結核菌(Mycobacterium tuberculosis)

微生物学

抗酸菌の特徴

通性細胞内寄生菌(自己増殖能はあるが、マクロファージなどの細胞内で増殖する←液性免疫で排除できない)。抗酸菌は偏性好気性で酸素がなければ死滅するため、類上皮細胞が菌体を閉じ込めて肉芽腫を形成する。

細胞壁に多量のろう脂質(ミコール酸)を含むためグラム染色されない。また、Ziehl-Neelsen染色で塩酸で脱色されず赤色に染まるため抗酸菌と名付けられた。ミコール酸を染める蛍光染色もある。

肺結核

2類感染症。結核の85%以上が肺結核。毎年2万人弱が新規感染し、2000人弱が死亡している。再興感染症。

病態

一次結核
⇨感染後に約10%発症
結核菌は下肺野の肺胞に到達して増殖するが(飛沫核感染)、肺でマクロファージに貪食されリンパ節に移行する。リンパ節でTh1が分化し、病巣部にマクロファージが集積し肉芽腫を形成する。肉芽腫の中心は乾酪壊死し、マクロファージの一部は類上皮細胞に分化し、類上皮細胞が融合したラングハンス巨細胞も現れて結核菌を封じ込める。乾酪壊死した部分は小さければ石灰化、大きければ空洞化する。
多くは発症しないが、乳児・高齢者・研修医などの免疫力の弱い者は封じ込めに失敗して発症する。
二次結核 症状のない潜在性結核は免疫力が低下したときに再燃して発症する。酸素分圧が高い上肺野に好発する
結核菌を保菌しており、ステロイドや免疫抑制薬を服用している場合を潜在性結核感染症という。

症状

長引く咳  
血痰  
長引く発熱  
④その他 全身倦怠感、体重減少、寝汗(盗汗)など

検査

①画像検査 胸部X線・CT:浸潤影、小斑点状影、空洞形成に伴う透亮像
血行性に転移し肺野全体に小結節影を認める場合を粟粒結核という。
【粟粒結核の検査法】
①眼底検査:肉芽結節を認める(陽性率は20%以下)
②肝生検:結核結節を認める(陽性率は80%以上)
③骨髄生検:菌の検出(陽性率は60%)
④TBLB:結核の病理組織(陽性率は80%以上)
②血液検査 結核性胸膜炎の滲出性胸水ではリンパ球優位の白血球増加が認められる。
③喀痰塗抹染色また生検検体染色 喀痰塗抹染色、または気管支鏡下肺生検から得た検体をZiehl-Neelsen染色し、陽性ならガフキー陽性=抗酸菌感染症となる。約30分で判明。
(結核の可能性があるためN95マスク着用!患者はサージカルマスク着用し陰圧室へ収容)
※喀痰が採取できない場合の代用検査として胃液を検体とすることがある
④PCR 約1日で判明。陽性の場合は確定診断となり入院、医師は直ちに保健所に届出。
⑤培養検査 薬剤感受性を確認するため患者から3日間連続喀痰を採取し(3連痰)、小川培地(約2ヶ月)か液体培地(約1ヶ月)で培養を行う。
補助診断 【IGRA(INF-γ遊離試験)商品名:T-SPOT、QFT-Plus】
潜在性結核菌感染症の確認方法。結核に曝露されてからIGRA陽転化するまでに2ヵ月程度必要。
患者の血清に結核菌特異的タンパク抗原を作用させ、T細胞が産生するINF-γの量を測定する。現在感染もしくは過去に感染していればT細胞がINF-γを産生する。そのため、BCGやNMTでは陽性とならず特異度が高い。この検査はステロイド投与前の検査(潜在性結核)や接触者検診で用いる。

治療

多剤併用療法を行い、薬剤耐性菌予防のためDOTS(直接服用確認療法)を1日1回行う。結核菌は細胞壁がろう脂質で構成され薬剤浸透性が低いため6ヶ月以上の服薬が必要となる。

結核治療薬のRESIP(レシピ)↓(EBかSMどちらか一方で良いため4剤)

薬剤 略名 投与期間 副作用 機序
リファンピシン RFP 6ヶ月 血小板低下、肝障害 RNAポリメラーゼ阻害
エタンブトール EB 2ヶ月 視力低下 不明
ストレプトマイシン SM 2ヶ月 聴力低下腎障害 蛋白合成阻害
イソニアジド INH 6ヶ月 末梢神経炎肝障害 ミコール酸合成阻害
ピラジナミド PZA 2ヶ月 肝障害、高尿酸血症 不明

イソニアジドはVB6に構造が似ておりVB6不足による末梢神経炎を起こすため、ピリドキサールを予防投与する。

潜在性結核感染症(IGRA陽性+今後ステロイドや免疫抑制剤を使用する予定の患者)に対してはイソニアジド単剤を6~9か月予防投与する。

予防

BCGワクチンは小児には効果があるが、成人の肺結核に対する効果は不十分である。そのため、生後1歳未満児へBCGを単回接種し、一次結核を予防する。

●ツベルクリン

結核菌の一部のタンパクを精製したものを皮内接種し、ツベルクリン反応があれば結核菌抗原を検出できる。しかし、NMTでも陽性となることがあるのが欠点。

肺外結核

肺外結核:隔離不要

気管結核

横断面で気管に凹凸があるのが特徴

リンパ節結核

肺門リンパ節を除くリンパ節結核を指す。頸部リンパ節に好発。

結核性胸膜炎

肺結核の次に多い。発熱、胸痛、胸水貯留など。

結核性髄膜炎

脳神経外科の髄膜炎を参照。

皮膚結核

【結核菌感染により生じる皮膚病変】

真性皮膚結核 病変部に結核菌が証明されるもの
結核疹 アレルギー反応が主体で、結核菌が証明されにくいもの

【代表的な皮膚結核の分類】

  尋常性狼瘡 皮膚疣状結核 皮膚腺病 硬結性紅斑
病型 真性皮膚結核 真性皮膚結核 真性皮膚結核 結核疹
好発部位 顔面、頸部 四肢末端、殿部、関節背面 頸部、腋窩 中高年女性の下腿
皮膚所見 赤褐色小丘疹→増大して浸潤性紅色局面、掻痒なし 赤褐色丘疹→辺縁疣状の紅斑性局面 皮下結節
→冷膿瘍
→瘻孔形成
皮下結節を伴う
びまん性隆起性紅斑
その他の特徴 稀に有棘細胞癌 ツ反強陽性

尿路結核

病態 結核菌が血行性に腎臓に感染し、その後下行性に尿管や膀胱に感染する。
【腎結核】乾酪性壊死巣を形成し、進行すると結核性膿腎症や漆喰腎(しっくいじん)を認めることがある。
【膀胱結核】瘢痕萎縮をきたす。
症状 尿管狭窄症状、膀胱症状(頻尿・排尿痛・残尿感)、腎症状はないことが多い
検査 【尿検査】酸性無菌性膿尿が特徴
【抗酸菌染色】赤染の桿菌(+)
治療

性器結核

女性:卵管や子宮内膜を侵し、不妊や下腹部痛、月経異常の原因となる。
男性:精巣や前立腺などが侵される。

腸結核

病態 結核菌が腸粘膜下層のリンパ濾胞に入り、乾酪性肉芽腫を形成する炎症性疾患。
病変は回盲部に好発
続発性:肺結核病巣からの痰と共に嚥下されて腸粘膜に病巣を形成
原発性:肺病変はなく腸粘膜に病巣を形成
症状 下痢、発熱、右下腹部痛を呈することが多い
検査 【結核菌検査】
ツベルクリン反応(+)、IGRA(+)、PCRで結核菌(+)、生検標本培養
【生検】
ラングハンス巨細胞を伴う乾酪性肉芽腫、粘膜下層〜全層性の病変
【画像検査】
内視鏡・注腸造影:輪状潰瘍輪状狭窄、瘢痕性の腸管短縮、偽憩室形成
治療 抗結核薬

結核性脊椎炎(脊椎カリエス)

病態 結核菌の椎体への血行性感染。腰椎、胸椎に好発。
乾酪性壊死となり、発熱・熱感を伴わない結核性膿瘍(冷膿瘍)を作り、さらに腸腰筋など抵抗の少ない組織内を移動して流注膿瘍を形成する。
症状 【Pottの三徴(進行すると出現)】
①亀背
②冷膿瘍
③脊髄麻痺
検査 【画像検査】
単純X線:椎体の骨萎縮、椎間板間の狭小化
治療 抗結核薬

関節結核(結核性関節炎)

病態 結核菌が股関節や膝関節に単関節炎として生じる。
症状 ①小児の場合、夜泣き、随意跛行
②関節痛
③関節拘縮:全ての方向への運動性が制限される
検査 【画像検査】
単純X線:初期に骨のびまん性萎縮、進行期は関節面の不鮮明化、骨性強直
治療 抗結核薬

コメント

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