摂食症
神経性やせ症(AN:アノレキ・拒食症)、神経性大食症(BN:グリミア)
| 疫学 | 若年女性に好発、ANの死亡率は約10%(カーペンターズはANで死亡) |
| 病態 | 別名、神経性食思不振症、神経性無食欲症。 やせ願望、肥満恐怖による食行動の障害。背後に愛着障害がある。うつ病の合併が多い。 ANはBMIが18.5未満、BNはBMIが18.5〜30であり、病態に違い大きなはない。 |
| 症状 | 【AN】 低体重(必須)、活動性亢進、病識欠如、低血圧、徐脈、低体温、第二度無月経、浮腫(Alb↓からの膠質浸透圧の低下)、産毛増加・腋毛脱落なし(男性ホルモン優位) 【BN】 過食(必須)+自己誘発性嘔吐・下剤利尿薬の乱用、病識あることが多い、指の吐きだこ、う歯、乏尿、結石、痔核、腎機能障害 |
| 検査 | 【AN】 低下:FT3↓、貧血、低K血症などの電解質異常など 増加:血糖維持のためコルチゾール↑・GH↑、高Chol血症 【BN】 低K血症、代謝性アルカローシス、偽性Bartter症候群、血清アミラーゼ↑、CK↑ |
| 治療 | ①支持的精神療法+認知行動療法 ②経口・経腸で少量から再栄養を行う(Refeeding症候群の予防) ③P、Mg、Zn、ビタミンB1を補充。 ANに対して体重増加目的にオランザピン、クエチアピンを処方することがある。 ※Refeeding症候群(再栄養症候群) 長期にわたり著しい低栄養が続いた体へ急激に糖質が流入すると、ATP産生によって大量のリンが消費され、大量のリンが消費され重篤な低P血症となる。その結果、電解質異常(P↓Mg↓K↓)→QT延長→死となる。 |
パーソナリティ症
パーソナリティ症は、個性が顕著で、融通がきかず、不適応であるために、仕事や学業、人づきあいに問題が生じている場合に診断される精神疾患である。
通常なら、悪い結果を招く性格がある人は、自身の行動パターンを変えようとする。対照的に、パーソナリティ症の人は自身の行動パターンを変えようとせず、そうした行動パターンが効果的でなかったり、悪い結果を招いたりする事態が繰り返されたとしても、変えようとしない。
パーソナリティ症の人の多くは、うつ病などの別の精神疾患を併発する。
10種類のパーソナリティ症は3つのグループ(A群、B群、C群)に分類される。
| ●クラスターA群 | 統合失調症っぽい、奇妙で風変わりな群 |
| 猜疑性(妄想性) | 不信と猜疑心 |
| 総合失調質(スキゾイド) | 他者に対する無関心 |
| 統合失調型(スキゾタイパル) | 奇妙または風変わりな思考と行動 |
| ●クラスターB群 | 気分障害っぽい、演技的・情緒的で移り気な群 |
| 反社会性 | 社会的無責任、他人の軽視、欺瞞、自分の利益を得るための他人の操作 |
| 境界性 | 心の中の空虚さ、人に見捨てられることへの恐れ、不安定な人間関係、感情や衝動的行動をコントロールすることの問題 |
| 演技性 | 人の注意を引きたい欲求と劇的な行動 |
| 自己愛性 | 賞賛されたいという欲求、共感性の欠如、および自分の価値についての過大評価(誇大性と呼ばれる) |
| ●クラスターC群 | 不安になりやすい人達 |
| 回避性 | 拒絶される恐れによる対人接触の回避 |
| 依存性 | 服従と依存(面倒をみてもらいたいという欲求による) |
| 強迫性 | 完全主義、柔軟性のなさ、頑固さ |
境界性パーソナリティ症(BPD)
①BPDの診断
| 概要 | 治療はチャレンジングなものになるため腹をくくること |
| 対応 | 過剰に親密にならず、また冷淡にもならないよう患者と適切な信頼関係を築く |
| 特徴 | ①見捨てられ不安:見捨てられることを避けるために自殺示唆、自傷など行う |
| ②不安定で激しい対人関係:他者へのイメージが理想化とこき下ろしの間で大きく変動 | |
| ③同一性の混乱:自己のイメージが不安定で突然変化する | |
| ④慢性的な空虚感:物質乱用や性的逸脱に走ることがある | |
| ⑤怒りの制御困難 | |
| 併存 | 他のパーソナリティ症、うつ病・双極症、PTSD、摂食症、薬物乱用 |
| 予後 | 衝動性や対人関係の問題は一生続くが、中年になるとある程度安定する、自殺率約10% |
②診断後はまず支持的精神療法(非専門医)
| ①適切な疾病教育 | 診断名は慎重に伝える、病名を伝えた方が以降の治療はしやすい |
| ②治療目標の設定 | 治療者ができることとできないことを明確化する |
| ③対処法を一緒に探る | 自傷や自殺未遂について上手な対処法を見つけられるよう支援する |
| ④治療構造を守る | 患者とSNSやメールなどで個人的につながらないようする |
| ⑤情報共有 | 他のスタッフとの情報共有して2人だけの関係に留めない |
③薬物療法
| 原則 | 精神療法に対する補助的なもの、多剤併用は過量服用による自殺になる |
| ①抗精神病薬 | 衝動性や感情の不安定性に対して投与することがある |
| ②気分安定薬 | 衝動性や感情の不安定性に対して投与することがある |
| ③抗うつ薬 | うつ病を併存している場合に使用する |
| ④抗不安薬・睡眠薬 | BZ系などの依存や耐性を生じるものであり使用は避ける |

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