介護主治医意見書

公衆衛生

介護主治医意見書の読み手

①介護認定審査員 医師以外も読むため、略語・専門用語・英語を避け、わかりやすく記載
②ケアマネ ケアプラン作成のため

記載の注意点

厚生労働省のHPより

・要介護認定における「認定調査票記入の手引き」、「主治医意見書記入の手引き」及び「特定疾病にかかる診断基準」について(◆平成21年09月30日老老発第930002号)
意見書作成回数 申請者について初めて作成する場合は初回とする
主治医意見書問診票 主治医意見書作成の参考するもので患者や家族に記載してもらう

傷病に関する意見

(1)診断名

患者や家族が介護するためにどれくらい困難であるかを優先して病名を決定する(医学的に意味があるかはどうかはそれほど重要ではない)。特に「認知症」、「認知機能低下(認知症と診断されていない場合)」、「特定疾病」があると認定されやすい。

発症年月日がはっきりわからない場合は、おおよその発症年月を記入する。わからない場合は「不詳」と記載する。

【特定疾病(40歳以上から申請可能)】

1 がん 9 脊柱管狭窄症
2 関節リウマチ 10 早老症
3 筋萎縮性側索硬化症 11 多系統萎縮症
4 後縦靱帯骨化症 12 糖尿病性の神経障害・腎症・網膜症
5 骨折を伴う骨粗鬆症 13 脳血管疾患
6 初老期における認知症 14 閉塞性動脈硬化症
7 パーキンソン病、PSP、CBD 15 慢性閉塞性肺疾患
8 脊髄小脳変性症 16 著しい変形を伴う両側の変形性膝/股関節症

(2)症状としての安定性

認知症の有無と安定・不安定により要支援1か2に振り分けられる

安定 現在の全身状態から急激な変化が見込まれない場合
不安定 脳卒中や心疾患、外傷等の急性期や慢性疾患の急性増悪期等で、積極的な医学的管理を必要とすることが予想される場合(=介護必要度が悪化する傾向がある)は「不安定」を選択。特に、認知症の取り繕いなど1回の調査ではわからないことを中心に記載

(3)生活機能低下の直接の原因となっている傷病の経過と治療内容

家族の介護負担が明確になるように記載する

傷病経過 高齢者においては、傷病による生活機能低下に、転倒、入院等を契機として日中の生活が不活発になったこと、外出の機会の減少、配偶者との死別や転居などを契機とする社会参加の機会の減少、家庭内での役割の喪失等の様々な要因が加わることにより、さらに生活機能が低下することが考える。これら更なる生活機能低下を引き起こしている要因があれば、具体的に記載する。また、意識障害がある場合には、その状況についても具体的に記載する。
例1
(認知症)
2020年より当院に高血圧のため通院されていた。
2025年、物忘れの訴えがあり〜病院へ紹介。採血、頭部MRIなどからアルツハイマー型認知症の診断となる。以降、当院にて抗認知症薬、降圧薬を継続調整している。認知機能は低下してきおり、身体機能も徐々に低下しているが、デイサービスの継続でおおむね安定した生活が送れている。
例2
(DM)
時期不詳だが、2型糖尿病にて近医を通院されていた。
2021年、HbA1c10台にて糖尿病教育入院後、前医閉院に伴い当院へ通院開始、重症の2型糖尿病、糖尿性神経障害に対しインスリン、血糖降下薬、鎮痛薬にて加療を継続している。インスリンは今のところ自己管理できているが、注射の単位間違いなどに注意を要する。血糖コントロールは良好だが下肢のしびれが進行し、徐々にADL低下をきたしている。高齢独居で介護保険サービスの利用が望ましいと考えられるため今回介護保険申請とした。
投薬内容 投薬内容については、生活機能低下の直接の原因となっている傷病以外についても、介護上特に留意すべき薬剤や相互作用の可能性がある薬剤の投薬治療を受けている場合は、この欄に記入する。(ただ単に投薬内容を羅列するのではなく、必ず服用しなければならない薬剤、頓服の必要な薬剤等を整理して記入する)

特別な医療

申請者が過去14日間に受けた12項目の医療のうち、看護職員等が行った診療補助行為(医師が同様の行為を診療行為として行った場合を含む)に該当するもの。ただし、「医師でなければ行えない行為」、「家族/本人が行える類似の行為」は含まれない。

心身の状態に関する意見

(1)日常生活の自立度等について

【障害高齢者の日常生活自立度(寝たきり度)の判定】

生活自立
(外出)
ランクJ
自立:J
何らかの障害等を有するが、日常生活はほぼ自立しており独力で外出する。
J1:交通機関等を利用して外出
J2:隣近所へなら外出
準寝たきり
(屋内)
ランクA
Assist:A
屋内での生活はおおむね自立しているが、介助なしには外出しない
A1:日中はほとんどベッドから離れて生活
A2:外出の頻度が少なく日中も寝たり起きたりの生活
寝たきり
(ベッド)
ランクB
Bed:B
屋内での生活は何らかの介助を要し、日中もベッド上での生活が主体であるが座位を保つ
B1:車いすに移乗し、食事排泄はベッドから離れて行う
B2:介助により車いすに移乗する
ランクC 一日中ベッド上で過ごし、排泄、食事、着替において介助を要する
C1:自力で寝返りをうつ、C2:自力では寝返りもうたない

【認知症高齢者の日常生活自立度】

(2)認知症の中核症状

短期記憶 身近にある3つのものを見せ、一旦それをしまい、5分後に聞いてみる
認知能力 自立:日常生活において首尾一貫した判断ができる。毎日するべきことに対して予定を立てたり、状況を判断できる。
いくらか困難:日々繰り返される日課については判断できるが、新しい課題や状況に直面した時にのみ判断に多少の困難がある。
見守りが必要:判断力が低下し、毎日の日課をこなすためにも合図や見守りが必要になる。
判断できない:ほとんどまたは全く判断しないか、判断する能力が著しく低い。
伝達能力 伝えられる:自分の考えを容易に表現し、相手に理解させることができる。
いくらか困難:適当な言葉を選んだり、考えをまとめるのに多少の困難があるため、応対に時間がかかる。自分の意思を理解させるのに、多少、相手の促しを要することもある。
具体的要求に限られる:時々は自分の意思を伝えることができるが、基本的な要求(飲食、睡眠、トイレ等)に限られる。
伝えられない:ほとんど伝えられない、または、限られた者にのみ理解できるサイン(本人固有の音声あるいはジェスチャー)でしか自分の要求を伝えることができない。

(4)その他の精神・神経症状

認知症以外の精神・神経症状があれば、有にレ印をつけ、その症状名を記入する。

症状名:失語、構音障害、せん妄、傾眠傾向、失見当識、失認、失行など。

(5)身体の状態

過去6ヶ月程度における体重の変化:3%程度の増減を目途に該当する場合は記載

生活機能とサービスに関する意見

看護記録やリハビリ記録を確認し、可能なら看護師・療法士・MSWの意見を踏まえて記載

(4)サービス利用による生活機能の維持改善の見通し

現状の状態から3〜6ヶ月間、予防給付を利用した場合の生活機能の維持改善がどの程度期待できるか

特記すべき事項

記載の注意点
統計で推定しにくい申請者固有の介護の手間を具体的に記載する。
患者や家族が具体的にどんな介護負担で困っているか記載する。
手すりがないとトイレ歩行が難しい、など具体的なADL障害について記載する。
具体的な必要サービスを記載することが望ましい。
記載例
腎不全で入院したが、廃用によってADL低下を認め、現在はほぼ寝たきり状態である。また、認知機能の悪化も認め、入院中は昼夜逆転およびせん妄も認め、拒食及び拒薬も認めた。リハビリの拒否もあるため、今後さらに介護負担が増えることが予想される。
【認知症あり】
2025年5月23日施行のHDS-R・MMSEでは14/30と中等度の認知機能低下を認めている。
奥様はお元気であり、日中の身体的介護は困っていない様子である。日中、財布を盗られた急に大声を上げることがあり、妻が財布を見せることで落ち着きを取り戻している。トイレまでは自力で行けているが、便器の外に尿がこぼれている。転倒に注意が必要であり、外出時は歩行補助具の使用が望ましい。奥様の介護負担軽減、ご本人の身体・認知機能低下予防のためにも週に2〜3回程度のデイサービスや、適宜ショートステイが必要と考える。
【認知症なし】
2025年5月23日施行のHDS-R・MMSEでは26/30と認知機能低下を認めない。
夫は他界し、息子夫婦は県外に居住しており、高齢独居である。室内の家事などは休み休みであれば可能である。糖尿病性神経障害により下肢のしびれが強いため、長距離の歩行が困難である。約200m先のごみ収集所まで休憩しながら歩き、30分程度を要している。下肢の筋力低下が著名であり、転倒リスクも高く、歩行補助具の使用が望ましい。昨年までは公民館で行われる行事は参加していたが、公民館までの距離が遠く、歩いていくのが億劫となっている。デイサービスの利用については前向きな様子である。

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