精神科(不安症、強迫症、PTSD、愛着障害)

精神科

不安症群

不安症の種類

パニック症 何の前触れもなく突然予期しないパニック発作反復して生じる病態。再びパニック発作が起こるのではないかという予期不安を抱く。パニック症の半数が広場恐怖症を合併する。うつ病の併存が多い。
恐怖症 恐怖の対象から回避できればパニック発作も回避できる
広場恐怖症 すぐに逃げ出すことや助けを求めることができない状況や場所(公共交通機関、閉所、人混みや人の列、広い場所、単独外出から2つ以上)に恐怖を感じてパニック発作が生じる病態。そのような状況や場所を回避するようになる。
社交不安症
(=対人恐怖症)
所謂、極度のあがり症。低い自己評価+恥をかくことに対する恐怖があり、そのような状況を回避しようとする。青年期に好発し、赤面、発汗、震えなどを生じる。LSAS-Jで社交不安症の程度を評価できる。
限局性恐怖症 所謂、〜恐怖症のこと。特定の状況や対象(高所、閉所、昆虫など)に対し、著しく恐怖を感じ、回避行動をとろうとする。
全般性不安症 所謂、極度の病的な心配性。色々なことが過剰に心配になり、それがほぼ毎日6ヶ月以上続く病態。不安の対象は、他の不安症のように限定されない。うつ病などの他の精神疾患を合併しやすい。女性に多い。
分離不安症 親などの保護者から離れることに過剰な不安が生じる状態。
選択性緘黙 特定の生活領域のみ自発的な発話が困難になる状態。3歳前後から発症する。

不安症の治療

①認知行動療法 良くない結果が起こる確率を過大評価するため、避けている不安な状況にできるだけ長く直面して慣れさせる曝露療法を行う。曝露の最中は①他人の行動に注意を向けること、②不安から逃れたり不安を抑え込もうとしないこと
②薬物療法 補助的にBZ系頓用、SSRIなどを使用

パニック発作

病態 パニック発作とは、突然始まり数分以内にピークに達する、激しい恐怖または強烈な不安感を伴う動悸、発汗、息切れ、震え、窒息感、胸痛、悪心、めまい、寒気などの自律神経症状、今にも死んでしまうのではないかという恐怖などを生じる症状。症状は10〜20分で治る。パニック発作はパニック症だけでなく、他の不安症群でも起こる
【パニック発作が生じる障害】
①パニック症
②広場恐怖症
③社交不安症
④PTSD
⑤分離不安症
⑥限局性恐怖症
治療 まずは身体疾患を除外した上で治療を行う

強迫症及び関連障害群

病態・症状
強迫症 強迫観念「そう考えずにはいられない」・強迫行為「〜せずにはいられない」が存在し、そのために時間の浪費や社会的機能の障害を生じる病態。患者が不合理性を自覚している。Y-BOCSを用いて重症度を評価する。うつ病やTourette症候群を合併する場合もある。
醜形恐怖症 自身の容貌上の欠点に囚われる病態
ため込み症 ため込んだ物を捨てるのが苦痛に思う病態
抜毛症 主に頭髪を抜くことをやめられず苦痛を感じる。利き腕側に偏って脱毛、手の届きやすい前頭部に脱毛斑が多い、女性に多いという特徴がある

強迫症の治療

①認知行動療法 強迫症は特定の侵入思考に対して、それが良くない結果をもたらすものだと過大評価する。そのため、不安に直面した際に強迫行動を行わず耐える。
②薬物療法 補助的にSSRIなどを使用

醜形恐怖症(身体醜形障害)

病態 実際には問題にならない程度の外見の問題に囚われて、または全く問題など存在しないのに自分は醜いのではないかという強迫観念にとらわれる疾患。
症状 初期:養子に対する違和感があり、徐々に容姿への不快感が増大
発症:耐えがたいほど醜いという自己評価
その他:1日に何時間も鏡で自分を見る、欠点を隠す過度な身づくろい、外出を避ける
美容関係:美容に多大なお金をかける、整形依存
治療 美容整形に対する効果は薄い
強迫症に準じた治療を試みる:認知行動療法・SSRI少量投与から開始

PTSD・ASD

病態・症状 対処法
PTSD
(心的外傷後ストレス障害)
生命を脅かすような極限状態を直接体験または目撃し、1ヶ月以上の潜伏期間を経て発症する。症状は①再体験(フラッシュバック・侵入的回想、悪夢)②回避③感情麻痺(離人感)④過覚醒(不眠、集中困難)が1ヶ月以上続く。自殺企図も多いため注意。 認知行動療法(PE療法)
眼球運動による脱感作・再処理法(EMDR)
ASD(急性ストレス障害) 出来事の直後(通常3日以内)より生じ、1ヶ月以内に改善する。改善しない場合はPTSDに移行する。 通常48時間程度で自然軽快

愛着障害

病態 ネグレクトなどの虐待、親との離別や死別などが背景にあり、大人につらい気持ちを受け止められ慰めてもらう育ち方をしてこなかった場合、ネガティブな感情の処理が困難なまま育ち、感情調整に困難が生じ、自己肯定感が育たないため肯定的な将来を期待できず、否定的な評価に敏感となり誉められても心に届きづらくなるなどの問題を生じる。
分類 DSM-5-TRには愛着障害という診断はなく、反応性アタッチメント症と脱抑制型対人交流症として扱われている。
症状 【反応性アタッチメント症】次のうち2つ以上該当
・人との関わりを持とうとしない
・楽しい、幸せなどの要請の感情が乏しい
・大人といる時にイライラ、悲しそう、恐れる
・これらが5歳以前から認められる
【脱抑制型対人交流症】次のうち2つ以上該当
・見慣れない大人に近づき話すことにためらいがない
・言葉や身体的接触での交流が過度に馴れ馴れしい
・慣れない場所で養育者から離れる際に養育者を振り返って確認しようとしない
・見慣れない大人についていくことにためらいがない
【アダルトチルドレン】
親としての機能に問題のある親を持ち、混乱した家庭を支え、所謂「いい子」として育ち、大人になっても生きづらさを抱える人のこと。過度に自責的に考えず、親のせいだと過度に他責的にも考えず、あの時はしょうがなかったと思えることを目指す。
【ヤングケアラー】
精神障害や身体的問題なのでケアを要する親のもとで暮らし、親の代わりに家事をこなし親の世話して親の心を支える役割を負わざる得なかった人。子供の頃の遊びや勉強の時間を奪われ、甘えたり、情緒的に支えられたりする経験が乏しくなり、成人しても自分の辛さの把握を困難に感じ、人に頼ることが苦手になり、自己否定や劣等感などが生じる。

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