胸部X線
骨軟部組織→胸膜・横隔膜→縦隔・肺野の順に読影する
過去の画像、左右差を必ず比較すること!
原理
【X線のパラメータ】
X線透過性 | X線写真での色 | 物質 |
低 | 白 | 骨(密度が高い、Caを多く含むため) |
↓ | ↓ | 筋肉・軟部組織 |
↓ | ↓ | 水 |
↓ | ↓ | 脂肪(密度が小さいため) |
高 | 黒 | 空気 |
胸部X線のシルエットサインと心陰影
シルエットサイン:肺以外の臓器にできる線に隣接して病変ができるとその線が消える現象
シルエットサインが消失(シルエットサイン陽性)いる場合は、その部位に病変がある
シルエットS陽性部位 | 病変存在部位 | シルエットS陽性部位 | 病変存在部位 |
左第1弓:大動脈弓 | 左:S1+2 | ||
右第1弓:上大静脈 | 右:S3 | 左第2弓:肺動脈 | 左:S3 |
左第3弓:左房 | 左:S3 | ||
右第2弓:右房 | 右:S5(S4) | 左第4弓:左室 | 左:S5(S4) |
右横隔膜 | 右:S8 | 左横隔膜 | 左:S8 |
下行大動脈中部外側縁 | 左:S6 | ||
下行大動脈下部外側縁 | 左:S10 |
【心陰影の変化】
心胸比 | (CTR) | =心臓の最大幅/胸郭の最大幅 |
左房拡大 | 後→上→右→左の順で拡大する | |
後方拡大 | 側面像などで確認 | |
上方拡大 | 左主気管支を挙上し、気管分岐角が開大する | |
右方拡大 | 右第2弓が二重に見える(二重陰影) | |
左房拡大 | 左第3弓の突出は最終ステージ(心腰部の陥凹消失) | |
右房拡大 | ー | 単独で拡大するケースはないが、右第二弓が突出する |
左室拡大 | ー | ①心腰部の陥凹:大動脈弓が拡大するため左第一弓が突出し、左室拡大で左第四弓も突出するため相対的に二・三弓が陥凹する。左室肥大により横隔膜側から見ると心臓が反時計回転する。 ②右第一弓の突出:上行大動脈が上大静脈を乗り越えて拡大する。 |
右室拡大 | ー | ①心腰部の消失:右室肥大により横隔膜側から見て心臓が時計回りし、右第二弓+左第四弓が突出して心腰部が消失する。 |
①胸部X線の撮影条件
①体位 | 座位(SIT)、臥位(SUPINE)、立位(?) |
②撮影方向 | ・立位(胃泡あり):PA像(後→前) PAは肩甲骨が肺野に重ならなず、かつ、心拡大を抑えて撮影できる。 |
・ポータブル(SIT or SUPINE):AP像(前→後) PAとAPは単純比較できない。なぜなら、APではフィルムとの距離が遠い心臓・縦隔が拡大されて写るため心臓・縦隔の比較評価は困難となる。また、吸気が不十分で肺野が狭く映る。臥位ではAPの横隔膜の位置が高くなる。 |
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③線量 | 心陰影に重なる血管が追えて、肺野の血管が中枢から末梢にかけた2/3以上が追えれば適正な線量 |
④正面性 | ・正中位:棘突起が左右の鎖骨内側端のちょうど真ん中にある ●右前斜位:心陰影が大きく見える、●左前斜位:上大静脈が大きく見える |
②骨軟部組織
①軟部組織 | 皮下気腫、縦隔気腫がないことを確認 ※気腫は皮膚や縦隔のすき間に空気が入り、線状、帯状の黒い陰影が見える |
②肋骨 | 鎖骨が胸骨にくっついているすぐ下が第一肋骨で、後上方(椎骨)から前下方(胸骨)へ走行している。一つづつ確認して肋骨骨折の有無を確認 |
③胸膜・横隔膜
CP角 | ●CP角Dullの場合:胸膜炎の既往で胸膜癒着/横隔膜直上の肺内陰影/肺葉切除後/COPDに伴う過膨張で横隔膜平低化/300mL以上の胸水貯留(側面像なら25mL以上で胸水がわかる) ●CP角ニボー形成の場合:交通外傷なら血気胸、時間経過した自然気胸なら胸水貯留が考えられる |
肺容積 | 深吸気時、右肺の第10後肋骨前後に横隔膜の高さがあれば正常(左肺は肝臓がないので右横隔膜より1〜2cm低いのが正常) ●横隔膜低位(右第11後肋骨より下):COPD、緊張性気胸 ●横隔膜挙上:高度の無気肺、線維化、肺切除術後、横隔神経麻痺、円背、腹部臓器容積↑、ポータブル撮影、臥位撮影 |
①右胸膜 | 肥厚がないことを確認 |
②右CP角 | Sharpであることを確認 |
③右横隔膜 | ドーム状、かつ、高さが第10〜11後肋骨と同じことを確認 |
④左胸膜 | 右胸膜と同様 |
⑤左CP角 | 右CP角と同様 |
⑥左横隔膜 | ドーム状、かつ、高さが右横隔膜より半肋間下を確認 |
④縦隔・肺野(小三J法)
胸部X線ではすりガラス影とコンソリデーションを分ける意味はないため透過性低下でまとめる
確認事項 | 詳細 | |
小 | ①縦隔全体 | 縦隔が正中にあればOK ●縦隔が健側へ移動:胸水、緊張性気胸 ●縦隔が患側へ移動:無気肺、線維化 ●縦隔に縦に走る帯状の空気:縦隔気腫(気道内圧上昇) |
②気管の走行 | 正常でも大動脈弓によって気管が少し右に偏位している ●気管の偏位:腫瘤/胸水、無気肺/線維化/肺切除 ●主気管支〜気管分岐部の気管支線不明瞭:縦隔リンパ節腫脹や腫瘍 ●気管の一部狭窄:腫瘍による圧排 |
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③傍気管線 | 傍気管線は気管の右端の壁と右肺が接して線に見える部分 ●傍気管線消失:縦隔リンパ節腫脹や腫瘍、サルコイドーシス |
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④肺尖部 | 肺尖部とは、鎖骨より上の部分を指す ●肺尖部病変:気胸、肺癌、二次結核などを疑う ●左右対称性の濃度上昇:第一肋軟骨の石灰化 |
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三 | 透過性低下(白) | 【結節影・腫瘤影】 ①辺縁が外向きに凸(大きくなる病変):腫瘍、結核、MAC症、真菌症 ②辺縁が内向きに凸(縮む病変):無気肺、線維化、高分化腺癌 ③辺縁が真っ直ぐ(大きさに変動がない病変):肺炎など |
【白くベッタリした病変】 ①胸水:胸膜直下の付近が丸く持ち上がる ②腫瘤:辺縁が外向きに凸・辺縁がもこもこ、葉間胸水の可能性あり ③無気肺:辺縁が内向きに凸、肺中枢を頂点とする扇形 ④コンソリデーション:中にエアブロンコグラムが見られることが多い |
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透過性亢進(黒) | ①肺が虚脱して肺との境界線あり:気胸 ②胸膜直下に限局している場合:ブラ(径1cm以上)を疑う ③肺の過膨張がある場合:肺気腫 ④低吸収の周りに高級域で縁取り:肺嚢胞、空洞 |
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肺門部 | 肺門陰影は個人差が大きく読影が難しい ●両側肺門リンパ節腫脹:境界線が割と明瞭で外側に凸+縦隔リンパ節腫脹 ●バタフライ陰影:上肺野の血管陰影優位+心拡大+Kerley’s線 |
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J | 大動脈弓 | ●大動脈弓の不明瞭化:大動脈周囲のリンパ節腫脹 |
AP window | AP windowはAortaとPulmonary arteryの間を指し、少し凹んでいる ●AP window突出:縦隔リンパ節腫脹 |
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下行大動脈 | ●シルエット陽性で肺炎や腫瘍 | |
心尖部 | ●シルエット陽性で肺炎や腫瘍 |
胸部X線の側面像
R→Lが基本 | 心臓の拡大を抑え、肺野を広く見るため |
横隔膜の左右の見分け方 | 胃泡の上にあるのが左、前側が心臓によるシルエットサインで消えているのが左 |
左右の肋骨の見分け方 | より太く描出されている方がフィルムより離れた側 |
胸部X線で空洞性陰影がみられる疾患
①感染 | 肺結核(最多)、ブドウ球菌、クレブシエラ、E.coliによる肺炎(肺膿瘍)、アスペルギルス、クリプトコックス |
②腫瘍 | 原発性肺癌(扁平上皮癌)、転移性肺癌 |
③膠原病 | 多発血管炎性肉芽腫症、関節リウマチ |
腹部X線
腹部X線の撮影条件
呼吸 | 仰臥位 | 立位 |
基本は呼気時撮影 | 基本は仰臥位A→P像撮影 | Free airとニボーを確認する時のみ |
胸部X線を撮影する意義
①異物確認 | 金属などの異物、チューブの位置などを確認のため |
②腹部ガス | 腸閉塞やイレウスの際、CTと併せて撮像 |
腹部X線の読影の順番
①骨の変化 | 変形性脊椎症:脊椎に加齢による椎体の変形である骨棘形成をみとめる |
②腸腰筋陰影 (Psoas line ) | 腸腰筋を縁取る脂肪をみているのでやせた人では見えないことが多い 腸腰筋陰影が見えない場合は、後腹膜の病変を疑う 例)虫垂炎あるいは虫垂周囲膿瘍:腸腰筋陰影が消失する |
③腎の輪郭 | 見えない場合は、腎あるいは周囲の後腹膜の病変を疑う |
④肝下角の輪郭 (肝右葉の端) | 見えない場合は、腹水の可能性 肋弓下に突出している場合は肝腫大の可能性(呼気撮影) |
⑤腸管ガス像 | 寝たきりの人など体を動かさないひとでは、腸管の動きも悪く単にガスがたまっているだけのことが多い(鼓腸) 【正常】 ニボー3個以下、小腸径3cm以下、大腸径6cm以下 【異常】 ・拡張した小腸ループが長さ10cm以上連続してみえる ・大腸の著明な拡張 |
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