母斑、母斑症(神経皮膚症候群)

皮膚科

母斑

母斑とは、極めて緩徐に発育する、色調あるいは形態の異常を主体とする限局性皮膚病変。

  詳細 治療
表皮母斑 幼少期に角化細胞の過形成により生じる。 外科的切除
脂腺母斑
(類器管母斑)
頭部・顔面などに多組織の過形成が生じる疾患。出生時より母斑部分に脱毛があり、表面はざらざら。 外科的切除(基底細胞癌の可能性があるため
蒙古斑 胎生期の真皮メラノサイトが一部残存しているもの。多くは有色人種の新生児の臀部にできる。四肢・顔など異所性のものは成人まで残存する。 10歳前後で自然消失
扁平母斑 神経線維腫1型やMcCune-Albright症候群以外の隆起しない淡褐色斑で、表皮基底層にメラニン色素の増加で生じる。生後まもなく消失する。 経過観察
太田母斑 メラノサイトが真皮まで増殖する疾患。片側顔面の三叉神経領域褐青色斑が生じ、自然消退しない。生下時からみられる早発型と思春期以降に発症する遅発型に分かれる。 Qスイッチルビーレーザーによる治療
色素性母斑 所謂ほくろ。直径20cm以上の先天性の巨大色素性母斑はメラノーマの発生母地になることがある。 経過観察
青色母斑 メラノサイト類似細胞が真皮で増殖する疾患。出生後に出現し自然消退はしない。悪性黒色腫と要鑑別! 外科的切除
苺状血管腫 未熟な毛細血管内皮細胞が増殖する隆起性の赤い皮疹。6ヶ月〜1年で最大に、学童期までに自然消退。 プロプラノロール内服
単純性血管腫 真皮上層の毛細血管が増殖する疾患。
前額部正中にできるサーモンパッチ(正中部母斑)は新生児の約20%にみられ、2歳頃までに自然消退。
項部にできるウンナ母斑(ウナジ母斑)は新生児の約30%にみられ、約半数は成人期まで残ることが多いが、毛髪で隠れるため問題になることは少ない。
経過観察
または色素レーザー
Kasabach-Merritt症候群 乳幼児の暗紫赤色の巨大血管腫。項や殿部など背部に好発。生下時から存在する巨大血管腫に血小板が捕捉され、血小板が消費性に低下する。生後1年以内にDICを呈することが多い。 放射線、ステロイド内服、DIC治療
海綿状血管腫 出生時に存在する軟らかい腫瘤。加齢とともに多少増大し、自然消退しない。 硬化療法

母斑症 phacomatosis

母斑症とは、母斑が皮膚だけでなく全身の諸臓器(特に脳・眼)に生じる疾患。

  遺伝形式 キーワード
結節性硬化症 常・優 葉状白斑、てんかん、顔面の血管線維腫
神経線維腫症1型・2型 常・優 カフェオレ斑、脊椎側弯症
Sturge-Weber症候群 非遺伝性 緑内障、けいれん、ポートワイン様母斑
色素失調症 伴・優 マーブルケーキ状色素沈着、ほぼ女児
Klippel-Weber症候群 非遺伝性 四肢片側の広範囲な血管腫+肥大
von Hippel-Lindau病 常・優 小脳性運動失調、網膜剥離、腎細胞癌、褐色細胞腫
Peutz-Jeghers症候群 常・優 口唇口腔内・手足の色素沈着、消化管ポリポーシス

結節性硬化症 tuberous sclerosis

病態 別名:Bourneville-Pringle病(ブルヌヴィール・プリングル病)
TSC1/TSC2(がん抑制遺伝子)変異によって全身に過誤腫が生じる疾患。1/3は常染色体優性遺伝、2/3は孤発性。患者の児には50%の確率で同疾患が伝えられる。
症状 <3徴:全てそろうのは全体の30%未満>
顔面の血管線維腫
:淡紅色丘疹(ニキビ様)が2歳頃から出現し多発する
②知的能力障害:自閉症を含めた精神発達遅滞
てんかんWest症候群などのてんかん発作(点頭発作)
④その他:心臓の横紋筋腫、腎血管筋脂肪腫・腎嚢胞、網膜過誤腫を合併する
<皮膚症状>
葉状白斑:乳児期に初発症状
②粒起革様皮膚(結合組織母斑):鼻部中心にぽこぽこした丘疹
③Koenen腫瘍(爪周囲腺腫):爪の基部・上・縁に生じる良性腫瘍
検査 【画像検査】
頭部CT:脳室壁などに結節状の石灰化
心エコー:心臓横紋筋腫を確認(腫瘍は胎児期に出現し、乳幼児期に自然退縮する)
治療 顔面の血管線維腫:腫瘍切除など
脳腫瘍や血管筋脂肪腫:mTOR阻害薬(エベロリムス)

神経線維腫症1型 NF1:neurofibromatosis

病態 別名:von Recklinghausen病(レックリングハウゼン病)
NF1遺伝子変異によりメラノサイトやシュワン細胞の異常が生じ、表皮基底層の限局性メラニン沈着の増加(カフェオレ斑)、Schwann細胞の増殖による神経線維腫による皮膚病変などが見られる疾患。1/2は常染色体優性遺伝、1/2は孤発性。
※ちなみに、神経線維腫症2型(NF2)の場合は両側の聴神経腫瘍が特徴的である
症状 ①出生時からカフェオレ斑(必発)→10歳前後から急激に増加する
②学童期に腋窩や鼠蹊部に雀卵斑様色素斑
③学童期に虹彩過誤腫(虹彩小結節)
④思春期以降に全身に多数の丘疹(神経線維腫)が増加
⑤思春期以降に脊椎側弯
検査
治療 カフェオレ斑:レーザー治療
神経線維腫:外科的切除

★Sturge-Weber症候群

病態 血管の発生に関わるGNAQ遺伝子の体細胞変異により生じる単純性血管腫が全身に広がった疾患。
スタジイは緑系ワイン内障、けいれん、ポートワイン様母斑
症状 ①片側顔面の三叉神経領域のポートワイン様血管腫(主に三叉神経V1〜V2領域)
脈絡膜血管腫による病側の小児緑内障(牛眼
③大脳軟膜の血管腫による大脳皮質の慢性血流停滞のため次第に壊死:対側のけいれん発作・片麻痺、知能低下
検査 【画像検査】
頭部X線:脳溝に沿った二重曲線陰影の石灰化
頭部CT・MRI:石灰化以前の血管腫を検出
治療 単純性血管腫:色素レーザー
緑内障:眼圧低下、けいれん:抗けいれん薬

色素失調症 incontinentia pigmenti

疫学 ほぼ女児のみ(男児は基本的に流産するため)
病態 別名:Bloch-Sulzberger症候群(ブロッホ・ザルツバーガー症候群)
IKBKG遺伝子変異によって眼・歯・骨・中枢神経などに奇形を生じる疾患。紅斑→水疱→色素沈着→自然消退するのが特徴で、予後は良好。1/2は伴性優性遺伝、残り1/2は孤発性。
症状 ①炎症期:出生児に紅斑→水疱が多発
②疣贅苔癬期:2〜3ヶ月後に水疱が消失し、成長とともに疣状角化性丘疹が多発
③色素沈着期:渦巻き状(マーブルケーキ状)の色素沈着(16歳頃に消退)
【合併症】
眼(斜視、網膜剥離、白内障)、歯(歯発育不全)、骨(多指症、小人症)、中枢神経(けいれん発作、知能低下)など
検査
治療 合併症に対する治療

von Hippel-Lindau病

疫学 20〜40歳代で初発
病態 がん抑制遺伝子であるVHL遺伝子変異によって、小脳・網膜・腎臓などに腫瘍が多発する常染色体優性遺伝の疾患。
症状 小脳血管芽腫
①小脳性運動失調:ふらつき、めまい
②頭蓋内圧亢進:頭痛、嘔吐など
網膜血管芽腫
①網膜剥離:視力低下
②緑内障:眼痛
【その他の腫瘍性病変】
腎細胞癌:EPO産生による赤血球増加症
褐色細胞腫:発作性・持続性の高血圧
検査 【画像検査】
CT:小脳に結節性・嚢胞性病変
治療 血管芽腫の摘出

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