非ステロイド抗炎症薬(NSAIDs)
NSAIDsの作用機序
解熱作用 | 視床下部の体温調節中枢のセットアップを上昇させるPGE2の合成を抑制して解熱作用を示す。 |
鎮痛作用 | ブラジキニンなどの発痛物質の疼痛閾値を低下させるPGE2の合成を抑制して鎮痛作用を示す。 また、子宮を収縮させたり腸蠕動運動を亢進させたりして生理痛を引き起こすPGFαの合成を抑制して鎮痛作用を示す。 |
抗炎症作用 | 局所で血管拡張や血管透過性亢進させるPGI2・PGE2の合成を抑制して抗炎症作用を示す。 さらに、アスピリンやサリチル酸の場合はIκBキナーゼを阻害し、NF-κβの活性化を抑制し、抗炎症作用を示す。インドメタシンやフルフェナムなどはPPARγリガンドとして抗炎症作用を示す。 |
抗血小板作用 | COX-1を阻害して血小板のTXA2合成を抑制する。アスピリン以外は可逆的な阻害なため、服用中止により24時間以内に効果消失する。 |
炭素数20の不飽和脂肪酸から生成されるPG、TX、LTなどの生理活性物質を総称してエイコサイノイド(オータコイド)といい、半減期が短いので近傍の細胞までしか作用しない。
エイコサイノイド中に、二重結合が4つあるものをアラキドン酸といいPGE2やTXA2などができるが、二重結合が5つあるものをエイコサペンタエン酸(EPA)といいPGE3やTXA3などができる。PGI2とPGI3の作用は同等であるが、TXA3はTXA2よりも弱いため、EPA摂取量が多いと血小板凝集が起こりにくく血栓ができにくい。
NSAIDs使用時の注意点
A、Bという2種類のNSAIDsを併用した場合、AのNSAIDsによって活性中心がブロックされているのでBを投与しても活性中心に結合できない。つまり、2種類のNSAIDsを併用は無効であり避けるべきである。ただし、湿布の場合は血中濃度がそれほど上昇しないため、NSAIDsの湿布とNSAIDsの内服薬という併用は可能である。
炎症反応が強い場合はCOXの誘導も多いと考え、NSAIDsの必要量も増やす必要がある。ただし、NSAIDsを増量しても効果がない場合は、COXがNSAIDsによってすでに飽和していると考え、元の投与量に戻すべきである。
抗凝固剤との併用で凝固時間の延長が起こる。
NSAIDsの副作用
頻度多いもの | ①胃腸障害(消化性潰瘍患者には禁忌)。 酸性抗炎症薬は胃内では非イオン型であり吸収されやすいが、胃細胞内は中性であるため細胞膜を通過できず蓄積するため。長期投与する場合は必ずPPIなどの胃薬と併用すること。 |
頻度は稀 | ②腎機能障害患者:腎血流量低下により急性腎不全が起こることがある。 ③アスピリン喘息:喘息発作を誘発することがある。 |
NSAIDsの分類
※短時間型:1日3回投与、中時間型:1日2回投与、長時間型:1日1回投与
サリチル酸類
一般名 | 商品名 | 作用時間 | 特徴 |
アスピリン | バファリン錠 | 短時間型 | COXを不可逆的に阻害する。リウマチ熱にも効果あり。 小児への投与はライ症候群を起こす可能性あり。 |
アリール酢酸系(インドール酢酸誘導体)
一般名 | 商品名 | 作用時間 | 特徴 |
インドメタシン | インテバンSP | 短時間型→徐放化 | 解熱鎮痛・抗炎症作用はアスピリンの30倍 副作用強いため日常的な解熱鎮痛に用いない |
インドメタシンファルネシル | インフリーCP | 短時間型 | インドメタシンのプロドラッグ |
アセメタシン | ランツジール錠 | 短時間型 | インドメタシンのプロドラッグ |
プログルメタシン | ミリダシン錠 | 短時間型 | インドメタシンのプロドラッグ |
スリンダク | クリノリル錠 | 中時間型 | インドメタシン類似構造のプロドラッグ 抗炎症作用はインドメタシンの半分以下 |
アリール酢酸系(フェニル酢酸誘導体)
一般名 | 商品名 | 作用時間 | 特徴 |
ジクロフェナク | ボルタレン錠 | 短時間型 | インドメタシンより強い抗炎症作用、COX-2選択性が比較的高い |
アンフェナク | フェナゾックスCP | 短時間型 | 販売中止 |
アリール酢酸系(その他)
一般名 | 商品名 | 作用時間 | 特徴 |
エトドラク | ハイペン錠 オステラック錠 |
中時間型 | COX-2選択性が高い |
モフェゾラク | ジソペイン錠 | 短時間型 | COX-1選択性が高い |
アリールプロピオン酸誘導体
一般名 | 商品名 | 作用時間 | 特徴 |
イブプロフェン | ブルフェン錠 | 短時間型 | OTC薬でよく使われている |
ナプロキセン | ナイキサン錠 | 中時間型 | プロピオン酸系の中で最も抗炎症作用強い |
ケトプロフェン | モーラステープ | 短時間型 | 光線過敏症に注意 |
ザルトプロフェン | ペオン錠 ソレトン錠 |
中時間型 | COX-2選択性が比較的高い |
ロキソプロフェン | ロキソニン錠 | 短時間型 | COX-2選択性が比較的高い、プロドラッグ |
オキシカム誘導体
一般名 | 商品名 | 作用時間 | 特徴 |
ピロキシカム | バキソCP | 長時間型 | インドメタシンと同等の抗炎症作用がある |
メロキシカム | モービック錠 | 長時間型 | COX-2選択性が高い |
アンピロキシカム | フルカムCP | 長時間型 | ピロキシカムのプロドラッグ |
ロルノキシカム | ロルカム錠 | 短時間型 | 即効性で強力な抗炎症作用を持つ |
アントラニル酸誘導体
一般名 | 商品名 | 作用時間 | 特徴 |
メフェナム酸 | ポンタール錠 | 短時間型 | 販売中止、COX-2選択性が比較的高い |
選択的COX-2阻害薬
一般名 | 先発名 | 作用時間 | 特徴 |
セレコキシブ | セレコックス錠 | 中時間型 | 【利点】胃腸障害が少ない。 【欠点】心血管系疾患又はその既往歴。COX-2に数十倍の選択性のある薬では、血管でのCOX-2依存性のPGI2の合成が阻害されるため、血小板でCOX-1によって合成されるトロンボキサンが優位になり、心血管障害を起こしやすくなる。しかし、セレコキシブでは選択性が数倍に留まるためこの副作用の頻度が少ない。 |
解熱鎮痛薬
非ピリン系解熱鎮痛薬
アセトアミノフェンの副作用は少ないため使いやすい。
一般名 | 先発名 | 特徴 |
アセトアミノフェン (パラセタモール) |
カロナール錠 アセリオ静注 |
解熱鎮痛作用はあるが、抗炎症作用はない。NSAIDsが禁忌(アスピリン喘息、消化性潰瘍など)の患者には特に有用である。 【注意】 投与量は4000㎎/日まで可能だが、この用量だと肝障害が出る可能性が高い。特に、高齢者では投与量に注意すること。1500㎎/日以上で長期投与する場合、定期的な肝機能検査が必要。アルコール多量常飲者での使用に注意すること。 【ADME】 肝臓でグルクロン酸 or システインに抱合され、尿中に排泄される。大量投与の場合、有毒な代謝産物NAPQIが抱合されず肝障害を生じる。N-アセチルシステインは、グルタチオン量を回復させ、NAPQIと結合することによりその毒性を消失させる。 |
ピリン系解熱鎮痛薬
- スルピリン
プロスタグランジン製剤
一般名 | 先発名 | 特徴 |
リマプロストアルファデクス | オパルモン錠 プロレナール錠 |
PGE1誘導体 |
ベラプロスト | ドルナー錠 プロサイリン錠 フローラン静注 トレプロスト注 ベンテイビス吸入液 |
PGI2誘導体 |
ベラプロスト徐放錠 | ケアロードLA錠 ベラサスLA錠 |
EPA・DHA製剤
一般名 | 先発名 | 特徴 |
イコサペントエン酸 | エパデールS | |
EPA・DHA合剤 | ロトリガ粒状CP |
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