形成外科 Common disease(熱傷)

皮膚科

熱傷の概要

病態 Ⅱ度熱傷以上の受傷面積が成人で体表面積の30%以上、幼小児では10%以上に及んだ場合、熱傷ショック(局所の壊死・充血・浮腫)が生じる。また、全身の血管透過性亢進が受傷後1〜2時間から起こり、7〜8時間までにピークに達し、36〜48時間持続する。その結果、循環血漿量減少性ショックが生じる。
合併症 ①腎不全、多臓器障害:ショック
②呼吸不全:気道熱傷、輸液による肺水腫
③敗血症、DIC:広範囲熱傷で生じる
④消化性潰瘍(Curling潰瘍):受傷1週間以下に生じやすい
⑤拘縮:関節屈曲に肥厚性瘢痕が生じた場合
⑥有棘細胞癌:肥厚性瘢痕や長年の経過の後に生じる場合がある

熱傷の初期治療

病院前対応

①患部を冷水で10〜30分冷やす 服を着ていたら、服の上から冷水をかける
※注意 受傷面積20%以上なら低体温を併発するため流水冷却しない
②無理に服を脱がさない 皮膚が衣服に張りついて水ぶくれが破れる原因になる
③病院に来るまでも冷やす 冷たく濡らしたタオル、布に包んだ保冷剤などを利用する
④水ぶくれは潰さない 疼痛増強
⑤アクセサリーを外す 浮腫により指輪や時計が外れなくなる可能性あり

ABCDE

A 顔面・口腔・気道熱傷の場合、気道狭窄音や嗄声があれば気道挿管を検討
B 胸郭全周に及ぶⅢ度熱傷の場合は胸郭の可動制限に注意、気管挿管や減張切開を検討
C 補液開始
D 意識障害がある場合、CO中毒、頭部外傷、薬物中毒を疑う
E 創表面が衣服に固着していないことを確認して脱衣する、創面は滅菌ガーゼで被覆し保温する
α 輸液のため、身長と体重を聴取

①受傷面積の算出

定義 受傷面積とは、やけどした面積のこと
9の法則 体表面積を9の倍数で細分化したもので、頭、胸、腹、上背面、下背面、左・右上肢、左・右表下肢、左・右裏下肢の11箇所を各9%+陰部を1%としたもの
5の法則 幼小児の場合はこちらを用いる

②熱傷深度の判定

受傷直後では正確に診断するのは困難、かつ、経過とともに深度が進行する。

深度 障害組織 症状 治癒
第Ⅰ度 表皮
EB
有痛性紅斑、浮腫、水疱形成なし
(日焼けと同じ状態)
数日で治癒
瘢痕なし
第Ⅱ度 真皮浅層
SDB
水疱形成(受傷数時間以内に出現)+水疱底の紅色強い疼痛 2〜3週間で治癒
ほぼ瘢痕なし
真皮深層
DDB
水疱形成+水疱底の白色、疼痛あるが知覚鈍麻ありⅢ度熱傷に移行することもあり 3〜4週間で治癒
瘢痕化
第Ⅲ度 皮下組織
DB
水疱形成なし、無痛(23Gなど細い針当てても痛覚なし)白色〜黒褐色レザー様 1ヶ月以上で治癒
瘢痕化 植皮必要

③Burn index(BI)の算出

定義 Burn index(熱傷指数:熱傷の程度を表す指数=Ⅱ度受傷面積×1/2+Ⅲ度受傷面積
高齢者の場合は、PBI(予後熱傷指数)=年齢+BIを算出、80以上で重症熱傷と判断
評価 BI=10〜15は重症熱傷と判断し、直ちに全身管理・ICUで治療
BIは植皮が必要なおおよその熱傷面積と解釈される

④初期輸液

定義 熱傷面積=Ⅱ+Ⅲ度熱傷の受傷面積(Ⅰ度=日焼けで輸液しないから含まない
※全体表面積(TBSA)の何%受傷したか%TBSAで表す
使用輸液 乳酸リンゲル液(ラクテックなど)
輸液量 Baxter法:受傷後24時間以内の輸液量=4mL×体重(kg)×熱傷面積(%)
(初期8時間で輸液量の半分を投与し、その後16時間かけて残り半分を投与)
大量輸液による浮腫形成や呼吸状態悪化を招くとされ近年以下のものが提唱
輸液調節 上記方法で輸液を開始し、時間尿量など循環動態を参考にして適宜調節する
※大量輸液による低体温に注意し、加温輸液や温風装置など用いること

⑤重症度判定(Artzの基準:アーツの基準)

軽症 ①Ⅱ度熱傷で、熱傷面積15%未満(小児は10%未満)
②Ⅲ度熱傷で、熱傷面積2%未満
外来
中等度 ①Ⅱ度熱傷で、熱傷面積15〜30%
②Ⅲ度熱傷で、熱傷面積2〜10%(顔面、手、足を除く)
病院
重症 ①30%以上の第Ⅱ度熱傷
②顔面、手、足の第Ⅲ度熱傷および10%以上の第Ⅲ度熱傷
③気道の熱傷を合併しているもの
④大軟部組織損傷を伴うもの
⑤骨折、電撃傷、深部化学熱傷
総合病院

顔面熱傷の初期治療

①気道評価 気道熱傷がある場合、気道浮腫で挿管困難になる前に上気道の確保
②眼球評価 眼瞼腫脹になる前に眼科コンサルトし、角膜熱傷や眼内異物がないか確認
③治療
④手術 未記載

手部熱傷の初期治療

①評価 手指の血行障害の評価を行う
②予防 上肢挙上:浮腫の進行予防
③肢位
④手術 未記載

陰部熱傷の初期治療

①尿カテ留置 排尿・排便により創の汚染や感染起こりやすいため
②排便管理
③治療 汚染の洗浄がしやすいように、開放療法を基本とする
④手術 未記載

熱傷の処置

水疱の処置

破損していない水疱 破れていない水疱被膜は温存する
破損・汚染された水疱 破損や汚染された水疱被膜は除去する

減張切開

適応
※特殊例(腹部を含む広範囲熱傷患者への大量輸液で循環不全を起こした場合)
手技

局所外用薬の選択

Ⅰ度 疼痛に対する軟膏を塗布、疼痛発赤は数日で消退するため外用も終了
例)リンデリンVG軟膏
例)エキザルベ軟膏
浅達性Ⅱ度 ワセリン基材の軟膏で創面を保護+非固着性ガーゼ or 抗菌薬含有ガーゼで保護
※非固着性シリコンガーゼ:トレックス、アダプティック、キュティセリン
※抗菌薬含有メッシュガーゼ:ソフラチュール
例)バラマイシン軟膏+ガーゼ保護
例)アズノール軟膏+ガーゼ保護
深達性Ⅱ度 広範囲な深達性Ⅱ度は早期手術を実施。保存加療3〜4週間経過しても上皮化が不良な創面は肉芽創に至る場合があり、手術を検討
壊死組織が厚い場合は除去作用のある外用薬、感染あれば強い抗菌性の外用薬
Ⅲ度 壊死組織をデブリ、自然治癒は創周囲からの表皮増殖を待つしかなく植皮必要
範囲が狭い場合
広範囲な場合

創傷被覆材

使用上の注意 感染徴候が生じた場合は使用を避ける
壊死組織の残存する創面への使用は避ける
保険適応 保険適応となる創面が製品により異なる、使用期間は3週間まで
種類1
種類2

熱傷の手術療法

超早期切除術(即時切除術) 受傷後48時間以内
早期切除術 受傷後5〜7日以内
晩期切除術 受傷後8日以降

Ⅲ度熱傷(ときに深達性Ⅱ度含む)に対して早期創閉鎖のために外科的壊死組織切除と植皮術が適応になる。初回手術で受傷後24時間以内にできるだけ広範囲の壊死切除を行う。

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