皮膚科 Common diseases(皮膚軟部組織感染症)

皮膚科

皮膚軟部組織感染症(SSTI)の概要

どの深さで感染があるかで病名が異なる

皮膚=表皮+真皮、軟部組織=皮下組織+筋肉

起因菌は溶連菌や黄色ブドウ球菌がほとんど(壊死性筋膜炎を除く)

①問診

発症時期 蜂窩織炎は数日単位の経過で、壊死性筋膜炎は数時間単位の経過で悪化
症状 ①局所症状:発赤腫脹熱感圧痛
②全身症状:発熱、頻脈、発汗、倦怠感、食欲低下など
曝露歴 職業歴、動物との接触、淡水海水曝露を必ず確認し、特殊な起因菌を疑う
危険因子 罹患のしやすさ、悪化のしやすさ、耐性菌リスクなど評価

②視診

深達度の評価 表層では境界明瞭、深層では境界不明瞭となる(深層ほど重症化しやすい)
膿瘍の有無 化膿性では切開排膿が必要
エントリー検索 SSTIでは侵入門戸がある(そのため単発片側性で連続性に拡大していく)

③触診

局所炎症の有無 発赤、熱感、圧痛、腫脹の4徴があれば局所炎症あり
硬結の有無 硬結とは本来柔らかい組織が硬くなる状態→炎症、うっ血、腫瘍の可能性
皮疹部以外の圧痛 壊死性筋膜炎の可能性(発赤部位をマーキング

④検査

血液検査 Eron分類 class2(中等症)以上ではルーチン血液検査
血液培養 中等症以上で入院治療を必要とする場合など
局所検体培養 同上?
CT 深部組織感染症や周辺臓器への波及を考える場合

⑤重症度の評価

単純性か複雑性か評価 単純性SSTIは比較的浅い層に限局しているが、複雑性SSTIは感染が皮下より深い層に進達し、しばしば敗血症を伴い予後不良
重症度からDisposition決定 外来か入院かEron分類を行う。軽症では皮膚局所に限局した感染徴候にとどまるが、中等症では病変範囲が拡大する。

⑥治療の選択

全てのSSTIは患肢の挙上安静が重要な治療に含まれる

Eron分類クラス① ●単純性SSTI
単純性SSTI(膿痂疹・丹毒・蜂窩織炎など)の軽症で全身状態が良好、耐性菌の可能性低い場合は原因菌の約80%以上がMSSAや溶連菌である
腎機能正常時、上記を5日間以上〜局所所見が軽快するまで投与(つまり、投与5日目くらいに再来院して経過を見る)
●複雑性SSTI
病変が小さく限局しており、軽症で全身状態が良好
Eron分類クラス②③ ●単純性SSTI
単純性SSTIだが、高熱や消耗など全身症状及び強い疼痛で通院困難な場合、高齢者や免疫不全症患者の場合、深部感染巣だが膿瘍形成なく耐性菌リスクが低い場合、以下の点滴抗菌薬での入院治療が推奨される
腎機能正常時、上記を7日間以上〜局所所見が軽快するまで投与
●複雑性SSTI
全身症状または強い疼痛で通院が困難な場合、高齢者や免疫不全症患者の場合、深部感染巣や皮下膿瘍がある場合
Eron分類クラス④ ●複雑性SSTI
術後創部感染、褥瘡感染、糖尿病性足病変感染、慢性下肢虚血の重症例。敗血症、ショック状態、重症深部軟部組織感染の場合はICU入院。
皮下膿瘍を伴う場合 軽症で皮下膿瘍が5cm未満の場合は切開排膿と創部洗浄後、以下のいずれかの内服抗菌薬を局所所見が軽快するまで短期間投与
皮下膿瘍が大きい場合や全身状態が不良の場合は入院での治療が必要で、切開排膿処置とともに点滴抗菌薬の治療を3〜4週間行う

伝染性膿痂疹(とびひ)

疫学 小児に好発、成人では稀
病態
症状 数日以内の急性経過で皮膚局所の軽度腫脹と丘疹、痛みや掻痒を伴う膿疱を伴う
水疱性膿痂疹:緊満な水疱+膿疱、疼痛が強い、アトピー性皮膚炎や帯状疱疹など先行する皮膚病変がある場合が多い
検査 【身体所見】


【検査所見】
膿疱培養
治療 Eron分類を参照

丹毒 erysipelas

病態 顔面と下肢に好発する。
症状 急な悪寒発熱・感染部位の疼痛が先行→半日〜1日後に境界明瞭な皮疹
検査 【身体所見】
境界明瞭で表面光沢のある紅斑(発赤腫脹熱感圧痛)
耳介の発赤腫脹:皮下組織のない耳介では丹毒を示唆(Milian’s ear sign)
鼻唇溝を越えない発赤腫脹:口輪筋が皮膚と深く結合して感染の広がりを防ぐため
③しばしば付近の所属リンパ節の腫脹・圧痛を伴う
治療 Eron分類を参照

蜂窩織炎(蜂巣炎) cellulitis

病態 黄色ブドウ球菌や溶連菌による皮下脂肪組織の感染症。軽微な外傷や足白癬傷口などから細菌が侵入することで発症する。壊死性筋膜炎の発症に注意する!
症状 蜂窩織炎は数日単位の経過で悪化し、壊死性筋膜炎は数時間単位の経過で悪化する傾向
①境界不明瞭な硬結を有する紅斑単発・片側性)、熱感腫脹、拍動性疼痛
※蜂窩織炎は圧痛はあるが自発痛がないことが多い
②全身症状:皮疹の範囲が拡大すると悪寒発熱など全身症状を伴う
合併 リンパ管炎・血栓性静脈炎:蜂窩織炎の病変局所から還流するリンパ管や静脈に感染炎症が及ぶと生じ、脈管に沿った帯状の発赤と強い圧痛を起こす
皮下膿瘍:蜂窩織炎の発症から数日以上経過すると、発赤部位の内部に滲出液や膿汁が貯留して皮下膿瘍を形成する場合がある(切開排膿)
滑液包炎:SSTIから肘関節や膝関節など大関節の滑液包に感染が波及して滑液包炎を起こすことがあり、大関節の屈曲時痛と屈曲制限が特徴的(切開洗浄を検討)
検査 【血液検査】
WBC↑CRP↑
【画像検査】
エコー:①病変部位の皮下組織の肥厚や間質の液体貯留、②敷石状変化、③膿瘍を示唆する低エコーの液体貯留の有無
治療 セファレキシン(ケフレックス®)500mg 1日3回 7〜10日間内服など
予防 慢性的な下腿浮腫があり蜂窩織炎を繰り返す場合:日中の弾性ストッキング着用

壊死性筋膜炎 NF:necrotizing fasciitis

病態 外傷や熱傷などを契機に発症する皮下組織の浅層筋膜(皮下脂肪組織と固有筋膜の間)の急性感染症で、筋膜に沿って拡大し、周囲結果の血栓性閉塞により皮下組織へ炎症が波及する。壊死性筋膜炎ではガス壊疽と異なり筋組織は侵されない
【フルニエ壊疽】
男性の陰部に生じる壊死性筋膜炎はフルニエ壊疽とよばれ、激痛を伴う紅斑・腫脹、潰瘍がみられる。
原因菌は溶連菌、黄色ブドウ球菌、嫌気性菌、腸内細菌など。 ときに劇症型溶連菌感染症、Vibrio vulnificus感染症の一症状として見られる。
分類 ①Ⅰ型壊死性筋膜炎:高齢者や免疫不全状態を背景とする多菌種混合感染
②Ⅱ型壊死性筋膜炎:基礎疾患や免疫不全状態を伴わない単一菌感染
症状 蜂窩織炎は数日単位の経過で悪化し、壊死性筋膜炎は数時間単位の経過で悪化する傾向
①局所症状:激痛を伴う紅斑→水疱・硬結・紫斑・壊死(急速に拡大)
②全身症状:高熱、全身倦怠感
重症例ではショック、敗血症、DIC、多臓器不全
検査 【身体所見】
視診:皮下出血、水疱壊死
触診:発赤の範囲を超えた圧痛皮膚感覚の脱失、ガス壊疽の場合は握雪感
※発赤部位をあらかじめマーキングし急激に拡大してないかフォローする!
ライネック score(壊死性筋膜炎の早期診断の補助)】
6点以上で壊死性筋膜炎疑い(だがあくまで参考所見)
【画像検査】
MRI>造影CT:壊死性筋膜炎を疑うよう際に施行(MRIの方が感度が高い)
体表エコー:健側と比較して患側の筋組織表層に4mm以上の低エコー領域で壊死性筋膜炎の化膿性(2mm未満であれば除外)
診断 速やかな局所切開:組織は微小血管閉塞により壊死し、出血に乏しく膿もあまり出ない点が特徴的な所見
治療 抗菌薬(カルバペネム+バンコマイシン+クリンダマイシン)+デブリドマン&培養検査

ガス壊疽(壊死性筋膜炎+皮下気腫)

病態 【Clostridium性ガス壊疽】 ウェルシュ菌の芽胞などガス壊疽菌群が創傷に侵入し、血行不全などで嫌気状態となったとき発芽して外毒素を産生する。この外毒素は蛋白分解酵素のためガスを伴い急激に筋組織を融解し壊死させる(ガス壊疽)。毒素が血中に入るとDICをきたし多臓器不全となる。
【非Clostridium性ガス壊疽】 糖尿病、閉塞性動脈硬化症など基礎疾患を持つ人に大腸菌、クレブシエラなどが皮下に限局して感染する。緩徐に進行するのが特徴。
症状 ①筋肉の激痛(ガスによる腫脹)
②皮下気腫:圧迫すると握雪感
③皮膚黄色〜青銅色に変色
④切開した滲出液は著しい腐敗臭(非Clostridium性の場合は臭気あり)
検査 【画像検査】
X線:皮下組織や筋肉内にガス像
治療 ①感染・壊死組織を開放+創部の洗浄+除去(デブリドマン)
②高圧酸素療法+ペニシリンG高用量を点滴静注
③最終手段として患肢切断

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