放射線科総論(画像診断)

放射線科

放射線防護学

放射線障害


影響
意義 放射線によって細胞に突然変異=発癌が起こる影響。
線量に関係なく発癌が起こる可能性がある(閾値なし)。閾値がなく、線量に比例して発症頻度が増加する(直線仮説)。ヒトでは遺伝的影響(例:原爆の子孫は白血病になる)は確認されていない。
  晩期障害 白血病、甲状腺癌などの発癌

影響
意義 放射線によって細胞死が起こる影響。
線量がある閾値を超えると機能を保てず発症し、線量増加に伴いシグモイド曲線状に症状は重篤化する。(定=閾値あり
  早期障害
直後〜数週
皮膚障害:紅斑→脱毛→びらん・水疱→潰瘍
粘膜障害:下痢、血便、唾液分泌障害→虫歯、味覚障害など
造血器障害:汎血球減少リンパ球→好中球→血小板→赤血球の順
④全身症状:放射線宿酔(悪心・嘔吐、めまい、倦怠感)
⑤永久不妊・造精能力障害(気づくのは晩期?)
  晩期障害
数ヶ月後以降から発症)
白内障
②甲状腺機能低下症
③腸閉塞
放射性肺炎→肺線維症
⑤腎不全
二次発がん:放射線や抗癌剤によって正常細胞の障害によって、治療後数年〜数十年かけて別の種類の悪性腫瘍が生じる(小児>高齢者)。
胎児被曝:死亡(着床前期)、胎児奇形(妊娠初期の器官形成期)、精神発達遅滞(妊娠中期の胎児期)⇨これらはトータル100mSv未満では起こらない!

放射線被曝の種類(線量限度)

公衆被曝 線量限度は1mSv。人工放射線のうち医療被曝、職業被曝以外のもの。例えば、病室で隣の人がレントゲンを撮るときに浴びる被曝など。
医療被曝 治療に必要な線量かつ最低限の被曝で行う(最適化)。線量限度の設定はない
医療上必要であれば妊娠の有無に関わらずX線検査を行う。
日本ではCT検査が医療被曝の50%以上を占めている。
職業被曝 放射線防護の三原則は距離・時間・遮蔽である。男性の放射線業務従事者は、5年間で100mSvかつ1年間で50mSvを超えてはならない。
放射線業務従事者の健康診断は血球数(血小板は含まない)、白内障、皮膚の検査を行う。

放射線の線量と単位

  単位 詳細
吸収線量 Gy(グレイ) 身体にどれだけ放射線が吸収されたか表す指標
等価線量
(≒線量当量)
Sv(シーベルト) 吸収線量放射線の種類(X線、β線、α線など)による影響を加味した指標
実効線量 Sv(シーベルト) 等価線量に組織の感受性を考慮した指標=人体への影響を表しており、外部被曝線量と内部被曝線量の合計である。
簡単に言うと、放射線の種類によらず確率的影響の起こりやすさを示したもの。
放射能 Bq(ベクレル) 物質が放射能を出す能力

放射線検査による被曝量

放射線治療 50Sv以上
IVR 20〜60mSv
ダイナミックCT※ 30mSv
CT検査 10mSv(胸部X線の100倍)
PET-CTなどの核医学検査 2〜20mSv
(日本における年間自然放射線) 2mSv(世界平均より少ない)
胸部X線 0.1mSv以下

ダイナミックCTは造影剤静注後に動脈相、静脈相、平衡相と何度も同じ範囲の撮影を繰り返すため

放射線治療学

放射線の種類

※電離放射線とは物質を通過するとき、直接あるいは間接的に物質をイオン化する(イオンやフリーラジカルを出す)能力がある放射線を指す。

電離放射線 電磁波(X線、γ線) 低LET放射線(検査)
  粒子線(β線=電子、陽子線) 低LET放射線
  粒子線(α線、中性子線、炭素線) 高LET放射線(治療)
非電離放射線 紫外線、可視光線、赤外線、超音波など

放射線感受性

【ベルゴニー・トリボンドーの法則】

細胞の種類 ①分裂頻度が高い細胞、②未分化な細胞なほど放射線感受性が高い
細胞周期 G2〜M期が放射線感受性が高い
組織型 小細胞癌>扁平上皮癌>腺癌>肉腫・悪性黒色腫
酸素効果 酸素分圧の高い組織ではフリーラジカルが多く発生するため放射線感受性が高い
※放射線治療前に貧血を是正するのはこのため

【感受性】

  正常 腫瘍
高感受性 リンパ球、生殖器、骨髄、水晶体、消化管(特に小腸)、小児成長軟骨、皮膚粘膜 悪性リンパ腫、未分化癌、小児腫瘍(神経細胞腫、胚腫、髄腫、腎腫)、皮膚癌(基底細胞癌)、Ewing肉腫(肉腫だけど例外!)
普通 膀胱、乳房、肝臓、成人成長軟骨 扁平上皮癌、食道癌、乳癌、舌癌など
低感受性 神経、筋肉 悪性黒色腫、腺癌、骨肉腫、甲状腺癌、神経膠腫、神経膠芽腫(芽がつくが例外!)など

照射方法

  照射方法 詳細 主な適応
外部照射 リニアック 所謂、放射線治療。 乳癌、食道癌など
  定位照射 ガンマナイフなど小さな病巣に集中して照射する治療。SRSは原則1回照射。 脳腫瘍、動静脈奇形
  IMRT 正常部位は弱く、腫瘍部位は強くといった様に異なる強度で照射する治療。 頭頸部癌、前立腺癌
密封小線源 腔内照射 管腔臓器腔内にRI線源を挿入して照射。 子宮頸癌食道癌
(1年間有効) 組織内照射 病巣にRI線源を直接挿入して照射。 前立腺癌舌癌
RI内用 内照射 体内にRIを投与し、体内から照射。 甲状腺癌など

密封したゼリーを食べ休憩密封小線源、癌、前立腺癌、道癌、子宮頸

線量分布

がんに集中的に照射し正常組織をよける方法:定位放射線治療、強度変調放射線治療

空間的
線量分布
ブラッグピーク現象:陽子線などの粒子線は皮膚表面から深い地点で止まり、大きなエネルギーを放出する。(通常のX線は深部に行くほどエネルギーは低下する)
時間的
線量分布
分割照射:週5回、1日1回2Gy程度、6〜7週間照射する。
分割によって副作用が軽減できる。

放射線治療の種類

根治的療法 早期癌に対する照射。頭頸部癌(上・中・下咽頭癌、喉頭癌、口腔癌)、前立腺癌、子宮頸癌、悪性リンパ腫など。
予防的療法 小細胞肺癌の予防的全脳照射など
緩和的療法 骨転移の疼痛緩和、上大静脈症候群による顔の浮腫の緩和、肺癌や子宮頸癌などの出血軽減
補助療法 術前・術中・術後照射

IVR(Interventional Radiology)

X線透視やCTなどの画像を見ながらカテーテルや針を使って行う治療。

【血管系IVR】

  手技 主な適応
血管塞栓術 動脈塞栓術 脳動脈瘤(コイル塞栓)、出血、喀血、
肝細胞癌・子宮筋腫(栄養血管塞栓)
  静脈塞栓術 胃静脈瘤(BRTO)、血管奇形
留置術 ステント留置術 頸動脈狭窄症、閉塞性動脈硬化症
  ステントグラフト留置術 大動脈瘤(ステントを人工血管で被覆したものを留置)
  リザーバー留置術 転移性肝細胞癌(肝動注化学療法)
  中心静脈ポート留置術 高カロリー輸液、抗癌剤投与
  下大静脈フィルター置換術 DVTに対する肺塞栓症予防
血管内注入療法 動注化学療法 肝細胞癌(TACE)、上顎癌、咽頭癌、喉頭癌
  血栓溶解薬 急性期脳梗塞、急性肺血栓塞栓症
血管形成術 経皮的血管形成術(PTA) 腎血管性高血圧、閉塞性動脈硬化症
  冠動脈インターベンション(PCI) 狭心症、急性心筋梗塞
その他 カテーテルアブレーション WPW症候群、AF

胸部X線

骨軟部組織→胸膜・横隔膜→縦隔・心大血管→肺門→肺野の順に読影する

過去の画像、左右差を必ず比較すること

原理

【X線のパラメータ】

X線透過性 X線写真での色 物質
骨(密度が高い、Caを多く含むため)
軟部組織
脂肪(密度が小さいため)
空気

①胸部X線の撮影条件

①体位 通常は写真に記載あり、立位では胃泡が存在
②撮影方向 立位はPA像(後→前)、ポータブルはAP像(前→後)
PAは肩甲骨が肺野に重ならなず、かつ、心拡大を抑えて撮影できる。
※PAとAPは単純比較できない。なぜなら、APではフィルムとの距離が遠い心臓・縦隔が拡大されて写るため心拡大の比較評価は困難となる。また、吸気が不十分で肺野が狭く映る。
③線量 心陰影に重なる血管が追えて、肺野の血管が中枢から末梢にかけた2/3以上が追えれば適正な線量
④正面性 気管や主気管支の内腔が見えているか
右前斜位:心陰影が大きく見える
左前斜位:上大静脈が大きく見える

②骨軟部組織

①骨 肋骨骨折がないことを確認
②軟部組織 皮下気腫、縦隔気腫がないことを確認
※気腫は皮膚や縦隔のすき間に空気が入り、線状、帯状の黒い陰影が見える

③胸膜・横隔膜

①右胸膜 肥厚がないことを確認
②右CP角 Sharpであることを確認
●胸水:CP角が鈍角+Vanishing tumor(葉間胸水)
③右横隔膜 ドーム状、かつ、高さが第10〜11後肋骨と同じことを確認
④左胸膜 右胸膜と同様
⑤左CP角 右CP角と同様
⑥左横隔膜 ドーム状、かつ、高さが右横隔膜より半肋間下を確認

④縦隔・心大血管

①気管→気管分岐部 傍気管線や気管分岐部の開大の有無
②右主気管支→右中間気管支幹 狭窄の有無
③右肺動脈 右肺動脈の上縁ラインを追求
④左主気管支 狭窄の有無
⑤左肺動脈 左肺動脈の上縁ラインを追求
⑥大動脈→AP window 大動脈のラインとAP窓の確認

⑤肺門・肺野

①右肺尖  
   
   
   
   
   

胸部X線のシルエットサイン

シルエットサインが消失(シルエットサイン陽性)いる場合は、その部位に病変があることを意味する(X線透過性が近似した物体が隣接すると生じる)。その他にも、気管や横隔膜の位置を確認する。心シルエットサイン陽性の場合は上葉、下大動脈シルエットサイン陽性の場合は下葉に病変があるとざっくり考えられる。

右第1弓:上大静脈 右:S3 左第1弓:大動脈弓 左:S1+2
右第2弓:右房 右:S5(S4) 左第2弓:肺動脈 左:S3
右横隔膜 右:S8 左第3弓:左房 左:S3
    左第4弓:左室 左:S5(S4)
    左横隔膜 左:S8
    下行大動脈中部外側縁 左:S6
    下行大動脈下部外側縁 左:S10

Kerley’s line:小葉間隔壁の肥厚によって生じる所見

A line 上肺野~中肺野でみられる長さ数cmの線状陰影
B line 下肺野の外側で長さ2cm程度の胸膜に直交する線状陰影
C line 下肺野にみられる網目状の陰影
原疾患 急性:心不全、肺水腫、急性好酸球性肺炎など
慢性:僧帽弁狭窄症、癌性リンパ管症、肺線維症など

読影の方法(小三J法)

  確認事項 詳細
気管透過性 透過性低下で気管前病変疑う
  肺尖部病変 気胸、肺癌、二次結核などを疑う
上→下に左右差 【透過性低下(白い陰影)】
円形:3mm以下を粒状影(広範囲な場合は粟粒影)、3mm〜3cmを結節影、3cm以上を腫瘤影と表現する。
円形以外:気管や血管構造を透見できる程度の薄さをすりガラス陰影と言い、間質の炎症または肺胞内に少量物質がある。濃い場合をコンソリデーション(浸潤影)と言い肺胞内に物質がある。内部が網目状の場合は網状影という(間質性肺炎を疑う)。
③肺区域性の陰影:病原体が吸入されその区域に炎症が生じたと考える。
④気管支透亮像(エアブロンコグラム):区域気管支で①肺胞内の炎症②圧排性無気肺③間質性肺炎の進展で肺胞腔が虚脱して無気肺となった場合生じる。
【透過性亢進(黒い陰影)】
①肺の虚脱がある場合:気胸。
②胸膜直下に限局している場合:ブラ・ブレブを疑う。
③肺の過膨張がある場合:肺気腫。過膨張なければ血流低下を考える。
J 傍気管線 右側突出していればリンパ節腫脹、サルコイドーシス、腫瘍を考える。
  AP window AP window内に突出があれば動脈瘤を考える。
  下行大動脈 シルエット陽性で肺炎や腫瘍を考える。
  心尖部 肺炎や腫瘍を考える。
  横隔膜 肺炎や腫瘍を考える。

胸部X線で空洞性陰影がみられる疾患

①感染 肺結核(最多)、ブドウ球菌、クレブシエラ、E.coliによる肺炎(肺膿瘍)、アスペルギルス、クリプトコックス
②腫瘍 原発性肺癌(扁平上皮癌)、転移性肺癌
③膠原病 多発血管炎性肉芽腫症、関節リウマチ

胸部X線検査

【確認する点】

①CTR確認 心胸郭比(CTR=心横径/胸郭内径)が50%以上で心拡大あり
②肺血管陰影確認 肺血管陰影が増強している、またはバタフライシャドウ+で肺うっ血あり
③CP角確認  

【弓の変化】

左房拡大   後→上→右→左の順で拡大する
  後方拡大 側面像などで確認
  上方拡大 左主気管支を挙上し、気管分岐角が開大する
  右方拡大 右第2弓が二重に見える(二重陰影)
  左房拡大 左第3弓の突出は最終ステージ(心腰部の陥凹消失)
右房拡大 単独で拡大するケースはないが、右第二弓が突出する
左室拡大 心腰部の陥凹:大動脈弓が拡大するため左第一弓が突出し、左室拡大で左第四弓も突出するため相対的に二・三弓が陥凹する。左室肥大により横隔膜側から見ると心臓が反時計回転する。
右第一弓の突出:上行大動脈が上大静脈を乗り越えて拡大する。
右室拡大 心腰部の消失:右室肥大により横隔膜側から見て心臓が時計回りし、右第二弓+左第四弓が突出して心腰部が消失する。

腹部X線

腹部X線の撮影条件

呼吸 仰臥位 立位
基本は呼気時撮影 基本は仰臥位A→P像撮影 Free airとニボーを確認する時のみ

胸部X線を撮影する意義

①異物確認 金属などの異物、チューブの位置などを確認のため
②腹部ガス 腸閉塞やイレウスの際、CTと併せて撮像

腹部X線の読影の順番

①骨の変化 変形性脊椎症:脊椎に加齢による椎体の変形である骨棘形成をみとめる
②腸腰筋陰影
(Psoas line )
腸腰筋を縁取る脂肪をみているのでやせた人では見えないことが多い
腸腰筋陰影が見えない場合は、後腹膜の病変を疑う
例)虫垂炎あるいは虫垂周囲膿瘍:腸腰筋陰影が消失する
③腎の輪郭 見えない場合は、腎あるいは周囲の後腹膜の病変を疑う
④肝下角の輪郭
(肝右葉の端)
見えない場合は、腹水の可能性
肋弓下に突出している場合は肝腫大の可能性(呼気撮影)
腸管ガス像 寝たきりの人など体を動かさないひとでは、腸管の動きも悪く単にガスがたまっているだけのことが多い(鼓腸)
【正常】
ニボー3個以下、小腸径3cm以下、大腸径6cm以下
【異常】
・拡張した小腸ループが長さ10cm以上連続してみえる
・大腸の著明な拡張

CT(Computed Tomography)

CTの原理

撮影法はヘリカルCTMDCT(多列検出器型CT)が用いられている。

  CT値(HU値) CT値:被写体のX線吸収度を数値化したもの≒物質の密度
1000 HU 高吸収(白):骨皮質、石灰化、急性期血腫、金属など
臓器 50〜100HU 肝臓、脾臓、膵臓、血腫など
0〜10HU 脂肪肝、脳脊髄液など
脂肪 -100 HU 骨髄、肝胆膵以外の臓器
脂肪織濃度上昇:脂肪に炎症があると、網状・線状に濃度上昇
空気 -1000 HU 低吸収(黒):肺

【CT値の設定変更】

WL(Window Level) CT値のゼロ点=中央値(基本変更しない)
WW(Window Width) ゼロ点からの幅(例WW400なら-200HU〜200HU)
例:WW/WL 400/0 -200HU以下は黒く、-200HU〜200HUはグレー、200HU以上は白く映る

造影CT

造影剤は水溶性ヨードを使用する。BBBがあるため中枢神経組織は造影されない。

単純CTでわかること 空気、脂肪、水、軟部(多くの実質臓器)の4つのみ。
通常の造影剤CT 造影剤静注完了後に撮影を開始するため、撮影時点では造影剤が均等に分布した平衡相の状態となる。
ダイナミック造影CT 造影剤を急速静注しながら経時的に数回撮影するため、動脈相門脈相、実質相平衡相遅延相と順に血行動態を知ることが可能。
・動脈相:大動脈、膵、脾、副腎、腎皮質が強く造影
・平衡相:肝実質、腎皮質+髄質が強く造影

【造影剤禁忌】

禁忌 ヨードに対して過敏症の既往歴のある患者
  重篤な甲状腺疾患のある患者
  ビグアナイド系(メトホルミン:メトグルコ®など)服用の場合、造影剤使用前に内服中止し、造影剤使用後は48時間服用中止する(造影剤の一過性腎機能低下により、ビグアナイド系の排泄が減少し、乳酸アシドーシスのリスク↑するため)
原則禁忌 成人発症の喘息患者(治癒済み小児喘息は可)
  重篤な腎機能障害(絶対禁忌:eGFR30未満、相対禁忌:eGFR60未満)
  褐色細胞腫(疑いも含む)の患者
  重篤な心障害のある患者
  重篤な肝障害のある患者
  急性膵炎の患者
  多発性骨髄腫、マクログロブリン血症の患者
  テタニーのある患者

胸部CTの読影順序

Axial:横断面、Coronal:冠状面、Saggital:矢状面

【胸部CT】

肺野 縦隔 脊柱管→乳腺→腋窩→胸骨傍リンパ節→甲状腺→鎖骨上窩リンパ節→背部皮下組織→心臓→胸膜と胸水→大動脈→縦隔リンパ節→肺門リンパ節→肺動脈
  肺野 肺野前1/3→外側1/3→後1/3に分けて左右を観察、両側主気管支→末梢気管支
  アキシャルで全体、サジタルで胸骨、脊椎を観察
腹部 軟部 肝臓→胆嚢→膵臓→副腎→腎臓→尿管→脾臓→下大静脈→腹部大動脈・傍大動脈リンパ節→膀胱・前立腺、膣、子宮、卵巣
  WW400 下部食道→胃→十二指腸→腸管膜→直腸→S状結腸→下行結腸→横行結腸→上行結腸→虫垂
  アキシャルで全体、サジタルで脊椎を観察

胸部CT

メリットは肺尖部〜肺底部+縦隔まで死角なく撮影できる、デメリットは被曝量が胸部X線の約100倍ある。

肺野条件 空気を含んだ肺実質の観察に適するが、縦隔は真っ白に写る。
縦隔条件 縦隔の軟部組織に焦点を当て、心臓や大血管は描出されるが、肺は真っ黒に写る。

【二次小葉の異常所見】

高分解能CT(HRCT)を用いると、二次小葉レベルまで観察できる。

  詳細 みられる疾患
小葉中心性病変 細気管支に沿った樹枝状の高吸収域を示し(tree-in-bed appearance)、粒状影が胸膜やメジャーフィッシャー線に接する部分にない 気管支肺炎
抗酸菌感染症
びまん性汎細気管支炎
過敏性肺臓炎
じん肺
RB-ILD
RA関連
HTLV-1関連
小葉辺縁性病変 肺静脈とリンパ管は肺細葉から小葉間隔壁へ流れていくため、CT上で小葉間隔壁が肥厚して、辺縁にさまざまな高吸収域を示す。
また、周囲のすりガラス陰影とあいまって、Crazy paving appearance(メロンの皮様)を呈する。
<肺静脈うっ滞>
心不全
間質性肺水腫
<リンパ路障害>
癌性リンパ管症
肺胞蛋白症
ニューモシスチス肺炎
珪肺
サルコイドーシス
悪性リンパ腫
気管支血管束に沿った病変 気管支血管が腫大し、周辺の肺野にさまざまな高吸収域を示す。 マイコプラズマ肺炎
皮膚筋炎に伴う間質性肺炎
汎小葉性病変 小葉中心性病変が小葉を埋め尽くすように進展し、小葉全体が高吸収域を示す。 大葉性肺炎

腹部CTの読影順序

①臓器 肝→胆嚢→胆管→膵→脾→左右副腎→左右腎
<肝>
腫瘤を確認(肝膿疱、肝血管腫、肝細胞癌、肝内胆管癌、肝転移、肝膿瘍)
<胆嚢>
①大きさ・形状、②壁肥厚(4mm以上)の有無、③胆石・腫瘤・ガス・出血の有無、④周囲の脂肪織濃度上昇や液貯留の有無を確認
<胆管>
①総胆管拡張や肝内胆管拡張の有無、②胆管壁肥厚の有無、③胆管内の胆石・腫瘤・ガス・出血の有無
<膵:胃の後方、脾Vの前方、後腹膜に位置>
①大きさ・形状、②主膵管拡張(3mm以上)の有無、③腫瘤・嚢胞・石灰化の有無、④周囲の脂肪織濃度上昇や液貯留の有無を確認
<脾>
②血管 腹部大動脈→左右総腸骨動脈→骨盤内リンパ節→大動脈周囲リンパ節
③消化管 胃→十二指腸→空腸回腸→盲腸虫垂→上・横・下・S状結腸→直腸→膀胱
<空腸回腸>
ケルクリング襞が全周性に存在し、液体貯留と空気像が見られる
<結腸>
便中の泡沫状ガスが見られることが多い
④女性 子宮→卵巣
④男性 前立腺→精嚢

超音波検査(US:Ultrasonography)の原理

プローブ(探触子)から超音波を照射し、臓器などで反射したエコー(反射波)を計測して画像の濃淡として表示する。

【プローブの違い】

  リニア セクタ コンベックス
解像度 高い 低い 低い
臓器 肺、軟部組織 心臓 腹部

【操作ボタン】

mode(モード) Bモード(通常)、Mモード(心臓弁、IVC、気胸に使用)
gain(輝度) 明るくする、暗くする
depth(深度) 深さを調整
focus(焦点) 標的となる臓器の深度に合わせて調整
color(色) カラードプラ

【超音波の性質】

①組織で吸収され徐々に減衰する。②組織の音響インピーダンス(音速×密度)が異なる臓器や組織の境界面で反射する。そのため、所見では反射が大きいほど白く写り(高エコー)、小さいほど黒く写る(低エコー)。よって、USは気体の少ないあるいはみられない臓器の限局性病変の診断に使用されるのが一般的である。

  画像所見
無エコー 病変内部にエコーなし 嚢胞など
低エコー 周囲の組織よりエコー輝度が低い 肝細胞癌など多くの腫瘍
高エコー 周囲の組織よりエコー輝度が高い 肝血管腫など
後方エコーの増強 病変の背側の輝度が帯状に上昇 水分に富む嚢胞など
音響陰影(Strong echo) Strong echoの背側にエコーがない 石灰化結石
側方陰影(外側エコー) 腫瘤の側縁に低エコー帯 辺縁平滑な腫瘍に多い
コメットサイン 彗星の尾のような高エコー多発 胆嚢の壁内結石ポリープ
ターゲットサイン 中央部が無~低エコーの腫瘤病変 転移性肝腫瘍などの中心壊死
モザイクエコー 腫瘤内部に結節状の構造が見える 肝細胞癌に多い

造影剤はマイクロバブルを含むUS造影剤を静注すると、血流が高エコーになる。

【超音波ドプラ法】
血管内を移動する血球成分が反射した超音波のドプラ効果を利用して、プローブから遠ざかる血流を、近づく血流をで表示する方法。血流の方向や速度がわかる。

腹部エコーの順

肝左葉→肝右葉→肋骨上から肝右端→右腎(肝腎コントラストも確認)→肋骨上から脾臓・左腎→門脈から脾静脈を探し、その直上にいる膵臓を確認(基本脂肪で見えない)→膀胱・直腸

肺エコーの基礎

  所見 肺の状態 疾患
Aライン 胸膜下に複数の横ライン Dry PE、気胸、COPD、喘息
Bライン 胸膜下に縦のライン Wet 肺水腫(心不全、ARDS)、肺炎、胸水

MRI(Magnetic Resonance Imaging)の原理

体内にある水や脂肪のプロトンは微弱な磁石としてみなすことができ、強力な静磁場の中ではプロトンは静磁場の方向に整列する。そこに特定の周波数の電磁波(RFパルス)を照射すると、プロトンはそちらの方に向く(共鳴現象)。RFパルスを止めるとプロトンは元の方向に戻りながら電磁波を放出し(緩和現象)、その強さを表示したものがMRI画像となる。

  高信号(白) 低信号(黒) 特徴
T1強調 脂肪
高粘稠度液体
水、骨 形態がわかりやすいため、萎縮・腫瘍の評価をする。(脳は白質が白く映る!)
T2強調 脂肪
病変部位
骨、出血 炎症・浮腫・脱髄などの病変部位が高信号となり評価しやすい。
FLAIR 病変部位
間質浮腫
水(髄液)、骨 T2ー流動性の水分を引いた画像。脳溝・脳室周囲の病変が検出しやすい。
拡散強調
DWI
ADC
細胞浮腫
細胞密集
  水分子の拡散(ブラウン運動)を反映した画像
細胞浮腫により組織水分の拡散が低下して高信号となる(例:超急性期脳梗塞
T2*強調
SWI
  異常鉄沈着、出血 T2強調よりも磁場を不均一に敏感。ヘモジデリンや鉄の沈着で低信号となる。
MRA 血管   移動するプロトンのみを高信号に表示。
脂肪抑制   脂肪 脂肪のみ低信号となる。

造影剤はガドリニウムを使用するとT1強調で高信号となる。

MRIの禁忌

心臓ペースメーカー 禁忌 MRI対応の機種もあるため要確認
動脈瘤クリップ 禁忌 MRI非適合の場合があるため要確認
人工内耳 禁忌 人工内耳が壊れる可能性がある
アイシャドウ 禁忌 磁性物質を含むため
カラーコンタクトレンズ 禁忌 着色剤に酸化鉄などの金属が使用されていることが多い
刺青 注意 酸化鉄などの金属片が含まれていることがある
妊婦 注意 安全性が立証されていない

核医学検査の原理

【核医学検査の種類】

  具体例 原理
試料計測 ラジオイムノアッセイ(RIA) 放射性同位元素(ラジオアイソトープ)でラベルして患者から得た検体はγ線を発する。それをシンチレータで測定し定量する方法。
体外計測 シンチグラフィ 放射性同位元素(ラジオアイソトープ)を患者に投与し、集積した臓器から発するγ線を体外のガンマカメラで画像撮影したもの。
  SPECT 上記のガンマカメラをCT同様に回転させて断層像を撮影したもの。
  PET(18FDGシンチグラム) γ線ではなく消滅放射線を患者周囲に配置した検出器リングで測定して画像撮影したもの。
腎盂〜膀胱(生理的集積)、悪性腫瘍に集積する。

【診断・治療用核種】

  半減期 主な用途
81mKr 13秒 肺換気シンチグラム
18F 110分 PET
99mTc 6時間 骨、甲状腺など
123I 13時間 甲状腺シンチグラム
201TI 74時間 腫瘍、心筋血流シンチグラム
67Ga 78時間 腫瘍・炎症シンチグラム
131I 8日 副腎皮質シンチグラム
125I 60日 組織内照射(前立腺癌)
60Co 5.3年 ガンマナイフ、遠隔コバルト照射、RALS

核医学検査に用いる核種はこちらを参照。

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