輸液製剤

薬理学

1日の水分の出納

In  
飲水・食事
輸液量 30mL/kg/日
Out  
緊急時 出血
尿 1000〜1500mL
不感蒸泄 15mL/kg/日(皮膚:肺=1:1)
発汗 室温28℃以上 or 体温38℃以上で約500mL/日 発汗が持続する場合は約1000〜1500mL/日
その他 便100mLなど

経口補水製剤

経口補水療法の適応:中等症までの脱水 経口補水液はスポーツドリンクや果汁と比較して、以下が特徴である。 ①Na濃度が高く(35〜75mEq/L) ②糖濃度は低い(1.35〜2.5%) ③浸透圧も低い(200〜250mOsm/L) ④Kは維持量程度(20mEq/L)含まれる

商品名 Na(mEq/L) K(mEq/L) Cl(mEq/L) 炭水化物(%) 浸透圧(mOsm/L)
OS-1 50 20 50 2.5 270
アクアライトORS 35 20 30 4 200

輸液の基礎

輸液の移動

成人の体液の約60%は水で、そのうち40%が細胞内液、15%が組織間液、5%が血漿8:3:1やさいの法則)である。ただし、新生児は細胞液が多く(40%)、高齢者は細胞液が少ない(30%)ため両者とも脱水が起こりやすい

摂取・投与した水分は浸透圧差(低→高)によって血漿→組織間液→細胞内液の順に拡散していく。具体的には、血漿中にはアルブミンなどの高分子が存在し、組織間液⇔血漿の体液の移動を規定する(膠質浸透圧差)。また、細胞内外の電解質の違いにより、細胞内⇔組織間液の体液の移動を規定する(血漿浸透圧差)。

輸液療法の目的

維持輸液 経口摂取が不十分の場合、体液バランスを維持するために行う
是正輸液 体液や電解質の欠乏がある場合、不足分を補充するために行う
  是正輸液では以下の3点を考慮する。 ①どこが不足しているか?(細胞内or外) ②何が不足しているのか?(水or電解質or糖) ③どの程度不足しているのか?

【輸液で覚えておくべき量】

1日に投与する輸液量 ●30mL/kg/日(体重50kgであれば1500mL必要)
【小児の場合はHolliday-Segar法】
病的な場合は著しい脱水を除いて以下の2/3程度を投与するのが安全
10kg未満:100×体重(kg)
10〜20kg:1000+50×(体重(kg)-10)
20kg以上:1500+20×(体重(kg)-20)
Na維持量/日 Na:60-150 mEq
塩分換算:6〜8g/日(NaCl 1g=17 mEqに相当すると暗記!)
K維持量/日 K:40-100 mEq
Ca維持量/日 Ca:5-10 mEq
Mg維持量/日 Mg:8-24 mEq
P維持量/日 P:10-30 mmol

【ルート穿刺部位】

末梢静脈路 肘正中皮静脈など
高浸透圧点滴を行う場合は血管痛を生じうるため末梢投与×
中心静脈路 内頸静脈、大腿静脈、(鎖骨下静脈:気胸・動脈穿刺・胸管穿刺のリスク高い)

輸液製剤の分類

晶質液:電解質や糖を含む輸液(血漿浸透圧を有する輸液)

膠質液:電解質や糖に加えて高分子も含む輸液(膠質浸透圧を有する輸液)

電解質輸液製剤
(晶質液)
単一製剤、複合製剤(等張:生食、低張:1〜4号)
低張電解質輸液(細胞外+内液補充)
等張電解質輸液(細胞外液補充)
②栄養輸液製剤
(晶質液)
単一製剤(糖、アミノ酸、脂肪)、
複合製剤(PPN、TPN)
③特殊輸液製剤
(膠質液)
血漿増量剤、アルブミン製剤 作用時間は2〜3時間のため、輸血までのつなぎとして使用する

単一電解質輸液製剤(補正用電解質製剤)

Na製剤

一般名 先発名 特徴
塩化Na 塩化Na補正液 体内の水分・電解質の不足に応じて電解質補液に添加して使用

K製剤

【K製剤投与時のルール】

経口 60mEq/L/日以下で投与
静注 希釈して(40mEq/L以下の濃度)、ゆっくり投与し(20mEq/h以下)、大量に投与しない(100mEq/日以下)

一般名 先発名 特徴
塩化K KCL補正液 必ず希釈して40mEq/L以下にして使用
塩化K徐放剤 スローケー錠 徐放性により胃腸障害軽減
グルコン酸K グルコンサンK細粒/錠  
L-アスパラギン酸K アスパラカリウム散/錠/注/キット 組織移行性、体内利用性良好
K+Mg合剤 アスパラ配合錠 L-アスパラギン酸K+マグネシウム

Mg製剤

一般名 先発名 特徴
硫酸Mg 硫酸Mg補正液1mEq/mL  

Ca製剤

P製剤

一般名 先発名 特徴
リン酸二K  
リン酸水素Na リン酸Na補正液0.5mmol/mL  

Cl製剤

一般名 先発名 特徴
塩化アンモニウム  

アシドーシス補正用製剤

一般名 先発名 特徴
炭酸水素Na メイロン 8.4%は1mL中に1mEqのHCO3を含むため計算が容易
乳酸Na 乳酸Na補正液1mEq/mL  

複合電解質輸液製剤

【代表的な複合電解質輸液製剤】

  別名 Na K Cl 乳酸 Glu 適応
生理食塩水 細胞外液 154 0 154 0 0% 低・等張性脱水、ショック、腎前性AKD
喪失した血液量=細胞外液を補充
乳酸リンゲル 細胞外液 130 4 109 28 0% 低・等張性脱水、ショック、腎前性AKD
喪失した血液量=細胞外液を補充
1号液 開始液 90 0 70 20 2.6% Kを含まないため病態不明の脱水など
生理食塩水の3/5の張度に調整
3号液 維持液 35 20 35 20 4.3% 1日に必要な水分&電解質を維持できる液
喪失した尿量=3号液を補充(1mL/kg/hr)
5%Glu液 自由水※ 0 0 0 0 5% 高Na血症、高張性脱水

※自由水=細胞内外を自由に通過できる水

等張電解質輸液(細胞外液補充液)

適応 低・等張性脱水、腎前性AKD、ショックなど
乳酸は肝で代謝されHCO3を生じ、アシドーシスを是正する。
酢酸は筋肉など全身で代謝されHCO3を生じ、アシドーシスを是正する。
重炭酸はHCO3そのものを添加し、アシドーシスを是正する。
注意 輸液量の1/4までしか血管に留まらない(3/4は組織間に移行)ため、それ以上は膠質液投与を考慮する。
細胞外液を多く投与する場合、うっ血性心不全、胸水、腹水に注意
【生理食塩水】
pH7.0のため大量投与でアシドース、低K血症に注意
Na含有量が多いため浮腫、肺水腫、高血圧、心不全に注意
分類 商品名
生理食塩水 生理食塩水(各社)
リンゲル液 リンゲル液「オーツカ」など(生理食塩水を細胞外組成に近づけたもの)
乳酸リンゲル液 ラクテックなど(血液アルカリ化のため乳酸添加)
  ソルラクトS輸液など ソルビトール加!
  ソルラクトD輸液など ブドウ糖加!
  ポタコールR輸液など マルトース加!
酢酸リンゲル液 ヴィーンF輸液など(血液アルカリ化のため酢酸添加)
  ヴィーンD輸液など ブドウ糖加!
  フィジオ140輸液 1%ブドウ糖加!
重炭酸リンゲル液 ビカーボン輸液(血液アルカリ化のためHCO3を直接添加)
  ビカネイト輸液

低張電解質輸液

自由水:細胞外液(生食水)=○:1の割合で混合(○号液)

例)3号液を1L輸液すると、自由水750mLは均等に細胞内に500mL、細胞外に250mLに分布し、細胞外液はそのまま250mL分布する。結果、細胞内外に500mLずつ分布する。

分類 商品名
1号液 ソリタT1号輸液、【後】ソルデム1輸液、リプラス1号輸液
(開始液) KN1号輸液、【後】デノサリン1輸液
2号液 ソリタT2号輸液
(1号液+K) KN2号輸液
  【後】ソルデム2輸液
3号液 10%EL-3号液、【後】ソルデム3PG輸液
(維持液) ソリタT3号輸液、【後】ソルデム3A輸液など
  ソリタT3G号輸液、【後】ソルデム3AG輸液
  リプラス3号輸液
  KN3号輸液、【後】ソルデム3輸液
  フルクトラクト注
  フィジオゾール3号輸液、【後】アステマリン3号MG輸液
  クリニザルツ輸液
  EL-3号輸液
  アクチット輸液、【後】アクマルト輸液など
  アルトフェッド注射液
  ソリタックスH輸液
  トリフリード輸液
  KNMG3号輸液
  フィジオ35輸液、【後】グルアセト35注
  ヴィーン3G輸液、【後】アセテート維持液3G「HK」、アセトキープ3G注
4号液 KN4号輸液、【後】ソルデム6輸液
(3号液ーK) ソリタT4号輸液
低張液 フィジオ70輸液

内服用複合電解質

先発名 特徴
ソリタT配合顆粒2号 Na 60, K 20, Mg 3, Cl 50, PO4 10M,クエン酸 20
ソリタT配合顆粒3号 Na 35, K 20, Mg 3, Cl 30, PO4 5M,クエン酸 20

膠質液

血漿増量薬

一般名 先発名 特徴
デキストラン 低分子デキストランL  
ヒドロキシエチルデンプン70000 ヘスパンダー
サリンヘス
血圧保持、血液粘度低下作用あり
【利点】頭蓋内出血に使用可能
【欠点】敗血症時の血圧低下には原則禁忌
ヒドロキシエチルデンプン130000 ボルベン 【利点】分子量7万製剤に比べて効果の持続が期待できる
【欠点】乏尿、無尿、頭蓋内出血には禁忌、敗血症時の血圧低下には原則禁忌

アルブミン製剤

アルブミン製剤血管内浸透圧を上昇させ水分を保持する。5%と25%どちらを投与しても増加する血管内Volumeは同じになる。

適応 出血性ショックなどの急性の低蛋白血症など
5%製剤 血液と同じ濃度であり、投与量がそのまま全て血中にとどまる。
25%製剤 血管内浸透圧が上昇するため、間質から水分を引き込むことができ、結果として血管内Volumeを増やすことができる

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