熱傷などの物理化学皮膚障害、光線性皮膚疾患

皮膚科

物理化学皮膚障害

熱傷 burn

【①熱傷深度の判定】

受傷直後では正確に診断するのは困難、かつ、経過とともに深度が進行する。

深度 障害組織 症状 治癒
第Ⅰ度 表皮 有痛性紅斑、浮腫、水疱形成なし
(日焼けと同じ状態)
数日で治癒
瘢痕なし
第Ⅱ度 真皮浅層
(SDB)
水疱形成+水疱底の紅色強い疼痛 2〜3週間で治癒
ほぼ瘢痕なし
真皮深層
(DDB)
水疱形成+水疱底の白色、疼痛あるが知覚鈍麻 3〜4週間で治癒
瘢痕化
第Ⅲ度 皮下組織 無痛白色〜黒褐色水疱形成なし 1ヶ月以上で治癒
瘢痕化 植皮必要

【②受傷面積と熱傷面積の判定

受傷面積 やけどした面積。 手のひらの面積を1%として、頭、胸、腹、上背面、下背面、左・右上肢、左・右表下肢、左・右裏下肢の11箇所を各9%とする(9の法則)
熱傷面積 輸液量を計算するため強度やけどの面積の判定を行う。
熱傷面積=Ⅱ+Ⅲ度熱傷の受傷面積(Ⅰ度=日焼けで輸液しないから含まない
Baxter法
(輸液)
受傷後24時間以内の輸液量=4mL×体重kg×熱傷面積%
初期8時間で輸液量の半分を投与し、その後16時間かけて残り半分を投与
Burn index (BI) 熱傷の程度を表す指標。BI=10〜15は重症のためICUで治療
BI熱傷指数=Ⅲ度の熱傷面積+Ⅱ度熱傷面積×1/2
高齢者の場合は、PBI(予後熱傷指数)=年齢+BIを用いる。
合併症 腎不全、肺水腫、DIC、多臓器障害

【③重症度判定の基準―Artzの基準】

軽症 ①熱傷面積15%未満の第Ⅱ度熱傷
②熱傷面積2%未満の第Ⅲ度熱傷
外来
中等度 ①熱傷面積15〜30%の第Ⅱ度熱傷
②熱傷面積2〜10%の第Ⅲ度熱傷(顔面、手、足を除く)
病院
重症 ①30%以上の第Ⅱ度熱傷
②顔面、手、足の第Ⅲ度熱傷および10%以上の第Ⅲ度熱傷
③気道の熱傷を合併しているもの
④大軟部組織損傷を伴うもの
⑤骨折、電撃傷、深部化学熱傷
総合病院

【④治療】

全ての熱傷 水道水で30分以上流水冷却
第Ⅰ度 ステロイド外用、またはワセリン外用
第Ⅱ度 水疱破れていれば開放し、ゲーベン軟膏をガーゼに塗布し患部を覆う
第Ⅲ度 壊死組織をデブリードマン、植皮
全身状態不良 気道確保、乳酸リンゲル輸液

凍瘡・凍傷

化学熱傷

電撃傷

血管外漏出に伴う皮膚障害

放射線皮膚炎

褥瘡(床ずれ) pressure ulcer

病態 荷重のかかる組織で圧排や血流低下により組織が壊死する疾患。
皮下組織が薄く骨突出部である肩甲骨、仙骨(最多)、腸骨、大転子部、踵などに好発する。寝たきり、低栄養、知覚の低下、皮膚の乾燥、摩擦などがリスク因子となる。
症状 (圧迫部の紅斑→潰瘍)→黒色期(壊死)→黄色期→赤色期→白色期
【褥瘡の分類】
Ⅰ度:表皮の変色
Ⅱ度:表皮剝離・水疱
Ⅲ度:皮膚を越えて皮下組織・筋膜まで
Ⅳ度:筋肉を越えて広範な壊死、さらに骨に及ぶ
評価 【褥瘡の発生リスク評価】
①Bradenスケール:急性期病院では14点以下、在宅や施設では17点以下を高リスクと判断する。
②OHスケール:寝たきり高齢者・虚弱高齢者を対象。
【すでに生じている褥瘡の評価】
①NPUAP分類:皮膚の性状や組織欠損の有無で評価
②DESIGN-R分類:初期評価だけでなくその後の治療過程を評価することもOK
【褥瘡の感染合併の有無の評価】
①NERDS:創表面の感染徴候
②STONES:創深部の感染徴候
治療 ①創傷治癒の妨げとなる4因子(TIME)を取り除く
・壊死組織をデブリドマン
・感染原因の除去(局所洗浄、抗菌薬投与)
・滲出液のアンバランスを改善(適切な創傷被覆材、陰圧閉鎖療法)
・創辺縁の治癒延長やポケットをデブリドマン
②局所の洗浄
水道水、生理食塩水で洗浄し、創表面の細菌類の数を減らす(石鹸は不要)
③外用薬・ドレッシング材
DESIGN-R分類に基づいた外用薬を選択
予防 ・数時間ごとに体位変換、体圧分散用具(エアマット)
・栄養状態の改善:低栄養を改善
・リハビリ:廃用症候群を改善

人工皮膚炎

光線性皮膚疾患

日光皮膚炎(日焼け)

病態 過度の日光照射(主にUVBが表皮〜真皮浅層に到達)による急性の皮膚障害。
※UVAは真皮深層に到達し色素増強を起こす。
症状 日光曝露の数時間後に紅斑、浮腫、水疱
数日後に落屑し、色素沈着または脱失となり治癒
検査 視診
治療 保湿

光老化

光線過敏症

病態 健常人では異常を起こさない量の光線によって照射部に丘疹や紅斑などの皮膚症状を呈する疾患。外因性の光接触皮膚炎、光過敏性薬疹が多く、その他にも内因性の色素性乾皮症ペラグラ、ポルフィリン症、SLE、先天性白皮症、種痘様水疱症などが誘因となる。
症状 照射部に丘疹、紅斑、色素沈着
湿布した部位のみ皮疹(光接触皮膚炎)、内服で全身に皮疹(光過敏性薬疹)
検査 最小紅斑量試験:最小紅斑量(MED:皮膚に紅斑を生じさせる最小の光線量)の低下、光パッチテスト
治療 原因の除去+遮光(サンスクリーン剤使用)+皮疹にステロイド外用

【頻度の多い光線過敏症】

光接触皮膚炎 光過敏性薬疹 慢性光線性皮膚炎
光感作物質が皮膚に接触し、その部位に日光照射を受けると紅斑などの皮疹が生じる。
光感作物質には薬剤(NSAIDs湿布等)、化粧品、植物がある。
薬剤の全身投与後、顔面・項部・上胸部・手背などに日光照射を受けると紅斑など皮疹が生じる。
NSAIDs、ニューキノロン、サイアザイドなどが原因となる。
中年以降の男性に好発し、露光部に慢性の湿疹性病変を生じる。UVBに対するMEDが著名に低下する。

日光蕁麻疹

蕁麻疹を参照。

慢性光線性皮膚炎

多形日光疹

種痘様水疱症

色素性乾皮症

病態 染色体性遺伝の高発癌性光線過敏症。紫外線照射によるピリミジン二量体の修復機構が障害されている疾患。成長とともに有棘細胞癌、基底細胞癌、悪性黒色腫などの皮膚悪性腫瘍が発生する。
症状 日光照射後に強い日焼け、色素沈着、皮膚の乾燥や萎縮→色素斑・雀卵斑が多発
病型によって眼症状(羞明、結膜炎など)、神経症状(構音障害、歩行障害、知能障害)を伴う場合がある。
検査 最小紅斑量試験:最小紅斑量(MED)の低下+紅斑のピーク遅延
治療 遮光の徹底(PUVA療法は禁忌)

網状皮斑(リベド)

病態
症状
真皮〜皮下組織の境界の末梢循環障害によって生じる赤紫色の網状斑。
基礎疾患のない大理石様皮膚と、基礎疾患のある分枝状皮斑がある。
【大理石様皮膚】
一過性で自覚症状なく、温めると消失する。小児や女性に多い。
【分枝状皮斑】
SLEなどの膠原病、循環器疾患、結節性多発動脈炎などの血管炎、クリオグロブリン血症、悪性腫瘍などが原因となる。
検査
治療

 

コメント

タイトルとURLをコピーしました