浮腫

症候学

浮腫の機序

浮腫:細胞外液のうち組織間液が病的に増加した状態。

原因   全身性浮腫 局所性浮腫
血管静水圧の上昇
(Pc↑)
漏出性 うっ血性心不全腎不全、妊娠、薬剤性(ステロイドなど) DVT、SVC症候群、肺高血圧など静脈閉塞による静水圧上昇
血漿の膠質浸透圧の低下
(πc↓)
漏出性 ネフローゼ症候群、肝硬変、低Alb血症(低栄養、蛋白漏出性胃腸症
間質液の膠質浸透圧の増加
(πt↑)
漏出性 甲状腺機能低下症
(non-pitting edema)
癌転移などリンパ管閉塞による静水圧上昇
血管透過性の亢進
(k↑)
滲出性 薬剤性血管炎、敗血症、特発性浮腫、急性糸球体腎炎 熱傷、蜂窩織炎、血管性浮腫、蕁麻疹、ARDS

浮腫の診察

まず、全身性浮腫か局所性浮腫か確認する。

局所性浮腫

問診 身体所見 検査
深部静脈血栓症 突然、一側性の下肢疼痛 一側性の下肢の発赤・腫脹、ホーマンズ徴候 Dダイマー↑FDP↑
SVC症候群 持続性の浮腫
リンパ管閉塞 持続性の浮腫
蕁麻疹 一過性の浮腫
血管性浮腫 一過性の浮腫

全身性浮腫

問診 身体所見 検査
うっ血性心不全 末梢冷感 心胸郭比↑
腎不全、ネフローゼ症候群、急性糸球体腎炎 早期から両眼瞼浮腫 血中総蛋白↓、尿蛋白、血尿
肝硬変 腹水、クモ状血管腫
甲状腺機能低下症 非圧痕性浮腫 T3↓T4↓
薬剤性浮腫 NSAIDs服用など

【臓器別の浮腫特徴】

※浮腫が顔面と上半身に強いときは上大静脈症候群を考える

部位 その他の特徴
心臓性 下肢に著明 夕方に著明、長期臥床では仙骨部が著明
肝性 下肢に著明 腹水を伴う
腎性 顔面(特に眼瞼)に著明 朝方に著明

浮腫の種類

非圧痕性浮腫 non-pitting edema
(圧痕が残らない)
組織間質にアルブミンやムコ多糖などの蛋白貯留が起こることで生じる。
例:甲状腺機能低下症、リンパ性浮腫
圧痕性浮腫 fast-pitting edema
(40秒未満で戻る)
【浸透圧性浮腫】
アルブミンなどの膠質浸透圧物質の不足により血管内外の浸透圧較差が生じ、血管内の水分が半透膜である毛細血管の中から外へ漏れることで生じる。そのため、浮腫の皮膚を圧迫しても血管内外の圧較差により速やかに浮腫が戻る。
slow-pitting edema
(40~60秒以上)
【体静脈圧性浮腫】
体液貯留ないしは心臓のポンプ機能の破綻により血流がうっ滞し、心基部からの圧力によって生じる。血管内外の浸透圧較差はない。そのため、浮腫の皮膚を圧迫しても回復が遅い。

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