せん妄 delirium

精神科

せん妄の概要

病態
症状
短期間(数時間~数日)で急に発症し、動揺する意識混濁に加え、幻覚、錯覚、妄想が活発に見られ、不安・精神運動興奮を伴う状態(低活動型の場合もある)。睡眠覚醒リズムの変化、見当識障害が見られ、健忘を残す。
せん妄は三大因子が重なるほど生じやすい。
症状は1日のうちでも波があり、特に夜間に悪化しやすい
三大
因子
①背景因子:高齢、認知症、脳血管障害、AIDS患者などの脳機能低下患者
②促進因子:入院(特にICU)、手術、疼痛、ドレーン類、身体的・心理的ストレス
③直接因子:AIUEOTIPS、BZ系、ドパミン作動薬、抗コリン薬、ステロイドなどの薬物
種類 夜間せん妄:高齢者の入院でみられやすい
術後せん妄:手術直後よりみられる(特に疼痛により促進)
ICU症候群:ICUにいる患者は脳機能低下状態が多く、せん妄になりやすい
作業せん妄:日頃やり慣れた作業を無目的に反復する
治療 促進因子+直接因子の除去+昼夜の区別をつける環境調整
②興奮が強い場合、鎮静や転倒防止目的で非定型抗精神病薬(リスペリドン、クエチアピン、オランザピン、ハロペリドールなど)を投与。ただし、BZ系は症状を悪化させるため禁忌
ICU症候群:可能であれば一般病棟への転棟
振戦せん妄:BZ系+ビタミンB1投与

せん妄の対応

せん妄とは

概念 脳の機能がもともと低下している認知症患者や高齢者に起こりやすい、病気・薬剤・環境変化などによる心身への負担が引き起こす可逆性の急性脳不全
対応 せん妄はライン抜去や転倒などのリスクがあり、安全を確保するため薬物療法、誘因の除去、環境整備を行う
注意点 せん妄は状態が悪い時に起こりやすいが、落ち着いている患者で突然発症する場合は何か新規の原因が加わっていることが多く感染症・脳血管障害・薬剤性・電解質異常・血糖異常などが重要な原因となる
認知症との違い せん妄は急性の病態、認知症は慢性の病態
不穏との違い せん妄は以下に該当する意識障害の一種、不穏は落ち着きがない行動の異常
うつ病との違い 低活動型せん妄は日内変動あり、うつ病は月単位で進行

入院時はせん妄ハイリスク患者か確認

背景因子あり:せん妄リスクが高く、以下の環境整備を行う
(せん妄が出たら高度になる前に薬物療法開始)

誘因(促進因子・直接因子)あり:せん妄リスクが高く、積極的に治療介入

背景因子 誘因(促進因子・直接因子)
高齢(65歳以上)
・男性
・認知症
・うつ病
・せん妄の既往歴
・視力障害、聴力障害
・低栄養状態、脱水
・ADLの低下
・脳血管疾患の既往歴
・アルコール多飲
●症状
感染症、発熱疼痛、低酸素血症、高CO2血症、尿閉、頻尿、夜間尿、便秘、脱水症、電解質異常、酸塩基平衡異常、血糖異常、悪性腫瘍、脳血管障害、心不全、呼吸不全、肝不全、腎不全、骨折・外傷
●薬剤
BZ系、ステロイド、オピオイド、抗ヒスタミン薬、抗コリン薬、抗パーキンソン病薬、三環系抗うつ薬
●その他
ICU管理、全身麻酔術後、身体抑制、モニター管理、尿道カテーテル、点滴ライン、手術、入院、終末期、施設入所者

↓ハイリスクの場合は、1分間動物スクリーニング&環境整備を行う

・昼夜のリズムをつける
・カーテンを開けて景色が見えるようにして1日のサイクルを明確にする
・カレンダー、時計などを置き、日時を明確にする
・日中の覚醒を促し、リハビリなど活動度を高める
・適切な排泄リズムを作る
・メガネや補聴器を使用するなど視聴覚機能を整える
・自宅の物を増やし、家族の写真を配置するなど、リラックスできる環境を作る
・家族が付き添うなどして、継続的なコミュニケーションをとる
・不要なデバイスは抜去する
・不快な症状を積極的に緩和する
・せん妄を悪化させる薬剤などを中止変更する

せん妄の種類と症状

低活動型せん妄は薬剤の効果が乏しく、環境整備を行い徐々に改善させるしかない場合が多い

過活動型(1/3) 低活動型(1/3) 混合型(1/3)
・落ち着きのなさ、不穏
・過覚醒、不眠
・焦燥感
・幻覚、妄想
・興奮、易怒性、徘徊
傾眠
・無気力、活動性低下
・自発運動低下
・発語減少
・食事摂取量低下
・24時間以内に両方が存在

せん妄を疑ったら確認すること(3D-CAM)

以下の障害が急性に出現し、変動が大きい場合はせん妄の可能性が高い

※普段の様子を知らない場合は看護師や家族などに普段の様子を確認する

見当識障害 ・意識レベルの低下ではなく、意識変容が前面に出ることが多い
・時間→場所→人物の順に障害される
「今お昼か夜かわかる?」「ここどこかわかる?」「私誰かわかる?」
注意力障害 ・話に集中できない、会話の内容を覚えていない
「4つの数字の逆唱」「曜日の逆唱」
認知機能障害 ・MMSEやHDS-Rで評価可能だが、1分間動物スクリーニングが利便性良い
・認知症は進行するまで障害されないことが多く、せん妄は急に出現する
【1分間動物スクリーニング(入院時に行う)】
「1分間でできるだけ多くの動物の名前を言ってください」
13匹以上で健常老年者、12匹以下でアルツハイマー型認知症の可能性

せん妄への対応(薬物療法)

せん妄症状が強い場合・夜間の場合は以下の鎮静剤を使用する
(抗精神病薬はQT延長がない、低K血症、低Mg血症がないことを確認して使用)

難治例では睡眠薬を併用して鎮静、それでも難しく安全を確保できなければICUで鎮静療法

内服可 第一選択
DM禁
クエチアピン(セロクエル®)25mg(高齢者は12.5mgから)頓用
・1〜2時間で効果なければ追加投与可(100mg/日以内)
・MARTAであり抗幻覚/鎮静/抗不安作用を持つ
・効果発現まで1時間、半減期は4時間程度
・パーキンソン病で使用=錐体外路障害が少ない(12.5mgから)
DM患者 ミンアンセリン(テトラミド®)10〜30mg 夕食後 or 就寝前
・効果発現まで2時間かかるため定期投与が基本、半減期は18時間と長い
・鎮静作用は強いが、抗幻覚作用はほぼない
・過活動になっている場合はリスペリドンを併用
・うつや疼痛にも効果あり
日中せん妄
DMも可
リスペリドン(リスパダール®)0.5〜1mg 頓用
・内用液製剤は口腔粘膜から吸収される
・1時間で効果なければ追加投与可(3mg/日以内)
・Cmaxまで1時間、半減期は4時間程度
・幻覚/妄想に強いが、鎮静作用は弱いので日中にも使いやすい
・液体のため味噌汁などに入れても可(お茶類・コーラは不可)
漢方 抑肝散 分3
内服× ハロペリドール(セレネース®)5〜10mg+生食50mLを1時間で点滴
もしくは0.5〜1mgを筋注 or 静注(必要に応じて30〜60分毎に投与)
・QT延長に注意、パーキンソン病や重症心不全に禁忌
・効果発現早い、半減期は14時間で作用遷延のリスクあり
・鎮静作用もあるが、抗幻覚作用が主
クロルプロマジン(コントミン®)25mg+生食50mLを点滴
・鎮静作用は強いが、半減期30時間と長く日中に眠気が残りやすい
・血圧低下することがあるためバイタル不安定な人には使わない
・口渇や便秘を起こしうる

せん妄への対応(せん妄の原因検索)

①意識障害 電解質異常、低血糖、薬剤性(抗コリン薬、抗ヒスタミン薬)を除外
②身体的苦痛 ・疼痛、便秘、脱水、カテーテルなどデバイスによる苦痛の有無
・低酸素:肺塞栓症に注意
・離脱:アルコール離脱やBZ系離脱
・感染症:発熱などバイタルなど総合して判断
③心血管系 ・急性心筋梗塞や大動脈解離を除外
④環境変化 ・環境整備

ICU患者のせん妄

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