僧帽弁狭窄症 MS:Mitral Stenosis
| 疫学 | 現在は抗菌薬が普及して稀になった |
| 病態 | リウマチ熱感染後、10年以上経過して僧帽弁が石灰化する(リウマチ熱減少と共にMSも激減した)。その結果、拡張期に左房→左室への血液流入が障害され、左房圧上昇+心拍出量低下となり(左心不全状態)、AFや血流障害により左房内血栓が生じやすくなる。重症例では、肺水腫を抑制するため肺の毛細血管が収縮し肺高血圧→右室肥大となる。 |
| 症状 | ①心不全症状:肺うっ血による労作時呼吸困難など ②動悸・脈不整:左房負荷による刺激伝導系異常によりAFが生じる ③左房内血栓:心原性脳梗塞、心筋梗塞、急性腹症など |
| 他覚 所見 | 【心尖部聴診】 ①Ⅰ音亢進:弁石灰化により収縮期に閉鎖音が亢進 ②Opening Snap(僧帽弁解放音):Ⅱ音直後に石灰化した弁が開く高調音 ③拡張中期ランブル:狭窄した弁を血液が通るときのゴロゴロとした低調性雑音 ④前収縮期雑音:拡張末期に心房内の血液を絞り出す音だが、AF時は消失 【2LSB聴診】 ⑤Ⅱp音亢進:肺高血圧により肺A圧↑してⅡp音亢進。重症例で肺高血圧がある場合、P弁輪拡大で相対的PRでGraham Steell雑音が生じる。 |
| 検査 | 【画像検査】 ①心エコー:M弁輝度↑、拡張期に前尖ドーム状、左房拡大(左室拡大なし)、カラードプラで収縮期左房→左室へのモザイク、MモードでDDR低下(ゆっくり弁が閉じている) ②胸部X線:左房拡大所見、左第3弓突出(肺高血圧)、血管陰影増強(肺うっ血) ③心電図:左房負荷所見→進行すると右室負荷所見、AF所見 ④カテーテル検査:PAWP上昇、左房圧>左室圧(拡張期LA-LV圧較差) |
| 治療 | 【薬物療法】 ①洞調律に戻す or 洞調律を維持:ジソピラミド、プロカインアミド ②AFはそのままで心拍数を調整:ジギタリス、β遮断薬 ③AFに伴う血栓症・塞栓症を予防:ワルファリン、DOAC 【手術】 ①僧帽弁交連切開術=自己弁温存術(経皮的→PTMC/直視下→OMC) ②石灰化例は弁置換術(MVR) |
僧帽弁閉鎖不全症 MR:Mitral Regurgitation
| 病態 | 一次性(弁異常)と 二次性(弁輪拡大)で治療方針が異なるため鑑別が重要となる![]() |
上記の原因により僧帽弁閉鎖不全が生じ、収取期に左室→左房に逆流がある。その結果、左室と左房に容量負荷がかかり左室肥大・左房拡大となる。また、左房負荷による刺激伝導系異常によりAFが生じやすくなる。 |
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| 症状 | 代償期は無症状、代償できなくなると心不全症状が出現 ※一次性MRのうち突然の腱索断裂やIEなどで生じる急性MRでは急性心不全に至ることもあり、その場合はIABPや緊急手術を含めた迅速な対応が必要となることが多い |
| 所見 | 視診:頸静脈怒張の有無 聴診:心尖部で全収縮期雑音(左室→左房への高調性逆流音)、拡張期ランブル(M弁を通過する血液量が多いと逆流が生じてM弁口が狭窄し、相対的MSであるCarey Coombs雑音が生じる) 触診:四肢冷感や下腿浮腫の有無 |
| 検査 | 【画像検査】 ①心エコー:収縮期に左室→左房に逆流モザイク、左房・左室拡大(急性MRでは見られない)、進行するにつれLVEF↓・LVDs↑、技師エコーで重症度を評価 ②胸部X線:左房・左室拡大所見 ③心電図:左房負荷・左室肥大所見 |
| 治療 | 【急性MR】 重症の場合、緊急で手術となるため心臓血管外科へコンサルト! 心不全があれば心不全の加療と重症度評価・原因検索を行う |
| 【慢性一次性MR】 手術は、①自己弁に問題なければ僧帽弁形成術、②形成できない場合は僧帽弁置換術(MVR)、③80歳以上で手術不可の場合は経皮的クリップ術(MitraClip®)を選択 手術ができない有症状症では、前負荷軽減に利尿薬や硝酸薬、および一般的な心不全加療を行う。 |
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【慢性二次性MR】![]() |
僧帽弁逸脱症候群 MVP:Mitral Valve Prolapse syndrome
| 疫学 | 細身の女性に多い、MRの1番の原因はMVP |
| 病態 | 一次性/二次性の原因により、収縮中期に僧帽弁(後尖)の一部が左房内にはみ出す状態。その結果、左室→左房へ血液が逆流する(MR)。 |
| 症状 | MRを参照 |
| 所見 | 聴診:心尖部に収縮中期クリック→収縮後期逆流性雑音(M弁が帆を張ったときにクリック音が聴こえ、その後、左室から左房へ逆流する際に高調性の逆流音が聴こえる) |
| 検査 | 心エコー:左室長軸像で僧帽弁が左房内にはみ出す像(収縮期異常上方運動)+収縮期に左室→左房に逆流(カラードプラ) |
| 治療 | MR参照 |
大動脈弁狭窄症 AS:Aortic Stenosis
| 病態 | 多くは加齢による弁の石灰化により生じ、収縮期に左室→大動脈への駆出が障害され、心拍出量が低下+左室に圧負荷が加わり求心性肥大する。その結果、左室の拡張期圧が上昇し、左心不全を生じる。代償できなくなり症状発症後は予後不良となる。![]() |
| 症状 | 代償期は無症状、代償できなくなると以下の3大症状が出て、突然死することもある。 ①労作時胸痛:左室肥大により心筋O2需要量↑+冠血流量↓、無治療で平均余命5年 ②失神・めまい:大動脈圧↓による脳血流量↓、無治療で平均余命3年 ③動悸・息切れ:左心不全による肺うっ血、無治療で平均余命2年 |
| 所見 | 血圧・脈拍: 大動脈圧↓による収縮期血圧↓、脈圧も低下 聴診:2RSBで収縮期駆出性雑音+雑音が頸部に放散(A弁通過時の乱流音) ![]() |
| 検査 | 【画像検査】 ①心エコー:収縮期A弁開放制限、A弁輝度上昇、収縮期モザイクパターン、左室壁肥厚でASを疑い、技師エコーで大動脈弁通過血流速度↑、大動脈弁口面積↓(1.0cm2以下で症状出現=高度狭窄)から重症度を決定する ②胸部X線:左第1弓突出(A弁狭窄後拡張)、左第4弓拡大(左室肥大) ③心電図:左軸偏位+左室負荷所見、圧負荷↑と共にV5/V6でStrain pattern ④心カテ(左室-大動脈引き抜き圧曲線):A弁を通過後に圧が下がる ⑤心臓CT:低心機能の場合はCTによるA弁石灰化スコアから重症度判断することがある |
| 治療 | ①sBP130以下に制御:後負荷を軽減させる(β遮断薬は心拍出量低下を引き起こすため望ましくない、利尿薬は循環血液量を低下させASを悪化させるので専門医に任せる)②AVR後:ワルファリンでPT-INRを2.0〜3.0にコントロールする ③TIVI後:一般的には抗血小板薬の内服を継続する ※出血リスクの高い手術時は抗凝固薬・抗血小板薬の休薬は可能 |
| 手術 | 【手術適応】 【TAVIかSAVRかの選択】有症状・LVEF<50%の場合、75歳以下は原則大動脈弁置換術(AVR)、手術に耐えらえない80歳以上の高齢者は経カテーテル大動脈弁置換術(TAVI)。突然死をきたしやすいためリハビリも行わない。 ![]() |
| 生活 | 適度な水分摂取による脱水回避、運動の回避、息こらえの回避、歯科治療前に抗菌薬内服 |
大動脈弁閉鎖不全症 AR:Aortic Regurgitation
| 病態 | 【急性AR】 大動脈解離、感染性心内膜炎などにより前方駆出の低下により心拍出量の低下、左室拡張末期圧の上昇による低血圧、心原性ショックによる肺うっ血を急速にきたす。 |
| 【慢性AR】 ①感染性心内膜炎、二尖弁、大動脈瘤、大動脈解離、動脈硬化などによる弁の異常、②高安病、Marfan症候群、A弁輪拡張症など弁支持組織の異常により、拡張期に大動脈→左室に逆流し、左室は容量負荷により遠心性肥大する。肥大で代償できなくなると左心不全になる。 |
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| 症状 | 代償期は無症状。代償できなくなると以下の症状が出る。 ①労作時胸痛:左室肥大により心筋O2需要量↑+拡張期圧↓により冠血流量↓ ※拡張期に大動脈から左室に向けて逆流が生じ、拡張期圧↓により相対的に冠血流も↓ ②動悸・息切れ:左心不全症状 |
| 所見 | 血圧:左収縮力↑による収縮期圧↑、逆流により大動脈圧↓し拡張期圧↓ (脈圧増大) 聴診:3LSBで拡張期逆流性雑音(拡張期に大動脈から左室に逆流する音) 、収縮期駆出性雑音:大動脈弁口を通過する血流量が増え、相対的ASとなる(往復雑音=to-and-fro murmur) |
| 検査 | 【画像検査】 ①心エコー:左室内腔・大動脈根部の拡大、カラードプラで大動脈から左室への逆流ジェット、MモードでM弁の拡張期Fluttering でARを疑い、技師エコーで詳細な評価を行う ②胸部X線:左第4弓突出(左室肥大)、左第1弓突出(大動脈拡大)、右第1弓突出(大動脈根部拡大) ③心電図:左軸偏位+左室負荷所見 ④心血管造影:大動脈造影でARの程度を確認、冠血管造影で冠動脈狭窄確認 |
| 治療 | 【急性AR】 一般的な心不全の対応に準じるが、ARに対する緊急外科的治療を行う必要性が高い。 大動脈内バルーンパンピング(IABP)は禁忌! 【慢性AR】 心不全合併では、心不全加療に準じて利尿薬・ACEI/ARB・MRAなどを検討 |
| 手術 | 有症状の場合、原則大動脈弁置換術(AVR)。 |
感染性心内膜炎 IE:Infective Endocarditis
| 病態 | ①VSD、PDA、MR、AR、人工弁、HOCMなどの高速血流ジェットをきたす器質的基礎心疾患(NBTE)が素地となる。 ②高速血流ジェットにより心内膜が障害され、そこに形成された血栓に菌が定着して疣贅を形成する。菌は抜歯などの歯科治療、扁桃摘出術、カテーテル挿入、産婦人科・泌尿器科的処置などによって体内に侵入する。起因菌は亜急性の場合は緑色レンサ球菌(最多)や腸球菌、急性の場合は黄色ブドウ球菌(2番目)が多い。 ③疣贅から剥がれた血栓が詰まると塞栓症を起こす。また、弁破壊でAR、MR悪化する。 感染性心内膜炎は放置しておくと心不全などにて死に至る。 |
| 症状 | ①感染症症状:発熱、関節痛、筋肉痛、感染性脳動脈瘤(→脳出血) ②塞栓症症状:脳梗塞による片麻痺、脾梗塞による左季肋部痛、冠動脈閉塞による胸痛、腎梗塞による側腹部痛、腸管膜動脈閉塞による腹痛 ③心不全症状:弁膜破壊によるAR、MRの重症化による |
| 他覚 所見 | 【視診(塞栓+血管炎の症状)】そうか、ロスじゃお寿司ない膜炎! ①爪下(そうか)線状出血斑(splinter hemorrhage) ②Roth斑:網膜の円形白色斑(眼底の出血性梗塞で中心部が白色) ③Janeway病変:手掌と足底の無痛性小紅斑 ④Osler結節:指趾指頭の有痛性の赤紫色小結節、2~3日で消失する ⑤点状出血:疣贅中の血栓が剥がれ、皮膚・眼瞼結膜・頬粘膜などの微小血管を閉塞 【聴診】 逆流性心雑音 |
| 検査 | ①血液検査:赤沈↑CRP↑WBC↑γグロブリン↑フィブリノゲン↑ ②血液培養:24時間以上かけて3回の血液培養が望ましい ③心エコー:弁尖に付着した可動性腫瘤の確認(特に経食道心エコーが感度高い) |
| 治療 | ①速やかに抗菌薬治療を開始する(エンピリック治療) ②血液培養結果に基づき抗菌薬を経静脈的に4〜6週間投与 ③心不全や弁・腱索破壊がある場合は早期に手術(弁形成術、弁置換術) |
| 予防 | 処置の1時間前にAMPC単回投与 |
粘液腫 Myxoma
| 疫学 | 原発性心臓腫瘍の75%は良性で、良性腫瘍の約半分が粘液腫。 ただし原発性腫瘍<転移性腫瘍(白血病、悪性黒色腫、肺癌)。 |
| 病態 | 多くは有茎性で、約90%は左房内に生じる。粘液腫はゼリー状で壊れやすいため、塞栓症をきたしやすく、突然死をきたすこともある。 |
| 症状 | ①MS様症状:M弁に腫瘍が嵌頓し、呼吸困難などの左心不全症状、時に失神・突然死 ②塞栓症:左房内血栓が飛び脳梗塞、心筋梗塞、腎梗塞、網脈動脈塞栓症を起こす ③慢性炎症症状:IL-6産生で発熱、全身倦怠感、関節痛、体重減少 |
| 所見 | 心尖部聴診: 体位変換により聴診所見変化あり、左側臥位で増強する拡張中期ランブル |
| 検査 | 【血液検査】 赤沈↑CRP↑WBC↑γグロブリン↑IL-6↑ 【画像検査】 心エコー:輝度の高い内部が不均一な腫瘤を確認、振り子様運動 |
| 治療 | 手術により早期に茎を含めて摘出 |
弁手術での人工弁の選択
| 生体弁 | 機械弁 | |
| 特徴 | ワルファリン内服の必要がない、耐久性が低い(10〜20年で弁機能低下) | 耐久性が高い ワルファリン内服が必要(DOAC不可) |
| 適応 | 70歳以上、挙児希望 | 左記以外 |
どちらも感染のリスクは同じ!感染症心内膜炎の高リスク群となるため、抜歯時は緑色レンサ球菌をカバーするペニシリン系抗菌薬を予防的に投与し、抜歯後にも短期間服用させる。

上記の原因により僧帽弁閉鎖不全が生じ、収取期に左室→左房に逆流がある。その結果、左室と左房に
手術ができない有症状症では、前負荷軽減に利尿薬や硝酸薬、および一般的な心不全加療を行う。


②胸部X線:左第1弓突出(A弁狭窄後拡張)、左第4弓拡大(左室肥大)
①sBP130以下に制御:後負荷を軽減させる(β遮断薬は心拍出量低下を引き起こすため望ましくない、利尿薬は循環血液量を低下させASを悪化させるので専門医に任せる)
【TAVIかSAVRかの選択】
心不全合併では、心不全加療に準じて利尿薬・ACEI/ARB・MRAなどを検討
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