胸部外傷

救急医学

胸部外傷のprimary survey(TAF3Xの診断)

T Tamponade 心タンポナーデ
A Airway obstruction 気道閉塞
F Flail chest フレイルチェスト
X Tension pneumothorax 緊張性気胸
X Open pneumothorax 開放性気胸
X Massive hemothorax 大量血胸

①穿通性外傷の確認(脱衣させ胸部全体が見えるようにする)

以下の部分に刺入口がある場合、心大血管損傷の危険性が高いと判断する

②身体所見

所見 診断
発話できない、吸引で大量の血液あり 気道閉塞
前面〜側面の胸壁が吸気時に陥没し呼気時に膨隆する フレイルチェスト
胸壁に開放創あり胸腔との交通がある 開放性気胸
ショック+頸静脈怒張+患側胸郭膨隆+皮下気腫+呼吸音減弱 緊張性気胸
ショック+SpO2低下+呼吸音減弱 大量血胸
ショック+頸静脈怒張+心音減弱 心タンポナーデ

③E-FAST

所見 診断
心窩部に心嚢液貯留あり 心タンポナーデ
側胸部にて胸水様の貯留液あり 大量血胸
胸膜スライディングなし、M modeでBarcode sign(リニアプローブ) 気胸

④胸部X線

ABCDに異常がある場合や高リスク受傷機転の場合は必須の検査

所見 診断
患側肺野のびまん性透過性低下 大量血胸
2ヶ所以上の肋骨・肋軟骨骨折が上下連続して数本存在 フレイルチェスト
患側肺野の萎縮、頸部気管の健側偏位 気胸

TAFXXXの治療

心タンポナーデ(T)

心嚢穿刺で15〜20mLの血液吸引できれば一時的に症状改善するが、原因の心損傷に対して直ちに手術が必要になることが多い。ただし、心嚢内が凝血塊で充満している場合は吸引できずバイタルサインの改善が期待できないため直ちに手術に移行しなければならない。

気道閉塞(A)

①初期対応 頭部後屈顎先挙上+バックバルブマスク(頚椎損傷には禁忌)
②気道出血 気管支ブロッカー付きチューブを使用して挿管

フレイルチェスト(F)

胸壁の不安定性そのものが換気や酸素化不全の原因になることは少ない。

フレイルチェストを生じるような強い外力により肺挫傷を合併する。肺挫傷によりガス交換能の低下や気管支への出血や分泌物貯留により気道抵抗が増加して低酸素血症となる。また、疼痛により呼吸運動低下が生じて換気障害(高CO2血症)となる。

低酸素血症や高CO2血症 気管挿管による陽圧換気
肋骨骨折 疼痛管理、観血的整復固定術

開放性気胸(X)

開放創から離れた清潔部位に胸腔ドレーン留置した、開放創を閉鎖する。

胸腔ドレーンをすぐに行えない場合、一時的に気密性の滅菌被覆材で開放創を覆い、三辺をテープで固定する。この方法は吸気時の空気流入を防ぎ、胸腔内圧が高くなった場合に胸腔外流出を可能とするもので、救急で第一選択で行うものではない。

緊張性気胸(X)

酸素10〜15L/分投与、換気しながら、先ず18G以上の静脈留置針で胸腔穿刺(第2肋間・鎖骨中線→脱気不良なら第4 or 5肋間・中腋窩線前方)で減圧する。

次に胸腔ドレナージ(第5肋間・中腋窩線)を留置する。

大量血胸(X)

まず、胸腔ドレナージを行い、虚脱した肺を再膨張させてBの異常を解除する。次に早期に開胸止血術を考慮する。

胸部外傷のsecondary survey(PATBED2Xの診断)

P Pulmonary contusion 肺挫傷
A Aortic rupture 大動脈損傷
T Tracheo-bronchial rupture 気管気管支損傷
B Blunt cardiac contusion 鈍的心損傷
E Esophageal rupture 食道損傷
D Diaphragmatic rupture 横隔膜損傷
2 Pneumo-thorax 気胸
X Hemothorax 血胸

①症状・身体所見

呼吸困難・低酸素血症 PATBED2X全て
血痰 気管気管支損傷
吐血、嚥下困難 食道損傷
心雑音 鈍的心損傷による乳頭筋や弁損傷による可能性

②胸部X線

①気管・気管支 気管の圧排像、気管周囲の気腫を評価
②胸腔 立位:肺尖の無血管野→気胸、気管気管支損傷、CP角Dull→血胸
臥位:CP角鋭化→気胸、気管気管支損傷、びまん性肺野透過性低下→血胸
③肺実質 種々の形の肺野透過性低下→肺挫傷・肺内血腫、誤嚥
④縦隔 上縦隔開大→胸部大動脈損傷、縦隔・皮下気腫→気管気管支損傷、食道損傷
⑤横隔膜 横隔膜挙上→横隔膜損傷

③(造影)CT

所見 診断
大動脈損傷(仮性大動脈瘤)、周囲に縦隔血腫あり
胸部大動脈損傷
気管分岐部より2.5cm以内の気管断裂像、周囲の縦隔気腫
気管気管支損傷
肺区域に従わない透過性低下、肺挫傷内部に気瘤を認める場合もある
受傷数時間後に異常陰影を認めることが多く、3〜4日後にはX線所見は消退することが多い
肺挫傷
消化管の胸腔内への脱出像
横隔膜損傷
X線で診断できないOccult気胸が約20%存在する
気胸

④その他の検査

心電図 多発する心室期外収縮、洞性頻脈、心房細動、右脚ブロック、ST変化など
血液検査 トロポニン、CK
心エコー 心電図異常を認めた場合に実施

PATBED2Xの治療

肺挫傷(P)

肺挫傷は肺胞毛細血管の断裂で生じる肺の間質や肺胞内への出血と、これに伴う周囲の浮腫や微小無気肺で形成される。そのためX線では肺の区域に従わない境界不明瞭な斑状・網状陰影となる。

呼吸困難、低酸素血症 O2療法→不十分なら気管挿管
※初期には低酸素血症があっても画像上明らかな異常陰影ない場合あり

胸部大動脈損傷(A)

胸部大動脈損傷は約80%が現場で死亡し、病院到着後も24時間以内に半数が死亡する。

胸部大動脈損傷と診断したら心臓血管外科へコンサルト

気管気管支損傷(T)

鈍的外傷の約80%は気管分岐部より2.5cm以内に生じる。損傷が縦隔内に留まると縦隔気腫や前頸部の皮下気腫、損傷が胸腔に及ぶと緊張性気胸となる。

気管気管支損傷を疑ったら呼吸器外科へコンサルト

鈍的心損傷(B)

鈍的外力により生じる心臓外傷のこと。

心電図異常なく、トロポニン上昇なければ陰性的中率100%であるが、いずれかに異常を認める場合は入院による経過観察が必要。

食道損傷(E)

大部分は穿通性外傷によるもので、鈍的外傷では稀である。

食道損傷を疑う場合、ガストログラフィンによる食道造影や内視鏡検査を施行する。診断すれば損傷部位を直接縫合閉鎖する。

横隔膜損傷(D)

横隔膜損傷の65〜80%が左横隔膜である。また、腹腔内臓器損傷を高率で合併する。鈍的外傷の場合は50%以上でショックを呈する。

受傷直後には横隔膜損傷が明らかでなく、数時間〜数日、あるいは外傷後遺症として長期間経過後に診断されることもある。

気胸(X)

胸腔ドレナージ

血胸(X)

胸腔ドレナージ

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