アスペルギルス(Aspergillus fumigatus)

微生物学

概要

自然環境に浮遊している胞子が経気道的に肺に定着し発症しやすい。Y字型の糸状菌。

  進行 治療 予後
侵襲性肺アスペルギルス症(IPA) 急性 抗真菌薬 不良
単純性肺アスペルギローマ(SPA) 慢性 手術 大量喀血注意
慢性進行性肺アスペルギルス症(CPPA) 緩徐に進行 抗真菌薬 治療抵抗性
アレルギー性気管支肺アスペルギルス症(ABPA) 急性 ステロイド 良好

肺アスペルギルスの分類

宿主の免疫状態によって病態が異なるため分類

アレルギー性気管支肺アスペルギルス症(ABPA) 免疫状態は正常、アレルギー疾患
侵襲性肺アスペルギルス症(IPA) 急性感染症、免疫力高度低下
    血管侵襲性IPA
    気道侵襲性IPA
慢性肺アルペルギルス症(CPA) 慢性感染症、免疫力中等度低下
    単純性肺アスペルギローマ(SPA)
    慢性進行性肺アスペルギルス症(CPPA)

CPPAはさらに、①慢性壊死性肺アスペルギルス症(CNPA)と②慢性空洞性肺アスペルギルス症(CCPA)に分類できる。

急性感染症(かつ、免疫不全患者で発症する)

侵襲性アスペルギルス症 IPA

病態 好中球減少・ステロイド剤投与といった免疫不全患者に起こる日和見感染症。血管侵襲性と気道侵襲性に分けられる。WBC数1000以下で感染リスク上昇。進行が早く60~80%死亡と極めて予後不良
症状 急性に発症し、
①発熱
②血痰
検査 【血液検査】
β-Dグルカン(特異度低い)
補助診断:ガラクトマンナン抗原
【画像検査】
胸部CT:①血管侵襲性の場合、初期は周囲にすりガラス影(halo sign)を伴う境界不明瞭な単発/多発の結節、後期は三日月状の空洞(air crescent sign)を伴う結節、②気管侵襲性の場合は気管支肺炎のパターンとなる。
【病理】
気管支鏡から採取した検体を培養(確定診断)
治療 フルコナゾール以外の抗真菌薬(ボリコナゾール静注が第一選択)

慢性感染症(すべての人で発症しうる)

単純性肺アスペルギローマ CPA

病態 既存の肺病変、特に空洞性病変の内部に菌球(fungus ball)を形成する。
症状  
検査 抗アスペルギルス沈降抗体、ガラクトマンナン抗原、β-D-グルカン↑
治療 外科切除(免疫不全者では膿胸や気管支断端瘻などの重篤な術後合併症が多い)

慢性進行性肺アスペルギルス症 CPPA

病態 多くは肺アスペルギローマから進展し、空洞周囲に浸潤影を示す。
症状  
検査 抗アスペルギルス沈降抗体 、ガラクトマンナン抗原
治療 抗真菌薬(治療抵抗性)

アレルギー性疾患

アレルギー性気管支肺アスペルギルス症 ABPA

疫学 通常、気管支喘息を基礎疾患にもつ患者に発症
病態 アスペルギルスに対するⅠ+Ⅲ+Ⅳ型アレルギーが生じて発症するアレルギー性疾患。
喘息+好酸球性肺炎が基本病態である。進行すると気管支拡張症や線維化などの不可逆的な病変をきたすため早期治療が重要!
症状 喘鳴+茶褐色の粘性痰(気管支の形そのまま)
検査 【喀痰検査】
Grocott染色:菌体を確認(確定診断)
【血液検査】
好酸球↑、IgE↑アスペルギルス血清沈降IgG抗体陽性(確定診断)
【画像検査】
CT:移動性浸潤影、中心性気管支拡張、気管支内の粘液栓子→無気肺
治療 ステロイド内服:初期投与量としてプレドニゾロン0.5mg/kg/日を投与(喘息コントロール、肺の線維化を防ぐため)とイトラコナゾール(ITCZ)内服が併用

コメント

  1. […] アスペルギルス(原因菌:Aspergillus fumigatus) […]

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