めまい&難聴
浮動性めまい | 回転性めまい | めまいなし | |
伝音性難聴 | ー | ー | 中耳炎 耳硬化症 耳小骨離断 耳小骨低形成 外耳道閉鎖 |
感音性難聴 | Alport症候群 薬剤性 聴神経鞘腫 |
メニエール病 突発性難聴 外リンパ瘻(パチッ) VKH病 |
老人性難聴 騒音性難聴 MELAS |
難聴なし | 大脳・小脳病変(脳梗塞や変性疾患など) | 前庭神経炎 BPPV |
ー |
めまいの概要
めまいの種類
前失神 | 貧血、低血圧、不整脈、感染症などの炎症反応上昇(いずれも眼振なし) |
中枢性めまい | 脳幹・小脳の出血 or 梗塞 |
末梢性めまい | 末梢性めまいを参照 |
中枢性と末梢性の違い
末梢性(半規管 or 前庭) | 中枢性(脳幹 or 小脳) | |
割合 | 約90% | 約10% |
垂直眼振 | × | ◎(稀) |
水平眼振 | ◎一方向性眼振 | ◎両側方視眼振 |
回旋眼振 | ◎ | ○(小脳) |
症状 | 回転性めまい:ぐるぐる | 浮動性めまい:ふわふわ、ぐらぐら |
持続時間 | 徐々に改善する | 改善しない |
耳鳴・難聴 | ある場合がある | ない |
Romberg徴候 | 陽性 | 陰性 |
末梢性めまい
蝸牛症状:耳鳴り、耳閉感、難聴
疾患 | めまい持続時間 | めまいの誘因 | 蝸牛症状 |
(起立性低血圧) | 1分以内(眼振なし) | 起立・立位 | なし |
BPPV | 1分以内 | 頭位変換 | なし |
突発性難聴 | 数時間(1回のみ) | めまいを伴わないこともある→ | あり |
メニエール病 | 数十分〜8時間(反復性) | 蝸牛症状の数時間後から発症 | あり |
前庭神経炎 | 数日〜1週間程度 | 約30%に先行感染あり | なし |
薬剤性 (第8神経障害) |
持続性 | アミノグリコシド系、ループ利尿薬、シスプラチン投与 | あり |
聴神経腫瘍 | 持続性 | めまいを伴わないことが多い | あり |
めまいの診察
ABCD
AB | ー |
C | 血圧低下:ACSや出血の可能性 血圧上昇:脳卒中の可能性 血圧左右差:大動脈解離の可能性 心拍数:徐脈は徐脈性不整脈、Afは脳梗塞の可能性 |
D | 麻痺は脳卒中の可能性 |
前失神・中枢性の除外
麻痺 | 麻痺あればABC確認後に頭部CT |
前失神 | ①バイタルサインの異常+眼振なし ②卒倒感(倒れそうな感覚)の有無 「立ちくらみ」「目の前が真っ暗になる」「血の気が引く」「気が遠くなる」 前失神そうであれば、失神の原因(不整脈、A解離、出血など)検索→失神へGO |
眼振 | <フレンツェルメガネ装着前> 自発眼振:中枢性、前庭性 注視誘発眼振(正中から30度くらいで固定):中枢性の可能性 <フレンツェルメガネ装着後>末梢性眼振は注視により抑制されるため ※メガネがない場合は無地の壁や白紙をなんとなく見てもらう 自発眼振:前庭障害による方向固定性眼振 BPPVを疑う場合:安静時は眼振なし、頭位変換時に方向交代性眼振 |
中枢性 | ①突然発症か?発症時の姿勢は? 頭を動かしていないのに突然生じためまいは中枢性 or 前庭神経炎の可能性 特定の頭位でめまいが誘発されるのはBPPVの可能性 ※ただし、頭位変換で症状が増悪するのは中枢性 or 前庭神経炎の可能性 ②めまいの持続時間は?(悪心など他の症状の時間は含めない) 安静にしていても持続するめまいは中枢性 or 前庭神経炎の可能性 (ただし、TIAの場合は一過性めまいとなる) 逆に頭位を動かさず静止したら1〜2分でめまい消失する場合はBPPVの可能性 →BPPVを除外し、持続性めまいにはHINTSを行う! ③神経学的所見(脳幹・小脳の血流を担う後方循環系の問題で生じる) 脳幹梗塞/出血:頭痛、複視、眼球運動障害、構音障害、嚥下障害、麻痺・感覚障害 小脳梗塞/出血:構音障害、体幹失調・歩行障害(指鼻指・膝踵試験、回内回外試験) Wallenberg症候群:瞳孔不同、カーテン徴候、交代性の温痛覚障害(爪楊枝かアル綿を用いて顔面の左右差、四肢の左右差があるか確認) 上記症状が一過性の場合は椎骨脳底動脈血流不全症(VBI)を疑う ※椎骨脳底動脈血流不全症(VBI):一過性に椎骨Aや脳底Aの血流が減少するTIAでめまいが生じるもので、高齢者のめまいの原因として多い。 |
HINTS |
HINTSとは、急性前庭症候群(AVS)の場合に前庭由来と中枢由来を区別する方法。 中枢性なら、脳血管障害の可能性があり、CTとMRIを撮像する。 前庭由来:前庭神経炎、メニエール病 中枢由来:脳血管障害 ※AVS:急性発症、重度の持続性めまい、自発眼振、姿勢の不安定性を認める病態 |
HINTS plus
中枢性 | 前庭神経炎 | |
head impulse test(HIT) | 目線が鼻から外れない(陽性) | 目線が鼻から外れる(陰性) |
眼振(N) | 注視方向性眼振(陽性) | 方向固定性水平眼振 |
眼の斜偏位(T) | あり(陽性) | なし |
難聴(plus) | あり(陽性):AICA梗塞 | なし |
【実施方法】
head impulse test (正常でも陽性) |
臥位になり、検者の鼻を見てもらい、頭を素早く回転させる。 例:頭を患者からみて右回転させ、目が回転した側についていった場合、右の前庭神経炎と考えられる。 |
眼振 (Frenzelメガネ装着) |
頭を動かさず目だけでペンを追ってもらう。正中からゆっくり左右30度くらいまで動かし、注視させる。注視した方向に眼振があれば注視方向性眼振、注視した方向に関係なく一方向であれば方向固定性眼振。 |
test of skew deviation(斜偏位) | <ペンライト法> 眼前50cmからペンライトで照らし、右目が下方・左目が上方に偏位があれば右脳幹梗塞が考えられる。 <カバーテスト> 検者の手で片目ずつ交互に目を隠すと、病側は手を離した瞬間正中に戻る動きが見られる。ただし斜視がある場合は偽陽性となる。 |
【HINTSの結果より】
1つでも陽性になれば、中枢性としてCT→MRIを実施する。MRIが陰性であっても48時間後のフォローアップする必要がある。
BPPVか否かの診察
AVSが否定的であれば、BPPVの診察を行う。
BPPVの約70%が後半規管型、残り約30%が外側半規管型である。右耳に生じやすい。BPPVの30%は再発する。
バイタルサイン | 基本、普段と大きく変わらない |
持続時間 | 1回のめまいが1分以内に軽快(悪心など他の症状の時間は含めない) |
頭位変換 | 頭位変換後数秒して回転性めまいが出現、同じ姿勢でいると症状が1分以内に軽快 |
後半規管に耳石が迷入した場合 (耳たぶに耳石→耳の形に沿って耳石を移動させると想像) |
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Dix-Hallpike眼振誘発テスト | ①Frenzelメガネ装着し、座位にして、右45度に向かせ、1、2の3で右下懸垂頭位に寝かせる ②眼振を観察 ・めまい+右方向への回旋性眼振→右後半規管型 ③よくわからなった場合は座位に戻して、再度眼振を観察 ・反対向きの回旋性眼振→右後半規管型 |
Epley法 | Dix-Hallpikeで後半規管型と診断したら実施 各段階で眼振が止まるまで頭位を保持(1分程度)することが味噌 ①Dix-Hallpikeの②の後、頭をゆっくり90度回旋させ健側下懸垂頭位へ ②体幹を仰臥位から健側下側頭位へ、頭は動かさず床を見る ③座位に戻る 改善しなければもう一度ならトライしても良い |
外側半規管に耳石が迷入した場合 | |
supine head-roll眼振誘発テスト | ①Frenzelメガネ装着し、枕を入れた状態で仰臥位となり、右を向かせる ②眼振を観察 ・めまい+右方向への回旋性眼振→右外側半規管型(半規管結石型) |
Vannucchi法 | 健側下頭位を保持する方法。患者に楽な方向で側臥位で寝てもらう。 右外側半規管型なら、左側臥位で症状軽快。 |
その他のめまい鑑別
突発性難聴 | 突然の耳閉感・難聴にめまいを伴う→早急にステロイド治療が必要 |
前庭性片頭痛 | 片頭痛の既往がある人の繰り返すめまい、頭位変換によってめまい誘発 |
薬剤性めまい | ①QT延長:抗不整脈薬、抗菌薬、制吐薬、抗精神病薬 ②低血糖:糖尿病薬 ③出血:抗血小板薬、抗凝固薬 ④血圧低下:降圧薬、利尿薬 ⑤眠気:BZ系、抗コリン薬、抗ヒスタミン薬 |
PPPD | 慢性の浮遊感、急性めまいエピソードが先行 |
初期検査
心電図 | 前失神を疑う場合 |
血液検査 | PT、APTT |
頭部単純CT | 神経学的所見を伴う場合、HINTS陽性の場合 |
頭部MRI | HINTS陽性の場合 |
対症療法
救急外来 | ・生食100mL+アタラックス-P 25mg1A+プリンペラン10mg1Aを点滴 ・炭酸水素Na(メイロン)7% 1A(20mL)を静注する場合もある |
帰宅時 | <末梢性めまい> ・ベタヒスチン(メリスロン®)6mg 6錠/分3 ・ジフェニドール(セファドール®)25mg 3錠/分3 ・ジフェンヒドラミン(レスタミン®)10mg 1錠頓服 1日3回まで <嘔気予防> ・メトクロプラミド(プリンペラン®)5mg 1錠頓服 ・ドンペリドン(ナウゼリン®)60mg 坐薬 |
Disposition
頭部CT/MRIを実施しても中枢性めまいが無いとは言えない。そのため、歩けないめまいは入院。
難聴
難聴:30dB以上の音が聞こえない状態。
めまいを起こすものは太字で示す。
耳毒性物質による難聴は不可逆性なので、薬剤使用中(アミノグリコシド系、バンコマイシン、シスプラチンなど)は定期的に聴力検査を実施し、早期発見が重要である。
伝音難聴 | 外耳性 | 【片側が多い】耳垢塞栓、鼓膜穿孔 |
中耳性 | 【片側が多い】中耳炎【両側が多い】耳硬化症などの耳小骨疾患 | |
感音難聴 | 内耳性 | 【片側が多い】メニエール病、突発性難聴、外リンパ瘻、ムンプス性内耳炎、Ramsay Hunt症候群(耳帯状疱疹)など 【両側が多い】老人性難聴、騒音性難聴、耳毒性物質、Treacher Collins症候群、風疹やCMVなどのウイルスによる内耳炎など ※内耳性は聴覚補充現象が陽性 |
後迷路性 | 【片側が多い】聴神経腫瘍(ABRの潜時が延長)、老人性難聴 |
難聴の鑑別
伝音難聴 | 感音難聴(内耳性) | |
Weber法 | 患側へ偏位 | 健側へ偏位 |
Rinne法 | 陰性(気導<骨導) | 陽性(気導>骨導) |
気導骨導差(A-B gap) | + | - |
聴覚補充現象※ |
- | + |
疾患例 |
<鼓膜・外耳・中耳の疾患> 耳垢塞栓、外耳道閉鎖 中耳炎 耳硬化症 外傷性耳小骨離断 耳小骨奇形 |
老人性難聴、騒音性難聴 薬物性難聴 メニエール病(片側) 突発性難聴(片側) 耳毒性薬物による難聴(両側) 内耳梅毒(両側) |
※聴覚補充現象(リクルートメント現象):聴力閾値を超えた途端、急激に大きい音に感じる現象。内耳有毛細胞の障害と言われており、内耳性難聴では陽性となる。
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