脊椎・脊髄外傷

救急医学

脊椎・脊髄外傷の概要

転倒や転落など低エネルギー受傷機転による高齢者の非骨傷性頸髄損傷が増加している。

神経原性ショックと脊髄ショック

神経原性ショック 脊髄ショック
病態 上位胸髄損傷より頭側の脊髄損傷に起因する交感神経の遮断により心拍数低下と末梢血管拡張による血圧低下が生じる。 脊髄損傷により全ての脊髄反射機能が一過性に消失する現象で、受傷後数時間〜48時間程度持続する。
特徴 各種臓器の血流は維持されていることが多く、末梢冷感は見られない。 ショック中は損傷レベル以下の弛緩性麻痺、感覚障害、腱反射消失が生じる。

脊椎保護

病院前救護 脊椎運動制限の基準
装具 ①ソフトカラー:固定性弱い
②フィラデルフィアネックカラー:頚椎損傷が疑われる場合
③バックボード:重症外傷の場合に全身固定する
解除基準 上記の流れでCT撮像後 or CT撮像基準に満たない場合はカラーを解除し、
①まず患者に能動的に頚椎を左右に45度ゆっくり動かしてもらう
②痛みがなければ座位になり前後屈してもらい痛みがなければOK
③痛みがあれば頚椎カラーを再装着する

脊椎・脊髄外傷の診療

①ABCD

A 上気道狭窄:頸髄損傷では脊椎前腔血腫の増大による
B 低酸素血症:C3-C5の損傷で横隔膜・T1-T11の損傷で肋間筋が麻痺する
C 血圧低下:大量出血、緊張性気胸、心タンポ、神経原性ショック(徐脈)
D 意識障害があり以下があれば脊髄損傷を疑う

②問診・身体所見

問診 自発痛
神経 デルマトーム、筋節、反射を評価
運動 患者に自発的に回旋、屈曲、伸展運動を促し、運動痛を確認
視診
触診 頚椎カラーの前面を外し、頸部周囲や棘突起の圧痛を確認

脊髄損傷 spinal cord injury

病態 脊髄が損傷されると受傷直後より損傷レベル以下の運動・感覚・反射・自律神経の障害をきたす。頚椎損傷では四肢麻痺、胸髄以下の損傷では対麻痺となる。脊椎損傷(脊椎骨折、脱臼など)に合併することが多いが、骨傷がなくても脊髄損傷が発生することがある。
分類 横断面の損傷範囲から完全損傷と不完全損傷に大別される
【完全脊髄損傷】
●受傷直後の脊髄ショック時
損傷部位以下の弛緩性麻痺、腱反射消失、全感覚脱失、膀胱直腸障害、発汗消失、浮腫
●脊髄ショック離脱後
損傷部位以下の痙性麻痺、腱反射亢進、Babinski徴候、感覚や運動障害の回復はまれ
【不完全脊髄損傷】
中心性損傷(最多)、半月型損傷、前部型損傷、後部型損傷に分類
【非骨傷性頸髄損傷】
頚椎の退行変性や脊柱管狭窄を有する中高年が頚椎過伸展を強制されると、骨の損傷を伴わずに脊髄が損傷を受ける場合がある。不完全脊髄損傷例は中心性損傷を示すことが多いが、完全脊髄損傷となる場合もある。
重症度 神経学的重症度

頚椎CT

①頚椎CTの適応 ①頸部に痛みや圧痛がある患者
②神経学的異常がある患者
③正確な身体所見が取れない患者
④高リスク受傷機転
読影方法 矢状断で(Xpは側面像で)A→Dの順に読影する
読影A:Aligment ・4つカーブ①〜④が滑らかかどうか確認する
※④はC1の棘突起は含めない
※脊柱管は②と③のラインの間にある
●椎体が下位の椎体より25%以上前方に偏位なら片側椎体関節脱臼
●椎体が下位の椎体より50%以上前方に偏位なら両側椎体関節脱臼
読影B:Bone ・1つずつ骨の輪郭を追う(椎体、棘突起、横突起など)
●椎体の高さが後面の高さの75%以下になっていれば圧迫骨折
読影C:Cartilage ・椎間板、椎間関節の距離を確認する
読影D:Distance ・軟部組織の距離を確認
●a:正常は3mm以下(小児5mm以下)
●b:正常は7mm以下
●c:正常は22mm以下(小児14mm以下)
●d:棘突起間の開きが異常なら棘間靱帯損傷の疑い

脊椎損傷(骨折・脱臼)

上位頚椎損傷 環椎後頭関節脱臼 頭蓋ー頚椎接合靱帯群の断裂による極めて不安定な損傷で、大多数は上位頸髄損傷の合併で致死的となる。
環軸関節脱臼 前方脱臼が多く、環椎横靱帯が断裂して生じる場合と歯突起骨折を伴って生じる場合がある。
環椎骨折 前弓or後弓単独骨折、外側塊骨折、破裂骨折に分類される。
歯突起骨折 基部骨折が最多で、不安定性も強い。
hangman骨折 軸椎の上下関節突起間の骨折のこと。
中下位頚椎損傷 椎間関節脱臼
椎間関節骨折
隣接椎体の椎間関節が完全に離開している状態で、多くは椎間関節の骨折を伴う。
胸腰椎損傷 圧迫骨折
破裂骨折
Chance骨折
脱臼骨折
胸腰椎損傷の脊柱安定性を評価する方法の1つとしてDenisのthree column theoryがあり、Middle columnを含む2つ以上のcolumnが破綻すると不安定性ありと判定する。
椎骨動脈損傷 上位頚椎損傷
椎間関節脱臼
横突起にかかる骨折
左記3つの骨折は頚椎損傷に付随して椎骨動脈損傷のハイリスクであり、椎骨動脈損傷が生じると脳幹・小脳梗塞を招くおそれがある(受傷後8時間〜12日が多い)。そのためハイリスクではCTアンギオを行うことが推奨されている。

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