頭部CT・MRI

放射線科

脳動脈の復習

皮質動脈:MRAで同定できる脳表を覆う半球枝、そこから分岐するのが穿通動脈

前方循環系

主幹動脈 皮質動脈 穿通動脈 栄養部位
内頸A(ICA) 前大脳A(ACA) 深部:内側線状体A(MSA) 尾状核
    表在:髄質A 皮質〜髄質
  中大脳A(MCA) 深部:外側線状体A(LSA) 線状体、尾状核
    表在:髄質A 皮質〜髄質
  ICAより直接分岐→ 前脈絡叢A(AchoA) 内包後脚など

後方循環系

主幹動脈 皮質動脈 穿通動脈 栄養部位
椎骨A(VA) 後下小脳A(PICA)   小脳底部内側
  VAから直接分岐→ 延髄への穿通A 延髄
脳底A(BA) 前下小脳A(AICA)   小脳半球外側、中小脳脚
  上小脳A(SCA)   小脳上部、歯状核
  後大脳A(PCA) 中脳・視床への穿通A 中脳、視床
  BAから直接分岐→ 中脳・橋への穿通A 中脳、橋

頭部CT

CTの種類

CTA 造影剤をし右葉して脳血管を描出する方法、MRAより分解能が高い
灌流画像 脳の毛細血管レベルにおける血行動態を画像化したもの、脳梗塞の評価に使用
脳槽CT 脳脊髄液腔に造影剤を注入し、髄液漏出や脊髄腫瘍を評価
dual energy CT値が近い物質(血腫、造影剤、石灰化、骨など)の鑑別に有用

読影で必要なメルクマール(Axial)

中心前回 一部が後方へ突出する逆Ωサイン(percentral knob sign)あり
中心溝 前頭葉と頭頂葉の境界であり、中心前回の背側に位置する
頭頂後頭溝 頭頂葉と後頭葉の境界であり、帯状回の背側に位置する
シルビウス裂 前頭葉と側頭葉の境界であり、Y字に見える?
後頭極 水平面で後頭葉の1番背側部分
その他 頭頂葉と側頭葉の境界は、シルビウス裂後端と後頭極を結んだ線
その他 側頭葉と後頭葉の境界は、後頭葉切痕と帯状回狭部を結んだ線
皮髄境界 軽度高吸収(白色)の皮質と軽度低吸収(黒色)の髄質の境界
内頭蓋底 前頭蓋窩、左右の中頭蓋窩、後頭蓋窩の中心にトルコ鞍が位置する

病的意義に乏しい所見

石灰化 ①淡蒼球  
  ②松果体  
  ③側脳室三角部 Luschka孔レベルで脈絡叢が石灰化
  ④小脳歯状核  
  ⑤小脳テント  
  ⑥大脳鎌前部  
くも膜嚢胞 脳脊髄液を含む先天的なくも膜由来の嚢胞、中頭腋窩に好発
液貯留腔 両側側脳室の間にできる液体貯留腔(透明中隔腔、Verga腔)

頭部CTの読影順序

①軟部、頭蓋骨、顔面骨、副鼻腔、側頭骨、眼窩、トルコ鞍

  骨条件
頭蓋骨 顔面骨を含めて骨折線を確認
側頭骨 乳突蜂巣の含気が良好
●乳突蜂巣に貯留がある:乳突蜂巣炎(慢性中耳炎)
●乳突蜂巣に二ボー像がある:急性中耳炎/外傷による血腫
副鼻腔 鼻腔や副鼻腔(上顎洞、篩骨洞、蝶形骨洞、前頭洞)の含気が良好
●副鼻腔や鼻腔に粘膜の肥厚あり:副鼻腔炎、鼻炎
  頭部条件
軟部 頭部の皮下に脂肪腫、粉瘤、外傷の皮下血腫や皮下に気腫の有無
眼窩 眼球や周囲の外眼筋を左右差を確認
トルコ鞍 下垂体腫瘍、下垂体卒中の有無を確認

②脳室・くも膜下腔

脳室 側脳室→第3脳室→第4脳室→中脳水道
くも膜下腔 ・シルビウス裂レベル:前大脳縦裂→左右のシルビウス裂
・脳底槽レベル(ヒトデ):前大脳縦裂→左右のシルビウス裂→脳底槽→脚間槽→迂回槽→四丘体槽→小脳橋角槽
●高吸収域あり:くも膜下出血の疑い

③脳実質(Axialでの7つのスライスレベル)

①頭頂部レベル 中心前回の逆Ωサイン(手の運動領域)、中心後回
②半卵円レベル 側脳室が現れる前のレベルで頭頂後頭溝+、半卵円中心(錐体路・感覚線維)
③放線冠レベル 側脳室が蝶形、側脳室の外側に放線冠(錐体路や感覚線維の通路)
④基底核レベル 被殻と視床の間にくの字の内包、側脳室前角&第三脳室+後角
⑤中脳レベル ミッキー中脳(耳=大脳脚は錐体路)&中脳水道、中脳の外側にニッコリマークの側脳室下角&背側の海馬、ヒトデ型の脳底槽
⑥橋レベル 橋(腹側は錐体路)&第四脳室、その背側に小脳、ヒトデ型の脳底槽
⑦延髄レベル 逆さミッキー延髄、目玉の間は篩骨洞と背側に蝶形骨洞

頭部CTの異常所見

脳梗塞

①心原性 超急性期(数時間以内)】Early CT sign or 異常なし
hyperdense sign:好発部位のMCA血管内に高吸収あり(塞栓子)
被殻+淡蒼球の輪郭不明化:発症1〜2時間
皮髄境界の不明瞭化:発症2〜3時間
脳溝の消失:発症3時間
急性期〜亜急性期(数時間〜3週間)
・低吸収域+周囲脳実質との境界不明瞭(fogging effect)
・淡い高吸収域:出血性梗塞
慢性期(3週間以降)
・低吸収域+周囲脳実質との境界明瞭:陳旧性脳梗塞
【血管支配領域】
・中心前回:MCA領域
・放線冠:外側線状体動脈(MCAからの穿通枝)
・内包後脚:前脈絡動脈(内頸Aからの分枝)
②ラクナ梗塞 ・大脳白質に境界不明瞭な低吸収域
鑑別:慢性虚血性変化、血管周囲腔の拡大
③アテローム性 ・狭窄した動脈の支配域末梢の複数の小さな脳梗塞巣

脳出血

好発部位 大脳皮質化白質、被殻、視床、橋
脳ヘルニア 症状:脳幹の高度圧排よる呼吸抑制、脳底動脈の圧排による脳梗塞
脳室穿破 脳室内へ血腫が入り込む
血腫サイズ 推定容積:長径(cm)×短径(cm)×スライス数×1/2

【発症時期と血腫の濃度】

発症時間 時期 血腫の濃度
24時間以内 超急性期 高吸収+周囲に低吸収(浮腫性変化)
1〜3日 急性期 高吸収+周囲に低吸収(浮腫性変化)
3〜7日 亜急性期 等吸収
7〜14日 亜急性期 低吸収
14日以降 慢性期 低吸収

低酸素脳症

皮髄境界の不明瞭化を認める(脳浮腫のため)

頭部外傷骨折

見間違えに注意 骨折線:外板から内板へかけて比較的直線的な透瞭像
縫合線:冠状縫合、矢状縫合、ラムダ縫合はやや不明瞭でノコギリ状
くも膜顆粒小窩:上矢状動脈洞周辺に存在する不定大の丸い突出
動脈溝:硬膜Aの動脈溝は蛇行していて外板に達しない
頭蓋骨骨折
+急性硬膜外血腫
骨折線が硬膜上の硬膜Aや静脈洞を損傷すると硬膜外血腫が生じ、両凸レンズ状の形態をとる(血腫が縫合線を越えることはほぼない
出血性脳挫傷 好発部位:前頭葉底部、側頭葉先端部
・発症直後は不明瞭でも数時間で悪化し、高吸収域を認める
・時間の経過とともに血腫が吸収され低吸収域と萎縮を認める

慢性硬膜下血腫

好発部位 前頭頭頂部
所見 外傷後2週間以上の経過で硬膜の最下層が剥がれて発症した腔に血腫が貯留し、縫合線を超えて広範囲な三日月型の形態をとる

水頭症

非交通性水頭症 髄液の流れる部位に狭窄や閉塞がある通過障害
交通性水頭症 通過障害のないもの。脳圧が200mmH2O以下のものを正常圧水頭症という

【正常圧水頭症の分類】

特発性正常圧水頭症(iNPH) 60歳以上で歩行障害/認知症/尿失禁の1つ以上を認める
iNPH画像所見(DESH) 高位円蓋部のくも膜下腔狭小化+シルビウス裂のくも膜下腔拡大(くも膜下腔の不均衡な拡大に伴って生じる所見)
iNPH画像所見(Evans指数) ①Evans指数 0.3以上
②側脳室前角径の拡大+rounding
③脳溝の不明瞭化
④冠状断で脳梁角の狭小化(90度以下)
二次性正常圧水頭症 脳室外での閉塞、出血、髄膜播種、炎症など髄液の吸収障害あり

腫瘤性病変(頻度の高い疾患)

①多発転移性脳腫瘍 脳腫瘍が多発し、腫瘍周囲に浮腫性変化あり
②髄膜腫 単純では軽度高吸収が多く、外頸A造影ではsunburst appearance

MRI(Magnetic Resonance Imaging)

MRIの概要

体内にある水や脂肪のプロトンは微弱な磁石としてみなすことができ、強力な静磁場の中ではプロトンは静磁場の方向に整列する。そこに特定の周波数の電磁波(RFパルス)を照射すると、プロトンはそちらの方に向く(共鳴現象)。RFパルスを止めるとプロトンは元の方向に戻りながら電磁波を放出し(緩和現象)、その強さを表示したものがMRI画像となる。

  高信号(白) 低信号(黒) 特徴
T1強調
(T1WI)
脂肪 高粘稠度液体 水、骨 形態がわかりやすいため、萎縮・腫瘍の評価をする(脳は白質が白く映る!)
T2強調
(T2WI)
脂肪、病変部位 骨、急性期・陳旧性出血 炎症・浮腫・脱髄などの病変部位が高信号となり評価しやすい
FLAIR 病変部位 間質浮腫 水(髄液)、骨 T2ー流動性の水分を引いた画像。嚢胞性病変の水も低信号、脳溝・脳室周囲の病変が検出しやすい
拡散強調 (DWI)  細胞浮腫
細胞密集
  水分子の拡散(ブラウン運動)制限を反映した画像で拡散低下で高信号となる(例:超急性期脳梗塞、細胞密度の高い腫瘍、膿瘍)※DWIの1枚目の画像はb値のためなので読み飛ばして良い
拡散強調  (ADC   細胞浮腫
細胞密集
DWIで高信号な部分はADCでは低信号となる
※DWI高信号+ADC高信号の場合は血管性浮腫を疑いPRESなどが鑑別に上がる
T2*強調 (SWI   異常鉄沈着、石灰化、出血 金属アーチファクトを利用してヘモジデリンや出血が低信号となる(T2と比較すると鼻腔がアーファクトで見にくい)
T2 CISS
(脳槽)
    水以外を暗くすることで脳脊髄液に囲まれた微細な構造(脳神経や血管)を描出、MPR再構成のため必要
MRA (垂直方向の)動脈   脳へ向かう動脈を高信号に表示、ここからMIP画像を作成するが、動脈の走行はこちらで確認する
MIP画像 (垂直方向の)動脈   MRAを3D化したもの、ただし垂直方向以外の動脈信号は低くなるため元画像MRAを確認すること
脂肪抑制   脂肪 脂肪のみ低信号となる

造影剤はガドリニウムを使用するとT1強調で高信号となる。

MRIの禁忌

金属類はNG、手術歴も確認!

  禁忌
心臓ペースメーカ MRI対応の機種もあるため要確認
動脈瘤クリップ MRI対応のチタン製もあるため手術した施設に確認
人工内耳 人工内耳が壊れる可能性がある
妊娠12週以内の方 安全性が立証されていない(妊娠の可能性のある人も不可
イレウス管  
目など臓器に金属片  
磁石式人工肛門  
脳脊髄刺激電極 MRI対応の機種もあるため要確認
皮膚拡張器 乳房再建時などに使用する
  条件付きで検査可能
心臓の人工弁 留置後4週間以上経過で可能
血管や管腔臓器内金属 ステントやコイルは留置後4週間以上経過で可能
消化器の止血クリップ 脱落排出していれば可能(X線で確認)、MRI対応でも可能
消化器手術のホチキス 術後4週間4週間以上経過で可能、MRI対応でも可能
外傷の術後で金属あり MRI対応材質なら可能
  取り外せば検査可能
化粧 磁性物質を含むため
カラコン 着色剤に酸化鉄などの金属が使用されていることが多い
義眼義肢義足 MRI対応もあるため要確認
磁石埋込式差し歯  
補聴器 取り外し忘れが多い
インスリンポンプ  
持続グルコース測定器  
湿布  
ヒートテック等機能性下着 着て撮影すると火傷する可能性あり
  MRI可能だが本人の同意が必要
水頭症用シャントバルブ 設定圧の確認・調整をするためMRI後はかかりつけに要相談
刺青、タトゥー 火傷や変色する可能性を同意の上撮影
アートメイク 同上
人工関節・骨固定金属 MRI対応もあるが、非対応なら火傷に注意して撮影
塗ると暖かくなるクリーム 拭き取れば可能
  撮影に問題ないもの
金歯、銀歯  
コンタクト 外すことを推奨
レーシック手術  
CVポート  
避妊リング マルチロード、ミレーナは可能

頭部MRI

脳萎縮

VSRAD:前駆期を含む早期アルツハイマー型認知症に特徴的に見られる内側側頭部(海馬、扁桃、嗅内野の大部分)の萎縮の程度をMRI画像から読み取るための画像処理・統計解析ソフトウェア

健常者の脳と萎縮度合いを比較しており、Z score2以上をアルツハイマー型認知症とした場合の正診率は80%以上

脳出血

時期 ヘム鉄の変化 T1WI T2WI
超急性期:〜24時間 オキシHb 軽度低信号 軽度高信号
急性期:24〜48時間 デオキシHb 軽度低信号 低信号
亜急性期:2〜7日 メトHb(細胞内) 高信号 低信号
亜急性期:7日〜1ヶ月 メトHb(溶血後) 高信号 高信号
慢性期:1ヶ月〜 ヘモジデリン 低信号 低信号+中心高信号

T2*でヘモジデリン沈着確認

脳梗塞

・DWI(発症3〜4時間後から1ヶ月間高信号続く)

・FLAIR(発症24時間後から高信号続く)

・亜急性期はT1WIで低信号を呈する

発症後 病態 DWI ADC FLAIR CT
0〜1時間 閉塞直後 所見なし 変化なし 所見なし 所見なし
1〜24時間 細胞性浮腫 高信号 低下 所見なし Early sign
1〜7日 細胞/血管浮腫 高信号 低下 高信号 低吸収
1〜4週間 血管新生 高〜等信号 低下〜無変化 高信号 低吸収
  浮腫軽減 等〜低信号 無変化〜上昇 高信号 低吸収
1ヶ月以降 壊死→瘢痕化 低信号 上昇 高信号 髄液濃度

【ラクナ梗塞と他病変の鑑別】 大脳白質病変=慢性虚血性変化

  ラクナ梗塞 血管周囲腔の拡大 大脳白質病変
T1WI 低信号 等〜低信号 等〜灰白質程度
T2WI 明瞭な高信号 明瞭な高信号 淡い高信号
FLAIR 周囲高信号+低信号 等〜低信号 明瞭な高信号
大きさ 3mm以上 3mm未満 様々
連続性 なし あり

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