眼科薬、目薬

薬理学

眼科薬は主に経角膜的に眼内に移行し、虹彩→毛様体→水晶体へと浸透する。しかし、硝子体・網膜には届きにくいため内服薬や硝子体内注射薬などを使用する。

正しい点眼の仕方

結膜嚢に保持できる容量は30μL程度であるため、点眼1滴30μLで十分足りる。点眼後は薬が表面全体に行き渡るように目を閉じ、目頭を押さえる。眼をぱちぱちさせると、涙点から下鼻道に点眼薬が流れるためパチパチしないよう注意。2種類以上の点眼薬を併用する場合は5分以上点眼の間隔を空ける。涙液は就寝中は分泌されないため、就寝前の点眼は目を刺激し続ける可能性がある。

網膜疾患治療薬

抗VEGF抗体硝子体内注射の適応:脈絡膜新生血管(①加齢黄斑変性症、②病的近視)、黄斑浮腫(③網膜静脈閉塞症、④糖尿病

一般名 先発医薬品名 特徴
ベルテポルフィン ビスダイン静注 加齢黄斑変性に対する光線力学療法の前処置に使用
ペガプタニブ マクジェン 抗VEGF核酸誘導体。眼内に多いVEGF-A165を阻害。
現在はあまり使われていない。
ラニビズマブ ルセンティス硝子体内注射 抗VEGFヒト化モノクローナル抗体。VEGF-Aを阻害。
アフリベルセプト アイリーア硝子体内注射 VEGF受容体に対する囮受容体。VEGF-AとB両方阻害。
ブロルシズマブ ベオビュ硝子体内注射 抗VEGFモノクローナル抗体。
トリアムシノロン アセトニド マキュエイド眼注 硝子体手術補助薬(副腎皮質ステロイド)
ヘレニエン アダプチノール 網膜色素変性症の一時的な暗順応の改善

散瞳薬

一般名 先発名 特徴
シクロペントラート サイプレジン 屈折検査に使用(アトロピンより作用弱い)
【利点】3回の点眼40分後に検査可能
アトロピン リュウアト 屈折検査に使用(毛様体筋を麻痺させ、水晶体の調節力を除く)。
【欠点】検査前7日間点眼必要。作用は1週間程度持続。
フェニレフリン ネオシネジン 眼底検査に使用。
トロピカミド ミドリンM 眼底検査に使用。作用は約4時間と短い。
トロピカミド
+フェニレフリン
ミドリンP 眼底検査に使用。

角膜治療薬

【涙液路】

一般名 先発名 特徴
コンドロイチン硫酸 角膜上皮の保護作用
コンドロイチン硫酸+FAD ムコファジン 角膜上皮の保護作用・ 角膜の酸素消費能の増加作用
フラビンアデニンジヌクレオチド:FAD フラビタン 角膜の酸素消費能の増加作用
ヒアルロン酸 ヒアレイン 水層の安定性向上作用
人工涙液 人工涙液マイティア
ソフトサンティア
水層の安定性向上作用
ジクアホソル ジクアス 涙液分泌促進・ムチン分泌促進作用
レバミピド ムコスタ 角膜上皮修復・ムチン分泌促進作用

血管収縮薬

一般名 先発名 特徴
ナファゾリン プリビナ  
オキシメタゾリン ナシビン  

副腎皮質ステロイド

一般名 先発名 特徴
デキサメタゾン
メタスルホ安息香酸エステルNa
サンテゾーン  
プレドニゾロン酢酸エステル プレドニン眼軟膏  
ベタメタゾン
リン酸エステルNa
リンデロン  
ベタメタゾン
+フラジオマイシン
リンデロンA  
デキサメタゾン
リン酸エステルNa
オルガドロン  
メチルプレドニゾロン
+フラジオマイシン
ネオメドロールEE  
フルオロメトロン フルメトロン  

非ステロイド抗炎症薬

一般名 先発名 特徴
アズレンスルホン酸Na  
リゾチーム 消炎酵素薬
プラノプロフェン ニフラン  
ジクロフェナク ジクロード  
ブロムフェナク ブロナック  
ネパフェナク ネバナック  

緑内障治療薬

第一選択薬 PG関連薬 ラタノプロスト、トラボプロスト、イソプロピルウノプロストン
  β遮断薬 チモロール、カルテオロール、ベタキソロール
眼圧降下作用   PG関連薬>β遮断薬>炭酸脱水酵素阻害薬

配合剤

一般名 先発名 特徴
カルテオロール+ラタノプロスト ミケルナ β遮断薬+PG関連薬
チモロール+ラタノプロスト ザラカム β遮断薬+PG関連薬。点眼液が酸性のため点眼時にしみる。
チモロール+タフルプロスト タプコム β遮断薬+PG関連薬
チモロール+トラボプロスト デュオトラバ β遮断薬+PG関連薬
チモロール+ドルゾラミド コソプト β遮断薬+炭酸脱水酵素阻害薬。点眼液が酸性のため点眼時にしみる。
チモロール+ブリンゾラミド アゾルガ β遮断薬+炭酸脱水酵素阻害薬
チモロール+ブリモニジン アイベータ β遮断薬+α2刺激薬
ブリンゾラミド+ブリモニジン アイラミド 炭酸脱水酵素阻害薬+α2刺激薬。点眼液が酸性のため点眼時にしみることもある。

PG関連薬

作用機序 FP受容体を介したぶどう膜強膜流出路を促進させる。PG関連薬の降圧力はイソプロピルウノプロストンを除き同等である。
副作用 眼瞼・虹彩の色素沈着充血睫毛の多毛化、上眼瞼溝深化などの副作用があるため、使用後は洗顔を行うこと。充血は1週間以上さしていると軽減する傾向がある。

一般名 先発名 特徴
ラタノプロスト キサラタン 【利点】充血の副作用の頻度が少なめ。
タフルプロスト タプロス 【欠点】オミデネパグと併用禁忌。点眼液が酸性のため点眼時にしみる。
トラボプロスト トラバタンズ 【利点】塩化ベンザルコニウムを含まないため、保存剤による角膜上皮や結膜への影響少ない。
【欠点】点眼液が酸性のため点眼時にしみる。
ビマトプロスト ルミガン 【利点】眼圧降下作用最大
【欠点】結膜充血などの副作用の頻度が高い傾向。
イソプロピル ウノプロストン レスキュラ FP受容体作用は弱く、主にイオンチャネル開口に作用する薬。ぶどう膜強膜流出路+シュレム管流出路促進。
【利点】色素沈着や多毛化の副作用が少ない。
【欠点】他のPG関連薬と比べて眼圧降下作用は劣る。しかも1日2回点眼。点眼液が酸性のため点眼時にしみる。
オミデネパグ
イソプロピル
エイベリス FP受容体を介さず、EP受容体に作用する薬。ぶどう膜強膜流出路+シュレム管流出路促進。
【欠点】黄斑浮腫の副作用あり。点眼液が酸性のため点眼時にしみる。

β遮断薬

作用機序 毛様体無色素上皮細胞のβ受容体を遮断し、房水の産生を抑制する。
点眼時の注意 交感神経が亢進する昼間に最も降圧作用を示すため朝の点眼を推奨(夜間は房水産生が少なく眼圧降下作用はほぼない)。副作用軽減のため、点眼後1分間は閉眼し涙囊部を押さえる。
禁忌 COPD・気管支喘息・徐脈・房室ブロックなど心肺に問題ある患者は注意!
一般名 先発名 特徴
チモロール チモプトール 非選択性。【欠点】1日2回点眼。
チモロール持続性剤 チモプトールXE
リズモンTG
非選択性。持続性製剤は最後に点眼。
カルテオロール ミケラン
ミケランLA
非選択性。持続性製剤の場合は最後に点眼。
【欠点】点眼液が酸性のため点眼時にしみることがある。
レボブノロール ミロル 非選択性。
【欠点】点眼液が酸性のため点眼時にしみることがある。
ニプラジロール ハイパジール
ニプラノール
α1β遮断。房水産生抑制+ぶどう膜強膜流出路促進。
【欠点】1日2回点眼。
ベタキソロール ベトプティック
ベトプティックS
【利点】β1選択性のため、他のβ遮断薬と比べて全身性副作用少ない。懸濁性点眼は目にしみにくい。
【欠点】1日2回点眼。他のβ遮断薬と比較して降圧効果弱い。重篤な心不全患者と妊婦に禁忌。点眼液が酸性のため点眼時にしみることがある。

交感神経作用薬

一般名 先発名 特徴
ブリモニジン アイファガン α2刺激薬。房水産生抑制+ぶどう膜強膜流出路促進
【欠点】中枢神経のα2に作用すると眠気、めまい、徐脈、血圧低下などの全身性副作用、また、濾胞性結膜炎が起こることがある。
アプラクロニジン アイオピジンUD α2刺激薬。房水産生抑制。レーザー手術後の一過性の眼圧上昇を予防する目的でのみ使用される。
ブナゾシン デタントール α1遮断薬。ぶどう膜強膜流出路促進。
【欠点】1日2回点眼。他の交感神経刺激薬と比較して降圧効果弱い。点眼液が酸性のため点眼時にしみる。
ジピベフリン ピバレフリン 交感神経非選択性刺激薬(アドレナリンのプロドラッグ)。シュレム管流出路促進。
【欠点】血圧上昇や心疾患・DMなどの増悪の全身性副作に注意。また、散瞳させるため閉塞隅角緑内障には禁忌。点眼液が酸性のため点眼時にしみる。

炭酸脱水酵素阻害薬

作用機序 眼房に存在する炭酸脱水酵素Ⅱを阻害し、房水の産生を抑制する。ただし、眼圧降下作用は高くないので、併用薬として使用される。
一般名 先発名 特徴
ブリンゾラミド エイゾプト 【利点】ドルゾラミドより炭酸脱水酵素への結合力が強いため点眼回数が少ない(1日2回)。
【欠点】1日2回点眼。懸濁液のため点眼時に一過性の霧視を伴う。
ドルゾラミド トルソプト 【欠点】1日3回点眼。点眼液が酸性のため点眼時にしみる。

Rhoキナーゼ(ROCK)阻害薬

一般名 先発名 特徴
リパスジル グラナテック シュレム管流出路促進。
【欠点】1日2回点眼。点眼液が酸性のため点眼時にしみる。一過性ではあるが結膜充血を高頻度に生じる。

副交感神経刺激薬

一般名 先発名 特徴
ピロカルピン サンピロ 毛様体収縮により隅角が拡大→シュレム管流出路促進。しかし、ぶどう膜強膜流出路は抑制される。
急性閉塞性隅角緑内障手術の前処置に用いる。
【欠点】妊婦に禁忌。点眼液が酸性のため点眼時にしみる。また、縮瞳作用・暗黒感があるため開放隅角緑内障には現在使われない。
ジスチグミン ウブレチド ChE阻害薬。房水産生抑制。緑内障以外にも眼筋型重症筋無力症、調節性内斜視に用いる。
【欠点】点眼液が酸性のため点眼時にしみる。

白内障進行予防薬

一般名 先発名 特徴
ピレノキシン カタリンK
カリーユニ
水晶体タンパク質の変性を防ぐ。
グルタチオン タチオン SH基を保護することで水晶体タンパク質の凝集を抑制し、水晶体の混濁を防ぐ。

抗菌薬

一般名 先発名 特徴
クロラムフェニコール  
ゲンタマイシン  
トブラマイシン トブラシン  
ジベカシン パニマイシン  
コリスチン
+エリスロマイシン
エコリシン  
バンコマイシン  
ノルフロキサシン バクシダール
ノフロ
 
オフロキサシン タリビッド  
レボフロキサシン クラビット  
ロメフロキサシン ロメフロン  
ガチフロキサシン ガチフロ  
トスフロキサシン オゼックス
トスフロ
 
モキシフロキサシン ベガモックス  
セフメノキシム ベストロン  
アジスロマイシン アジマイシン  

抗ウイルス薬

一般名 先発名 特徴
アシクロビル ゾビラックス眼軟膏  

抗真菌薬

一般名 先発名 特徴
ピマリシン  

抗アレルギー薬

一般名 先発名 特徴
クロモグリク酸 インタール  
アンレキサノクス エリックス  
ケトチフェン ザジデン  
ペミロラスト アレギサール
ペミラストン
 
トラニラスト リザベン
トラメラス
 
イブジラスト ケタス  
アシタザノラスト ゼペリン  
レボカバスチン リボスチン  
オロパタジン パタノール  
エピナスチン アレジオン  
グリチルリチン酸 ノイボルミチン  

眼内灌流液

一般名 先発名 特徴
オキシグルタチオン ビーエスエスプラス  
ブドウ糖+NaCl+KCl+NaCO3など オペガードMA  

眼科手術補助剤(粘弾性物質)

一般名 先発名 特徴
精製ヒアルロン酸 オペガン、オペガンハイ、ヒーロン  
精製ヒアルロン酸+コンドロイチン硫酸 ディスコビスク  

蛍光眼底造影剤

一般名 先発名 特徴
フルオレセイン 網膜血管の描写に優れる。腎排泄型。撮影中の被験者は非常に眩しく感じる。
インドシアニングリーン オフサグリーン 脈絡膜血管の描写に優れる。肝代謝型。

消毒薬

一般名 先発名 特徴
硝酸銀  

局所麻酔薬

一般名 先発名 特徴
オキシブプロカイン ラクリミン、ベノキシール  

調節機能改善薬

一般名 先発名 特徴
シアノコバラミン サンコバ 調節性眼精疲労における微動調節の改善
ネオスチグミン ミオピン 調節機能の改善

免疫抑制薬

一般名 先発名 特徴
シクロスポリン パピロック  
タクロリムス タリムス  

収斂薬

一般名 先発名 特徴
硫酸亜鉛 就寝直前の点眼は避けること。

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