して強打していると筋肉が石灰化(骨化性筋炎)することがある。 |
肩関節の腱板断裂
病態 | 腱板(棘上筋腱が最多)が断裂する疾患。 ※腱板とは、棘上筋、棘下筋、小円筋、肩甲下筋の4つの筋の腱の総称 |
症状 | 運動時痛、安静時、夜間痛:肩関節外転時に肩峰と腱板が衝突するため=インピンジメント |
検査 | 【身体検査】 drop arm sign:他動的に腕を上げ、支持を外すと急に下がると陽性 【画像検査】 エコー・MRI:断裂部を確認。MRIではT2強調像で断裂部が高信号となる。 肩関節造影:肩関節に注入された造影剤が関節包外へ流出 |
治療 | 安静、対症療法 |
コメント