薬疹の概要
薬疹の多くが遅延型アレルギー反応で、投与開始7〜14日後に生じることが一般的。
病態 | 全ての薬剤は用量や血中濃度とは関係なく薬疹を起こす可能性がある。 Ⅰ〜Ⅳ型アレルギーどの機序でも発症し、非アレルギー型の場合もある。 健康食品、サプリ、造影剤でも起こるので必ず確認すること! |
症状 | ①皮疹(ほぼ必発):軽症は真皮に局在した炎症のため表皮はツルツルだが、重傷は表皮にまで病変が拡大しているので表皮はザラザラしている。また、重症のSJSでは発熱、粘膜病変を伴うところが重要な所見となる(薬疹を疑ったらまず確認!)。 ②発熱、掻痒感、Ⅰ〜Ⅳ型アレルギー症状 |
検査 | 【血液検査】 好酸球↑IgE↑(喘息)、AST↑・ALT↑↑(肝障害)、腎障害 【各種アレルギー検査】 Ⅰ型:スクラッチテスト、プリックテスト、皮内テスト Ⅳ型:パッチテスト(貼付試験)、薬剤リンパ球刺激テスト(DLST) ※どの検査も陽性率が高くなく薬疹を確定診断できる検査は存在しない! |
治療 | 原因薬剤の中止 軽症:ステロイド外用、抗ヒスタミン薬内服 中等症:プレドニゾロン0.5mg/kg/日程度までの中等量内服で1週間以内に改善する |
【薬疹を疑ったらすること】
①薬歴 | 過去1ヶ月以内に開始した薬剤を、第一被疑薬としてピックアップし、「薬疹情報」で報告数を確認しておく。 |
②検査所見 | WBC、肝機能(AST、ALT)、腎機能(Cre、BUN)が正常値なら一安心 |
③バイタル | 発熱、倦怠感など全身状態が保たれていれば一安心 |
④粘膜疹 | 眼球結膜の充血、口唇・口腔内の発赤・びらん、外陰部・肛門のびらんがあれば眼科コンサルト(視力障害を残す可能性があるため) |
【薬疹の種類】
緊急を要する薬疹 | 多形紅斑型薬疹、SJS、TEN、DIHS |
その他の薬疹 | 播種状紅斑丘疹型、膿疱型、紫斑型、光線過敏型、水疱型、紅皮症型、固定薬疹、蕁麻疹型、手足症候群など |
アレルギー性皮疹の診察
①アナフィラキシーあり?
以下からアナフィラキシーを疑うようであればアナフィラキシーショックを参照
気道・呼吸器症状 | 循環器症状 | 消化器症状 |
呼吸苦、咳嗽 | 下痢 |
②5つの問診
①発症までの時間 | 原因となる抗原曝露(薬・食事)からの時間とも言える |
②1つの皮疹の持続時間 | 時間や場所を変えて持続する場合があるので1つの皮疹に注目 |
③発症部位 | 局所?全身? |
④既往歴、使用薬剤 | 特にアレルギーの既往、使用薬剤歴 |
⑤家族歴 | アレルギー疾患の家族歴 |
③アレルギーの型を判別
Ⅰ型アレルギー | 非Ⅰ型アレルギー(主にⅣ型) | |
皮疹 | 蕁麻疹(膨疹) | 多様(播種性丘疹性紅斑が多い) |
病態 | 主にヒスタミンが関与 | リンパ球が関与し、感作まで時間がかかる |
① | 数分(1時間以内が多い) | 数日〜1週間程度以降に出現 ※すでに感作ありなら1、2日でも発症する |
② | 数時間(場所を変えて持続はありえる) | 長時間持続 |
③ | 全身 | |
④ | Ⅰ型アレルギーの既往+抗ヒス薬効果あり | 抗菌薬、抗てんかん薬、向精神薬の使用歴 |
⑤ | アレルギー疾患の家族歴あり | |
治療 | 原因薬剤食物の中止+抗ヒスタミン薬 | 原因薬剤の中止+ステロイド外用など |
④抗菌薬の変更時は、異なる系統の抗菌薬に変更
抗菌薬を変更しても、同じ構造を持つ抗菌薬の場合は交差性があり、同様のアレルギーを生じうる。そのため、可能であるなら血液培養の結果から感受性が良く交差性のない抗菌薬に変更する。
【ペニシリンアレルギーの対応】
原則 | βラクタム系以外へ変更、しかしやむ得ず使用する場合は以下参照 |
ペニシリン系 | ペニシリン系でアレルギーの既往があれば原則使用不可 |
セフェム系 | 世代が若いほど交差反応が出たと報告あり、第4か第3世代を使用 |
モノバクタム系 | ペニシリンとの交差反応は少ないとされる |
カルバペネム系 | ペニシリンとの交差反応は少ないとされる |
Ⅳ型アレルギーの分類
非Ⅰ型アレルギーの薬疹で、以下の症状がある場合は重症薬疹の可能性あり
粘膜病変 | 臓器病変 |
口腔粘膜、眼瞼結膜、外陰部 | 発熱、倦怠感など全身症状が強い |
【重症薬疹は以下3つ】
Ⅰ型アレルギーの治療
内服薬 | |
運転者 | フェキソフェナジン(アレグラ®)60mg 1日2回 朝夕 |
ロラタジン(クラリチン®)10mg 1日1回 朝 or 夕 | |
ビラスチン(ビラノア®)20mg 1日1回 空腹時 | |
妊婦 | レボセチリジン(ザイザル®)5mg 1日1回 就寝前 |
ロラタジン(クラリチン®)10mg 1日1回 朝 or 夕 |
掻痒感が強い場合への対処
①冷却 | 氷嚢など適度に冷やせるものを使用 |
②塗布 | メントール、グリセリン、エタノールなどを配合した塗り薬を使用 |
アレルギーの検査(参考までに)
Ⅰ型 | RAST | |
プリックテスト | ||
Ⅳ型 | パッチテスト | |
DLST |
固定薬疹
病態 | 同一薬剤投与の度に同一部位に繰り返し皮疹を生じる薬疹。 多発する固定薬疹はTENに進行する可能性もあるので注意。 <主な原因薬剤> メフェナム酸、エテンザミド、アセトアミノフェン、ミノサイクリンなど |
症状 | 痒み・痛みを伴う円形の紅斑が皮膚粘膜移行部(口周囲・外陰部)、四肢関節部(特に手足関節部)に限局して生じる。ときに水疱→びらん→色素沈着を残して治癒 |
検査 | 【アレルギー検査】 皮疹出現部位でパッチテストを行うと陽性率が高い |
治療 | 原因薬剤の中止+ステロイド外用 |
Stevens-Johnson症候群(SJS)・中毒性表皮壊死症(TEN)
どちらも薬剤服用数日後に発症(Ⅳ型アレルギー)
<主な原因薬剤>
アロプリノール、ラモトリギン、カルバマゼピン、アセトアミノフェン、ロキソプロフェン、ガレノキサシン、レボフロキサシンなど
SJS(粘膜・皮膚・眼症候群) | TEN | |
病態 | 多形滲出性紅斑の重症型。多くは薬剤性。 高熱や関節痛を伴いながら多形紅斑が全身に出現。ときにTENに移行することがある。 死亡率1〜5% | 最重症型の薬疹。致死率高い。 表皮全層が壊死し、真皮から剥離している。SJSから移行することが多い。 死亡率25〜35% |
症状 | ①粘膜びらん(眼・口唇・外陰部)→眼病変は視力障害をきたすため必ず眼科にコンサル! ②全身に紅斑や水疱びらんが急速に拡大 びらん面積が体表面積の10%未満 ③全身症状(高熱、関節痛など) |
左の症状 +びらん面積が体表面積の10%以上 |
検査 | ニコルスキー現象(ー)? | ニコルスキー現象(+) 皮膚生検:表皮の壊死を確認 |
治療 | 入院して原因薬剤中止+ステロイド全身投与 | 原因薬剤中止+ICUでステロイド大量投与 血漿交換、Ig大量静注療法 |
DIHS(薬剤性過敏症症候群)
<主な原因薬剤>
ラモトリギン、カルバマゼピン、フェノバルビタール、フェニトイン、ゾニサミド、サラゾスルファピリジン、アロプリノール、DDS、ミノサイクリン、メキシレチンなどが多い。
病態 | HHV6の再活性化が関与する重症薬疹の一つ。薬剤服用2〜6週間に発症し、場合によっては数ヶ月後に出現する。原因薬剤中止後も皮疹が遷延したり再燃したりする。 |
症状 | ①全身症状(必発):リンパ節腫脹、肝機能障害など ②紅斑丘疹型、多形紅斑型の皮疹(粘膜びらんー)、特に顔面の浮腫、紅斑、膿疱、鱗屑が特徴的、口腔粘膜に異常なし・体幹四肢に水疱やびらんがみられない |
検査 | 【血液検査】 WBC↑好酸球↑異型リンパ球↑、抗HHV-6 IgG抗体+、AST↑ALT↑ |
治療 | ・原因薬剤中止+ステロイド全身投与 ※急激なステロイド中止によりHHV-6再活性化するため緩徐に減量する |
急性汎発性発疹性膿疱症
省略
手足症候群
省略
抗悪性腫瘍薬による皮疹
省略
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