糖尿病治療薬

薬理学

ビグアナイド類

作用機序 肝で糖新生抑制+筋への糖取り込み促進+消化管から糖吸収抑制により血糖値を低下させる。インスリン抵抗性を改善する。
副作用 ①下痢などの消化器症状(乳酸アシドーシスの初期症状ではないもの)
②乳酸アシドーシス(ビグアナイド薬が肝ミトコンドリア細胞膜に結合し、酸化的リン酸化を阻害し、乳酸からの糖新生を抑制して乳酸値が上昇する。特に、乳酸は肝臓で代謝されるため大量飲酒や肝機能障害があると乳酸アシドーシスが生じやすい。定期的に血清乳酸値と血清pHを確認する。初期症状は悪心嘔吐・下痢・腹痛などの消化器症状。)
注意点 シックデイは休薬
ヨード造影剤使用前後は投与禁忌(ヨード造影剤と併用するとビグアナイド薬が蓄積して乳酸アシドーシスが生じやすいため、造影剤投与2日前後は休薬)

一般名 先発名 特徴
メトホルミン メトグルコ
グリコラン
【利点】ブホルミンより乳酸アシドーシスの発現少ない。
【ADME】腎排泄型なので、eGFR30未満には投与しない。
ブホルミン ジベトス SU剤が使用できない場合のみに使用する(だからあまり使われない)。

チアゾリジン誘導体

作用機序 PPARγを刺激してアディポネクチンを増加させ、TNF-αと遊離脂肪酸を減少させる。インスリン抵抗性を改善。
副作用 ①体重増加(服用開始1年後からは不変)
②浮腫(服用開始1〜2ヶ月後に好発、顔面・下肢に好発)
一般名 先発名 特徴
ピオグリタゾン アクトス錠 【欠点】男女で投与量異なる(女性は浮腫の発現頻度が高いため)

スルホニル尿素類

作用機序 膵β細胞のSU受容体に結合し、ATP感受性Kチャネルを遮断しインスリン分泌を促進する。
副作用 低血糖、体重増加

第1世代

一般名 先発名 特徴
グリクロピラミド デアメリンS  
アセトヘキサミド ジメリン  
クロルプロパミド  

第2世代

一般名 先発名 特徴
グリクラジド グリミクロン  
グリベンクラミド オイグルコン
ダオニール
SU剤の中で最も強力。長時間作用型。
【欠点】低血糖を起こしやすい。

第3世代

一般名 先発名 特徴
グリメピリド アマリール 長時間作用型
【利点】筋・脂肪・肝でのインスリン感受性を増強させる。

速効性インスリン分泌促進薬

作用機序 SU剤と同じ。ただし、効果発現は早く持続時間は短いため食後高血糖の是正に使用される(食直前服用)。
副作用  
一般名 先発名 特徴
ナテグリニド ファスティック
スターシス
 
ミチグリニド グルファスト  
レパグリニド シュアポスト  

αグルコシダーゼ阻害薬

作用機序 αグルコシダーゼ(マルトース)を阻害し、糖の吸収を遅らせることで食後高血糖を是正する(食直前服用)。
副作用 他の糖尿病薬と併用時に低血糖を起こした場合はブドウ糖を服用する。
一般名 先発名 特徴
ボグリボース ベイスン 0.2mgには「2型DMの発症抑制」の適応がある。
アカルボース グルコバイ 【利点】αアミラーゼ阻害作用もあるため血糖降下作用が強い。心血管系イベントや高血圧の発症予防がある。
ミグリトール セイブル 【欠点】ラクターゼ阻害+トレハラーゼ阻害作用もあるため下痢・鼓腸になりやすい。

SGLT2阻害薬

作用機序 腎尿細管のSGLT2を阻害し糖の再吸収を減少させ、尿中に糖を排泄させる。
副作用 頻尿(尿浸透圧↑による脱水)、尿路感染症
一般名 先発名 特徴
イプラグリフロジン スーグラ  
ダパグリフロジン フォシーガ DMではない心不全も改善
ルセオグリフロジン ルセフィ  
トホグリフロジン デベルザ
アプルウェイ
 
カナグリフロジン カナグル  
エンパグリフロジン ジャディアンス  

インクレチン関連薬

インクレチンの詳細は代謝疾患を参照。

DPP-4阻害薬

作用機序 DPP-4を阻害しインクレチンの濃度を高め、インスリンの作用を増強させる。
副作用 SU剤との併用で低血糖
一般名 先発名 特徴
シタグリプチン ジャヌビア
グラクティブ
 
ビルダグリプチン エクア 【欠点】重症の肝機能障害患者に禁忌
アログリプチン ネシーナ  
リナグリプチン トラゼンタ 【利点】腎機能低下患者にも減量の必要なし
テネリグリプチン テネリア 【利点】腎機能低下患者にも減量の必要なし
アナグリプチン スイニー  
サキサグリプチン オングリザ  
トレラグリプチン ザファテック 1週間に1回服用
オマリグリプチン マリゼブ 1週間に1回服用

GLP-1受容体作動薬

作用機序 膵β細胞膜上のGLP-1受容体に結合し、血糖依存的にインスリン分泌を促進させる。また、胃内容排出抑制作用があり、空腹時血糖値と食後血糖値を両方低下させる。
インスリンによる食欲亢進を抑制し、体重減少の効果もある。
副作用 悪心嘔吐
一般名 先発名 特徴
リラグルチド ビクトーザ皮下注 長時間作用型(空腹時高血糖改善)
エキセナチド バイエッタ皮下注
ビデュリオン皮下注
短時間作用型(食後高血糖改善)
長時間作用型(週1回注射)
リキシセナチド リキスミア皮下注 短時間作用型(食後高血糖改善)
デュラグルチド トルリシティ皮下注アテオス 長時間作用型(空腹時高血糖改善)
セマグルチド オゼンピック皮下注 長時間作用型(空腹時高血糖改善)

配合剤

一般名 先発名 特徴
ピオグリタゾン+メトホルミン メタクト配合錠  
ピオグリタゾン+グリメピリド ソニアス配合錠  
ピオグリタゾン+アログリプチン リオベル配合錠  
ミチグリニド+ボグリボース グルベス配合錠  
ビルダグリプチン+メトホルミン エクメット配合錠  
アログリプチン+メトホルミン イニシンク配合錠  
アナグリプチン+メトホルミン メトアナ配合錠  
テネリグリプチン+カナグリフロジン カナリア配合錠  
シタグリプチン+イプラグリフロジン スージャヌ配合錠  
エンパグリフロジン+リナグリプチン トラディアンス配合錠  
インスリンデグルデク+リラグルチド ゾルトファイ配合注フレックスタッチ  

インスリンアナログ製剤

ヒトインスリン製剤 遺伝子工学により合成されたヒトと同じタンパク質
インスリンアナログ製剤 より効果を出すために人工的に改変したタンパク質
絶対的適応
(インスリン依存状態:空腹時血中Cペプチド0.6ng/mL未満)
①1型糖尿病
②糖尿病生昏睡(糖尿病ケトアシドーシス昏睡、高血糖高浸透圧症候群)
③糖尿病合併症妊娠
④その他、全身管理が必要な外科手術、重篤な感染症、静脈栄養時など
作用時間 追加分泌を補う:超速効型・速効型(食後高血糖↓)
基礎分泌を補う:中間型・持効型溶解(空腹時高血糖↓)
追加分泌と基礎分泌の両方を補う:混合型・二相性・配合溶解
剤形 バイアル製剤:病院で静脈投与時に使用
カートリッジ製剤:ペン型注射器にセットして使用
プレフィルド製剤:カートリッジと注入器が一体化した使い捨てタイプ
注射部位 腹壁>上腕>臀部>大腿の順で吸収が早い!
<吸収に影響する他の因子>
①温度(気温や体温が高い方が速く吸収される)
②血流 (血流が多い方が速く吸収される)
③深さ(深く注射した方が速く吸収される)
④濃度と量(低濃度の方が速く吸収され、量が多いと遅くなる)
⑤種差(動物由来インスリンよりヒトインスリンの方が速い)

超速効型・速効型

一般名 先発名 特徴
インスリン アスパルト ノボラピッド注
フィアスプ
超速効型、食直後注射
インスリン リスプロ ヒューマログ注 超速効型、食直後注射
インスリン グルリジン アピドラ注 超速効型、食直後注射
インスリン ヒト ノボリンR注
ヒューマリンR注
速効型、食事30分前注射

中間型・持効型溶解

一般名 先発名 特徴
ヒトイソフェン インスリン水性懸濁 ノボリンN注
ヒューマリンN注
中間型
【欠点】懸濁製剤のため、十分混和した後に使用する必要あり
インスリン グラルギン ランタス注
ランタスXR注
持効型溶解
【利点】混和不要
インスリン デテミル レベミル注 持効型溶解
【利点】混和不要
インスリン デグルデク トレシーバ注 持効型溶解
【利点】混和不要

混合型・二相性・配合溶解

一般名 先発名 特徴
インスリン アスパルト二相性製剤 ノボラピッド30ミックス注ノボラピッド50ミックス注
ノボラピッド70ミックス注
 
インスリン リスプロ混合製剤 ヒューマログミックス25注
ヒューマログミックス50注
 
ヒト二相性イソフェン インスリン水性懸濁剤 ノボリン30R注
イノレット30R注
ヒューマリン3/7注
 
インスリンデグルデク+インスリンアスパルト ライゾデグ配合注 配合溶解
【利点】混和不要

アルドース還元酵素阻害薬

一般名 先発名 特徴
エパルレスタット キネダック 食前服用(食後高血糖時とCmaxが重なるように)

糖尿病神経障害治療薬

一般名 先発名 特徴
メキシレチン メキシチールCP 不整脈薬を参照

ソマトメジンC

一般名 先発名 特徴
メカセルミン ソマゾン注射  

高インスリン血性低血糖治療薬

一般名 先発名 特徴
ジアゾキシド ジアゾキシドCP  

脂肪萎縮症治療薬

一般名 先発名 特徴
メトレレプチン  

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