皮膚の構造
表皮は約0.2mm、真皮は約2mmの厚さがあり、約6週間でターンオーバーする(角層2週間+顆粒層〜基底層4週間)。ケラチノサイト(=角化細胞)が基底細胞→有棘細胞→顆粒細胞→角質と分化していく過程を角化という。
構成細胞と機能 | ||
表皮 | 角層 | 【角質】 ケラチノサイトが扁平化し、核や小器官もなくなる。角質内のケラトヒアリン顆粒は脱顆粒し、その中のフィラグリンが変性して天然保湿因子となる(保湿作用+バリア機能作用)。また、角層の細胞間は主にセラミドという脂質で覆われている。 |
顆粒層 | 【顆粒細胞】 細胞内にはケラトヒアリン顆粒と層板顆粒を有する。 |
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有棘層 | 【有棘細胞】 デスモゾームが発達しており、ケラチノサイト間を強固に結合する(デスモゾームと核はトノフィラメントによってつながっている)。特に、有棘細胞ではトノフィラメントが集合してできたトノフィブリル(張原線維)が細胞骨格として機能している。 【Langerhans細胞(樹状細胞)】 Birbeck顆粒を有するCD1a+CD45陽性の抗原提示細胞(=MHCクラスⅡを持つ)。紫外線照射やステロイド外用でランゲルハンス細胞の数が減少する。 |
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基底層 | 【基底細胞】 19日に1度分裂し、片方が有棘細胞となる。ヘミデスモゾームはケラチノサイトと基底膜を強固に結合する。 【メラノサイト(色素細胞)】 紫外線→MSH分泌増加→メラノサイト内のチロシナーゼ活性化→血中チロシンからメラニンを産生→メラノソームに貯蔵。メラノサイトは基底層と毛母に存在し、ケラチノサイト間に樹状突起を伸ばし、ケラチノサイト内にメラニンを分泌する。メラノサイトは顔面などの露光部や陰部などに高密度に存在する。性ホルモンや妊娠でメラニン産生量増加する。 【Merkel細胞】 触圧覚に関与(手掌、口腔粘膜などに多く存在) |
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真皮 | 乳頭層 乳頭下層 網状層 |
【線維芽細胞】 膠原線維(張力に抵抗して強度保持)や弾性線維(伸縮力)などの真皮間質成分を産生する。膠原線維と弾性線維間にはヒアルロン酸に結合したプロテオグリカンが存在し、水分を保持している。 【肥満細胞(マスト細胞)】 ヒスタミンを分泌し、皮膚に紅斑や膨疹が症じ、I型アレルギーが引き起こされる。 【自由神経終末】 乳頭層に存在し、温痛覚・痒覚などに関与 【Meissner小体】 乳頭層に存在し、触圧覚や振動覚に関与 【Ruffini小体】 網状層に存在し、圧変化と振動を感知 【血管】 体温調節に関与 |
皮下 組織 |
ー | 【脂肪細胞】 クッションの役割 【Pacini小体】 |
メラニンは生成過程でシステインと結合するとフェオメラニン(黄色)となり、肌や髪の色が明るくなる。システインと結合しないユウメラニンは褐色である。
皮膚の付属器
皮膚腺 | 皮脂腺 | 皮脂は表面を酸性に保ち、有害物質の侵入を防いでおり、また、潤いももたらしている。 皮脂は毛包内に開口する(皮脂細胞の全分泌)、男性ホルモンにより増加し、女性ホルモンにより減少する。分泌される成分は主にTGで、他にコレステロールエステル、スクアレンなどである。脂腺分泌が亢進している状態を脂漏、低下している状態を皮脂欠乏という。 |
汗腺 | アポクリン汗腺 | 特定の部位(腋窩、外陰部、乳輪、肛門周囲部、外耳道)に限局して存在し、毛包内に開口する(断頭分泌=離出分泌)。分泌される汗が悪臭を放つのは、汗に含まれる有機物が細菌によって分解されるためである。アポクリン汗腺はアドレナリン作動性で情動刺激により分泌促進され、また、性ホルモンによっても分泌促進される。 |
エクリン汗腺 | 長い単管状腺で皮膚表面に直接開口し(透出分泌=開口分泌)、全身に広く分布する(特に、手掌、足底、前額)。エクリン汗腺はコリン作動性で交感神経によって支配され、体温調節や皮膚加湿を行う。 |
【毛周期】
通常、1日50本前後抜ける。
男性ホルモンは前頭・頭頂の脱毛を促進し、髭や陰毛の成長を促進する。
成長期(約85%) | 6〜8年 | 毛を抜くと毛根にゼラチン様のものがある毛。加齢によって成長期は長くなるため、眉毛や耳毛は長くなる。 |
退行期(約5%) | 2週間 | 毛を抜くと毛根に残骸がある毛。 |
休止期(約10%) | 3〜4ヶ月 | 抵抗なく抜ける細い毛で、毛根が棍棒状になっている。 |
皮膚の症候
皮膚科用語
発疹 皮疹 |
皮膚および粘膜に生じた病変の総称を発疹という。 皮膚の発疹を皮疹、粘膜の発疹を粘膜疹という。 |
斑 | 皮膚面から隆起していない限局性病変→だから色調に着目! 紅斑、紫斑、白斑、色素斑(黒〜青色)がある。 【紅斑】 真皮上層の毛細血管が拡張した病変(硝子圧法により退色)。 丘疹、水疱、膿疱などの発疹の周囲に生じた紅斑を紅暈(こううん)という。広範囲に生じたものを汎発性紅斑という。 【紫斑】 真皮〜皮下組織が出血した状態(硝子圧法により退色しない)。 直径5mm以下の小さなものを点状出血、直径5mm以上のものを斑状出血、非常に大きなものを血腫という。赤血球がマクロファージに貪食されると紫斑は徐々に消退する。点状出血の原因は血小板や血管であるのに対し、斑状出血や血腫の原因は凝固異常である。 頻度:老人性紫斑(最多)>アナフィラクノイド紫斑>ステロイド紫斑。 【白斑、色素斑】 メラニン産生の欠乏した状態を白斑。メラニンの存在するレベルによって皮膚の色に差が生じて黒〜青に見える状態を色素斑という。 |
湿疹 | 表皮の炎症により角化細胞間の浮腫病変。組織学的には急性期に海綿状態がみられる。点状状態、多様性(湿疹三角)、掻痒の3つの特徴を持つ。 |
丘疹 結節 腫瘤 |
【丘疹】 表皮に形成された直径1cm以下の隆起性病変。充実性丘疹、漿液性丘疹(頂点に小水疱を伴う)、臍窩を有する丘疹(頂点に凹面)がある。 【結節】 表皮に形成された直径1〜3cmの隆起性病変 【腫瘤】 表皮に形成された直径3cm以上の隆起性病変 |
水疱 | 表皮や真皮に内容が透見できる水様内容物が貯留した直径0.5cm以上の隆起性病変で、内容物が血液である場合は血疱(けっぽう)という。 表皮内水疱:弛緩性水疱(水疱膜が弛んでいる)、小水疱(直径0.5cm以下)、中央に臍窩を有する水疱(ウイルス性疾患に伴う水疱) 表皮下水疱:緊満性水疱(水疱膜が厚く緊張している) |
膿疱 | 表皮や真皮に膿性の内容物が貯留した隆起性病変。 感染性膿疱:主に細菌感染によって生じ、膿の大半は好中球。 非感染性膿疱:掌蹠膿疱症などの原因で白血球が集簇する無菌性膿疱 |
湿潤 | 炎症や表皮が欠損することにより皮膚表面に浸出液など液性成分が存在する病変 |
痂皮 | 所謂かさぶた。びらんや潰瘍に伴って生じた液体が乾燥して表皮に固まった状態。痂皮ができることを結痂(けつが)といい、血液の場合は特に血痂(けっか)という。 |
苔癬化 | 慢性的な皮膚変化により皮膚が硬く肥厚した病変(Vidal苔癬やアトピー性皮膚炎でといった慢性化した湿疹に多い)。皮溝および皮丘の形成が顕著になる場合がある。 |
膨疹 | 真皮に形成された限局性浮腫。一過性のため消失後には瘢痕を残さない。 |
疱疹 | 小水疱・小膿疱が集簇した状態(ヘルペスや帯状疱疹でよく見られる) |
微小膿瘍 | 表皮に形成された小さな膿瘍 |
膿瘍 | 真皮や皮下に膿(好中球+壊死組織→脂肪変性)が貯留した状態 |
嚢腫 | 真皮に壁を持つ空洞性の腫瘤状病変(粉瘤でよく見られる) |
苔癬 | 同一の小丘疹が集簇・散在しており、他の皮疹に変化しない状態 |
鱗屑 | 肥厚した角層が表皮に蓄積した状態(多数の角質が同時に剥がれ落ちるのは病的)。ふけは頭の鱗屑。鱗屑が剥がれ落ちることを落屑という。鱗屑は小さい順に粃糠様(ひこう)<小葉状<大葉状とよぶ。 |
びらん アフタ 潰瘍 |
【びらん、アフタ】 表皮が剥離し基底層まで欠損した状態で、表皮が再生することにより瘢痕は残さず治癒する。粘膜の炎症に伴う浅いびらんをアフタという。 【潰瘍】 真皮〜皮下組織まで欠損した状態で、肉芽組織を生じて再生し最終的には瘢痕を残して治癒する。性感染症によって生じた潰瘍を下疳(げかん)という。 |
瘢痕 ケロイド |
潰瘍や創傷によって欠損した組織を結合組織が埋め、その上に薄い表皮が形成されてできるもの。瘢痕の特徴は皮野形成がない、皮膚付属器がない、平滑で光沢のある外観などがある。肥厚性の瘢痕をケロイドという。 |
皮膚萎縮 | 皮膚組織が変性した結果、皮膚が薄くなった状態。表面は平滑、陥凹、皺状になる。汗腺機能が低下するため皮膚表面が乾燥します。 |
亀裂 | 角層〜真皮まで到達する細く深い線状の切れ目。疼痛を伴う。 |
胼胝 | 所謂たこ。表皮角層が限局性に増殖肥厚したもの。圧痛はない。 |
鶏眼 | 所謂うおのめ。表皮角層から真皮に向かって円錐状に尖る様に増殖したもの。圧痛あり。 |
面皰 | 毛包を栓塞している皮脂を面皰(めんぽう)という。 |
痤瘡 | 毛包と一致性を示す丘疹、膿疱、面皰が混在している状態で、脂漏部位に好発する。尋常性痤瘡はにきびのこと。 |
母斑 | 色調や形の異常を主体とする限局性皮膚病変で、緩徐に発育する。母斑が皮膚だけでなく他臓器にも生じるものを母斑症という。 |
紅皮症 | 紅斑とは別モノ!全身にびまん性の紅潮を呈する状態で、しばしば鱗屑を伴う。 |
尋常性と名の付く皮膚疾患
尋常性とは、普通にみられ、ありふれているという意味である。
尋常性天疱瘡 | 抗デスモグレイン抗体産生 |
尋常性乾癬 | ターンオーバーの短縮 |
尋常性疣贅(ゆうぜい) | HPV |
尋常性白斑 | 抗メラノサイト抗体産生 |
尋常性魚鱗癬(=さめ肌) | 角層の遺伝子異常 |
尋常性ざ瘡(=にきび) | アクネ菌など |
尋常性狼瘡(ろうそう) | 皮膚結核でみられる |
皮膚の検査
様々な皮膚検査
臨床的意義 | 疾患 | |
Nikolsky現象 | 無疹部に物理的刺激を加えると表皮剥離もしくは水疱が生じる=表皮内病変の存在を示す (ススッとこすると点々の水疱ができる) |
SSSS、尋常性天疱瘡、TEN型薬疹、表皮水疱症 |
ケブネル現象 | 無疹部に物理的刺激を加えると病変部と同様の変化が誘導される(毛深い寛平) | 扁平苔癬、尋常性乾癬、自家感作性皮膚炎 |
Auspitz現象 | 乾癬の鱗屑の擦過により点状出血を生じる(アウ血!乾癬) | 尋常性乾癬のみ! |
Darier徴候 | 肥満細胞症では色素斑部の皮膚を擦過すると同部に掻痒性の膨疹が生じる現象 | 色素性蕁麻疹(肥満細胞症)のみ!(誰の帽子?デブの) |
硝子圧法 | 透明なガラス板で皮疹を圧迫して色調の変化をみる。紅斑は褪色し、紫斑は褪色しない。 | |
皮膚描記法 | 先端の鈍なもので皮膚を擦過すると、蕁麻疹では赤色調の膨疹を生じ、アトピー性皮膚炎では白色調となる。 | 赤色皮膚描記症:蕁麻疹 白色皮膚描記症:アトピー性皮膚炎 |
針反応 | ベーチェット病で皮膚に針を刺すと24〜48時間で、紅斑、丘疹、無菌性膿疱を生じる。 | ベーチェット病 |
Tzanck試験 | 水疱内の細胞をギムザ染色し、天疱瘡では棘融解細胞、単純疱疹や帯状疱疹ではウイルス性巨細胞を検出する検査 | 天疱瘡(尋常性&落葉性) 単純疱疹、水痘・帯状疱疹 |
ダーモスコピー | 10倍程度の拡大鏡で皮膚表面を詳細に観察。悪性黒色腫と良性の色素性病変との鑑別に使用。 | |
皮膚温測定法 | サーモグラフィを用いて末梢循環障害などを調べる。 | 閉塞性動脈硬化症(ASO),DM,Burger病,Raynaud病 |
光線テスト | UVAまたはUVBを短時間照射し、24時間後に紅斑を生じさせる最小光線量(MED)を確認 | 光線過敏症ではMED低下 |
Wood灯検査 | Wood灯は365nmの長波長紫外線で、この光を病変部に照射すると特徴的な色調の蛍光を発する | 黄橙色:癜風 サンゴ赤色:紅色陰癬 紅色:ポルフィリン症 黄緑色:頭部白癬 |
KOH法 | スライドガラス上で検体に水酸化カリウムを加え、角質を融解させて鏡検する。 | 白癬菌、カンジダ、癜風菌などの真菌症、疥癬虫などの虫 |
アレルギー検査
I型 | 血液検査 | RIST | 血清総IgE値 |
RAST | 特異的IgE値 | ||
ヒスタミン遊離試験 | |||
皮膚検査 | プリックテスト (プリッと刺す) |
抗原液を皮膚に1滴垂らし、その部位を針で穿刺し、15分後、紅斑や膨疹の程度により判別する。 | |
スクラッチテスト | プリックテスト陰性の場合に用いられる。抗原液を皮膚に垂らし、その部位を針で引っ掻き、15分後、紅斑や膨疹の程度により判別する。 | ||
皮内テスト | 抗原液を真皮内に注射し、15分後、紅斑や膨疹の程度により判別する。例:ペニシリンテスト | ||
誘発試験 | ー | 食物負荷などによって直接的な抗原刺激を与える。 | |
Ⅱ型 | 血液検査 | Coombsテスト | 【直接】自己の赤血球に対する抗体がある場合、凝集する。AIHAが代表例。 【間接】自己の血清中成分に対する抗体がある場合、凝集する。血液型の判定に使用。 |
Ⅲ型 | 皮膚検査 | Arthus反応 | 抗原を皮内に注射し、3〜8時間後に皮膚を観察する。 |
Ⅳ型 | 血液検査 | 薬剤リンパ球刺激試験(DLST) | 患者血液からTリンパ球と抗原提示細胞を取り出し、抗原(薬剤FF)とともに培養し、増殖を測定する。 |
皮膚検査 | パッチテスト | 抗原を直接皮膚に貼付し、48時間後・72時間後・1週間後の皮膚変化をみる検査法。接触性皮膚炎・薬疹の原因検索に使われる。 | |
ツベルクリン反応 | 抗原液を真皮内に注射し、24〜48時間後に皮膚変化をみる検査法。 |
特殊な治療法
詳細 | 適応疾患 | |
PUVA療法 | 光感作物質であるP(ソラレン)を内服 or 外用後にUVA(長波紫外線)を照射する。眼の保護が必要。 | 乾癬、類乾癬、アトピー性皮膚炎、尋常性白斑、掌蹠膿疱症、菌状息肉症、円形脱毛症 |
ナローバンドUVB療法 | 311nmに鋭いピークを持つUVBによる光線療法 | 乾癬など |
レーザー療法 | ルビーレーザー:メラニンに選択的に吸収される。 ダイレーザー:Hbに選択的に吸収される。 |
太田母斑などの色素性病変 血管腫 |
凍結療法 | 液体窒素などを用いて低温で細胞を凍結させる | ウイルス性疣贅など |
温熱療法 | カイロ、湯などにより病変部を加温する(高温で発育できない) | スポロトリコーシス 非結核性抗酸菌症 |
湿疹・皮膚炎
湿疹 eczema
湿疹の特徴 | ①掻痒が必発、②多様な湿疹が混在、③点状状態 =「痒くて表面がざらざら」 |
湿疹の分類 | 1、接触性皮膚炎 2、光接触皮膚炎 3、アトピー性皮膚炎 4、慢性単純性苔癬 5、主婦手湿疹 6、貨幣状湿疹 7、自家感作性皮膚炎 8、うっ滞性皮膚炎9、皮脂欠乏性皮膚炎 10、脂漏性皮膚炎 |
原因 | 外来刺激物質が体内に侵入すると、それを排除しようとした際に炎症反応が表皮に現れたものが湿疹であると考えられている。つまり、「湿疹=表皮の炎症」 湿疹が起こる機序は①Ⅳ型アレルギー性と②刺激性がある。 |
【湿疹三角】
膿疱 | |||||||
小水疱 | 湿潤(びらん) | ||||||
丘疹 | 結痂 | 苔癬化(表皮肥厚) | |||||
紅斑 | 落屑 | 治癒 |
接触皮膚炎(かぶれ)contact dermatitis
病態 | 原因物質と接触部位に限局して掻痒を伴う浮腫性紅斑を生じる疾患で、一次刺激性とⅣ型アレルギー性に分類される。「原因物質がわかる湿疹=○○による接触性皮膚炎」 ①一次刺激性:ある濃度以上であれば初回接触でも湿疹が生じる ②IV型アレルギー性:侵入した物質+ハプテンが抗原となり、初回接触では生じず、2回目以降(数週〜数年後)に感作されると湿疹が生じる 光線が関与する場合は、光刺激性接触皮膚炎と光アレルギー性接触皮膚炎と言う |
症状 | 接触部位の湿疹+強い痒み |
検査 | パッチテスト:一次刺激性では一定濃度を超えないと陽性にならないが、アレルギー性では濃度に関係なく陽性となる |
治療 | ①原因物質の除去 ②抗アレルギー薬内服+ステロイド外用 |
★アトピー性皮膚炎 atopic dermatitis
疫学 | 乳児期と15〜30歳に好発、冬〜春に悪化 リスク因子:アトピー素因(家族歴・既往歴に①気管支喘息、②アレルギー性鼻炎・結膜炎、③アトピー性皮膚炎のいずれかを持つ、またはIgE抗体を産生しやすい体質のこと) |
病態 | アトピー素因+皮膚バリア機能↓により、異物が侵入してI型アレルギーが生じる。その結果、強い掻痒のある左右対称性の慢性湿疹を生じ、増悪と寛解を繰り返す。ストレス・疲労、乾燥、汗などで悪化しやすい。大半は思春期前に治癒するが、一部持続し難治性となる。 【重症度4段階】 ①最重症:強い炎症を伴う皮疹が体表面積の30%以上 ②重症:強い炎症を伴う皮疹が体表面積の10〜30% ③中等症:強い炎症を伴う皮疹が体表面積の10%以下 ④軽症:軽度の皮疹だけのもの |
症状 | 【乳児期】顔面・頭部(特に口周囲)に好発し、強い浸潤傾向 【幼少期】体幹の皮膚が乾燥傾向、四肢関節屈側、殿部に苔癬化、耳切れ 【思春期以降】上半身に著名な苔癬化、頸部にさざ波様の色素沈着、ヘルトゲ徴候(眉毛の外側が薄くなる) 【合併症】 ①眼:擦過による外傷性の白内障・裂孔原性網膜剝離、円錐角膜、アレルギー性結膜炎 ②皮膚:掻爬によるカポジ水痘様発疹症・伝染性膿痂疹・伝染性軟属腫 |
検査 | 【身体検査】 白色皮膚描記法(+) 【血液検査】 IgE↑(RIST)、皮疹増悪時に好酸球↑、特異的IgE抗体(RAST)↑、TARC↑(皮膚細胞が産生し、炎症の程度を反映する) 【病理】真皮浅層の好酸球浸潤 |
治療 | 【薬物療法】 保湿+ステロイド外用を、急性増悪時には1日2回、改善したら1日1回塗布する。 中等症以下の場合はステロイド外用の代わりにタクロリムス外用やJAK阻害薬外用を使用することがある。 掻痒に対しては抗ヒスタミン薬内服、重症例ではシクロスポリンやステロイドを内服する。治療抵抗性の場合はPUVA療法が行われることもある。 |
生活 | 増悪因子(例:汗、皮膚乾燥、体温上昇など)の検索+除去 |
【アトピー性皮膚炎の薬物療法の基本】 ※ス外=ステロイド外用
軽症 | 中等症 | 重症 | 最重症 | |
保湿剤 | ○ | ○ | ○ | ○ |
ス外:2歳未満 | Mild以下 | Mild以下 | Strong以下 | Strong以下 |
ス外:2〜12歳 | Mild以下 | Strong以下 | Very strong以下 | Very strong以下 |
ス外:13歳以上 | Mild以下 | Very strong以下 | Very strong以下 | Very strong以下 |
抗アレルギー薬 | ○ | ○ | ○ | ○ |
ステロイド内服 | × | × | × | ○ |
シクロスポリン内服 | × | × | × | ○(16歳以上) |
Vidal苔癬(=慢性単純性苔癬、限局性神経皮膚炎)
病態 | 衣服などの刺激によって生じた掻痒に対して繰り返し掻くことにより苔癬化した湿疹。 |
症状 | 中年女性の項部・腋窩・陰部に好発 |
検査 | ? |
治療 | ステロイド外用、抗アレルギー薬内服 |
主婦手湿疹
省略
貨幣状湿疹 nummular eczema
疫学 | 冬に好発。老人の乾燥肌に好発。 |
病態 | 四肢伸側・腰・殿部に散在する強い掻痒を伴った10円玉くらいの類円形の湿疹を生じる疾患。老人性乾皮症に続発することが多い。アトピー性皮膚炎に合併することがある。悪化で自家感作性皮膚炎を続発することもある。 |
症状 | ①強い掻痒 |
検査 | 視診:下腿伸側などにコイン型の湿疹。融合して局面を形成する部分もある。 |
治療 | 保湿、抗アレルギー薬内服、ステロイド外用 |
自家感作性皮膚炎 autosensitization dermatitis
病態 | 貨幣状湿疹、接触性皮膚炎、うっ滞性皮膚炎などの原発巣が存在し、病変を掻いて血行性に抗原や細菌成分が散布され全身性の湿疹となる疾患。 |
症状 | 強い掻痒、全身性の湿疹(紅斑、漿液性丘疹など) |
検査 | ? |
治療 | 原発巣の治療、抗アレルギー薬内服、ステロイド外用 |
うっ滞性皮膚炎 stasis dermatitis
病態 | 下肢静脈瘤など静脈還流異常により生じる下腿の皮膚炎。 長時間立位の人に好発。また、妊娠を契機に生じた静脈瘤に合併することがある。 |
症状 | 下腿内側に掻痒を伴う浮腫性紅斑→ときに潰瘍化、ヘモジデリン沈着による色素沈着 |
検査 | 視診:暗褐色調を呈した光沢のある紅斑 |
治療 | 湿疹部分にステロイド外用、高度な静脈瘤には硬化療法など |
予防 | 下肢挙上、弾性包帯、弾性ストッキング |
皮脂欠乏性湿疹
病態 | 老化や過度の皮膚乾燥により角質保湿機能が低下し、易刺激性に生じる湿疹病変。 乾燥する冬に多い、高齢者に多い。 |
症状 | 背部や下腿伸側の皮膚乾燥、掻爬痕 |
検査 | ? |
治療 | 保湿、抗アレルギー薬、ステロイド外用 |
脂漏性皮膚炎(脂漏性湿疹) seborrheic dermatitis
疫学 | 生後6ヶ月、思春期に好発 |
病態 | 脂漏部位や間擦部位(頭・顔・腋下)に生じる湿疹病変。 過剰分泌された皮脂中のTGは、常在真菌(マラセチア)によって刺激性の脂肪酸などに分解される。その結果、表皮に炎症をきたしやすくなると考えられている。 フケとは頭部の軽度な脂漏性皮膚炎のことである。 |
症状 | 弱い掻痒、壮年男性では胸部や股間に多い |
検査 | ? |
治療 | ステロイド外用、抗真菌薬外用 |
蕁麻疹・痒疹
蕁麻疹 Urticaria
病態 | I型アレルギー性(食品などのアレルゲン)または非アレルギー性(擦過、日光、寒冷、薬剤などの物理的・化学的刺激)にヒスタミンが分泌され、血管内皮細胞のH1に結合して血管透過性亢進し、真皮上層に一過性の限局性浮腫が生じる疾患。また、ヒスタミンは知覚神経のH1に結合し、掻痒を起こす。 ※特定の食事+摂取2〜3時間後の運動で蕁麻疹⇨食物依存性運動誘発アナフィラキシー ※様々な全身疾患の初期症状として蕁麻疹が出現してくることがある。特に慢性蕁麻疹(6週間以上繰り返す)ではこの傾向があり、全身性疾患の精査も必要! |
症状 | ①境界明瞭な限局性の膨疹(水疱形成はない、色調・膨疹の形はさまざま) ②多くは24時間以内に跡形なく消退(一過性) ③掻痒を伴う |
検査 | 擦過などの物理的刺激が疑われる場合:紅色皮膚描記法+ IgE関与が疑われる場合:皮内テスト、特異的IgE測定 |
治療 | 原因物質除去+抗ヒスタミン薬内服(病変が真皮なのでステロイド外用は×) 追加でH2遮断薬を投与することもある。重症例ではステロイド全身投与。 慢性蕁麻疹には抗IgE抗体(オマリズマブ)注射 |
血管性浮腫(Quincke浮腫)Angioedema
病態 | 蕁麻疹の一種であり、真皮深層〜皮下組織の限局性浮腫。 非遺伝性ではACE阻害薬などの薬剤の副作用によってヒスタミンが分泌され、皮下組織・粘膜の限局性浮腫(膨疹)が生じる。 遺伝性にC1インヒビターが欠損し、カリクレイン・キニン系が活性化しやすく血管透過性が亢進する(非常に稀な疾患)。 |
症状 | ①限局性浮腫は特に眼瞼・口唇多く、咽頭浮腫では窒息、腸管浮腫では下痢、腹痛、悪心嘔吐を生じる。浮腫は境界不明瞭である。 ②原則痒みはなく、症状は2〜3日続く(蕁麻疹との相違点) |
検査 | 咽頭内視鏡検査で咽頭浮腫の状態確認 C1 inhibitor欠損症:補体↓ |
治療 | 遺伝性:アンドロゲン製剤(C1インヒビター産生増強)+トラネキサム酸投与 非遺伝性:薬剤性であれば薬剤中止。抗ヒスタミン薬内服、ステロイド投与。 |
色素性蕁麻疹(肥満細胞症の皮膚型)
疫学 | 乳児期に好発 |
病態 | 肥満細胞が真皮で増殖するため生後1歳頃までに蕁麻疹を繰り返し、全身に爪甲大までの色素斑が多発する疾患。入浴、皮膚摩擦などで肥満細胞からヒスタミンが放出され症状が出現する。 乳幼児期に発症した症例は5〜6歳頃より自然治癒傾向を示すが、成人型は難治性。 |
症状 | ①反復性の蕁麻疹症状(色素斑上に生じる膨疹) ②四肢や体幹に散在する褐色色素斑と紅斑 ③肝脾腫、リンパ節腫脹、骨硬化症、血液異常を合併することもある |
検査 | Darier徴候+(色素斑の擦過により肥満細胞からヒスタミン放出で膨疹を生じる) 【皮膚生検】 トルイジンブルー染色で真皮内の肥満細胞内の顆粒が赤紫色に染色される |
治療 | 発作時に抗ヒスタミン薬内服 |
痒疹 Prurigo
病態 | 真皮上層に滲出性炎症が生じる疾患。原因不明。 中高年以降に出現した痒疹は白血病、内臓悪性腫瘍などを背景に生じることがある。 |
症状 | ①強い掻痒+丘疹(湿疹のように他の発疹型に移行しない) ②痒疹瘢痕(瘢痕中央が白く、周囲が色素沈着した状態。痒疹があったことを意味する) |
検査 | ? |
治療 | 抗ヒスタミン薬内服+ステロイド外用 |
皮膚掻痒症 Cutaneous pruritus
病態 | 老人性乾皮症、肝硬変、慢性腎不全、血液透析、糖尿病、内臓悪性腫瘍、悪性リンパ腫、菌状息肉症などに合併して掻痒を生じる疾患。 |
症状 | 掻痒のみ(皮疹は認めない) |
検査 | |
治療 | 原疾患治療+抗ヒスタミン薬内服 |
紅斑症
★多形滲出性紅斑 EEM:Erythema Exsudativum Multiforme
病態 | 抗原に対するアレルギー反応によって紅斑が生じる疾患。 重症型はStevens-Johnson症候群(SJS)に移行するか注意深い経過観察が必要 【抗原】 ウイルス感染症、マイコプラズマ、薬疹、虫刺症などに対する免疫反応 |
症状 | ①四肢伸側・左右対称性に標的状紅斑(紅斑辺縁部が堤防状に隆起・中央が陥没)が多発 ②掻痒 |
検査 | 【血液検査】赤沈↑、CRP↑ |
治療 | 原因疾患の治療+対症療法。軽症は2〜3週で自然治癒、重症例ではステロイド全身投与。 |
Sweet病(急性熱性好中球性皮膚症)
疫学 | 中年女性に好発 |
病態 | 先行する上気道感染の後、発熱・関節痛などの全身症状を伴い、炎症性+無菌性に好中球が皮膚に浸潤し、有痛性浮腫性紅斑が多発する疾患。原因は不明だがMDS、白血病、内臓悪性腫瘍、膠原病(RAなど)を背景に生じることがある。 |
症状 | ①顔面・四肢に多発する有痛性の浮腫性紅斑 ②発熱(一見すると感染症にみえる) ③関節痛や口腔内アフタを合併することがある スイートでアチアチ、チューして赤くなる:発熱、有痛、好中球増多、紅斑 |
検査 | 【血液検査】WBC↑好中球↑、CRP↑、赤沈↑ 【皮膚生検】真皮全層に著明な好中球浸潤 |
治療 | 安静+NSAIDs、コルヒチン、ヨードカリなど。無効な場合はステロイド内服。 |
★結節性紅斑・硬結性紅斑
サルが改悪CBT:サルコイドーシス、潰瘍性大腸炎、悪性腫瘍、Crohn病、Behcet病、TB
結節性紅斑 | 硬結性紅斑 | |
疫学 | 女性に好発。春・夏に多い。 | 中高年女性に好発。 |
病態 | 感染(溶連菌、結核など)、ハンセン病、サルコイドーシス、ベーチェット病、炎症性腸疾患などに合併し、皮下脂肪組織の炎症を生じる紅斑。必ず結核の精査を行う! | 結節性紅斑に類似した皮下結節を生じる。 ・結核性:結核菌に対するアレルギー反応が皮膚に生じて紅斑となる。 ・非結核性:原因は不明。 |
症状 | ①下肢伸側に紅斑を伴う有痛性皮下結節 ②掻痒なし、潰瘍なし |
①下肢の下1/3に暗紫色の硬結 ②結核性:無痛+次第に潰瘍形成 ②非結核性:圧痛+潰瘍なし |
検査 | 【血液検査】赤沈↑、CRP↑ | 結核性はツベルクリン反応強陽性 |
治療 | 安静+下肢挙上+NSAIDsなど 治療で3〜6週で消退 |
非結核性:左に同じ、結核性:結核治療 多くは予後不良で治癒しにくい |
環状紅斑
省略
壊死性遊走性紅斑
省略
薬疹
薬疹の概要
病態 | 全ての薬剤は用量や血中濃度とは関係なく薬疹を起こす可能性がある。 Ⅰ〜Ⅳ型アレルギーどの機序でも発症し、非アレルギー型の場合もある。 健康食品、サプリ、造影剤でも起こるので必ず確認すること! 固定薬疹型:NSAIDs、テトラサイクリン系など 蕁麻疹型:造影剤、ペニシリン系、セフェム系、NSAIDsなど SJS型・TEN型:ペニシリン系、セフェム系、NSAIDs、抗てんかん薬など DIHS型:抗てんかん薬、DDS、サラゾスルファピリジン、アロプリノールなど |
症状 | 皮疹(ほぼ必発):軽症は真皮に局在した炎症のため表皮はツルツルだが、重傷は表皮にまで病変が拡大しているので表皮はザラザラしている。また、重症のSJSでは発熱、粘膜病変を伴うところが重要な所見となる(薬疹を疑ったらまず確認!)。 発熱、掻痒感、Ⅰ〜Ⅳ型アレルギー症状 |
検査 | 【血液検査】 好酸球↑IgE↑(喘息)、AST↑・ALT↑↑(肝障害)、腎障害 【各種アレルギー検査】 Ⅰ型:スクラッチテスト、プリックテスト、皮内テスト Ⅳ型:パッチテスト(貼付試験)、薬剤リンパ球刺激テスト(DLST) ※どの検査も陽性率が高くなく薬疹を確定診断できる検査は存在しない! |
治療 | 原因薬剤の中止+必要に応じてステロイド外用・内服 |
固定薬疹
病態 | 同一薬剤投与の度に同一部位に繰り返し皮疹を生じる薬疹。 多発する固定薬疹はTENに進行する可能性もあるので注意。 <主な原因薬剤> メフェナム酸、エテンザミド、アセトアミノフェン、ミノサイクリンなど |
症状 | 痒み・痛みを伴う円形の紅斑が皮膚粘膜移行部(口周囲・外陰部)、四肢関節部(特に手足関節部)に限局して生じる。ときに水疱→びらん→色素沈着を残して治癒 |
検査 | 【アレルギー検査】 皮疹出現部位でパッチテストを行うと陽性率が高い |
治療 | 原因薬剤の中止+ステロイド外用 |
★Stevens-Johnson症候群(SJS)・中毒性表皮壊死症(TEN)
どちらも薬剤服用数日後に発症(Ⅳ型アレルギー)
SJS(粘膜・皮膚・眼症候群) | TEN | |
病態 | 多形滲出性紅斑の重症型。多くは薬剤性。 高熱や関節痛を伴いながら多形紅斑が全身に出現。ときにTENに移行することがある。 死亡率1〜5% |
最重症型の薬疹。致死率高い。 表皮全層が壊死し、真皮から剥離している。SJSから移行することが多い。 死亡率25〜35% |
症状 | ①粘膜びらん(眼・口唇・外陰部)→眼病変は視力障害をきたすため必ず眼科にコンサル! ②全身に紅斑や水疱びらんが急速に拡大 びらん面積が体表面積の10%未満 ③全身症状(高熱、関節痛など) |
左の症状 +びらん面積が体表面積の10%以上 |
検査 | ニコルスキー現象(ー)? | ニコルスキー現象(+) 皮膚生検:表皮の壊死を確認 |
治療 | 入院して原因薬剤中止+ステロイド全身投与 | 原因薬剤中止+ICUでステロイド大量投与 血漿交換、Ig大量静注療法 |
DIHS(薬剤性過敏症症候群)
病態 | HHV6の再活性化が関与する重症薬疹の一つ。薬剤服用2〜6週間に発症し、原因薬剤中止後も皮疹が遷延したり再燃したりする。 <主な原因薬剤> カルバマゼピン、フェノバルビタール、フェニトイン、サラゾスルファピリジン、アロプリノール、DDS、ミノサイクリンなどが多い。 ヤクザのあかるさをみよ!:薬剤性、アロプリノール、カルバマゼピン、サラゾスルファピリジン、ミノサイクリン |
症状 | ①全身症状(必発):リンパ節腫脹、肝機能障害など ②紅斑丘疹型、多形紅斑型の皮疹(粘膜びらんー)、特に顔面の浮腫、紅斑、膿疱、鱗屑が特徴的、口腔粘膜に異常なし・体幹四肢に水疱やびらんがみられない |
検査 | 【血液検査】 WBC↑(好酸球↑、異型リンパ球↑)、抗HHV-6 IgG抗体+、AST↑ALT↑ |
治療 | 原因薬剤中止+ステロイド全身投与 |
水疱症
表皮内水疱(弛緩性) | 破れやすい | 天疱瘡、伝染性膿痂疹など |
表皮下水疱(緊満性) | 破れにくい | 類天疱瘡、虫刺され、ポルフィリン症など |
表皮内にできる水疱
尋常(上)性→基底層直上、落葉→下に落ちる→角層(下)
尋常性天疱瘡 | 落葉状天疱瘡 | |
疫学 | 中・老年 | 中・老年 |
病態 | デスモグレイン1&3に対する自己抗体が産生され、全身の皮膚・粘膜に表皮内水疱を形成する疾患。表皮の下方の基底層直上に弛緩性水疱が生じ、その中に棘融解細胞が存在。 | デスモグレイン1に対する自己抗体が産生され、全身の皮膚に表皮内水疱を形成する疾患。表皮の上方の角層下に弛緩性水疱が生じ、その中に棘融解細胞が存在。 |
症状 | ①口腔内有痛性びらん:Dsg3が多く存在し、初発症状として多い。痒み(ー) ②その後、全身に紅斑+弛緩性水疱を生じる ③水疱が破れてびらんを生じる |
①頭部・胸背部などの脂漏部位を中心に紅斑+浅在性小水疱を生じる。粘膜疹なし! ②水疱が破れて表皮びらん→薄皮が剝げるように落屑する(=落葉状)、痒み(ー) |
検査 | 【身体検査】 触診:Nikolsky現象(+) 【Tzanck試験】 棘融解細胞(+) 【蛍光抗体直接法】 表皮細胞間にIgG・C3沈着 |
左に同じ |
治療 | ステロイド内服が第一選択。 難治性はステロイドパルス、免疫抑制剤、血漿交換など |
左に同じ |
表皮下にできる水疱
水疱性類天疱瘡 | 後天性表皮水疱症 | 疱疹状皮膚炎 | |
疫学 | 高齢者、自己免疫水疱症で最多 | 中高年 | 日本ではまれ |
病態 | 基底膜のヘミデスモゾームの17型コラーゲン(BP180)に対する自己抗体が産生され、表皮下水疱を形成する疾患。 内臓悪性腫瘍を合併することがある。また、DPP-4阻害薬の副作用で生じることもある。 |
基底膜下の7型コラーゲンに対する自己抗体が産生され、表皮下水疱を形成する疾患。外傷などを契機として四肢末端部に水疱が好発する。遺伝的素因はない。 | グルテン過敏腸症を伴う。グルテンなどの抗原と抗体による結合組織に対する自己免疫と考えられている。 |
症状 | ①掻痒を伴う紅斑の上に、緊満性水疱が多発(破れにくいが、一部破れてびらんとなる) ②20〜30%に粘膜疹(+) |
①四肢伸側など外力がかかる部分に緊満性水疱が出現 | ①肘・膝関節伸側などに強い掻痒を伴う浮腫状紅斑+辺縁に小水疱 |
検査 | 【蛍光抗体直接法】 表皮基底膜部にIgGやC3の線状沈着 【蛍光抗体間接法】 1M食塩水に48時間浸し、表皮側にIgG沈着が認められ、対応抗原はBP130。 |
【蛍光抗体直接法】 表皮基底膜部にIgGやC3の線状沈着 【蛍光抗体間接法】 1M食塩水に48時間浸し、真皮側にIgG沈着が認められ、対応抗原が7型コラーゲン。 |
【蛍光抗体直接法】 真皮乳頭部へのIgAやC3の顆粒状沈着し、対応抗原はトランスグルタミナーゼ。 |
治療 | ステロイド内服 | ステロイド内服 | DDS投与+ グルテン除去食 |
先天性表皮水疱症
乳幼児期から軽微な外力で水疱・びらん形成する疾患。Nikolsky現象(+)
単純型 | 接合部型 | 優性栄養障害型 | 劣性栄養障害型 | |
遺伝形式 | 常・優 | 常・劣 | 常・優 | 常・劣 |
部位 | 表皮内 | 表皮ー真皮接合部 | 表皮下(真皮) | 表皮下(真皮) |
原因 | ケラチン5・14 | ラミニン332など | 7型コラーゲン | 7型コラーゲン |
所見 | 手足を中心に水疱形成 | 全身の水疱、歯牙・爪の発育不良 | 手足を中心に水疱・瘢痕形成 | 全身の水疱・瘢痕形成、指趾癒着、歯牙・爪の発育不良 |
予後 | 良好 | Herlitz型は不良 | 比較的良好 | 不良 |
無菌性膿疱症(掌蹠膿疱症・壊疽性膿皮症)
好中球が浸潤するため膿ができる!
掌蹠膿疱症 | 壊疽性膿皮症(壊疽→エゾ) | |
疫学 | 30〜40代の女性に好発 | |
病態 | 慢性扁桃炎や胆嚢炎などの病巣感染、歯科金属アレルギー、喫煙などが関与して、原因不明に手足に好中球が浸潤し無菌性の膿疱を形成する難治性疾患。寛解と増悪を繰り返し、慢性に経過する。 | 好中球が浸潤し無菌性の潰瘍ができる疾患。原因は不明。症状を繰り返して慢性化する。 約75%にUC・クローン病、MDS、多発性骨髄腫、大動脈炎症候群、白血病、関節リウマチなどが合併している(エゾのウシはクローン、まだ食えんけ吐かんと!)。 |
症状 | ①手掌(特に母指球・小指球)、足底(特に土踏まず)に好発し、小水疱→膿疱となり、周囲に紅斑を伴う。 ②合併症に多発関節炎、胸鎖関節炎(胸肋鎖骨間骨化症)、脊椎炎などの掌蹠膿疱症性骨関節炎が見られる(約10%)。 |
①主に下腿に紅斑上に小水疱・膿疱を形成→急速に自壊して境界明瞭で辺縁が堤防状に隆起した潰瘍ができる。 ②その後、潰瘍は中心から肉芽形成し数ヶ月後に瘢痕を形成して治癒する。 疼痛+、発熱+ |
検査 | 【皮膚生検】 表皮内単房性膿疱(+) |
【皮膚生検】 真皮全層に好中球浸潤 |
治療 | 原因の除去(扁桃摘出、抗菌薬内服など) +ステロイド外用+活性化VD3外用。PUVA療法。DDS内服。ビオチン内服。 |
合併症治療 +ステロイド外用&内服+DDS内服。 治療抵抗性の場合はシクロスポリン内服。 |
角化症
掌蹠角化症
病態 | 手掌と足底の過角化をきたす疾患の総称。一般的には遺伝性のものを指す。 |
症状 | ときに知的能力障害、悪性腫瘍を合併することがある。 |
検査 | ? |
治療 | レチノイド内服、角質溶解薬外用 |
尋常性魚鱗癬(さめ肌)
病態 | 常染色体優性遺伝で、魚鱗癬で最多。乳幼児期に発症し、思春期以降に軽快する。 角層の水分保持に関わるフィラグリン遺伝子異常により皮膚の乾燥・鱗屑が生じる疾患。 |
症状 | ①四肢伸側・体幹に乾燥と鱗屑(夏に軽快、冬に悪化) |
検査 | 【皮膚生検】角層の肥厚、顆粒層の減少・消失 |
治療 | 角質溶解薬 |
★Darier病
病態 | CaポンプをコードするATP2A2遺伝子異常(常染色体優性遺伝)により、細胞内Ca濃度が異常となり、細胞間結合と表皮細胞の分化障害が生じ、角化性丘疹が多発する疾患。思春期前後に発症し、難治性で慢性に経過する。 |
症状 | ①腋窩、鼠蹊部など脂漏部位に米粒大の褐色調の角化性丘疹が多発し癒合(夏の発汗、日光暴露で悪化し、湿潤して悪臭を伴う)アトピー性皮膚炎と異なり瘙痒を伴わない! 【合併症】 Kaposi水痘様発疹症:表皮のバリア機能が低下する部位で生じる |
検査 | 【皮膚生検】 円形体・顆粒体など異常角化細胞、棘融解(表皮細胞がばらばらになっている状態)による間隙形成 |
治療 | レチノイド内服、角質溶解薬外用、日光暴露を避ける |
汗孔角化症
病態 | 常染色体優性遺伝。 |
症状 | 褐色調で辺縁の隆起した環状の角化性皮疹が四肢伸側、外陰部、顔面に好発。 自覚症状なし。まれにBowen病や有棘細胞癌が発生する。 |
検査 | 【皮膚生検】病変の辺縁部に柱状の不全角化が見られる |
治療 | 外科的切除 |
★★尋常性乾癬
疫学 | 有病率0.1%、30歳代以降に好発、男性に多い(2:1) |
病態 | 乾癬の約9割を占める。表皮のTurn overが短縮する炎症性角化症。 |
症状 | ①銀白色の鱗屑を伴う境界明瞭な紅斑が頭皮、肘、膝、腰部など機械的刺激が多い部分に多発、痒み(+) ②爪に点状陥凹、粗造化などの変化あり ③指の関節痛:乾癬性関節炎 |
検査 | ケブネル現象+、アウスピッツ現象+ 【皮膚生検】 不全角化(錯角化)を伴う角質肥厚、真皮乳頭の延長、顆粒層の消失、角質直下に好中球浸潤による無菌性膿瘍(Munro微小膿瘍)などの特徴があれば確定診断! |
治療 | 外用:ステロイド外用(内服は膿疱性乾癬を誘発するため禁忌)、活性化ビタミンD3 全身:レチノイド、シクロスポリン・メトトレキサートなどの免疫抑制剤、アプレミラスト(PDE4阻害)、抗TNF-α製剤、抗IL-17製剤、抗IL-23製剤などの生物学的製剤 紫外線療法:PUVA療法、ナローバンドUVB |
尋常性乾癬に合併する疾患
乾癬性関節炎 | 乾癬を伴う非対称性少関節型関節炎で、乾癬の約50%に関節炎を伴う。RAと異なりDIP関節も侵される。また、仙腸関節炎、脊椎炎を伴うこともあるので腰痛に注意。関節外障害として、爪変形(爪の点状陥凹)や爪周囲皮膚炎、乾燥性角結膜炎や虹彩炎などの眼病変、アキレス腱付着部炎、大動脈弁閉鎖不全症を伴うことも多い。 血清反応陰性関節炎の一つで、RF陰性、HLA-B27陽性(20%)、X線でえんぴつとキャップ像 治療はメトトレキサート、TNFやIL-17に対する生物学的製剤など |
膿疱性乾癬 (乾癬の亜型) |
急激な発熱、全身に潮紅と無菌性小膿疱が多発する乾癬の亜型。乾癬のステロイド内服治療を行なった場合などに生じ、HLA-A2陽性で高頻度に認められる。 皮膚生検でKogoj海綿状膿疱が特徴。低蛋白血症、地図状舌も特徴。 |
類乾癬
病態 | 鱗屑を伴う紅斑を主症状とする乾癬類似の炎症性角化症 局面状類乾癬、苔癬状粃糠疹に大別され、どちらも一部菌状息肉症に移行するため注意。 |
症状 | 局面状類乾癬:体幹・四肢に明瞭な紅斑 苔癬状粃糠疹:体幹・四肢近位に紅色小丘疹が出現し、新旧の皮疹が混在する。 |
検査 | ? |
治療 | ステロイド外用、PUVA療法 |
毛孔性苔癬
病態 | 常染色体優性遺伝と考えられている。 小児期に発症、思春期に著名となり、加齢とともに軽快する。 |
症状 | 上腕、大腿伸側、殿部に、毛孔に一致した角化性の小丘疹が多発 |
検査 | 【皮膚生検】 毛孔拡大、角栓 |
治療 | ? |
扁平苔癬
病態 | 薬剤、HCVなどのウイルス、歯科金属、カラーフィルムの現像液、糖尿病、慢性GVHDなどにより皮疹が生じる疾患(原因の多くは不明)。 |
症状 | ①口腔粘膜にレース模様の線状白斑(初発) ②白色線条を伴う角化性紅斑、激しい痒み(+) |
検査 | ケブネル現象+、オリーブ油を滴下すると灰白色の細い線(Wickham線条) 【皮膚生検】 不全角化を伴わない角質肥厚、顆粒層の肥厚、基底層の液状変性(水疱+)、真皮上層にリンパ球帯状浸潤、表皮突起の不規則な延長などの特徴があれば確定診断! |
治療 | 原因の除去+ステロイド外用・内服、免疫抑制薬、PUVA療法 |
Gibertばら色粃糠疹
疫学 | 10〜30歳代に好発。春、秋に多い。 |
病態 | 体幹に粃糠様鱗屑を伴う紅斑が多発する急性の炎症性角化症。原因不明だが、HHV-7などのウイルス感染の関与が考えられている。初発疹の出現後、1〜2週間で二次疹が増えるが、1〜2ヶ月で自然治癒する。 |
症状 | ①初発疹:突然、粃糠様鱗屑を伴う1〜数cmの紅斑が体幹に1〜2個出現 ②二次疹:背中の皮疹の長軸は皮膚割線方向に一致し、クリスマスツリー様配列の紅斑(初発疹より小型の紅斑) |
検査 | ? |
治療 | 対症療法(掻痒が強い場合は抗ヒスタミン薬内服) |
黒色表皮腫 acanthosis nigricans
病態 | 擦過部に黒褐色の色素沈着や乳頭状隆起が生じる疾患。 悪性型、症候型、肥満関連型の3つに分類される。 ①悪性型:内臓悪性腫瘍(胃癌が最多)に合併 ②症候型:若年者に発症し、糖尿病、高インスリン血症、内分泌障害に合併 ③肥満関連型:思春期の肥満に生じる(肥満が改善すると症状も軽快) |
症状 | ①擦過部(頸部、腋窩、乳輪、陰股部)に黒褐色の進行性の色素沈着 ②乳頭状隆起(表面がざらざら)と角質増殖に伴う皮野形成の著明化 |
検査 | 【皮膚生検】 角質肥厚(表皮肥厚はないことが多い)、真皮乳頭の延長(乳頭腫)、色素沈着 |
治療 | 基礎疾患の治療すると軽快する |
汗腺の異常
汗疹(あせも)
疫学 | 小児に好発 |
病態 | エクリン汗管の閉塞による汗の貯留で生じる皮疹。高温多湿環境、多汗、発熱が誘因となる。 |
症状 | 水晶様汗疹:直径数mmの透明な小水疱が多発 紅色汗疹:紅色小丘疹が多発。炎症や掻痒を伴い、ときに湿疹化する |
検査 | ? |
治療 | ? |
多汗症
病態 | エクリン汗腺の亢進状態。 全身性多汗症:感染症、代謝・内分泌疾患、中枢神経疾患、肥満、薬剤が原因となる 掌蹠多汗症:手掌と足底に局所的に見られる多汗症で、思春期に好発し、精神的緊張で悪化する。 |
症状 | 多汗症状 |
検査 | Minor法(ヨードデンプン反応):ヨード液を皮膚に塗布後、乾燥させてからデンプンを振りかける検査法。発汗部位が黒紫色になることから、その範囲を計測して重症度や治療効果を測定することができる。 |
治療 | プロパンテリン内服、塩化Al塗布、ボツリヌス毒素局注 イオントフォレーシス:皮膚に電流を流して薬剤を経皮的に浸透させる手技 |
皮膚形成異常
Ehlers-Danlos症候群
病態 | コラーゲン形成異常により、結合組織の多い皮膚、関節、血管に異常を認める遺伝性疾患。常染色体優性遺伝が最も多い。膠原線維は粗になるが弾性線維は正常である。 |
症状 | ①皮膚の過伸展性・脆弱性、関節の過可動性、血管の脆弱化による易出血性 ②心血管系の異常:僧帽弁逸脱、動脈瘤 ③脊椎後側弯 ④眼症状:青色強膜、水晶体偏位 |
検査 | |
治療 |
弾力線維性仮性黄色腫
疫学 | 女性に多い(2:1) |
病態 | 全身の弾性線維の編成とCa沈着を呈する遺伝性疾患(多くは常染色体劣性遺伝)で、弾性線維に富む皮膚、眼、血管壁などに病変が見られる。 |
症状 | ①頸部、腋窩、鼠径部などに黄色丘疹が集合し敷石状となる ②眼症状:網膜血管線状、網膜色素沈着、視力障害 ③動脈石灰化:間欠性跛行、高血圧、狭心症、心筋梗塞など |
検査 | 【皮膚生検】 真皮の弾性線維の変性・断裂、Ca沈着 |
治療 |
Werner症候群
病態 | 早期老化を生じる常染色体劣性遺伝の疾患で、思春期前後より全身臓器の老化傾向となる。 |
症状 | 強皮症様皮膚硬化、四肢の皮下脂肪萎縮、鼻が細く尖る鳥様顔貌 白内障、糖尿病、動脈硬化、悪性腫瘍(悪性黒色腫が多い)などを合併しやすい |
検査 | ? |
治療 | 多くは40〜60歳までに死亡 |
色素異常
【色素脱失症の分類】
先天性・全身性 | 先天性・限局性 | 後天性・全身性 | 後天性・限局性 |
眼皮膚白皮症 | 脱色素性母斑 まだら症 低色素症(伊藤) Waardenburg症候群 結節性硬化症 |
尋常性白斑(汎発型) Vogt-小柳-原田病 老人性白斑 |
尋常性白斑(分節型) |
【色素増加症】
雀卵斑、肝斑、老人性色素斑、Addison病など
先天性白皮症(アルビノ、眼皮膚白皮症)
病態 | メラニン生成に関与する遺伝子の変異により、メラニン産生が減少または消失する常染色体劣性遺伝の疾患。 |
症状 | ①出生時より皮膚白色、髪や眼の色素低下 ②眼振、羞明、視力障害 ③日光過敏 |
検査 | ? |
治療 | 紫外線による皮膚癌が生じやすいため、遮光・眼の保護を行う。 |
★尋常性白斑
病態 | 抗メラノサイト抗体による自己免疫疾患、あるいは局所自律神経障害と考えられており、後天性に生じる。 |
症状 | ①後天性に生じる境界明瞭な完全色素脱失性白斑 |
検査 | ? |
治療 | ①ステロイド外用 ②PUVA療法 ③ナローバンドUVB療法 |
その他の色素脱失症
脱色素性母斑 | 老人性白斑 | Sutton白斑 |
出生時から先天性の不完全色素脱失斑。生涯大きさに変化ない。 | 30代より始まり、加齢によってメラノサイトの機能低下により散在性に白斑が生じる。 | ホクロ周囲の白斑。血管腫、老人性疣贅、悪性黒色腫の周囲にできる場合もある。 |
雀卵斑・肝斑
雀卵斑(そばかす) | 肝斑(しみ) | |
疫学 | 白人に多く、家族内発生もある | 30歳以降の女性 |
病態 | メラニン産生能の亢進。日光照射が誘因となるため夏に増悪する。 | 女性ホルモンの影響も考えられる。日光照射が誘因となる。 |
症状 | 露光部に小色素性斑が多発。5、6歳より生じ思春期で明瞭になる。 | 顔面に左右対称性に生じる境界明瞭な淡褐色の色素斑(眼周囲にはない) |
治療 | 日焼け止め、トランサミン内服 |
母斑
母斑とは、極めて緩徐に発育する、色調あるいは形態の異常を主体とする限局性皮膚病変。
詳細 | 治療 | |
表皮母斑 | 幼少期に角化細胞の過形成により生じる。 | 外科的切除 |
脂腺母斑 (類器管母斑) |
頭部・顔面などに多組織の過形成が生じる疾患。出生時より母斑部分に脱毛があり、表面はざらざら。 | 外科的切除(基底細胞癌の可能性があるため) |
蒙古斑 | 胎生期の真皮メラノサイトが一部残存しているもの。多くは有色人種の新生児の臀部にできる。四肢・顔など異所性のものは成人まで残存する。 | 10歳前後で自然消失 |
扁平母斑 | 神経線維腫1型やMcCune-Albright症候群以外の隆起しない淡褐色斑で、表皮基底層にメラニン色素の増加で生じる。生後まもなく消失する。 | 経過観察 |
太田母斑 | メラノサイトが真皮まで増殖する疾患。片側顔面の三叉神経領域に褐青色斑が生じ、自然消退しない。生下時からみられる早発型と思春期以降に発症する遅発型に分かれる。 | Qスイッチルビーレーザーによる治療 |
色素性母斑 | 所謂ほくろ。直径20cm以上の先天性の巨大色素性母斑はメラノーマの発生母地になることがある。 | 経過観察 |
青色母斑 | メラノサイト類似細胞が真皮で増殖する疾患。出生後に出現し自然消退はしない。悪性黒色腫と要鑑別! | 外科的切除 |
苺状血管腫 | 未熟な毛細血管内皮細胞が増殖する隆起性の赤い皮疹。6ヶ月〜1年で最大に、学童期までに自然消退。 | プロプラノロール内服 |
単純性血管腫 | 真皮上層の毛細血管が増殖する疾患。 前額部正中にできるサーモンパッチ(正中部母斑)は新生児の約20%にみられ、2歳頃までに自然消退。 項部にできるウンナ母斑(ウナジ母斑)は新生児の約30%にみられ、約半数は成人期まで残ることが多いが、毛髪で隠れるため問題になることは少ない。 |
経過観察 または色素レーザー |
Kasabach-Merritt症候群 | 乳幼児の暗紫赤色の巨大血管腫。項や殿部など背部に好発。生下時から存在する巨大血管腫に血小板が捕捉され、血小板が消費性に低下する。生後1年以内にDICを呈することが多い。 | 放射線、ステロイド内服、DIC治療 |
海綿状血管腫 | 出生時に存在する軟らかい腫瘤。加齢とともに多少増大し、自然消退しない。 | 硬化療法 |
良性腫瘍
脂漏性角化症(老人性疣贅)=病気というより老化現象
疫学 | 20歳代から発症し、中高年以降ほぼ全ての人に見られる |
病態 | 加齢とともに顔面などの日光露出部にできる褐色の良性腫瘍(皮膚の老化現象)。 |
症状 | ①茶褐色で境界明瞭なやや隆起する表面角化性の腫瘤 ②病変が急増する(掻痒を伴うこともある)場合は、内臓悪性腫瘍(特に胃癌)を疑う(レイザー・トレラー徴候)。 |
検査 | 【皮膚生検】 角質肥厚、真皮乳頭の延長(乳頭腫)、表皮内の玉ねぎ状の偽角化嚢腫 |
治療 | 経過観察、液体窒素の凍結で除去 |
表皮嚢腫(粉瘤)
病態 | 真皮から皮下に存在する嚢腫。内部に悪臭を伴う粥状の角質塊を含む。大きさは様々で、ときに頂点に開口部が黒点として見られる。 |
症状 | 無症状。二次感染により発赤・腫脹・疼痛をきたす。 |
検査 | 【身体検査】 視診:径2cm程度の常色で境界明瞭な袋状の結節で、表皮との連続性がある 触診:弾性硬で波動を触れる |
治療 | 嚢腫壁を残さず完全に摘出 |
毛細血管拡張性肉芽腫
病態 | 外傷などによる反応性の良性血管増生。 |
症状 | 紅色の柔軟な有茎〜広基性の腫瘤、易出血性、表面に光沢あり |
検査 | ? |
治療 | 凍結療法、炭酸ガスレーザー、外科的切除 |
肥厚性瘢痕・ケロイド
肥厚性瘢痕 | ケロイド | |
病態 | 外傷・手術後などの創傷治癒過程にて膠原線維が過剰に増生する疾患。 可逆性で数年以内に消退→萎縮性瘢痕 |
発生機序は左に同じ。 長期にわたり増大し、難治性である。 胸や耳たぶにできやすい。 |
症状 | 赤み・痒み(活動期) 側圧痛(ー) |
赤み・痒み(活動期) 側圧痛+(側方から摘んだ時の痛み) |
検査 | ||
治療 | 経過観察 | 圧迫固定、ステロイド局注・外用 ※安易な単純切除は禁忌 |
ケラトアカントーマ
疫学 | 中年男性の顔面に好発 |
病態 | 急速に増大し、数ヶ月で自然消退して瘢痕となる皮膚良性腫瘍。 |
症状 | ①顔面・手背など露光部に急速に増大するドーム状〜半球状に隆起する左右対称の結節 ②中央が噴火口状に陥凹し、内部に角栓を有する |
検査 | 【皮膚生検】 有棘細胞癌と鑑別を兼ねて可能であれば全摘する |
治療 | 数ヶ月で自然消退し、瘢痕化する。 |
グロムス腫瘍
病態 | 皮膚の小動静脈吻合部に存在するグロムス細胞由来の良性腫瘍。 |
症状 | ①指趾の爪の下に好発する硬い腫瘤で、青く見えることが多い ②強い疼痛発作(夜間・寒冷曝露時に悪化) |
検査 | ? |
治療 | 外科的切除 |
皮膚線維腫
病態 | 真皮内での光源線維、線維芽細胞、組織球の増殖により生じる良性腫瘍。外傷などに対する反応性病変との考え方もある。 |
症状 | 直径1cm程度で表面が褐色調の硬結で四肢に好発する |
検査 | 黒色の強いもの、出血を伴い急激に大きくなるものは悪性黒色腫との鑑別 |
治療 | 外科的切除、悪性腫瘍と鑑別が必要のないものは経過観察 |
癌前駆症と悪性腫瘍
表皮内癌
表皮内癌は湿疹と似ている!
Bowen病 | 光線角化症(日光角化症) | 乳房外Paget病 | |
病態 | 露光部では紫外線、非露光部ではHPV、慢性ヒ素中毒などが関与かも。真皮に浸潤すると有棘細胞癌となる。 | 高齢者の露光部(特に顔面・手背)に好発し、約1割が有棘細胞癌に移行。真皮に浸潤すると有棘細胞癌となる。 | アポクリン腺由来の表皮内癌で、高齢者に多い。真皮に浸潤するとPaget癌となる。 |
症状 | 境界明瞭な不整円の紅褐色調局面(慢性湿疹と誤診されやすい) | 顔面・手背などに境界不明瞭な鱗屑や痂疲を伴う紅斑・角化性病変 | 外陰部・腋窩・肛囲に好発 比較的境界明瞭な湿疹様紅斑 |
検査 | 病理で表皮全層に異型多核巨細胞、個細胞角化 | 病理で表皮基底層に異型細胞があり、毛嚢を避けて進展 | 病理で表皮内に大型で明るいPaget細胞 |
治療 | 外科切除、凍結療法 | 外科切除、凍結療法 | 外科切除 |
★上皮性悪性腫瘍(SCC、BCC)
※白板症、色素性乾皮症、尋常性狼瘡、放射線皮膚障害、Bowen病、瘢痕(熱傷・膿皮症)
有棘細胞癌(SCC) | ★基底細胞癌(BCC) | |
病態 | 光線角化症(紫外線)、白板症、色素性乾皮症、尋常性狼瘡、放射線皮膚障害、Bowen病、熱傷や膿皮症などの瘢痕などが誘因(※白色の狼放って防犯)。角化傾向が少ないほど未分化で悪性度高い。 | 毛包由来の悪性腫瘍。紫外線、放射線皮膚障害、脂腺母斑、日光、色素性乾皮症などが誘因。皮膚癌で最多。 |
症状 | 角化とびらんを伴う紅色結節 露光部に好発 |
顔面の正中部(鼻周囲など)に好発 結節潰瘍型が最多 |
検査 | 病理では癌真珠、個細胞角化 | 病理では最外層は柵状配列・腫瘍と正常部の境界に裂隙形成→遠隔転移しにくい構造 |
治療 | 辺縁から5mm離して切除、放射線治療 | 辺縁から5mm離して切除、放射線治療 |
予後 | リンパ行性転移しやすい | リンパ行性転移しにくい=予後良好 |
★★神経堤由来悪性腫瘍(悪性黒色腫=メラノーマ)
病態 | メラノサイト由来の悪性腫瘍。 末端ほくろ型、結節型の順に多い(白人は表在拡大型が多い)。 【発生母地】 色素性乾皮症、巨大先天性色素性母斑(ほくろ)など |
症状 | 斑状の色素性病変が徐々に拡大し、後に結節性病変となる 皮膚:足底、爪の肉(指蹠爪=しせきつめ)に多い 皮膚以外:口腔、脈絡膜、粘膜にも発生する |
検査 | 【ダーモスコピー】<色素性母斑(ほくろ)との鑑別点> Asymmetrical(非対称性) Border(辺縁不整) Color(色むら、色調の不均一) Diameter(直径6mm以上) Evolving(大きさや高さが1〜2年で増加) 【皮膚生検】 腫瘍細胞は散布されやすいため部分生検禁止。ただし、センチネルリンパ節生検はOK(リンパ節郭清の適応決定に用いる) S-100、HMB-45などの免疫染色 【尿検査】 5-S-CD↑:メラニン生成の中間代謝物 |
治療 | 広範囲切除(全切除生検)、ニボルマブ、ペムブロリズマブ(放射線感受性悪い) |
予後 | 早期にリンパ性に転移し遠隔転移するため極めて予後不良(深達度が予後に影響) |
★★間葉系悪性腫瘍(血管肉腫)
病態 | 血管内皮細胞から発生するまれな悪性腫瘍。高齢者の頭部・顔面に好発する。外傷の既往部位、慢性リンパ浮腫部が誘因となり発症することもある。 |
症状 | ①数日~数週の単位で急速に拡大していく紫斑 ②易出血性の隆起性局面(血管内皮由来のため) ③肺転移して血気胸 |
検査 | 病理では異型内皮細胞が管腔構造を形成しつつ増殖 |
治療 | 広範囲切除、ケモラジ、斑状病変にIL-2局所投与 |
予後 | 早期に血行性転移(特に肺)するため、5年生存率は約10%と極めて予後不良(肺転移からの血胸や気胸が死因の90%を占める) |
★皮膚T細胞リンパ腫(菌状息肉症、セザリー症候群)
菌状息肉症 | セザリー症候群 | |
病態 | CD4陽性T細胞由来の悪性リンパ腫。紅斑期から20年ほどの長い経過で扁平浸潤期を経て腫瘍期に進展する。 | CD4陽性T細胞由来の悪性リンパ腫。 |
症状 | 紅斑期:四肢・体幹に鱗屑を伴う紅斑 扁平浸潤期:紅斑が扁平隆起化 腫瘍期:結節や腫瘤が出現 内臓浸潤期 |
強い掻痒を伴う全身の紅皮症 表在リンパ節腫大 |
検査 | 病理で表皮内に異型リンパ球の集簇(Pautrier微小膿瘍) | 病理で異型リンパ球(セザリー細胞)陽性 末梢血にもセザリー細胞が出現 |
治療 | 紅斑期〜扁平浸潤期:ステロイド外用、PUVA療法、IFNγ静注 腫瘍期以降:化学療法、電子線照射 |
左とほぼ同様 |
皮膚感染症
各感染症を参照。
★伝染性膿痂疹(とびひ)
水疱性膿痂疹 | 水疱形成 | 黄色ブドウ球菌によるもの |
痂皮性膿痂疹 | かさぶた形成 | A群β溶連菌によるもの |
丹毒
真皮の感染症。溶連菌が多いが、黄色ブドウ球菌などでも発症する。
蜂窩織炎(蜂巣炎)
病態 | 黄色ブドウ球菌や溶連菌による皮下脂肪組織の感染症。軽微な外傷や足白癬傷口などから細菌が侵入することで発症する。壊死性筋膜炎の発症に注意する! |
症状 | ①発熱、悪寒 ②境界不明瞭な硬結を有する紅斑(単発・片側性)、熱感、腫脹、拍動性疼痛 |
検査 | 特異的検査なし |
治療 | セフェム系 |
★壊死性筋膜炎
疫学 | 溶連菌は健常者に、嫌気性菌は糖尿病・肝硬変など基礎疾患のある人に好発 |
病態 | 外傷や熱傷などを契機に発症する皮下組織の浅層筋膜(皮下脂肪組織と固有筋膜の間)の急性感染症。壊死性筋膜炎ではガス壊疽と異なり筋組織は侵されない。 原因菌は溶連菌、黄色ブドウ球菌、嫌気性菌、腸内細菌など。 ときに劇症型溶連菌感染症、Vibrio vulnificus感染症の一症状として見られる。 【フルニエ壊疽】 男性の陰部に生じる壊死性筋膜炎はフルニエ壊疽とよばれ、激痛を伴う紅斑・腫脹、潰瘍がみられる。 |
症状 | ①激痛を伴い硬結を有する紅斑→水疱・紫斑・壊死 ②ときに表面に光沢を有する ③高熱、全身倦怠感 重症例ではショック、DIC、多臓器不全 |
検査 | 【グラム染色】 【LRINECスコア(壊死性筋膜炎の早期診断の補助)】 CRP、白血球数、Hb、血清Na、血清クレアチニン、血糖値の6項目を評価 |
治療 | 抗菌薬大量投与、速やかな局所切開およびデブリドマン |
ガス壊疽(壊死性筋膜炎+皮下気腫)
病態 | 【Clostridium性ガス壊疽】 ウェルシュ菌の芽胞などガス壊疽菌群が創傷に侵入し、血行不全などで嫌気状態となったとき発芽して外毒素を産生する。この外毒素は蛋白分解酵素のためガスを伴い急激に筋組織を融解し壊死させる(ガス壊疽)。毒素が血中に入るとDICをきたし多臓器不全となる。 【非Clostridium性ガス壊疽】 糖尿病、閉塞性動脈硬化症など基礎疾患を持つ人に大腸菌、クレブシエラなどが皮下に限局して感染する。緩徐に進行するのが特徴。 |
症状 | ①筋肉の激痛(ガスによる腫脹) ②皮下気腫:圧迫すると握雪感 ③皮膚黄色〜青銅色に変色 ④切開した滲出液は著しい腐敗臭(非Clostridium性の場合は臭気あり) |
検査 | 【画像検査】 X線:皮下組織や筋肉内にガス像 |
治療 | ①感染・壊死組織を開放+創部の洗浄+除去(デブリドマン) ②高圧酸素療法+ペニシリンG高用量を点滴静注 ③最終手段として患肢切断 |
代謝異常による皮膚疾患
ペラグラ
病態 | ナイアシン、またはナイアシン前駆物質のトリプトファンが欠乏する疾患。 偏食、胃全摘による吸収不良、薬剤(イソニアジドなど)、慢性アルコール中毒、トリプトファン代謝異常が原因。 |
症状 | <三徴(3D)> Dermatitis(皮膚炎):光線過敏による露光部の日焼け様皮疹→黒色色素沈着、皮膚萎縮 Diarrhea(下痢):下痢を放置して死に至ることもある Dementia(認知症) |
検査 | ? |
治療 | ナイアシン(ニコチン酸、ニコチン酸アミド)投与 |
亜鉛欠乏症候群(腸性肢端皮膚炎)
病態 | 亜鉛の欠乏により発症する疾患。原因として先天性(常染色体劣性遺伝)と後天性がある。 後天性は経中心静脈栄養(IVH)、消化管切除、D-ペニシラミン内服、母乳の亜鉛欠乏などによる。 |
症状 | 皮膚炎:四肢末端および開口部(口囲、眼囲、外陰部、肛囲)に丘疹・水疱・膿疱・紅斑 脱毛:頭部・眉毛などの脱毛 下痢: |
検査 | 【血液検査】血清ALP↓、血清亜鉛値↓ |
治療 | 亜鉛投与 |
ポルフィリン症
病態 | ヘム合成経路の異常により中間生成物である各種ポルフィリン体が蓄積し、光線過敏、神経症状などをきたす疾患。障害酵素によって8つの病型に分類され、晩発性皮膚ポルフィリン症が最多である。ポルフィリン体は光エネルギーによって励起され光線過敏を起こす。 <晩発性皮膚ポルフィリン症> 肝臓のウロポルフィリノーゲン脱炭酸酵素活性低下により、ウロポルフィリンが肝臓・皮膚に蓄積する。先天性(常染色体優性遺伝)と後天性(長期大量飲酒、C型肝炎などの肝障害、薬剤)がある。 |
症状 | 光線過敏:露光部に水疱→破れて瘢痕・色素沈着、顔面の多毛と伴うこともある 赤色尿:尿中ポリフィリン体の増加 |
検査 | ? |
治療 | 遮光、飲酒がある場合は禁酒、瀉血(血清鉄を減少させるため)、鉄キレート薬投与 |
その他の皮膚疾患
褥瘡(床ずれ)
病態 | 荷重のかかる組織で圧排や血流低下により組織が壊死する疾患。 皮下組織の薄い肩甲骨、仙骨(最多)、腸骨、大転子部などに好発する。寝たきり、低栄養、知覚の低下、皮膚の乾燥、摩擦などがリスク因子となる。 |
症状 | 黒色期(壊死)→黄色期→赤色期→白色期 【褥瘡の分類】 Ⅰ度:表皮の変色 Ⅱ度:表皮剝離・水疱 Ⅲ度:皮膚を越えて皮下組織・筋膜まで Ⅳ度:筋肉を越えて広範な壊死、さらに骨に及ぶ |
検査 | 視診 |
治療 | 黒色期:局所の洗浄(水道水でOK)+壊死組織の除去(デブリドマン) 赤色期:湿潤環境を保つため軟膏ぬりぬり(moist wound healing) |
予防 | 数時間ごとに体位変換、体圧分散用具(エアマット)、栄養状態の改善、ビタミンC+亜鉛軟膏 |
日光皮膚炎(日焼け)
病態 | 過度の日光照射(主にUVBが表皮〜真皮浅層に到達)による急性の皮膚障害。 ※UVAは真皮深層に到達し色素増強を起こす。 |
症状 | 日光曝露の数時間後に紅斑、浮腫、水疱 数日後に落屑し、色素沈着または脱失となり治癒 |
検査 | 視診 |
治療 | 保湿 |
光線過敏症
病態 | 健常人では異常を起こさない量の光線によって照射部に丘疹や紅斑などの皮膚症状を呈する疾患。外因性の光接触皮膚炎、光過敏性薬疹が多く、その他にも内因性の色素性乾皮症、ペラグラ、ポルフィリン症、SLE、先天性白皮症、種痘様水疱症などが誘因となる。 |
症状 | 照射部に丘疹、紅斑、色素沈着 湿布した部位のみ皮疹(光接触皮膚炎)、内服で全身に皮疹(光過敏性薬疹) |
検査 | 最小紅斑量試験:最小紅斑量(MED:皮膚に紅斑を生じさせる最小の光線量)の低下、光パッチテスト |
治療 | 原因の除去+遮光(サンスクリーン剤使用)+皮疹にステロイド外用 |
【頻度の多い光線過敏症】
光接触皮膚炎 | 光過敏性薬疹 | 慢性光線性皮膚炎 |
光感作物質が皮膚に接触し、その部位に日光照射を受けると紅斑などの皮疹が生じる。 光感作物質には薬剤(NSAIDs湿布等)、化粧品、植物がある。 |
薬剤の全身投与後、顔面・項部・上胸部・手背などに日光照射を受けると紅斑など皮疹が生じる。 NSAIDs、ニューキノロン、サイアザイドなどが原因となる。 |
中年以降の男性に好発し、露光部に慢性の湿疹性病変を生じる。UVBに対するMEDが著名に低下する。 |
色素性乾皮症
病態 | 常染色体劣性遺伝の高発癌性光線過敏症。紫外線照射によるピリミジン二量体の修復機構が障害されている疾患。成長とともに有棘細胞癌、基底細胞癌、悪性黒色腫などの皮膚悪性腫瘍が発生する。 |
症状 | 日光照射後に強い日焼け、色素沈着、皮膚の乾燥や萎縮→色素斑・雀卵斑が多発 病型によって眼症状(羞明、結膜炎など)、神経症状(構音障害、歩行障害、知能障害)を伴う場合がある。 |
検査 | 最小紅斑量試験:最小紅斑量(MED)の低下+紅斑のピーク遅延 |
治療 | 遮光の徹底(PUVA療法は禁忌) |
尋常性痤瘡(にきび)
病態 | 皮脂の分泌亢進、毛漏斗部の角化異常、常在菌(アクネ菌)の増殖により発症する痤瘡。 遺伝的素因、年齢、ストレス、化粧品、機械的刺激などが関与する。 |
症状 | 顔面、頸部などに面皰、紅色丘疹、膿疱など生じる |
検査 | ? |
治療 | 過酸化ベンゾイル外用、面皰の圧出、抗菌薬の外用・内服 |
酒さ様皮膚炎
疫学 | 30〜50代の女性の顔面に好発 |
病態 | ステロイド外用の長期使用による副作用によって、外用部位に一致した顔面にびまん性潮紅や毛細血管拡張が生じる。特に皮疹が口囲と鼻唇溝部に生じるものを口囲皮膚炎という。 |
症状 | ①不規則に集簇した紅色丘疹、膿疱、鱗屑 ②赤ら顔、灼熱感を伴うことが多い |
検査 | ? |
治療 | ステロイド外用中止(中止しても数日間は悪化する) |
網状皮斑(リベド)
病態 症状 |
真皮〜皮下組織の境界の末梢循環障害によって生じる赤紫色の網状斑。 基礎疾患のない大理石様皮膚と、基礎疾患のある分枝状皮斑がある。 【大理石様皮膚】 一過性で自覚症状なく、温めると消失する。小児や女性に多い。 【分枝状皮斑】 SLEなどの膠原病、循環器疾患、結節性多発動脈炎などの血管炎、クリオグロブリン血症、悪性腫瘍などが原因となる。 |
検査 | ? |
治療 | ? |
円形脱毛症
病態 | 原因不明に頭部を中心に境界明瞭な脱毛斑を呈する疾患。 |
症状 | ①脱毛斑部で根元の細い切れ毛(感嘆符毛)、脱毛斑辺縁の毛が容易に抜ける ②爪の変化(小陥凹など) |
検査 | ダーモスコピーで感嘆符毛など確認 |
治療 | ステロイド外用、重症例ではPUVA療法、ナローバンドUVB療法、ステロイド内服 |
男性型脱毛症
病態 | 遺伝的素因のある男性の毛細胞に男性ホルモンが作用して毛包が縮小し、頭頂部や前頭部の髪が徐々に軟毛化し、進行して髪が抜け落ちる。テストステロンが、5αレダクターゼによってDHT(ジヒドロテストステロン)に変換され、毛乳頭に作用し軟毛化する。 |
症状 | 頭頂部、前頭部の脱毛 |
検査 | ? |
治療 | 5αレダクターゼ阻害薬のフィナステリド、デュタステリド内服 血管拡張薬のミノキシジル外用 |
シックハウス症候群
病態 | ①建物内の建材(接着剤、塗料、壁紙)や家具などから発生する揮発性有機化合物(VOC)、②カビ、③ダニによる室内空気汚染によって生じる病態。 |
症状 | ①皮膚症状:紅斑、蕁麻疹、乾燥、湿疹 ②粘膜症状:鼻の刺激感、鼻水、喉の乾燥、唇の乾燥 ③その他:頭痛、めまい、吐き気、目がチカチカする、涙目など |
検査 | ? |
治療 | ? |
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