手術管理(術前・術後)、ドレーンの管理

皮膚科

手術申込時の確認

文書作成 ①手術・麻酔同意書
②輸血同意書・血漿分画製剤同意書
③マーキング用紙・尿道留置カテーテル説明書
検査 ①血液検査
②手術耐容能(待機的な非心臓血管手術:循環器スクリーニングで4METs以上)
薬物 ①抗血栓薬を使用中の場合は中止検討
②ステロイドを使用中の場合はステロイドカバー
③内服薬は原則継続、ただし経口血糖降下薬は必ず中止(全身麻酔時)

抗血栓薬の中止

休薬の判断 患者にリスクを説明し、抗血栓薬を中止する。ただし、生検、術後出血への対応が容易な体表小手術では休薬しない場合がある。また、休薬による血栓塞栓症の高発症群に関しては●
休薬の期間 薬物の半減期や血小板の寿命期間を考慮して休薬期間を決定する
●アスピリン(バイアスピリン®)
作用時間:血小板の寿命期間
休薬期間:手術の7〜10日前から休薬
●ワルファリン(ワーファリン®)
作用時間:血中半減期40時間
休薬期間:手術の3〜5日前から休薬(またはヘパリン置換)
ヘパリン置換 血栓塞栓症のハイリスク症例では、できる限り短期間での休薬で周術期を乗り切るためヘパリンに置換する。ヘパリンは半減期が短く、術前の4〜6時間前の投与中止により抗凝固作用はほぼ消失(または手術直前にプロタミンを投与して中和)、手術直前にAPTTを確認して手術に臨む。術後は出血傾向がないことを確認して速やかにヘパリンを再開する。
●ワルファリン→ヘパリン置換
手術の3〜5日前からワルファリン休薬と同時に、ヘパリン1.0〜2.5万単位/日程度を持続静注し、APTTが正常対照値の1.5〜2.5倍に延長するよう投与量を調整する。術後は出血傾向がないことを確認し、すみやかにヘパリンを再開する。病態が安定したらワルファリンの投与を再開し、PT-INRを見ながらヘパリンを中止する。

ステロイドカバー

そもそも ステロイドの長期投与によるリスクに以下のようなものがある。
概要 健常な成人では5〜10mg/日のコルチゾールが分泌されているが、手術などの侵襲が生じた場合は通常量の5〜10倍のコルチゾールが分泌され身体の恒常性を保とうとする。ステロイド長期投与や短期多量投与されている患者はステロイド分泌が抑制されており、手術などの侵襲が生じるとステロイド不足となり急性副腎不全が生じる。そのため、コルチゾール分泌が抑制されている患者に対してはステロイドカバー(ステロイドの急性期補充療法)が必要となる。
症状 急性副腎不全の症状として、術中や術後の原因不明の血圧低下などを生じる。
①血圧低下:糖質コルチコイド不足により副腎髄質からのAd分泌不足
②発熱:糖質コルチコイド不足により抗炎症作用が不十分
④低血糖:糖質コルチコイド不足により肝糖新生が不十分
⑤電解質異常:鉱質コルチコイド不足によりNa再吸収が不十分
対象 ステロイドカバーが必要な患者
投与量 手術による身体ストレスのかかる術後数日〜1週間までステロイドカバーを行い、その後はすみやかに減量する必要がある。

持参薬の確認・経口糖尿病薬の中止

原則 手術当日の朝まで持参薬は継続する
例外 血糖値は採血しないとわからないため全身麻酔中に低血糖になってもわからない。そのため、血糖降下薬は入院時に中止して、血糖測定とSSを行う。
血糖管理の目標:140〜180mg/dL
日帰り手術や小手術など当日から食事摂取可能な場合は当日の絶飲食

入室前の病棟管理

①SSI予防 執刀前60分以内に抗菌薬の予防投与開始、術中は3時間毎に追加投与
※例外として、皮膚軟部組織感染症に対するデブリ手術は予防ではなく治療のための抗菌薬投与が必要である
②手術前デザイン 筋弛緩状態や術中体位で確認しにくい体表上のメルクマールは入室前に目的とする体位でマーキングしておくこと
③絶飲食 絶食:全身麻酔の6〜8時間前より
絶飲水:全身麻酔の2時間前より(ERAS=イーラスを参照)
④術前の輸液 午前の手術の場合、術前の輸液は不要
午後の手術の場合、3号液などの維持輸液を1日必要量の半分程度投与
⑤発熱の有無 37.5度を超える発熱時は術中・術後合併症増加のため2週間程度手術延期
※例外として、発熱の原因が手術しないと治らない疾患や手術しないと命に関わる緊急手術の場合は行う

入室後の術前管理

尿道カテーテル留置

基準 2時間以上の手術の場合、麻酔後に行う
抜去 硬膜外麻酔の影響で排尿困難症状が出現する場合は硬膜外カテ抜去まで留置

除毛

方法 電動クリッパーを用いて切開部や体毛が邪魔になる部分を手術直前に除毛する
禁止 剃毛は皮膚表面に多数の顕微鏡的切創をつくり、SSIの発生率を上昇させる
機械 サージカルクリッパー

確認項目

サインイン 【麻酔をかける直前の患者確認】
①氏名、②部位・左右・マーキング、③手術・麻酔同意書、④輸血同意書・血漿分画製剤同意書、⑤マーキング用紙・尿道留置カテーテル説明書、⑥患者のアレルギーの有無・装着品除去の有無、⑦心電図モニター・パルスオキシメーター・血圧計の装着
タイムアウト 【手術や処置の直前の最終安全確認】
①氏名、②病名・術式・左右・体位の確認、③予定時間・予定出血量、④チームメンバー自己紹介、⑤術者よりコメント、⑥麻酔科よりコメント、⑦器械だし看護師よりコメント、⑧外回り看護師よりコメント
タイムアウト 【閉創前の最終安全確認】
①器械・ガーゼカウント結果、②検体の名称・種類・数・重量・保管方法
サインアウト 【麻酔抜管前の確認】
①病名・施行された術式、②検体の名称・種類・数・重量・保管方法、③使用期間・ガーゼ・針のカウントの結果報告、④患者の回復および管理について注意すべき問題の評価、⑤ドレーン挿入部位の確認、点滴の刺入部、ルートねじれや屈曲、滴下速度の確認、⑥術後X線の確認

術野の消毒

目的 術野の常在菌・表在菌を減少させること
選択 消毒薬によるSSI発生率に明らかな差はない
ポビドンヨード:皮膚に付着している限り静菌的作用あるが、ハイポエタノールで脱色すると抗菌作用が失われるため十分に時間をおいて脱色すべき。
クロルヘキシジン:ポビドンヨードと比較して持続的な殺菌作用を持ち、血液や体液によって不活性化されにくい。
エタノール:広い抗菌作用があり、持続時間が長いが、粘膜面には使用できない

術後管理

安静度

術直後 枕を使用せず安静臥位し、気道確保と麻酔後頭痛を予防
※舌根沈下(いびき様呼吸)がある場合:顔を横に向ける、側臥位、頭部後屈顎先挙上、それでもダメならエアウェイ挿入
術後数時間 術後早期低酸素血症や術後悪心嘔吐(PONV)の予防のため3時間程度酸素投与
※侵襲の大きい手術や夜間人手が少ない場合はある程度余裕をもって酸素投与
麻酔覚醒後 頭部を10度ヘッドアップし、横隔膜を下げて呼吸しやすくする
早期離床 肺炎、DVT、関節拘縮、褥瘡予防のため可能な限り早期離床

術後発熱

原則 基礎疾患がなく全身状態が安定していれば経過観察
例外 心臓・呼吸器・脳神経障害などの基礎疾患があれば早期に解熱する
※クーリングに解熱効果はなく不要
感染症 感染症を疑う場合は解熱剤で不顕性化するため解熱剤の使用は慎重に行う
血培 悪寒戦慄やバイタル変化がある場合は血培を採取して抗菌薬検討
禁忌 シバリング時のクーリング(クーリングは熱中症などのうつ熱の際に行う)

術後尿測

概要 手術侵襲により体液分布が変化し、水がサードスペースに貯留し、開創による不感蒸泄や出血などにより循環血漿量が低下し、尿量が減少する。また、術後2〜3日後にサードスペースにあった水分が血管内に戻り尿量が増加する。
術後尿量 0.5mL/kg/hr以下が3時間以上持続する場合は早急に精査と治療が必要

ドレーンの管理

ドレーン:体外に排出することを目的としたカテーテル

閉鎖式・開放式

閉鎖式ドレーン カテーテルにバッグを接続して貯留させるドレーン
利点 排液量が定量化できる、陰圧がかけれる
欠点 長いチューブが離床の妨げになる
J-VACドレナージシステムなど
開放式ドレーン カテーテルを短く切断して上からガーゼを当てて染み込ませるドレーン
利点 簡単
欠点 逆行性感染のリスク、排液量が定量化できない
ペンローズドレーン

排液の性状

濃血性 100mL/hr以上の場合は術後出血を疑う(バイタルや疼痛の増強なども確認)
淡血性 手術操作に伴う出血と洗浄の生食などが混ざり合った液体
淡黄色 炎症による血管透過性亢進により生じる滲出液

入浴の条件

シャワー浴の条件 ①ドレーン抜去済、②術後48時間以上経過、③創部の表皮形成がされておりドレッシング剤除去済、以上3つがそろっていればシャワー浴可能
入浴の条件 ドレーン挿入部が閉鎖された時

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