創傷処置前
①簡単な止血 | 創は濡らしたガーゼ(or おしぼり)で覆い、軽く圧迫 |
創表面を拭いて、 | |
②病歴聴取 (5W1H) |
・いつ? →受傷後6〜8時間以上経過した場合は創感染が生じやすいため、創縁をデブリして縫合する(顔面は除く) |
・どこで? →屋外なら破傷風トキソイド投与考慮 |
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・誰が? →外傷に関わった人をカルテに記載 |
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・どのようにして?(何をしているとき何とぶつかって) →創の種類や異物混入の可能性、骨折の合併を考慮し画像検索 |
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・どうして?(受傷機転、受傷前後の記憶) →転倒の原因が失神、けいれんなど内因性疾患の有無を確認 |
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既往歴、薬剤歴、最終食事 |
縫合の準備
患者モニター | パルスオキシメーター、血圧計 |
PPE | アイガード、マスク、ガウンorエプロン |
清潔確保 | 滅菌ガーゼ、(滅菌手袋、穴あき滅菌ドレープ、消毒液) |
麻酔関係 | 27ゲージ針、ロック付き2.5mL or 5mLシリンジ、キシロカイン®1% |
洗浄 | 水道水、おむつ、吸水シート |
縫合 | 縫合セット、角針、4-0 or 5-0ナイロン糸(顔は5-0 or 6-0ナイロン糸) |
局所麻酔
局所麻酔共通
①麻酔前評価 | ・創より遠位の関節運動・感覚・血行が問題ないか確認 ※痛くて動かせない場合は伝達麻酔をして再評価 |
②アレルギー確認 | ・局所麻酔薬アレルギー確認:歯の麻酔で気分が悪くなったことある? |
③基本麻酔薬 | ・キシロカイン®1%の極量:4.5mg/kg(最大300mg) ※20mL(200mg)以上使うときは極量を意識すること ※局所麻酔薬中毒は投与5分以内に75%が発症し、舌や唇の痺れ、金属様の味覚、多弁などの初期症状が出現する |
③広範囲麻酔薬 | ・キシロカイン®1%エピレナミンの極量:7mg/kg(最大500mg) 広範囲に麻酔する場合に選択(禁忌:指、耳、陰茎など) |
④疼痛軽減 | ・針は表皮を速やかに貫通させ、薬液を極力ゆっくり注入 |
創部直接浸潤法
概要 | 創縁から針を刺入し薬液を注入する方法 利点:刺入時痛が少ない、欠点:創の汚染が強い場合は汚染を押し込む可能性 |
方法 | 創縁から針を刺入し、吸引試験をしつつ、直径1cmの丘疹をつくり、そこから皮下組織に薬液を注入していく |
フィールドブロック法
概要 | 創傷の周囲に局所麻酔する方法 利点:創の汚染が強い場合でも可能、欠点:刺入時痛がある |
方法 | 創の端から創に平行になるように針を刺入し、吸引試験をしつつ、直径1cmの丘疹をつくり、そこから皮下組織に薬液を注入しながら針を進めて縦長の膨疹をつくる |
LET
概要 | リドカイン・エピネフリン・テトラカインの合剤で、顔面・頭部は血流が豊富で麻酔効果が得られやすい。 禁忌:指、つま先、耳、鼻など、欠点:口や口唇など粘膜には使いにくい |
方法 | ①綿球やガーゼにLETを数mL滴下する ②創部に綿球を置いた後、テガダーム®などの防水素材で被覆する ③30分程度待つ(保護者などに押さえてもらうと良い) |
伝達麻酔
指ブロック | 23G針+10mLシリンジを用意、神経1本に対して2mLずつ、4か所に計8mL使用(①左背側指神経、②左掌側指神経、③右背側指神経、④右掌側指神経) ①指の付け根に斜めに針を入れて骨に当て、吸引試験後、2mL注入 ②針を戻して手掌側に方向を変え、少し進めて吸引試験後、2mL注入 ③④対側も①②と同様に行い、10分後に疼痛を確認 |
眼窩上神経ブロック(V1) | 正中から2.5cm外側の眼窩上縁に眼窩上切痕があるので触診で探し、その切痕に1〜2mL注入する。眼窩上切痕がわからない場合は、眼窩上縁中央部の眉に沿って骨の表面近くに注入していく |
滑車上神経ブロック(V1) | 滑車上神経は眼窩上切痕のやや内側にあり、その切痕に1〜2mL注入する |
眼窩下神経ブロック(V2) | 正中から2.5cm〜3cm外側の眼窩下縁中央から1〜1.5cm下方に眼窩下神経孔があるので触診で探し、その孔に1〜2mL注入する |
オトガイ神経ブロック(V3) | 下顎骨正中から2.5cm外側の第2小臼歯直下に下顎骨上下縁の中央のオトガイ神経孔を触診で探し、その孔に1〜2mL注入する |
創傷処置
①創部の観察 | ・麻酔が十分にかかったら、切創、刺創、挫創、杙創(よくそう)などの創部形状をざっと観察 |
・頭部など毛がある部分は毛を切ってよい(剃毛はNG) | |
②創部の洗浄 | ・おむつ、吸水シートを敷く |
・水道水で十分な圧をかけながら砂・泥・ガラス片などを洗い流す | |
・取れにくい細かい異物はスポンジやブラシで擦り取る | |
・それでも取れない場合は、18G注射針の先端を使って1つ1つ根気よくはじく | |
・取りきれない場合は最小限にデブリし、異物残存の可能性はゼロにはならないことを説明+カルテに記載 | |
・創の入り口が狭い場合はルート外筒+ロック付きシリンジを用いて洗浄 | |
③創部の評価 | 創の深さ、汚染の程度、異物の有無、ポケットの有無を観察 |
③消毒と覆布 | ・創周囲の正常皮膚のみをクロルヘキシジンかポビドンヨードで消毒し、滅菌ガーゼ、滅菌手袋を準備装着した後に穴あき滅菌ドレープをかける |
④単結節縫合 | ・有鈎鑷子で創縁を持ち上げ、針を垂直に刺入させ、刺入部と等間隔の場所に針を出し、機械結びで少しゆるめに結紮する |
・バイト、ピッチ、深さが等しくなるように縫合し、結び目は創の直上は避けて片側へ寄せる バイト:切開線〜針の刺入点の距離、ピッチ:縫合と縫合の距離 |
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・バイトが長いと創が内反し窪んだ醜形を残すので、少し盛り上がるように外反させると治癒過程で収縮して平面な創となる | |
・縫合後はワセリン or ゲンタシン®軟膏で被覆し、湿潤環境とする |
開放骨折の場合(Gustilo分類)
開放骨折の場合は速やかな抗菌薬投与が必要
創部の大きさ | 状態 | 抗生剤 | |
GradeⅠ | 1cm未満 | セファゾリン2g | |
GradeⅡ | 1〜10cm | 同上 | |
GradeⅢA | 10cm以上 | 被覆可能 | 同上+ゲンタマイシン2mg/kg |
GradeⅢB | 同上 | 閉創困難で骨露出あり | 同上 |
GradeⅢC | 同上 | 閉創困難で動脈損傷あり | 同上 |
動物咬傷(特にネコ、ヒト)
よほど浅い傷でない限り抗菌薬投与が無難
処方例 | オグサワ 3日分 |
アレルギーがある場合 | ミノサイクリン100mg 1回1錠 1日2回 3日分 |
創傷処置後
伝達事項 | 縫合後24時間は被覆したままで、創部を濡らさないよう指導(当日は入浴不可) |
処方 | ワセリン、鎮痛薬など |
フォロー予約 | 翌日に予約を入れて受診してもらう |
創傷後フォロー
破傷風トキソイド
基礎免疫がある=破傷風ワクチン接種が3回以上の人
破傷風トキソイドを1回0.5mLを筋注する
基礎免疫のない人 | 基礎免疫がある人(DPTワクチン接種済み) | |
対象 | 1972年以前出生の人 | 1973年(昭和48年)以降出生の人(イクナさん) |
1回目 | 受傷日※※ | 受傷日(最終接種から10年以上経過している人※) |
2回目 | 3〜8週間 | ー |
3回目 | 6〜18ヶ月 | ー |
※基礎免疫があり、かつ、最終接種から5〜10年の人は、創が汚い場合は破傷風トキソイドを接種する。
※※基礎免疫がなく、かつ、ワクチン未接種の人は、創が汚い場合はTIG(抗破傷風ヒト免疫グロブリン)を250単位投与する。
創傷フォロー(受診日翌日)
状態確認 | Clean:発赤・滲出液・周囲に汚染がないか確認 Dry:水分をとって乾燥した状態で観察(弱拡と強拡で撮影) Intact:創縁がきちんと合っているか確認 疼痛・発赤がある場合は早期に抜糸し排液ドレナージが必要 |
伝達事項 | 今日から入浴可能、創傷部位は優しく石鹸で毎日洗浄 |
デュオアクティブ®は1〜2日に1回貼り替えて石鹸で洗浄 | |
創の色素沈着を予防するため優肌絆®など遮光性で覆うことを勧める | |
抜糸予約 | 通常、体幹・四肢は7日前後で抜糸予約(抜糸が遅れるとsuture mark形成) 顔面:4〜5日目に抜糸、足底などの荷重部や膝関節伸側は10〜14日目に抜糸 |
抜糸
状態確認 | 肥厚性瘢痕やケロイド、創が開いたり感染がある場合は形成外科にコンサルト |
抜糸 | 結紮の外の糸を上に引っ張り、片方のみを切り、そのまま上に引っ張り出す。 |
伝達事項 | 創の色素沈着を予防するため抜糸後3ヶ月まで優肌絆®などで遮光 →創の緊張をとるため、創に対して垂直に貼り、水平に剥がす |
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